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27. 味方
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「彼が国王になるわ!」
そう言ったヴァレリアに、お父様は一度は聞く耳を持たなかったのに、議会で認められたのか数日後にお許しになった。
(そんな…!ヴァレリアが女王陛下にならないなんて…!)
私はその話を自室で、ラドゥから聞いてかなり驚いた。
「ええ。この話題は私ども使用人達の間でも持ち切りです。そうなると私達はどうなるのかって。新しい女王陛下…いいえ、国王となられる方の下で働くのかと。」
そうよね。私達はどうするのかしら?このままここで暮らせばいいと思っていたのだけれど…そもそも、私は歴史でこの国は代々王家が治めてきたとあったわ。それを、明け渡すと言う事なのよね?ヴァレリアが妻であるとは言っても。ヴァレリアが女王陛下とならないのなら、政治はやはり、新しく国王陛下となられるヴァレリアの夫となる人がするのかしら。ヴァレリアは、何もやらないのかしら?
「それで、今日そのキシデル出身の者を連れてくるそうですよ。陛下にお会いになりに。」
「私も同席したいわ!どうにかならないかしら?」
「そう言うと思いまして、お伝えしておきましたよ。来られるのは、学校が終わってかららしいので、ヴェロニカ様も学院が終わり次第すぐに帰ってこれば間に合うと思いますよ。」
学院の教室へ行くと、アンジェラが私の手を取ってマリネスキュー様と一緒にいたのかその近くの席へと促して話し掛けてきた。
「ちょっと…大丈夫!?」
「え?」
大丈夫とは何かしら?
「ヴァレリア様の事、聞いたわよ。ご結婚するお相手が国王陛下になられるって…」
「あぁ。その事?私も、驚いているの。今日その彼を連れてくるそうだから、話を聞けると思うのだけれど…。」
「やぁ、お二人ともおはよう。ん?浮かない顔して…あ、例のアレかな?済まないね、そうなってしまったのは、父が助言したかららしいんだ。ヴァレリア様の性格を考えると、引かないだろうからと『一年やらせてみてはどうか』って。」
遅れて、後ろから声を掛けてきたのはアヴェレスク様だった。
「えっ!?」
「一年!?」
「あぁ。それで言い方は悪いが納得出来るんじゃないかって。多分、キシデル出身の奴が国王になってもついてくる奴がしっかり政治を舵取り出来なければ国は潰れてしまうからね。」
「…私のお父様は、一年ほどゆっくり別荘で過ごそうかと言われてたのはそう言う事?」
「多分そうじゃないかな?一年は何もしないでも暮らしていける程の備蓄を貴族達はしているはずだからね。もちろん、無い領地は申請すれば国から支援があるはずだよ。」
「自ら外れるという事ね?外されたわけではないのよね?」
「大丈夫さ。もし、一年経ってまともな国づくりをしているようなら、我々貴族の行く末もきちんと保障されるように書面を作って置かねばって息巻いていたよ。」
「ご、ご迷惑をお掛けして…。」
「なぜ?ヴェロニカは何も悪くないよ。でも、どうなるか正直分からないから不安だよね。その最中に攻め入られないよう対策も練っておかなければならないし。ヴェロニカ、もしどうしても行き場が無くなったら、うちを頼るといいよ。絶対に幸せにするから。」
アヴェレスク様に言われたから嬉しいけれど、どういう意味で言われたのかとてもドキドキとしているわ。
「え!?」
「まぁ!どさくさに紛れて何を仰っているのかしら?ヴェロニカ、アヴェレスク公爵家より、うちを頼りなさいな。アヴェレスク公爵家よりは王家からは遠ざかっているけれど、うちも力はまだまだあるわよ。」
「アンジェラは頼もしいね。でも、アンジェラは卒業したら僕がもらい受けたいからなぁ…そうしたら、侯爵家の僕の家じゃ少し弱いかもね。それだったらやはりニコライに頼むのがいいよ。」
「ま…!な…何を言っているのよ!と、とにかく、ヴェロニカの味方って事よ!」
「そうだね。それは間違いないね。」
「ああ。いつでも傍にいるよ。」
アヴェレスク様の言葉は、どう受け取ればいいのか最近迷う事ばかりよ。でも何かあった時は、頼りたいと思ってしまっているわ。
味方と言ってくれたアンジェラにとても心強いと思ったし、こういう不安な時に勇気を分けてくれる友人って本当に有難いわ。
そう言ったヴァレリアに、お父様は一度は聞く耳を持たなかったのに、議会で認められたのか数日後にお許しになった。
(そんな…!ヴァレリアが女王陛下にならないなんて…!)
