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29. 将来を考える
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ヴァレリアの彼アントンは、あれからお父様に言われた通り宮廷に部屋を用意され、そこからヴァレリアと共に通っている。ヴァレリアは、アントンが宮廷に泊まり込む事になってしまったので新しく建てた邸から帰って来ていた。
とは言っても、まだ正式に婚約者ではないみたいで卒業と同時に発表するらしい。それまでは宮廷の客室が用意された。
婚約者だと発表されたら、貴賓室へと部屋を移動させるのだと言っていた。
でも、それに対してヴァレリアは初め怒っていた。『どうして初めから私の部屋の隣ではないの!?』と。まぁ、まだ発表されていないし、発表されてからは本来であれば各国の国王が泊まれる位立派な部屋になるそうだからそれでも充分破格だと思うのだけれど。
アントンはアントンで、学校か終わってから馬車に乗るから日が暮れてから宮廷に帰って来て、そこから食事をして宮廷のしきたりの説明となるから短い時間しか自由な時間がないと喚いているみたい。
お父様に『卒業してすぐに国王って、勉強はさせないのですか』と疑問をぶつけると、『そんな物は必要ないのだよ。彼には彼の目指すものがあるからね。我らが学んできた帝王学はきっと彼には合わないさ。だから必要最低限の事だけを伝えるには充分だ。』と言っていた。
私はこれから一年、どこに行こうかとても悩んでいる。
マリネスキュー様は今度の休みにとうとうアンジェラのご実家へ挨拶に行くのだと言っていた。前々からアンジェラに誘っていたのだけれど、卒業が近づいてきて彼は本気を出したのかもしれないわ。
『アンジェラ。いつまでも君は僕の気持ちを理解してくれなくて悲しいよ。お願いだよ。僕は領地へ帰ったら本当に出られなくなってしまう。その前に、君のご両親へ挨拶させてくれないか?アンジェラ、君と結婚したいんだ。君となら毎日笑って楽しく過ごせると思うから。』と言っていたもの。
アンジェラも、『ちょっと…本当に本気なの?うちは公爵家よ?』と戸惑い気味に言っていた。けれど、いつになく真剣なマリネスキュー様にとうとうアンジェラは、『後悔、しないでよ。』と恥ずかしながら言っていたわ。きっと、これはマリネスキュー様に頑張ってもらわないとね!…淋しくなるけれど。
「淋しくなるね。ねぇ、ヴェロニカ…君も将来を考えないといけないよね。もし、君さえよければ俺との将来を考えてくれないか?」
「?アヴェレスク様との…?」
「そう。つまり…俺と結婚して欲しい。」
「!??」
私ははしたなくも驚き過ぎて口を開けたままアヴェレスク様を見つめてしまった。
「そんなに見つめられると照れるな…!卒業しても、ヴェロニカを傍で支えていきたいと思ったんだ。この学院生活、一緒に過ごせてとても楽しかったからね。ヴェロニカは…どうだったかな?」
「わ…私もよ!私もとても楽しく過ごせたのは、皆さんのおかげだったわ。私、本当に何も知らなかったと痛感したもの。それでも、見捨てないで私を支えてくれていたのは本当に有難かったわ。卒業後も…傍に居てくれるなんて思ってもみなかったもの。こんなに嬉しい事はないわ!」
私は精一杯の気持ちを伝えると、アヴェレスク様は満面の笑みで答えてくれた。
「そう?そう言ってくれて、俺も本当に嬉しいよ。じゃあ陛下に許しを得ないとな!それから…宮廷を出るのなら、俺と一緒にいないか?まだ、何処に行くのかは決めていないけれど。」
「え…いいのかしら。私、何処へ行こうか悩んでいたの。お父様は東の蓮池の別荘へ行くと言っていたわ。おばあ様のところか、他の別荘か…。」
「そうなんだね。東はまた遠いね。少し場所は横に置いといて、俺に着いてきてくれる?大丈夫、まだすぐに夫婦とはなれないから、変な事もしないよ。」
「うふふ。変な事って…!アヴェレスク様はそんな方ではないでしょう?はい!よろしくお願いします。」
「うーん、そんなに信用されても困るけれどね…。あ、そうだ。そろそろ、俺達親密になれてきたと思うから、名前で呼んでくれると嬉しいんだけどな。」
「そういえばそうでしたわね。 …ニコラエ様。」
