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20. 剣術の授業
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今日は初めての選択授業の日。剣術の時間です。
これまでは授業が午前中までで、昼ご飯を学食で食べ、連絡事項を伝える〝連絡の会〟をして解散となっていたが、今日からは午後からも授業があるのです。
今日はまず、第一多目的広場に来ました。広場と言っても、天井には屋根があるけれど、壁はなく、柱があるだけの吹き抜けの広場です。雨が降っても授業が出来るようになのでしょうか。ここは、宮廷学院でも更に奥、森に近い所にあります。ここで剣術を習うそう。
ここの隣にはもう一つ、第二多目的広場があります。そこでは、武術を習います。
弓術は、そのまた隣にある、弓場と呼ばる、丸い形で大きさの異なる的がいくつも距離の離れた場所に置いてある場所でやるらしい。
アンジェラが、そう説明してくれた。
『良くご存じね!アンジェラってすごいわ!』そう伝えると、『そう言ってもらえると嬉しいわ。ヴェロニカのその顔が見たくて、予習してきましたの。』とはにかんだ顔で教えてくれたわ。
「わくわくするわね。」
アンジェラがそう言ってきました。
「本当に!でも…私、鈍いから失敗しても笑わないでくれると助かるわ。」
「あら。私だってそうだし、失敗した方が先生が教えて下さるからいいのよ?初めから出来る人なんていないのだから。存分に失敗しましょ!」
いつもアンジェラは明るくそう言ってくれるから、いつもだったら心が暗くなってしまう事も、気に病まなくていいのね、と思えてくるから不思議だわ。
「はい、皆さん!初めまして。私はペトルと言います。こんなに受講してくれて、先生は本当に嬉しいです。聞けば、ヴェロニカ様が皆にひと声掛けて下さったとか。ありがとうございます!剣術は知っていて損はありませんよ。体を動かす事も、健康維持には必要ですから、女子でもやって損はありませんからね!ではこれからよろしくお願いします!」
「「「お願いします!」」」
私の名前が出た時は、視線を向けて来た生徒が何人もいたから、ビクッとしてしまったけれど、隣にいたアンジェラが私へウインクしてくれたからなんだか可笑しくなってしまったわ。
結局、クラスの九割が選択科目を受ける事になったらしい。
女子生徒も意外と多く、選択しない子なんてわざわざ私に理由を言いに来てくれた。『ヴェロニカ様、ごめんなさい。私達、宮廷音楽家になりたくて。手を怪我するといけないから選択しないのです。でも、他の授業では一生懸命やりますね!』宮廷音楽家なんてすごい!って伝えると、その子ははにかんだ笑顔を見せてくれたわ。いつか、その子達が演奏するのを聴ける日がくると嬉しいわ。
「さぁ、今日は簡単な構えを教えますよ。まずはあちらから棒を持って来て下さい。」
と、先生が言い、私達は広場の隅に置いてある、地面から腰の長さ位まである棒をそれぞれ取ってきた。
「さぁ、私の構えを見て。まず、右利きの人の場合です。下の方を持ちます。この一番下が剣の場合柄と言いますよ。で、その辺りを左手で握ります。右手は少し間をあけて上を持ちます。拳一個分弱位開けますよ、こんな風に。」
先生が言って、皆が構える。わぁ…なんだか圧巻ね!
