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26. 議会にて グリゴール国王陛下視点
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「案があれば、聞く。手を挙げよ。」
今は、議会。
昨日ヴァレリアが言った事を皆に伝えたのだ。案の定ザワザワと近くの者達と話している。
「陛下。恐れながら…。」
「なんだ。申してみよ。」
「はっ。…やはり、王家以外に仕えるのは気が進みませぬ。ヴァレリア様は、国を統べる者として教会学校に通われたと思っておりましたし…。」
「そうか。そう言ってくれて我はありがたい限りじゃ。それに、確かにその通り。その点は返す言葉もないわ。では、やはりヴァレリアに王女となってもらう事でよろしいか。」
そう言ってぐるりと議会場を見渡す。すると、一人勢い良く手を挙げた者がいた。
「陛下!」
「なんだ?申してみよ。」
「ありがとうございます。…という事は、そのキシデル出身の奴とご結婚されるのですか?」
「うむ…迷うておる。どうしてもと言っておるが、あれもこれもダメと言って果たして聞くものか…。ヴァレリアは気が強いからの。」
我は、柄にもなく愚痴をこぼしていた。仕方あるまい。妻であったイオネルが亡くなってから乳母に育てられた我が娘達は目に入れても痛くないとは思っているが、ヴァレリアは誰に似たのか気が強く、頑固で自分が決めた事は譲らないのだ。
イオネルは、気の優しい、いつも朗らかにニコニコと笑っているそんな女だった。どちらかと言えば気は弱く、自分の意見は通さず、争いを好まない。その点はヴェロニカが似ているな。
あ、いかんいかん!今は大事な議会の最中だ!自分では抱えきれなくなってきたので皆に伝えたまで。キシデル出身の奴を国王になんて、さすがに認められるはずがないし、我も嫌だ!
「やらせてみればいいのではないですか。」
「な…アヴェレスク公爵!?」
「何ですと!?」
「いや、さすがに…」
しかし、アヴェレスク公爵がそう発言すると、周りは一層騒がしくなった。
アヴェレスク公爵とは、我の父である前国王の弟アルセニエの子である。名をパウエルと言う。
パウエルは我の従兄弟ではあるが、政治では力を遺憾なく発揮してくれる頼もしい存在だ。
「陛下が言われたではありませんか。ヴァレリア様は気が強く、聞く耳を持ってくれるか不安だと。でしたら、一度やらせてみればいいのでは?ただ、期限付きで。そうですな…一年、好きなようにやらせてみて無理であれば返還してもらう。我々貴族は、高みの見物を。一年位、何をせずとも暮らしていける蓄えは皆、あるでしょう?」
そうパウエルが皆に向かって言うと、他の者達も渋々ではあるが頷いたりしている。
「ま、まぁ…。」
「確かに。」
「一理あるが…。」
「ヴァレリア様に任せてみるような形か?」
「しかしそれではキシデル出身者を国王にしたいと申しておられるんだろう?」
「それは、次期女王陛下となられるヴァレリア様が判断したと言う事ではないのか?」
「「「…!」」」
「現国王陛下が、次期女王陛下はヴァレリア様とお決めになられていた。そのヴァレリア様が、国王は夫にと決めたのだ。だったら我々は…?」
再度パウエルが皆の顔を一人一人見るように見渡して発言すると、周りの貴族達は周りを見合い、頷き出した。
上手いな…。
この辺りはパウエルに学ぶべき所がある。人心を掌握すると言うのか、言葉巧みに誘導すると言うべきか…ともかく、ヴァレリアの気持ちを優先させる事が出来たな。あとでパウエルに礼を言うとしよう。
「だそうですよ、陛下。ヴァレリア様のお気持ちを尊重させましょう。しかし猶予は一年。それでしっかり国として成り立つ事が出来なければ、元の形へ戻させてもらいましょう。」
