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25. ヴァレリアの結婚相手
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「私、卒業したら結婚したい人がいるの。だから、その人が国王になるわ。ヴェロニカも、よろしくね。」
卒業があと一ヶ月に迫った日、ヴァレリアは久し振りに宮廷に帰って来て言った。
今は夕食で、お父様と三人久々に食事を囲んでいる。
「なんだって!?どんな奴だ!?」
お父様がスープを吹き出し、咳き込みながらそう声を出すと、給仕が慌てて片付けに徹しているわ。
私も、驚いてヴァレリアを見つめたわ。
「え?お父様ったら何を言っているのかしら。私の友人の内の一人よ。だから、悪い人ではないわ。いつも同じ時を過ごしていたら自然とね。それに友人を紹介しようと連れて来ても、中に入れてくれなかったじゃない。だから紹介も出来なかったのよ!?」
そう言うとお父様は、ヴァレリアを見つめ一つ深い息を吐いて言った。
「だからお前は、街で暮らしたいと言ったのか?私への反抗か?」
「あらお父様。反抗なわけないでしょう?ただ、寂しく思ったのはそうよ。友人を自分の部屋へと招き入れる事が出来ないのだもの。でもそれとこれとは別よ。遅く家へ帰るのが、単純に嫌だっただけ。それでね、いろいろと考えたのだけれと、彼が国王になるわ。いいでしょ?」
こ、国王に!?私も聞いていて、口を挟んでいいものか躊躇ってしまう内容だわ。
いつも優しいお父様も、さすがに声を荒げているし。
「ならん!何を言っておるのか分かっているのか?この国は、代々我々の正統なる血筋が受け継いできたのだ。勝手に替えるわけにはいかん!」
「お父様…。よくお考えになって?一度彼に会って欲しいの。ね?」
「その彼、とは友人と言ったな。報告では、仲がいい男友達は平民だと聞いておる。まさか、そいつか?」
「…報告、ね。まぁ私は王族だからある程度監視がいるのは仕方ないけれど。んー、その報告、余程の間抜けではないなら合っているのではなくて?アントンよ。でも正確には平民というか、オルフェイに住んでいる人よ。」
「な、何!?…ダメだだめだ!キシデルの血統という事だろう?ダメに決まっておる!そんな奴がこのモルドバコドルの正統なる血筋であるヴァレリアの婿となるなんて…キシデルの国に乗っ取られたも同然じゃないか!」
「お父様?変な事を仰らないで!乗っ取るだなんて…。しかも血統だなんて。たまたま私は王女として生まれて来ただけよ。人は誰しも平等であるべきよ。」
「お前は…!教会学校では確かにそんな教えもあるだろうが、根本は王族が偉いに決まっておろうが!国の民を守っているのは国王である王家であるぞ!?」
「その考えはもう古いのですよ、お父様!だって、キシデルから逃げ出して来た彼らに王家は手を差し伸べてはあげられなかったのでしょう?」
「前国王であるお父様は、住む事を許可したではないか!」
「でも、それだけです。仕事を斡旋する事も、支援する事もしなかったのですよね?実際に彼らは、自分達で努力し支え合ってきたと知りました。」
「仕方ないだろう?元々、この国民が納めた税だ。それを彼らに使う義理はない!」
「新しくこの国民となったのですよ、守る義務があるはずですわ。」
「…何が言いたい?」
「ですから、義務を果たせなかった王家は、優秀でもなく、平民と同じ人。つまり、全ての人々が同じ一人の人として平等なのですわ。」
「馬鹿馬鹿しい!」
「だから、私が王女にならずとも、結婚したら夫となる彼が国王となっても何ら変わりはないですわ。」
「話にならんな。」
「どうしてですか!?」
「ヴァレリアよ、国民の声に耳を傾けるのはとても大事だ。教会学校で学んだ事も大切な事もあっただろう。しかし、お前はどうあっても王族なのだよ。庶民とは背負っている大きさが違うのだ。」
「お父様!?」
「お前は、王女となる。卒業したら、結婚相手は私が決める。血統をよく見極めんとな。以上だ。」
お父様は、食事がまだ済んでいないのにそう言うと席を立って部屋を出て行ってしまった。
ヴァレリアも、『もう!分からず屋!』と言って席を立って、部屋に戻ってしまった。
