【完結】双子の国の行く末〜妹ヴェロニカの見た景色〜

まりぃべる

文字の大きさ
上 下
17 / 40

17. 友人とは

しおりを挟む
「ではラドゥ、行ってくるわ。」

「大丈夫ですか?教室まで行きましょうか?」

「ありがとう。大丈夫よ、頑張るわ。」

 今日も生徒達が私を見ている気がする。でも、昨日アンジェラが『手を振るくらいでなきゃ!慣れていきましょ!』
って明るく言ってくれたから、幾分私の心も軽くなったの。
たくさんの人が注目してくるのはやっぱり緊張してしまうけれど、確かに私は王族だもの。お父様の跡を継ぐ訳ではないけれど、これからは公式の場にも出る機会があるかもしれないわ。

 お母様が生きていらしたら、宮廷でガーデンパーティーなどを開いて貴族と交流を持つ事を幼い頃からやっていたのでしょうけれど、私達にはお母様がいない為、そんな催し物も無く、まだ私達は公式の式典等にそんなに参加した事が無かった。
けれど、ヴァレリアの傍でヴァレリアの治世を支えるなら、人目に触れる事もあるでしょうからね。


 試しに近くを歩いている、同じクラスの女の子達に手を振ってみた。すると、嬉しそうにしてくれ、『手、振ってくれたわ!どうしよう!』と隣の子と話していた。あの子達は、確か伯爵家の子たちだったわね。良かった。喜んでくれているわ。
勇気を振り絞って挨拶をしてみると、話し出してくれた。そして、その子達と教室まで話しながら行く事となった。



「おはよう、ヴェロニカ!」

 教室を入って私は、好きな席に座っていい為、前の方の席に座っていると声を掛けてきたのはアンジェラだった。

「アンジェラ、おはようございます。」

 隣へ座ってくれたアンジェラは、私を見て話し出した。

「そういえばヴェロニカはいつでも丁寧ね。でも、親しい仲では、話し方を崩してもいいのよ?公式の場では、言葉遣いも振る舞いもしっかり区別つけなければならないけれど。」

「そうなのですか?親しい間柄とは名前を呼び合うだけではないのですね?」

「そうよ。…ふふ。嬉しいわ。私がヴェロニカの先生になれるなんて!こういう実践的な内容は集団生活をする仲で学んでいくのが多いものね。だから敢えてヴェロニカに教えていた家庭教師の先生も、ヴェロニカに教えなかったのかもしれないわね。ヴェロニカ、これからいろいろと教えていくわね!」

「ええ、アンジェラ。ありがとう。私本当に何も知らないのね。ごめんなさい、きっと教え甲斐があり過ぎるわ。呆れたり…されてしまうのが怖いわ。」

「まぁ!何言っているの?私、ヴェロニカと友人になれてとても楽しいのよ?ヴェロニカこそ、うるさいって思わないでいてくれると嬉しいわ。」

「思わないわ!この前も、私が部屋へ誘ったときそれとなく止めた方がいいと教えてくれたでしょう?ヴァレリアもご友人を連れて来たらしくて衛兵に止められていたみたいなの。私も、連れて行っていたらきっと二人を嫌な気持ちにさせていたわ。」

「え!?…そう。ヴァレリア様のご友人って、教会学校の…?」

「多分そうだと思うわ。」

「そんな人達を宮廷に…私達公爵家だったらまだしも、そう…。」

「やぁ。何の話をしているんだい?」

「なんだかアンジェラ、浮かない顔をしているみたいだよ?大丈夫かい?」

 アヴェレスク様と、マリネスキュー様は一緒に来たのか二人揃って私達のすぐ後ろの席へ座って、言った。

「それがね、入学式の日ヴァレリア様が宮廷にご友人をお連れになったのですって。」

「え?」
「ほぉ。」

「あ、でも衛兵が止めたらしいのです。だから、アヴェレスク様も学食にと言って下さってありがとうございます。私も嫌な気持ちにさせていた所でしたわ。」

「ん?というのは?」

「ああ、セルゲイはその日会話途中から入ってきたのだったね。初め、学食ではなくてヴェロニカが部屋に誘ってくれたんだ。」

「お恥ずかしいですわ。いけないなんて知らず、声を掛けてしまって。」

「そうなんだ。でも、その為の僕等だからいいんじゃないかい?初めから完璧な人なんていないさ。少しずつ学んでいけばいいんだよ。」

「そうだね。ヴェロニカ、気にしなくていいんだよ。少しずつ知っていけばいい。さぁ、授業も今日から始まるね。楽しんで学んでいこう!」

 そう三人が言って下さったので、少し心が軽くなったわ。だから、ありがとうのきもを込めて微笑みを返した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

【完結】お荷物王女は婚約解消を願う

miniko
恋愛
王家の瞳と呼ばれる色を持たずに生まれて来た王女アンジェリーナは、一部の貴族から『お荷物王女』と蔑まれる存在だった。 それがエスカレートするのを危惧した国王は、アンジェリーナの後ろ楯を強くする為、彼女の従兄弟でもある筆頭公爵家次男との婚約を整える。 アンジェリーナは八歳年上の優しい婚約者が大好きだった。 今は妹扱いでも、自分が大人になれば年の差も気にならなくなり、少しづつ愛情が育つ事もあるだろうと思っていた。 だが、彼女はある日聞いてしまう。 「お役御免になる迄は、しっかりアンジーを守る」と言う彼の宣言を。 ───そうか、彼は私を守る為に、一時的に婚約者になってくれただけなのね。 それなら出来るだけ早く、彼を解放してあげなくちゃ・・・・・・。 そして二人は盛大にすれ違って行くのだった。 ※設定ユルユルですが、笑って許してくださると嬉しいです。 ※感想欄、ネタバレ配慮しておりません。ご了承ください。

【完結】脇役令嬢だって死にたくない

こな
恋愛
自分はただの、ヒロインとヒーローの恋愛を発展させるために呆気なく死ぬ脇役令嬢──そんな運命、納得できるわけがない。 ※ざまぁは後半

【完結】旦那様、お飾りですか?

紫崎 藍華
恋愛
結婚し新たな生活に期待を抱いていた妻のコリーナに夫のレックスは告げた。 社交の場では立派な妻であるように、と。 そして家庭では大切にするつもりはないことも。 幸せな家庭を夢見ていたコリーナの希望は打ち砕かれた。 そしてお飾りの妻として立派に振る舞う生活が始まった。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

嘘をありがとう

七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」 おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。 「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」 妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。 「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」

夫のかつての婚約者が現れて、離縁を求めて来ました──。

Nao*
恋愛
結婚し一年が経った頃……私、エリザベスの元を一人の女性が訪ねて来る。 彼女は夫ダミアンの元婚約者で、ミラージュと名乗った。 そして彼女は戸惑う私に対し、夫と別れるよう要求する。 この事を夫に話せば、彼女とはもう終わって居る……俺の妻はこの先もお前だけだと言ってくれるが、私の心は大きく乱れたままだった。 その後、この件で自身の身を案じた私は護衛を付ける事にするが……これによって夫と彼女、それぞれの思いを知る事となり──? (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)

処理中です...