「くー!いいね、ありがとう。いつか、様を抜きで呼んでくれる事を待ち望んでいるよ。」
「…はい。」
それはさすがに…いつ呼べるようになるかは分かりませんけれど、とても嬉しく思いましたわ。
とは言っても、まだ正式に婚約者ではないみたいで卒業と同時に発表するらしい。それまでは宮廷の客室が用意された。
婚約者だと発表されたら、貴賓室へと部屋を移動させるのだと言っていた。
でも、それに対してヴァレリアは初め怒っていた。『どうして初めから私の部屋の隣ではないの!?』と。まぁ、まだ発表されていないし、発表されてからは本来であれば各国の国王が泊まれる位立派な部屋になるそうだからそれでも充分破格だと思うのだけれど。
アントンはアントンで、学校か終わってから馬車に乗るから日が暮れてから宮廷に帰って来て、そこから食事をして宮廷のしきたりの説明となるから短い時間しか自由な時間がないと喚いているみたい。
お父様に『卒業してすぐに国王って、勉強はさせないのですか』と疑問をぶつけると、『そんな物は必要ないのだよ。彼には彼の目指すものがあるからね。我らが学んできた帝王学はきっと彼には合わないさ。だから必要最低限の事だけを伝えるには充分だ。』と言っていた。
私はこれから一年、どこに行こうかとても悩んでいる。
マリネスキュー様は今度の休みにとうとうアンジェラのご実家へ挨拶に行くのだと言っていた。前々からアンジェラに誘っていたのだけれど、卒業が近づいてきて彼は本気を出したのかもしれないわ。
『アンジェラ。いつまでも君は僕の気持ちを理解してくれなくて悲しいよ。お願いだよ。僕は領地へ帰ったら本当に出られなくなってしまう。その前に、君のご両親へ挨拶させてくれないか?アンジェラ、君と結婚したいんだ。君となら毎日笑って楽しく過ごせると思うから。』と言っていたもの。
アンジェラも、『ちょっと…本当に本気なの?うちは公爵家よ?』と戸惑い気味に言っていた。けれど、いつになく真剣なマリネスキュー様にとうとうアンジェラは、『後悔、しないでよ。』と恥ずかしながら言っていたわ。きっと、これはマリネスキュー様に頑張ってもらわないとね!…淋しくなるけれど。
「淋しくなるね。ねぇ、ヴェロニカ…君も将来を考えないといけないよね。もし、君さえよければ俺との将来を考えてくれないか?」
「?アヴェレスク様との…?」
「そう。つまり…俺と結婚して欲しい。」
「!??」
私ははしたなくも驚き過ぎて口を開けたままアヴェレスク様を見つめてしまった。
「そんなに見つめられると照れるな…!卒業しても、ヴェロニカを傍で支えていきたいと思ったんだ。この学院生活、一緒に過ごせてとても楽しかったからね。ヴェロニカは…どうだったかな?」
「わ…私もよ!私もとても楽しく過ごせたのは、皆さんのおかげだったわ。私、本当に何も知らなかったと痛感したもの。それでも、見捨てないで私を支えてくれていたのは本当に有難かったわ。卒業後も…傍に居てくれるなんて思ってもみなかったもの。こんなに嬉しい事はないわ!」
私は精一杯の気持ちを伝えると、アヴェレスク様は満面の笑みで答えてくれた。
「そう?そう言ってくれて、俺も本当に嬉しいよ。じゃあ陛下に許しを得ないとな!それから…宮廷を出るのなら、俺と一緒にいないか?まだ、何処に行くのかは決めていないけれど。」
「え…いいのかしら。私、何処へ行こうか悩んでいたの。お父様は東の蓮池の別荘へ行くと言っていたわ。おばあ様のところか、他の別荘か…。」
「そうなんだね。東はまた遠いね。少し場所は横に置いといて、俺に着いてきてくれる?大丈夫、まだすぐに夫婦とはなれないから、変な事もしないよ。」
「うふふ。変な事って…!アヴェレスク様はそんな方ではないでしょう?はい!よろしくお願いします。」
「うーん、そんなに信用されても困るけれどね…。あ、そうだ。そろそろ、俺達親密になれてきたと思うから、名前で呼んでくれると嬉しいんだけどな。」
「そういえばそうでしたわね。 …ニコラエ様。」
「くー!いいね、ありがとう。いつか、様を抜きで呼んでくれる事を待ち望んでいるよ。」
「…はい。」
それはさすがに…いつ呼べるようになるかは分かりませんけれど、とても嬉しく思いましたわ。
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