私は、今聞いた話をどう受け止めれば良いのかとそればかり考えていて、出された食事の味はいつもと同じ美味しいはずなのに、よく分からなかった。
卒業があと一ヶ月に迫った日、ヴァレリアは久し振りに宮廷に帰って来て言った。
今は夕食で、お父様と三人久々に食事を囲んでいる。
「なんだって!?どんな奴だ!?」
お父様がスープを吹き出し、咳き込みながらそう声を出すと、給仕が慌てて片付けに徹しているわ。
私も、驚いてヴァレリアを見つめたわ。
「え?お父様ったら何を言っているのかしら。私の友人の内の一人よ。だから、悪い人ではないわ。いつも同じ時を過ごしていたら自然とね。それに友人を紹介しようと連れて来ても、中に入れてくれなかったじゃない。だから紹介も出来なかったのよ!?」
そう言うとお父様は、ヴァレリアを見つめ一つ深い息を吐いて言った。
「だからお前は、街で暮らしたいと言ったのか?私への反抗か?」
「あらお父様。反抗なわけないでしょう?ただ、寂しく思ったのはそうよ。友人を自分の部屋へと招き入れる事が出来ないのだもの。でもそれとこれとは別よ。遅く家へ帰るのが、単純に嫌だっただけ。それでね、いろいろと考えたのだけれと、彼が国王になるわ。いいでしょ?」
こ、国王に!?私も聞いていて、口を挟んでいいものか躊躇ってしまう内容だわ。
いつも優しいお父様も、さすがに声を荒げているし。
「ならん!何を言っておるのか分かっているのか?この国は、代々我々の正統なる血筋が受け継いできたのだ。勝手に替えるわけにはいかん!」
「お父様…。よくお考えになって?一度彼に会って欲しいの。ね?」
「その彼、とは友人と言ったな。報告では、仲がいい男友達は平民だと聞いておる。まさか、そいつか?」
「…報告、ね。まぁ私は王族だからある程度監視がいるのは仕方ないけれど。んー、その報告、余程の間抜けではないなら合っているのではなくて?アントンよ。でも正確には平民というか、オルフェイに住んでいる人よ。」
「な、何!?…ダメだだめだ!キシデルの血統という事だろう?ダメに決まっておる!そんな奴がこのモルドバコドルの正統なる血筋であるヴァレリアの婿となるなんて…キシデルの国に乗っ取られたも同然じゃないか!」
「お父様?変な事を仰らないで!乗っ取るだなんて…。しかも血統だなんて。たまたま私は王女として生まれて来ただけよ。人は誰しも平等であるべきよ。」
「お前は…!教会学校では確かにそんな教えもあるだろうが、根本は王族が偉いに決まっておろうが!国の民を守っているのは国王である王家であるぞ!?」
「その考えはもう古いのですよ、お父様!だって、キシデルから逃げ出して来た彼らに王家は手を差し伸べてはあげられなかったのでしょう?」
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「でも、それだけです。仕事を斡旋する事も、支援する事もしなかったのですよね?実際に彼らは、自分達で努力し支え合ってきたと知りました。」
「仕方ないだろう?元々、この国民が納めた税だ。それを彼らに使う義理はない!」
「新しくこの国民となったのですよ、守る義務があるはずですわ。」
「…何が言いたい?」
「ですから、義務を果たせなかった王家は、優秀でもなく、平民と同じ人。つまり、全ての人々が同じ一人の人として平等なのですわ。」
「馬鹿馬鹿しい!」
「だから、私が王女にならずとも、結婚したら夫となる彼が国王となっても何ら変わりはないですわ。」
「話にならんな。」
「どうしてですか!?」
「ヴァレリアよ、国民の声に耳を傾けるのはとても大事だ。教会学校で学んだ事も大切な事もあっただろう。しかし、お前はどうあっても王族なのだよ。庶民とは背負っている大きさが違うのだ。」
「お父様!?」
「お前は、王女となる。卒業したら、結婚相手は私が決める。血統をよく見極めんとな。以上だ。」
お父様は、食事がまだ済んでいないのにそう言うと席を立って部屋を出て行ってしまった。
ヴァレリアも、『もう!分からず屋!』と言って席を立って、部屋に戻ってしまった。
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