30 / 40
30. 住む場所
しおりを挟む
結局、住む場所は王都に比較的近い、ニコラエ様のおじい様の住んでいる邸となった。ニコラエ様や、おじい様のアルセニエ様にご迷惑かとも思ったのですがむしろ一緒にいないと心配だと言ってくれたのです。公爵家の管轄の方が、ニコラエ様もよく分かっているからいいのですって。
あれからニコラエ様はまず、お父様に将来の挨拶をして下さった。そして、私を保護する事を提案して下さった。すると、
「ヴェロニカをよろしくお願いします…。アヴェレスク家には、君の父にもとても助けてもらっているよ。親子共々、世話になって…ニコラエ殿。君にならヴェロニカを託せるよ。大切な娘なのだよ。くれぐれもよろしく頼むよ。」
お父様はそう言って何度もペコペコと珍しく頭を下げていた。
「ヴェロニカよ。パウエルの子であるニコラエ殿であれば、安心だ。何があってもお互いを信頼し、頼るんだよ。…残念だが、今はまだ婚約者として傍にいなさい。一年後、どうなるかは分からないが、その時が過ぎれば結婚が出来るだろう。それまでは我慢するんだ。いいね。」
その後、私はニコラエ様のご両親に挨拶に行った。お二人共にとても喜んでくれ、『うちの愚息をもらってくれるなんて申し訳ない!なんでもこき使ってくれ!!』と言われたわ。お義父様は、『宮廷から一旦出るのだろう?だったら、私の父が今住んでいる所がいいだろう。王都からも馬車で半日もかからないし、それでいてわりかしのどかだ。それに、あんな老いぼれでも何かあれば役に立つだろうよ。』と笑いながら言っていた。
ーーー
ーー
ー
そして先ほど卒業式も無事に終わり、すでにまとめていた荷物もいつの間にか馬車に詰められていて、今日からアルセニエ様の邸へニコラエ様の馬車で向かうのです。
お父様には、朝挨拶をすでにしてある。『卒業おめでとう。よく頑張ったね、ヴェロニカよ。すぐにまた会えるからね、それまで元気でいなさい。』と優しく頭をなでて言ってくれた。
ラドゥも、ついてきてくれる事になったので、馬車に一緒に乗り込んだ。『共にいた侍女がいた方がヴェロニカも心強いだろう。』そう言ってくれたニコラエ様は本当にお優しいわ。
馬車の中では、ニコラエ様といろいろな話をした。普段宮廷学院ではアンジェラがいてマリネスキュー様もいたから、二人になるのはとても緊張したのだけれど、思いのほか楽しく会話が出来た。
「そろそろ着く頃かな。」
ニコラエ様がそう言うと、馬車が止まった。少ししてラドゥが声を掛けてくれ、御者が馬車の扉を開けてくれた。
「ありがとう。まぁ…!」
馬車を降りると道の向こうには一面のキャベツ畑が広がっていた。そして、石で出来た左右に広がる背の高い塀に囲まれた、高くそびえ立つとんがり帽子の屋根の塔が左右にある、お城のような大きなお屋敷が立っていた。
「さぁ、行こう。昔に出来たものだから、少し…いやかなり古いけどね。その分しっかりとした造りになっているよ。」
「素晴らしいわ…!私のおじい様の邸とは、また違う趣ね!」
「そう言ってくれると、あの偏屈じぃさんは喜ぶよ。」
「誰が偏屈じじぃじゃ!まだまだ現役でいけるぞ!」
「わ!いたんだ…すみません。これからお世話になります。」
いつの間にか門番だけではなく、門の中から人が出て来ていた。麦わら帽子を被った、ニコラエ様より少し背が低い男性。この方がきっと、ニコラエ様のおじい様なのね。
「これから長らくお邪魔してすみません。私、ヴェロニカと申します。アルセニエ様、よろしくお願い致します。」
「おお、よく来たよく来た!うちでゆっくりしていきなさい。のんびりする事は、心にとっても体にとっても本当に大切な事じゃよ。私には娘がおらんかったからな、可愛い女子が来てくれて嬉しいぞ。だからの、どうかおじい様と呼んでくれんかえ?」
「じいさん…止めてくれよ!それに、娘じゃなくて孫だろうに!」
「ふー…。ニコラエは堅物だから冗談も通じなくて詰まらんわ。さ、ヴェロニカ。うちの屋敷を案内するから着いておいで。あ、そうそう、さっきはこの建物を褒めてくれてありがとうよ。ヴェロニカのじぃちゃん家とは違う感じじゃが、それもまたいいだろう?」
そう言ってウインクしたおじい様は、私のおじい様よりももっとおしゃべり好きで明るい感じがした。
あれからニコラエ様はまず、お父様に将来の挨拶をして下さった。そして、私を保護する事を提案して下さった。すると、
「ヴェロニカをよろしくお願いします…。アヴェレスク家には、君の父にもとても助けてもらっているよ。親子共々、世話になって…ニコラエ殿。君にならヴェロニカを託せるよ。大切な娘なのだよ。くれぐれもよろしく頼むよ。」
お父様はそう言って何度もペコペコと珍しく頭を下げていた。
「ヴェロニカよ。パウエルの子であるニコラエ殿であれば、安心だ。何があってもお互いを信頼し、頼るんだよ。…残念だが、今はまだ婚約者として傍にいなさい。一年後、どうなるかは分からないが、その時が過ぎれば結婚が出来るだろう。それまでは我慢するんだ。いいね。」
その後、私はニコラエ様のご両親に挨拶に行った。お二人共にとても喜んでくれ、『うちの愚息をもらってくれるなんて申し訳ない!なんでもこき使ってくれ!!』と言われたわ。お義父様は、『宮廷から一旦出るのだろう?だったら、私の父が今住んでいる所がいいだろう。王都からも馬車で半日もかからないし、それでいてわりかしのどかだ。それに、あんな老いぼれでも何かあれば役に立つだろうよ。』と笑いながら言っていた。
ーーー
ーー
ー
そして先ほど卒業式も無事に終わり、すでにまとめていた荷物もいつの間にか馬車に詰められていて、今日からアルセニエ様の邸へニコラエ様の馬車で向かうのです。
お父様には、朝挨拶をすでにしてある。『卒業おめでとう。よく頑張ったね、ヴェロニカよ。すぐにまた会えるからね、それまで元気でいなさい。』と優しく頭をなでて言ってくれた。
ラドゥも、ついてきてくれる事になったので、馬車に一緒に乗り込んだ。『共にいた侍女がいた方がヴェロニカも心強いだろう。』そう言ってくれたニコラエ様は本当にお優しいわ。
馬車の中では、ニコラエ様といろいろな話をした。普段宮廷学院ではアンジェラがいてマリネスキュー様もいたから、二人になるのはとても緊張したのだけれど、思いのほか楽しく会話が出来た。
「そろそろ着く頃かな。」
ニコラエ様がそう言うと、馬車が止まった。少ししてラドゥが声を掛けてくれ、御者が馬車の扉を開けてくれた。
「ありがとう。まぁ…!」
馬車を降りると道の向こうには一面のキャベツ畑が広がっていた。そして、石で出来た左右に広がる背の高い塀に囲まれた、高くそびえ立つとんがり帽子の屋根の塔が左右にある、お城のような大きなお屋敷が立っていた。
「さぁ、行こう。昔に出来たものだから、少し…いやかなり古いけどね。その分しっかりとした造りになっているよ。」
「素晴らしいわ…!私のおじい様の邸とは、また違う趣ね!」
「そう言ってくれると、あの偏屈じぃさんは喜ぶよ。」
「誰が偏屈じじぃじゃ!まだまだ現役でいけるぞ!」
「わ!いたんだ…すみません。これからお世話になります。」
いつの間にか門番だけではなく、門の中から人が出て来ていた。麦わら帽子を被った、ニコラエ様より少し背が低い男性。この方がきっと、ニコラエ様のおじい様なのね。
「これから長らくお邪魔してすみません。私、ヴェロニカと申します。アルセニエ様、よろしくお願い致します。」
「おお、よく来たよく来た!うちでゆっくりしていきなさい。のんびりする事は、心にとっても体にとっても本当に大切な事じゃよ。私には娘がおらんかったからな、可愛い女子が来てくれて嬉しいぞ。だからの、どうかおじい様と呼んでくれんかえ?」
「じいさん…止めてくれよ!それに、娘じゃなくて孫だろうに!」
「ふー…。ニコラエは堅物だから冗談も通じなくて詰まらんわ。さ、ヴェロニカ。うちの屋敷を案内するから着いておいで。あ、そうそう、さっきはこの建物を褒めてくれてありがとうよ。ヴェロニカのじぃちゃん家とは違う感じじゃが、それもまたいいだろう?」
そう言ってウインクしたおじい様は、私のおじい様よりももっとおしゃべり好きで明るい感じがした。
1
お気に入りに追加
268
あなたにおすすめの小説