「うむ。皆の者、賛同してくれた事感謝する。ではそのようによろしく頼む。」
我はホッと胸をなで下ろすと、席を立った。
今は、議会。
昨日ヴァレリアが言った事を皆に伝えたのだ。案の定ザワザワと近くの者達と話している。
「陛下。恐れながら…。」
「なんだ。申してみよ。」
「はっ。…やはり、王家以外に仕えるのは気が進みませぬ。ヴァレリア様は、国を統べる者として教会学校に通われたと思っておりましたし…。」
「そうか。そう言ってくれて我はありがたい限りじゃ。それに、確かにその通り。その点は返す言葉もないわ。では、やはりヴァレリアに王女となってもらう事でよろしいか。」
そう言ってぐるりと議会場を見渡す。すると、一人勢い良く手を挙げた者がいた。
「陛下!」
「なんだ?申してみよ。」
「ありがとうございます。…という事は、そのキシデル出身の奴とご結婚されるのですか?」
「うむ…迷うておる。どうしてもと言っておるが、あれもこれもダメと言って果たして聞くものか…。ヴァレリアは気が強いからの。」
我は、柄にもなく愚痴をこぼしていた。仕方あるまい。妻であったイオネルが亡くなってから乳母に育てられた我が娘達は目に入れても痛くないとは思っているが、ヴァレリアは誰に似たのか気が強く、頑固で自分が決めた事は譲らないのだ。
イオネルは、気の優しい、いつも朗らかにニコニコと笑っているそんな女だった。どちらかと言えば気は弱く、自分の意見は通さず、争いを好まない。その点はヴェロニカが似ているな。
あ、いかんいかん!今は大事な議会の最中だ!自分では抱えきれなくなってきたので皆に伝えたまで。キシデル出身の奴を国王になんて、さすがに認められるはずがないし、我も嫌だ!
「やらせてみればいいのではないですか。」
「な…アヴェレスク公爵!?」
「何ですと!?」
「いや、さすがに…」
しかし、アヴェレスク公爵がそう発言すると、周りは一層騒がしくなった。
アヴェレスク公爵とは、我の父である前国王の弟アルセニエの子である。名をパウエルと言う。
パウエルは我の従兄弟ではあるが、政治では力を遺憾なく発揮してくれる頼もしい存在だ。
「陛下が言われたではありませんか。ヴァレリア様は気が強く、聞く耳を持ってくれるか不安だと。でしたら、一度やらせてみればいいのでは?ただ、期限付きで。そうですな…一年、好きなようにやらせてみて無理であれば返還してもらう。我々貴族は、高みの見物を。一年位、何をせずとも暮らしていける蓄えは皆、あるでしょう?」
そうパウエルが皆に向かって言うと、他の者達も渋々ではあるが頷いたりしている。
「ま、まぁ…。」
「確かに。」
「一理あるが…。」
「ヴァレリア様に任せてみるような形か?」
「しかしそれではキシデル出身者を国王にしたいと申しておられるんだろう?」
「それは、次期女王陛下となられるヴァレリア様が判断したと言う事ではないのか?」
「「「…!」」」
「現国王陛下が、次期女王陛下はヴァレリア様とお決めになられていた。そのヴァレリア様が、国王は夫にと決めたのだ。だったら我々は…?」
再度パウエルが皆の顔を一人一人見るように見渡して発言すると、周りの貴族達は周りを見合い、頷き出した。
上手いな…。
この辺りはパウエルに学ぶべき所がある。人心を掌握すると言うのか、言葉巧みに誘導すると言うべきか…ともかく、ヴァレリアの気持ちを優先させる事が出来たな。あとでパウエルに礼を言うとしよう。
「だそうですよ、陛下。ヴァレリア様のお気持ちを尊重させましょう。しかし猶予は一年。それでしっかり国として成り立つ事が出来なければ、元の形へ戻させてもらいましょう。」
「うむ。皆の者、賛同してくれた事感謝する。ではそのようによろしく頼む。」
我はホッと胸をなで下ろすと、席を立った。
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