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24. 久々の王都
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久々に、また四人で王都へと出掛ける事になった。
私達は卒業してしまったら、こうやってゆっくりと出掛ける事が出来なくなってしまう。
だから、卒業前に王都をゆっくりぶらぶらと散策しようという事になったの。
「ねぇ。なんだか露店が多くなったのね。」
「え?…そう言われてみるとそうね。」
「ん?どうした?」
「なんだって?」
「ヴェロニカがね、以前に比べて露店が多くなったと言うのよ。私、気にも止めて無かったわ。」
「…そう言われてみるとそうだね。最近王都へはゆっくり来ていなかったから、気付かなかったな。」
アヴェレスク様が周りを見渡して言った。
だって、入学したての頃に来た時は、石畳は綺麗で、ゴミなんて落ちていなかったわ。
でも、いまはゴミが落ちていたり、石畳の上に敷物を敷きその上に品物を置いて商売をしている人が点々としていた。店の前に出ているから、店の人邪魔じゃないのかしらと思ったのだけれど、ショーウィンドウはカーテンが引かれていたので休みか、やっていないのかもしれない。
「ゴミも落ちているね。以前は、収拾人がいたと思うのだけれど、今はいないのか?」
マリネスキュー様も手を顎に当て、悩むような仕草をしていた。
「お父様は、ご存じなのかしら?」
「うーん、どうだろうね。一度進言してもらうよう父に伝えてみるよ。」
「そうね。気になりますわ。私もお父様に伝えてみます。」
「僕も伝えてみるよ。なんだか新鮮だね。自分だけでは気付かない発見があるものだ。」
「…そうだな。でも、やらないぞ。」
「ニコラエめ。僕は一人で充分だよ。」
「何を話されているの?」
「や、なんでもないさ!」
「そうそう!さぁ、今日は目についた店で食べるんだよね?どこか良いところあったかい?」
アヴェレスク様とマリネスキュー様がボソボソと話していたので、アンジェラが聞くと慌てたようにそう言われたわ。男同士の話なのかしら?
「うーん、まぁいいわ!そうねぇ…ヴェロニカは気になるお店、あった?」
「そうですね。どこも美味しそうな匂いがするのですけれど…きゃ!」
「危ない!」
私が話しているといきなり店から走って出て来た、私の胸くらいまである身長の男の子が、小道へと走り去っていった。咄嗟に、アヴェレスク様が私を支えてくれたからぶつかる手前で止まれたけれど、驚いたわ。
「こらー!!…もう!本当に困ったねぇ…。」
続いて店から出て来たエプロンを付けた恰幅のいい女性が、腰に手を当てて遠くを見ていた。
「どうかされたのですか?」
私が聞いてみると、今気付いたとでも言うように私達を見て、盛大なため息を一つ付いて話し出した。
「いえね、また食い逃げだよ。昔からあるんだけど最近多くてねぇ…。気をつけてはいたんだけど。いつの間にか、店にこっそり入って来ては、お客さんの目を盗んで皿の食べ物をヒョイと盗って口に入れちまう。困ったもんだよ。はー…貧しい子ってのは可哀想ではあるんだけど、こっちも商売だからねぇ…」
そう言った女性は、肩を落として店へと入って行った。
「貧しい子…昔からいた…。」
私は知らず呟いていたらしい。
「ヴェロニカ、仕方ないわ。これは、どうしようもないわよ。貧富の差はどうしてもあるものよ。」
「そうだね。僕らが今直ぐに出来る事はないよ。」
「…どうだろう。ここで食べるかい?」
「ええ!そうしたいわ!」
それくらいなら、今の私達にも出来るものね。
「そうね!」
「そうしようか。」
「いらっしゃい…あら?さっきの。」
「食べに来ました!」
「ありがとうね!どうぞ空いている席に座ってね。」
よかったわ。笑顔でそう言ってくれて。
私達は卒業してしまったら、こうやってゆっくりと出掛ける事が出来なくなってしまう。
だから、卒業前に王都をゆっくりぶらぶらと散策しようという事になったの。
「ねぇ。なんだか露店が多くなったのね。」
「え?…そう言われてみるとそうね。」
「ん?どうした?」
「なんだって?」
「ヴェロニカがね、以前に比べて露店が多くなったと言うのよ。私、気にも止めて無かったわ。」
「…そう言われてみるとそうだね。最近王都へはゆっくり来ていなかったから、気付かなかったな。」
アヴェレスク様が周りを見渡して言った。
だって、入学したての頃に来た時は、石畳は綺麗で、ゴミなんて落ちていなかったわ。
でも、いまはゴミが落ちていたり、石畳の上に敷物を敷きその上に品物を置いて商売をしている人が点々としていた。店の前に出ているから、店の人邪魔じゃないのかしらと思ったのだけれど、ショーウィンドウはカーテンが引かれていたので休みか、やっていないのかもしれない。
「ゴミも落ちているね。以前は、収拾人がいたと思うのだけれど、今はいないのか?」
マリネスキュー様も手を顎に当て、悩むような仕草をしていた。
「お父様は、ご存じなのかしら?」
「うーん、どうだろうね。一度進言してもらうよう父に伝えてみるよ。」
「そうね。気になりますわ。私もお父様に伝えてみます。」
「僕も伝えてみるよ。なんだか新鮮だね。自分だけでは気付かない発見があるものだ。」
「…そうだな。でも、やらないぞ。」
「ニコラエめ。僕は一人で充分だよ。」
「何を話されているの?」
「や、なんでもないさ!」
「そうそう!さぁ、今日は目についた店で食べるんだよね?どこか良いところあったかい?」
アヴェレスク様とマリネスキュー様がボソボソと話していたので、アンジェラが聞くと慌てたようにそう言われたわ。男同士の話なのかしら?
「うーん、まぁいいわ!そうねぇ…ヴェロニカは気になるお店、あった?」
「そうですね。どこも美味しそうな匂いがするのですけれど…きゃ!」
「危ない!」
私が話しているといきなり店から走って出て来た、私の胸くらいまである身長の男の子が、小道へと走り去っていった。咄嗟に、アヴェレスク様が私を支えてくれたからぶつかる手前で止まれたけれど、驚いたわ。
「こらー!!…もう!本当に困ったねぇ…。」
続いて店から出て来たエプロンを付けた恰幅のいい女性が、腰に手を当てて遠くを見ていた。
「どうかされたのですか?」
私が聞いてみると、今気付いたとでも言うように私達を見て、盛大なため息を一つ付いて話し出した。
「いえね、また食い逃げだよ。昔からあるんだけど最近多くてねぇ…。気をつけてはいたんだけど。いつの間にか、店にこっそり入って来ては、お客さんの目を盗んで皿の食べ物をヒョイと盗って口に入れちまう。困ったもんだよ。はー…貧しい子ってのは可哀想ではあるんだけど、こっちも商売だからねぇ…」
そう言った女性は、肩を落として店へと入って行った。
「貧しい子…昔からいた…。」
私は知らず呟いていたらしい。
「ヴェロニカ、仕方ないわ。これは、どうしようもないわよ。貧富の差はどうしてもあるものよ。」
「そうだね。僕らが今直ぐに出来る事はないよ。」
「…どうだろう。ここで食べるかい?」
「ええ!そうしたいわ!」
それくらいなら、今の私達にも出来るものね。
「そうね!」
「そうしようか。」
「いらっしゃい…あら?さっきの。」
「食べに来ました!」
「ありがとうね!どうぞ空いている席に座ってね。」
よかったわ。笑顔でそう言ってくれて。
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