【完結】双子の国の行く末〜妹ヴェロニカの見た景色〜

まりぃべる

文字の大きさ
上 下
31 / 40

31. 居候先

しおりを挟む
 ここで居候させてもらって一ヶ月が過ぎた。
おじい様アルセニエ様は、土いじりが好きらしく花を植えたり、城の裏には畑もあった。庭師と共によくいじっているみたい。

 そして、私も一緒にやらせてもらっている。『どうせのんびりするんじゃから、普段だったらなかなか出来ない事をした方がええ。』と言って、私にスコップや手袋を渡してくれた。ニコラエ様も暇な時は一緒にやってくれるけれど、忙しいみたいでよく出掛けていた。『亭主元気で留守がええって言うだろう?ま、うちは畑の手入れで忙しいからな。余計な事は考えず、しっかり働いてくれよ。』と笑いながら言ってくれた。

 ニコラエ様のおばあ様はとうの昔に亡くなっていたみたいだから、おじい様は余計に畑に打ち込んでいるのかもしれない。

 そして、おじい様は夕食前に帰ってきたニコラエ様とよく晩酌をしている。『酒は一人で飲むのは淋しいで。ニコラエが来てくれてうれしいよのう。ヴェロニカも、飲めるようになったら是非とも一緒に飲もうな。うちには、酔えない弱い酒は無いんじゃよ、済まないね。』と。

 ニコラエ様とは、夕食後に少し話す時間がある。毎日、私がその日何をしていたかを話すといつも笑いながら『じじぃの相手は大変だろう。だが、じじぃはとても明るくなったよ、ヴェロニカのおかげだ。俺が宮廷学院へ入学する頃におばあ様が亡くなったんだけど、その頃から格段に落ち込んでね。ヴェロニカと共にここに来たいと言ったら、大喜びだったそうだよ。』と言ってくれる。私がお世話になって申し訳ないと思っているから、そんな事はないよと言ってくれているようで、ニコラエ様にはいつも心を安らかにしてもらっているわ。

 残念ながら、ニコラエ様がお昼に何をしているかははっきり教えてくれないのだけれど、どうやらお義父様パウエル様の所に行って将来の事を勉強しているらしいの。
ニコラエ様はどんな将来を見ているのかしら?だって、私は今まで漠然と、ヴァレリアが女王陛下になって、その補佐が出来ればと思っていたのだから。ヴァレリアが卒業して、女王陛下になる為の勉強をするのと平行して、私も補佐をする為の勉強をするのだと思っていたし、ラドゥにもそう伝えていた。

 けれど、ヴァレリアは女王陛下にならないと言っていたし、ヴァレリアの夫となるアントンが国王陛下となると言っていた。
そして、私の耳には聞こえてこないけれど、卒業して一ヶ月経っているから、アントンが国王陛下になったのでしょう。ここは、周りは畑ばかりで住民を他に見ないし、庭師など限られた使用人がいるけれど、私には世間の情勢を教えてくれる人がいない。ニコラエ様もだけれどきっと、敢えて教えないようにしているのかもしれないわ。

 だから、お父様が言った通りどんな風になるのかは分からないけれど、この一年穏やかに過ごさせてもらいましょうか。





「そろそろ、このジャガイモ収穫出来るんじゃ。収穫してみようかね。」

「まぁ!これですか?見えないのによく分かるのですね!」

 ジャガイモは、土の下に実が出来るみたいだけれど、今は葉しか見えていない。なのに収穫出来るってわかるなんて、経験が成せる技なのかしら。

「ハハハ。花も枯れたじゃろ?茎と葉も黄色くなってきた。だからもう収穫出来るんだよ。土の中が見えるわけではないて。このジャガイモ、収穫したら届ける先があるんじゃ。一緒に行くか。」

「え?良いのですか?」

「ヴェロニカが行くと喜ぶだろうて。ニコラエにも聞いてみような。」

 どこに届けるのかしら。私てっきり外出禁止なのかと思っていたのだけれど違ったのね。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「白い結婚の終幕:冷たい約束と偽りの愛」

ゆる
恋愛
「白い結婚――それは幸福ではなく、冷たく縛られた契約だった。」 美しい名門貴族リュミエール家の娘アスカは、公爵家の若き当主レイヴンと政略結婚することになる。しかし、それは夫婦の絆など存在しない“白い結婚”だった。 夫のレイヴンは冷たく、長く屋敷を不在にし、アスカは孤独の中で公爵家の実態を知る――それは、先代から続く莫大な負債と、怪しい商会との闇契約によって破綻寸前に追い込まれた家だったのだ。 さらに、公爵家には謎めいた愛人セシリアが入り込み、家中の権力を掌握しようと暗躍している。使用人たちの不安、アーヴィング商会の差し押さえ圧力、そして消えた夫レイヴンの意図……。次々と押し寄せる困難の中、アスカはただの「飾りの夫人」として終わる人生を拒絶し、自ら未来を切り拓こうと動き始める。 政略結婚の檻の中で、彼女は周囲の陰謀に立ち向かい、少しずつ真実を掴んでいく。そして冷たく突き放していた夫レイヴンとの関係も、思わぬ形で変化していき――。 「私はもう誰の人形にもならない。自分の意志で、この家も未来も守り抜いてみせる!」 果たしてアスカは“白い結婚”という名の冷たい鎖を断ち切り、全てをざまあと思わせる大逆転を成し遂げられるのか?

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

わたしを捨てた騎士様の末路

夜桜
恋愛
 令嬢エレナは、騎士フレンと婚約を交わしていた。  ある日、フレンはエレナに婚約破棄を言い渡す。その意外な理由にエレナは冷静に対処した。フレンの行動は全て筒抜けだったのだ。 ※連載

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

お飾り王妃の愛と献身

石河 翠
恋愛
エスターは、お飾りの王妃だ。初夜どころか結婚式もない、王国存続の生贄のような結婚は、父親である宰相によって調えられた。国王は身分の低い平民に溺れ、公務を放棄している。 けれどエスターは白い結婚を隠しもせずに、王の代わりに執務を続けている。彼女にとって大切なものは国であり、夫の愛情など必要としていなかったのだ。 ところがある日、暗愚だが無害だった国王の独断により、隣国への侵攻が始まる。それをきっかけに国内では革命が起き……。 国のために恋を捨て、人生を捧げてきたヒロインと、王妃を密かに愛し、彼女を手に入れるために国を変えることを決意した一途なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:24963620)をお借りしております。

処理中です...