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15. 入学前の茶会 アンジェラ視点
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私は、アンジェラ=ゴルディエンコ。少し遡れば王家の血筋が流れているいわば分家筋の系統よ。
あれは、宮廷学院に入学するだいたい一月程前だったかしら。
前王妃のオクタヴィアン様からお手紙が来たそうで、お茶会に招待されたわ。
私のおばあ様と同年代だけれど、それよりも前王妃だという事でとても緊張していたわ。
それまで、お母様が主催していたお茶会や、お母様が呼ばれた茶会に、参加をした事もあったけれどそれはお母様がいたから。今回は私一人で出席するそうで緊張もひとしおだわ。
「今日はみんな、来てくれてありがとう。そんなに緊張しなくてもいいのよ。今日はね、みんなにお願いがあってきたのよ。」
オクタヴィアン様の邸の庭で、座っているのは私の他に、同じ年齢の子が男女合わせて十人いたの。私みたいな公爵家だけではなく、侯爵家や伯爵家の子もいた。
初対面の子もいるが、お母様に連れられて行ったお茶会で見かけた子もいる。きっと、オクタヴィアン様と縁のある人の家柄なのでしょうね。
一人一人自己紹介をすると、そうオクタヴィアン様が言われた。
「貴方達はこれから、宮廷学院に入学するわよね。この国の王女である、ヴェロニカも入学するのよ。だけれど、ヴァレリアは学院に通わないみたいなの。それでね、貴方達には、ヴェロニカがもし困っていたら力になってあげて欲しいの。」
え!?ゆくゆくはこの国の女王となるヴェロニカ様が宮廷学院に通わない!?どういう事?
私だけではなく、十人みな、目を見開いたり、口を開けたり、小さな声で『え!?』と言ったり、『嘘!?』と言ったりしていた。
「そうね、驚くわよね…。私も驚いたのよ。だけれど、ヴァレリアが決めた事なのだから尊重しないといけないのだけれど、どうか王家を支えて欲しいの。きっと、ヴァレリアが宮廷学院に通わない事でヴェロニカが心を傷めていると思うのよ。あの子は性根が優しい分、憂いてしまうかもしれないのよ。だから、あの子をどうか、気に掛けて下さるかしら?」
「「「はい。」」」
「あぁ、でも無理に友人になろうとしなくて良いの。私の言葉で、貴方達が友人を選んではいけないわ。決して命令ではないのよ。老婆心で、貴方達に来てもらってしまっただけなの。さぁ、今日は美味しいお菓子を食べて帰って頂戴。たくさん用意させましたからね、遠慮しないでいいのよ。」
そう言われ、オクタヴィアン様は自分がいると皆が緊張するわよね、後は皆さん楽しみなさいねと言って、席を立った。
オクタヴィアン様は、ヴァレリア様が宮廷学院に通わないと言ったわ。ではそのまま家庭教師に学ぶのかしら?お父様はきっと知っているわよね、帰ったら聞いてみましょう。
私は今まで、王族の補佐をする為に勉強してきたわ。同性であるから、宮廷学院でも何かと頼りにされるようにまずは主に宮廷のしきたりを学ばされたのだけれど…。
本来ならお二人が入学すると思っていたから初めは遠くから様子を窺おうと思っていたのだけれど。
まぁ、どうなるのか分からないけれどとにかくヴェロニカ様に話し掛けてみて、考えてみましょうか。
もしかしたら、友人になれるかもしれないわ。
お母様に連れられて行ったお茶会では、私が公爵家だったから相手は遠慮したのか、はたまた私が気が強いからなのか、なかなか気の合う友人は出来なかったものね。
友人が出来るかもしれないと期待に胸を膨らませる事で、今聞いた自分の中の戸惑いを打ち消そうと思った。
それよりも、今ここにいる人達は皆宮廷学院に通うのだと言われたわ。少し交流をしておくのも手だわね。
そう思いながら目の前のカップへ手を付けると隣に座っていた男の子が話し掛けけきた。
「なるほどね。どんな話をするのか緊張してきたけれど、そんな話で良かった。ヴァレリア様が宮廷学院に通わないなんてね。僕達貴族を見捨てたのかな。そう思わない?」
「…見捨てた?」
「あぁ。だってさ、通例では将来政治を手助けする奴を見つけたり親交を深める為に宮廷学院に通うんだろ?だけど通わないって事は、親交を深めたくないって事なんじゃないの?」
「何言っているの!?そんな事ないわよ!憶測で勝手な事言わないでちょうだい!」
「おいおい、可愛い顔が台無しだよ。そんなに怒るなよ。僕はセルゲイ=マリネスキュー。僕達はいわば同志だよ。王家へ忠誠を誓うね。だから仲良くしようよ。」
仲良く…!?なんだかイラつく男ね。確かにそう思えなくもないけれど、なぜそんな事ここで言うのかしら。同志…?確かにそうだけれど、仲間とは思いたくもないわ!!忠誠を誓っているのなら王家を悪く言わないでほしいわ!