「白い結婚の終幕:冷たい約束と偽りの愛」
ゆる
恋愛
「白い結婚――それは幸福ではなく、冷たく縛られた契約だった。」
美しい名門貴族リュミエール家の娘アスカは、公爵家の若き当主レイヴンと政略結婚することになる。しかし、それは夫婦の絆など存在しない“白い結婚”だった。
夫のレイヴンは冷たく、長く屋敷を不在にし、アスカは孤独の中で公爵家の実態を知る――それは、先代から続く莫大な負債と、怪しい商会との闇契約によって破綻寸前に追い込まれた家だったのだ。
さらに、公爵家には謎めいた愛人セシリアが入り込み、家中の権力を掌握しようと暗躍している。使用人たちの不安、アーヴィング商会の差し押さえ圧力、そして消えた夫レイヴンの意図……。次々と押し寄せる困難の中、アスカはただの「飾りの夫人」として終わる人生を拒絶し、自ら未来を切り拓こうと動き始める。
政略結婚の檻の中で、彼女は周囲の陰謀に立ち向かい、少しずつ真実を掴んでいく。そして冷たく突き放していた夫レイヴンとの関係も、思わぬ形で変化していき――。
「私はもう誰の人形にもならない。自分の意志で、この家も未来も守り抜いてみせる!」
果たしてアスカは“白い結婚”という名の冷たい鎖を断ち切り、全てをざまあと思わせる大逆転を成し遂げられるのか?

【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。
文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。
父王に一番愛される姫。
ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。
優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。
しかし、彼は居なくなった。
聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。
そして、二年後。
レティシアナは、大国の王の妻となっていた。
※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。
小説家になろうにも投稿しています。
エールありがとうございます!

明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。
四季
恋愛
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。
お飾り王妃の愛と献身
石河 翠
恋愛
エスターは、お飾りの王妃だ。初夜どころか結婚式もない、王国存続の生贄のような結婚は、父親である宰相によって調えられた。国王は身分の低い平民に溺れ、公務を放棄している。
けれどエスターは白い結婚を隠しもせずに、王の代わりに執務を続けている。彼女にとって大切なものは国であり、夫の愛情など必要としていなかったのだ。
ところがある日、暗愚だが無害だった国王の独断により、隣国への侵攻が始まる。それをきっかけに国内では革命が起き……。
国のために恋を捨て、人生を捧げてきたヒロインと、王妃を密かに愛し、彼女を手に入れるために国を変えることを決意した一途なヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:24963620)をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる