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30. 住む場所
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結局、住む場所は王都に比較的近い、ニコラエ様のおじい様の住んでいる邸となった。ニコラエ様や、おじい様のアルセニエ様にご迷惑かとも思ったのですがむしろ一緒にいないと心配だと言ってくれたのです。公爵家の管轄の方が、ニコラエ様もよく分かっているからいいのですって。
あれからニコラエ様はまず、お父様に将来の挨拶をして下さった。そして、私を保護する事を提案して下さった。すると、
「ヴェロニカをよろしくお願いします…。アヴェレスク家には、君の父にもとても助けてもらっているよ。親子共々、世話になって…ニコラエ殿。君にならヴェロニカを託せるよ。大切な娘なのだよ。くれぐれもよろしく頼むよ。」
お父様はそう言って何度もペコペコと珍しく頭を下げていた。
「ヴェロニカよ。パウエルの子であるニコラエ殿であれば、安心だ。何があってもお互いを信頼し、頼るんだよ。…残念だが、今はまだ婚約者として傍にいなさい。一年後、どうなるかは分からないが、その時が過ぎれば結婚が出来るだろう。それまでは我慢するんだ。いいね。」
その後、私はニコラエ様のご両親に挨拶に行った。お二人共にとても喜んでくれ、『うちの愚息をもらってくれるなんて申し訳ない!なんでもこき使ってくれ!!』と言われたわ。お義父様は、『宮廷から一旦出るのだろう?だったら、私の父が今住んでいる所がいいだろう。王都からも馬車で半日もかからないし、それでいてわりかしのどかだ。それに、あんな老いぼれでも何かあれば役に立つだろうよ。』と笑いながら言っていた。
ーーー
ーー
ー
そして先ほど卒業式も無事に終わり、すでにまとめていた荷物もいつの間にか馬車に詰められていて、今日からアルセニエ様の邸へニコラエ様の馬車で向かうのです。
お父様には、朝挨拶をすでにしてある。『卒業おめでとう。よく頑張ったね、ヴェロニカよ。すぐにまた会えるからね、それまで元気でいなさい。』と優しく頭をなでて言ってくれた。
ラドゥも、ついてきてくれる事になったので、馬車に一緒に乗り込んだ。『共にいた侍女がいた方がヴェロニカも心強いだろう。』そう言ってくれたニコラエ様は本当にお優しいわ。
馬車の中では、ニコラエ様といろいろな話をした。普段宮廷学院ではアンジェラがいてマリネスキュー様もいたから、二人になるのはとても緊張したのだけれど、思いのほか楽しく会話が出来た。
「そろそろ着く頃かな。」
ニコラエ様がそう言うと、馬車が止まった。少ししてラドゥが声を掛けてくれ、御者が馬車の扉を開けてくれた。
「ありがとう。まぁ…!」
馬車を降りると道の向こうには一面のキャベツ畑が広がっていた。そして、石で出来た左右に広がる背の高い塀に囲まれた、高くそびえ立つとんがり帽子の屋根の塔が左右にある、お城のような大きなお屋敷が立っていた。
「さぁ、行こう。昔に出来たものだから、少し…いやかなり古いけどね。その分しっかりとした造りになっているよ。」
「素晴らしいわ…!私のおじい様の邸とは、また違う趣ね!」
「そう言ってくれると、あの偏屈じぃさんは喜ぶよ。」
「誰が偏屈じじぃじゃ!まだまだ現役でいけるぞ!」
「わ!いたんだ…すみません。これからお世話になります。」
いつの間にか門番だけではなく、門の中から人が出て来ていた。麦わら帽子を被った、ニコラエ様より少し背が低い男性。この方がきっと、ニコラエ様のおじい様なのね。
「これから長らくお邪魔してすみません。私、ヴェロニカと申します。アルセニエ様、よろしくお願い致します。」
「おお、よく来たよく来た!うちでゆっくりしていきなさい。のんびりする事は、心にとっても体にとっても本当に大切な事じゃよ。私には娘がおらんかったからな、可愛い女子が来てくれて嬉しいぞ。だからの、どうかおじい様と呼んでくれんかえ?」
「じいさん…止めてくれよ!それに、娘じゃなくて孫だろうに!」
「ふー…。ニコラエは堅物だから冗談も通じなくて詰まらんわ。さ、ヴェロニカ。うちの屋敷を案内するから着いておいで。あ、そうそう、さっきはこの建物を褒めてくれてありがとうよ。ヴェロニカのじぃちゃん家とは違う感じじゃが、それもまたいいだろう?」