私、この男だけは学院で近寄らないようにしないと!
あれは、宮廷学院に入学するだいたい一月程前だったかしら。
前王妃のオクタヴィアン様からお手紙が来たそうで、お茶会に招待されたわ。
私のおばあ様と同年代だけれど、それよりも前王妃だという事でとても緊張していたわ。
それまで、お母様が主催していたお茶会や、お母様が呼ばれた茶会に、参加をした事もあったけれどそれはお母様がいたから。今回は私一人で出席するそうで緊張もひとしおだわ。
「今日はみんな、来てくれてありがとう。そんなに緊張しなくてもいいのよ。今日はね、みんなにお願いがあってきたのよ。」
オクタヴィアン様の邸の庭で、座っているのは私の他に、同じ年齢の子が男女合わせて十人いたの。私みたいな公爵家だけではなく、侯爵家や伯爵家の子もいた。
初対面の子もいるが、お母様に連れられて行ったお茶会で見かけた子もいる。きっと、オクタヴィアン様と縁のある人の家柄なのでしょうね。
一人一人自己紹介をすると、そうオクタヴィアン様が言われた。
「貴方達はこれから、宮廷学院に入学するわよね。この国の王女である、ヴェロニカも入学するのよ。だけれど、ヴァレリアは学院に通わないみたいなの。それでね、貴方達には、ヴェロニカがもし困っていたら力になってあげて欲しいの。」
え!?ゆくゆくはこの国の女王となるヴェロニカ様が宮廷学院に通わない!?どういう事?
私だけではなく、十人みな、目を見開いたり、口を開けたり、小さな声で『え!?』と言ったり、『嘘!?』と言ったりしていた。
「そうね、驚くわよね…。私も驚いたのよ。だけれど、ヴァレリアが決めた事なのだから尊重しないといけないのだけれど、どうか王家を支えて欲しいの。きっと、ヴァレリアが宮廷学院に通わない事でヴェロニカが心を傷めていると思うのよ。あの子は性根が優しい分、憂いてしまうかもしれないのよ。だから、あの子をどうか、気に掛けて下さるかしら?」
「「「はい。」」」
「あぁ、でも無理に友人になろうとしなくて良いの。私の言葉で、貴方達が友人を選んではいけないわ。決して命令ではないのよ。老婆心で、貴方達に来てもらってしまっただけなの。さぁ、今日は美味しいお菓子を食べて帰って頂戴。たくさん用意させましたからね、遠慮しないでいいのよ。」
そう言われ、オクタヴィアン様は自分がいると皆が緊張するわよね、後は皆さん楽しみなさいねと言って、席を立った。
オクタヴィアン様は、ヴァレリア様が宮廷学院に通わないと言ったわ。ではそのまま家庭教師に学ぶのかしら?お父様はきっと知っているわよね、帰ったら聞いてみましょう。
私は今まで、王族の補佐をする為に勉強してきたわ。同性であるから、宮廷学院でも何かと頼りにされるようにまずは主に宮廷のしきたりを学ばされたのだけれど…。
本来ならお二人が入学すると思っていたから初めは遠くから様子を窺おうと思っていたのだけれど。
まぁ、どうなるのか分からないけれどとにかくヴェロニカ様に話し掛けてみて、考えてみましょうか。
もしかしたら、友人になれるかもしれないわ。
お母様に連れられて行ったお茶会では、私が公爵家だったから相手は遠慮したのか、はたまた私が気が強いからなのか、なかなか気の合う友人は出来なかったものね。
友人が出来るかもしれないと期待に胸を膨らませる事で、今聞いた自分の中の戸惑いを打ち消そうと思った。
それよりも、今ここにいる人達は皆宮廷学院に通うのだと言われたわ。少し交流をしておくのも手だわね。
そう思いながら目の前のカップへ手を付けると隣に座っていた男の子が話し掛けけきた。
「なるほどね。どんな話をするのか緊張してきたけれど、そんな話で良かった。ヴァレリア様が宮廷学院に通わないなんてね。僕達貴族を見捨てたのかな。そう思わない?」
「…見捨てた?」
「あぁ。だってさ、通例では将来政治を手助けする奴を見つけたり親交を深める為に宮廷学院に通うんだろ?だけど通わないって事は、親交を深めたくないって事なんじゃないの?」
「何言っているの!?そんな事ないわよ!憶測で勝手な事言わないでちょうだい!」
「おいおい、可愛い顔が台無しだよ。そんなに怒るなよ。僕はセルゲイ=マリネスキュー。僕達はいわば同志だよ。王家へ忠誠を誓うね。だから仲良くしようよ。」
仲良く…!?なんだかイラつく男ね。確かにそう思えなくもないけれど、なぜそんな事ここで言うのかしら。同志…?確かにそうだけれど、仲間とは思いたくもないわ!!忠誠を誓っているのなら王家を悪く言わないでほしいわ!
私、この男だけは学院で近寄らないようにしないと!
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