私はその話を自室で、ラドゥから聞いてかなり驚いた。
「ええ。この話題は私ども使用人達の間でも持ち切りです。そうなると私達はどうなるのかって。新しい女王陛下…いいえ、国王となられる方の下で働くのかと。」
そうよね。私達はどうするのかしら?このままここで暮らせばいいと思っていたのだけれど…そもそも、私は歴史でこの国は代々王家が治めてきたとあったわ。それを、明け渡すと言う事なのよね?ヴァレリアが妻であるとは言っても。ヴァレリアが女王陛下とならないのなら、政治はやはり、新しく国王陛下となられるヴァレリアの夫となる人がするのかしら。ヴァレリアは、何もやらないのかしら?
「それで、今日そのキシデル出身の者を連れてくるそうですよ。陛下にお会いになりに。」
「私も同席したいわ!どうにかならないかしら?」
「そう言うと思いまして、お伝えしておきましたよ。来られるのは、学校が終わってかららしいので、ヴェロニカ様も学院が終わり次第すぐに帰ってこれば間に合うと思いますよ。」
学院の教室へ行くと、アンジェラが私の手を取ってマリネスキュー様と一緒にいたのかその近くの席へと促して話し掛けてきた。
「ちょっと…大丈夫!?」
「え?」
大丈夫とは何かしら?
「ヴァレリア様の事、聞いたわよ。ご結婚するお相手が国王陛下になられるって…」
「あぁ。その事?私も、驚いているの。今日その彼を連れてくるそうだから、話を聞けると思うのだけれど…。」
「やぁ、お二人ともおはよう。ん?浮かない顔して…あ、例のアレかな?済まないね、そうなってしまったのは、父が助言したかららしいんだ。ヴァレリア様の性格を考えると、引かないだろうからと『一年やらせてみてはどうか』って。」
遅れて、後ろから声を掛けてきたのはアヴェレスク様だった。
「えっ!?」
「一年!?」
「あぁ。それで言い方は悪いが納得出来るんじゃないかって。多分、キシデル出身の奴が国王になってもついてくる奴がしっかり政治を舵取り出来なければ国は潰れてしまうからね。」
「…私のお父様は、一年ほどゆっくり別荘で過ごそうかと言われてたのはそう言う事?」
「多分そうじゃないかな?一年は何もしないでも暮らしていける程の備蓄を貴族達はしているはずだからね。もちろん、無い領地は申請すれば国から支援があるはずだよ。」
「自ら外れるという事ね?外されたわけではないのよね?」
「大丈夫さ。もし、一年経ってまともな国づくりをしているようなら、我々貴族の行く末もきちんと保障されるように書面を作って置かねばって息巻いていたよ。」
「ご、ご迷惑をお掛けして…。」
「なぜ?ヴェロニカは何も悪くないよ。でも、どうなるか正直分からないから不安だよね。その最中に攻め入られないよう対策も練っておかなければならないし。ヴェロニカ、もしどうしても行き場が無くなったら、うちを頼るといいよ。絶対に幸せにするから。」
アヴェレスク様に言われたから嬉しいけれど、どういう意味で言われたのかとてもドキドキとしているわ。
「え!?」
「まぁ!どさくさに紛れて何を仰っているのかしら?ヴェロニカ、アヴェレスク公爵家より、うちを頼りなさいな。アヴェレスク公爵家よりは王家からは遠ざかっているけれど、うちも力はまだまだあるわよ。」
「アンジェラは頼もしいね。でも、アンジェラは卒業したら僕がもらい受けたいからなぁ…そうしたら、侯爵家の僕の家じゃ少し弱いかもね。それだったらやはりニコライに頼むのがいいよ。」
「ま…!な…何を言っているのよ!と、とにかく、ヴェロニカの味方って事よ!」
「そうだね。それは間違いないね。」
「ああ。いつでも傍にいるよ。」
アヴェレスク様の言葉は、どう受け取ればいいのか最近迷う事ばかりよ。でも何かあった時は、頼りたいと思ってしまっているわ。
味方と言ってくれたアンジェラにとても心強いと思ったし、こういう不安な時に勇気を分けてくれる友人って本当に有難いわ。
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