そう言ってウインクしたおじい様は、私のおじい様よりももっとおしゃべり好きで明るい感じがした。
あれからニコラエ様はまず、お父様に将来の挨拶をして下さった。そして、私を保護する事を提案して下さった。すると、
「ヴェロニカをよろしくお願いします…。アヴェレスク家には、君の父にもとても助けてもらっているよ。親子共々、世話になって…ニコラエ殿。君にならヴェロニカを託せるよ。大切な娘なのだよ。くれぐれもよろしく頼むよ。」
お父様はそう言って何度もペコペコと珍しく頭を下げていた。
「ヴェロニカよ。パウエルの子であるニコラエ殿であれば、安心だ。何があってもお互いを信頼し、頼るんだよ。…残念だが、今はまだ婚約者として傍にいなさい。一年後、どうなるかは分からないが、その時が過ぎれば結婚が出来るだろう。それまでは我慢するんだ。いいね。」
その後、私はニコラエ様のご両親に挨拶に行った。お二人共にとても喜んでくれ、『うちの愚息をもらってくれるなんて申し訳ない!なんでもこき使ってくれ!!』と言われたわ。お義父様は、『宮廷から一旦出るのだろう?だったら、私の父が今住んでいる所がいいだろう。王都からも馬車で半日もかからないし、それでいてわりかしのどかだ。それに、あんな老いぼれでも何かあれば役に立つだろうよ。』と笑いながら言っていた。
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そして先ほど卒業式も無事に終わり、すでにまとめていた荷物もいつの間にか馬車に詰められていて、今日からアルセニエ様の邸へニコラエ様の馬車で向かうのです。
お父様には、朝挨拶をすでにしてある。『卒業おめでとう。よく頑張ったね、ヴェロニカよ。すぐにまた会えるからね、それまで元気でいなさい。』と優しく頭をなでて言ってくれた。
ラドゥも、ついてきてくれる事になったので、馬車に一緒に乗り込んだ。『共にいた侍女がいた方がヴェロニカも心強いだろう。』そう言ってくれたニコラエ様は本当にお優しいわ。
馬車の中では、ニコラエ様といろいろな話をした。普段宮廷学院ではアンジェラがいてマリネスキュー様もいたから、二人になるのはとても緊張したのだけれど、思いのほか楽しく会話が出来た。
「そろそろ着く頃かな。」
ニコラエ様がそう言うと、馬車が止まった。少ししてラドゥが声を掛けてくれ、御者が馬車の扉を開けてくれた。
「ありがとう。まぁ…!」
馬車を降りると道の向こうには一面のキャベツ畑が広がっていた。そして、石で出来た左右に広がる背の高い塀に囲まれた、高くそびえ立つとんがり帽子の屋根の塔が左右にある、お城のような大きなお屋敷が立っていた。
「さぁ、行こう。昔に出来たものだから、少し…いやかなり古いけどね。その分しっかりとした造りになっているよ。」
「素晴らしいわ…!私のおじい様の邸とは、また違う趣ね!」
「そう言ってくれると、あの偏屈じぃさんは喜ぶよ。」
「誰が偏屈じじぃじゃ!まだまだ現役でいけるぞ!」
「わ!いたんだ…すみません。これからお世話になります。」
いつの間にか門番だけではなく、門の中から人が出て来ていた。麦わら帽子を被った、ニコラエ様より少し背が低い男性。この方がきっと、ニコラエ様のおじい様なのね。
「これから長らくお邪魔してすみません。私、ヴェロニカと申します。アルセニエ様、よろしくお願い致します。」
「おお、よく来たよく来た!うちでゆっくりしていきなさい。のんびりする事は、心にとっても体にとっても本当に大切な事じゃよ。私には娘がおらんかったからな、可愛い女子が来てくれて嬉しいぞ。だからの、どうかおじい様と呼んでくれんかえ?」
「じいさん…止めてくれよ!それに、娘じゃなくて孫だろうに!」
「ふー…。ニコラエは堅物だから冗談も通じなくて詰まらんわ。さ、ヴェロニカ。うちの屋敷を案内するから着いておいで。あ、そうそう、さっきはこの建物を褒めてくれてありがとうよ。ヴェロニカのじぃちゃん家とは違う感じじゃが、それもまたいいだろう?」
そう言ってウインクしたおじい様は、私のおじい様よりももっとおしゃべり好きで明るい感じがした。
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