「そうそう。で、振る時は左手で振るのを右手が支える感じで真っ直ぐ下ろします。左利きの人は左右逆でやりましょう。」
棒を振り下ろす、また構えるを数回繰り返す。すると、シュッシュッと小さいけれど音が聞こえる。隣を見ると、アヴェレスク様でした。
「音がしますのね。」
「あぁ、力を入れると風を受けて音がするね。俺は、五歳から素振りをしていたからね。皆とは差を付けないと、何していたんだと思われてしまうからね。」
まぁ!五歳から…。周りを見ると、恐る恐る棒をゆっくり振り下ろしている子、アヴェレスク様のように勢いよく振り下ろしている子様々いた。
「だから、こんなに大勢で受講できるのが嬉しいよ。手合わせが出来るかは分からないけれど、将来を支える奴がこの中から出てくるかもしれないね。ヴェロニカのおかげだ。本当に功労者だよ。前も言ったけれどありがとう。」
ニッコリと笑ってくれたアヴェレスク様はとても輝いた顔をしていた。私はその笑顔を見てドキリとしてしまったの。
いつも近くにいて私へ優しい言葉をくれるアヴェレスク様。私の中で少しずつ想いが大きくなっている気がした。
これまでは授業が午前中までで、昼ご飯を学食で食べ、連絡事項を伝える〝連絡の会〟をして解散となっていたが、今日からは午後からも授業があるのです。
今日はまず、第一多目的広場に来ました。広場と言っても、天井には屋根があるけれど、壁はなく、柱があるだけの吹き抜けの広場です。雨が降っても授業が出来るようになのでしょうか。ここは、宮廷学院でも更に奥、森に近い所にあります。ここで剣術を習うそう。
ここの隣にはもう一つ、第二多目的広場があります。そこでは、武術を習います。
弓術は、そのまた隣にある、弓場と呼ばる、丸い形で大きさの異なる的がいくつも距離の離れた場所に置いてある場所でやるらしい。
アンジェラが、そう説明してくれた。
『良くご存じね!アンジェラってすごいわ!』そう伝えると、『そう言ってもらえると嬉しいわ。ヴェロニカのその顔が見たくて、予習してきましたの。』とはにかんだ顔で教えてくれたわ。
「わくわくするわね。」
アンジェラがそう言ってきました。
「本当に!でも…私、鈍いから失敗しても笑わないでくれると助かるわ。」
「あら。私だってそうだし、失敗した方が先生が教えて下さるからいいのよ?初めから出来る人なんていないのだから。存分に失敗しましょ!」
いつもアンジェラは明るくそう言ってくれるから、いつもだったら心が暗くなってしまう事も、気に病まなくていいのね、と思えてくるから不思議だわ。
「はい、皆さん!初めまして。私はペトルと言います。こんなに受講してくれて、先生は本当に嬉しいです。聞けば、ヴェロニカ様が皆にひと声掛けて下さったとか。ありがとうございます!剣術は知っていて損はありませんよ。体を動かす事も、健康維持には必要ですから、女子でもやって損はありませんからね!ではこれからよろしくお願いします!」
「「「お願いします!」」」
私の名前が出た時は、視線を向けて来た生徒が何人もいたから、ビクッとしてしまったけれど、隣にいたアンジェラが私へウインクしてくれたからなんだか可笑しくなってしまったわ。
結局、クラスの九割が選択科目を受ける事になったらしい。
女子生徒も意外と多く、選択しない子なんてわざわざ私に理由を言いに来てくれた。『ヴェロニカ様、ごめんなさい。私達、宮廷音楽家になりたくて。手を怪我するといけないから選択しないのです。でも、他の授業では一生懸命やりますね!』宮廷音楽家なんてすごい!って伝えると、その子ははにかんだ笑顔を見せてくれたわ。いつか、その子達が演奏するのを聴ける日がくると嬉しいわ。
「さぁ、今日は簡単な構えを教えますよ。まずはあちらから棒を持って来て下さい。」
と、先生が言い、私達は広場の隅に置いてある、地面から腰の長さ位まである棒をそれぞれ取ってきた。
「さぁ、私の構えを見て。まず、右利きの人の場合です。下の方を持ちます。この一番下が剣の場合柄と言いますよ。で、その辺りを左手で握ります。右手は少し間をあけて上を持ちます。拳一個分弱位開けますよ、こんな風に。」
先生が言って、皆が構える。わぁ…なんだか圧巻ね!
「そうそう。で、振る時は左手で振るのを右手が支える感じで真っ直ぐ下ろします。左利きの人は左右逆でやりましょう。」
棒を振り下ろす、また構えるを数回繰り返す。すると、シュッシュッと小さいけれど音が聞こえる。隣を見ると、アヴェレスク様でした。
「音がしますのね。」
「あぁ、力を入れると風を受けて音がするね。俺は、五歳から素振りをしていたからね。皆とは差を付けないと、何していたんだと思われてしまうからね。」
まぁ!五歳から…。周りを見ると、恐る恐る棒をゆっくり振り下ろしている子、アヴェレスク様のように勢いよく振り下ろしている子様々いた。
「だから、こんなに大勢で受講できるのが嬉しいよ。手合わせが出来るかは分からないけれど、将来を支える奴がこの中から出てくるかもしれないね。ヴェロニカのおかげだ。本当に功労者だよ。前も言ったけれどありがとう。」
ニッコリと笑ってくれたアヴェレスク様はとても輝いた顔をしていた。私はその笑顔を見てドキリとしてしまったの。
いつも近くにいて私へ優しい言葉をくれるアヴェレスク様。私の中で少しずつ想いが大きくなっている気がした。
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