【完結】双子の国の行く末〜妹ヴェロニカの見た景色〜

まりぃべる

文字の大きさ
上 下
23 / 40

23. 早期学院卒業する者達

しおりを挟む
 とうとう十年が経ち、十八歳となりました。

 学年の三分の二が、結婚をする為に辞めたり、見習いとして本格的に働き始める為に辞めていきました。

 早期に学院を辞めると言っても、それなりの課程を合格している者は〝早期学院卒業〟資格を得る事が出来、早期卒業証書がもらえる。証書にも〝途中までの課程を学んだ事を証する〟等の文言がいただける。
宮廷学院は十年しっかり通って卒業する事に重きを置いていない。もちろん、学年を重ねる毎により専門的な選択科目が増えてくるので、長く通っていればその分知識が増える。どちらを選ぶのかは、将来をよく考えて選ぶのだ。

 残りの人達は、宮廷で働くのを目標にしている者や、きちんと卒業するのを目標にしている者もいます。そんな生徒と私はあと少し、共に学び卒業を目指します。

「どんどん減ったわね。」

「そうね。寂しいわね。でも、仕方ないものね。」

 見習いとして働き出した人達は主に宮廷で勤めている。


 今日はその人達を見に行く日。


「きっと頑張っているのね。」

「そうね。王家の為に、国民の為に少しでも早くから働こうとしてくれているのね。」

 授業の合間に見習いとして実務を学んでいた人達はそれなりにいて、卒業まで他の知識も学んでから見習いとして働く者もいるし、一足早く集中して仕事に就く人達もいた。

 そして今日は、先生引率の元同じ学年の皆と一緒に一足早く見習いになった人達を激励する目的で訪れる。



 騎士団へ。

「さぁ、皆さん。ここが騎士団本部です。これまで一緒に過ごしていた仲間を、激励しましょう。」

「「「はい。」」」

 騎士団本部は、宮廷の敷地内にある。建物の入り口には私達と共に学んでいた人達で、本格的に入団した十二人が並んでいた。

「宮廷学院の皆さん、おはようございます。皆さんとはこれからも少なからず顔を合わせる場面があるかと思います。将来、我々と顔を合わす機会がない子息子女も、国の為に働いている騎士がいるんだと覚えてもらえたら我々のやっている意義があるというものだ。特にヴェロニカ様、あなたのお力のおかげだと聞いている。感謝申し上げます。」

「えっ!?」

 私は、騎士団長が話しているのを聞いていたのだけれど、いきなり自分の名前が呼ばれたので驚いてしまった。

「きっと、入学式の日に皆に誘った事ではなくて?」

 ボソリと、隣にいたアンジェラが私に教えてくれた。

「『ヴェロニカ様が、選択授業を一緒に受けようと言って下さったから仕方ないと思って初級だけでもと思って受けた。』そんな理由でも、選択してくれた生徒が増えた事は嬉しく思った。確かに中級の選択授業希望者は初級よりは減ったが、それでも初めはそんな軽い理由だった生徒も、中級を続け、なんと見習いとして入団してくれた生徒が半数いてね。有難い限りだよ。」

「「「おおー。」」」

「良かったわね。ヴェロニカが声を掛けてくれたおかげだって。」

「凄いね。ヴェロニカが小さくても気持ちを込めてお願いしたおかげだよ。俺も、いろんな奴らと手合わせ出来て楽しかったもんな。」

 アンジェラが言ってくれたあと、アヴェレスク様も私達の傍にいつの間にかいてそう言ってくれた。

「そういえばニコラエは騎士団に入団…するの?」

 アンジェラが、後ろから声を掛けてきたニコラエ様に聞いているわ。私も、あんなにニコラエ様が騎士団の将来に繋がる選択科目の事を気にしていたから、入団するのかと私も、思っていた。
ニコラエ様は上にお兄様がいて、すでに家督を継ぐ為にニコラエ様のお父様の下で学んでいるらしいから。

「うーん。どうだろうね。俺はまずヴェロニカや皆と卒業を目指しているかな。」

「なんだい?アンジェラはニコラエが気になるの?僕の事は気にしてくれないのか?」

「いいえ、只単に気になっただけよ。セルゲイの事?気にならない事もないけれど…貴方は嫡男じゃなくって?」

「お?よく知ってくれていて嬉しいよ。そうさ、僕は卒業したら跡を継ぐ為に領地へ引き籠もらないといけない。もし良かったらアンジェラ、着いてきてくれると嬉しいな。アンジェラは普通の令嬢とは違う。しっかりと自分の意見を持ち、王女であるヴェロニカにもしっかりと習ってきた事を教えていて、気丈に振る舞っている。僕は好ましいと思うよ。それに見ていて飽きないからね。」

「もう!からかいましたのね!」

 私は、マリネスキュー様がよくアヴェレスク様やアンジェラに絡んでいるなとは思っていましたが、アンジェラの事が好きだったのね!と思っていたのだけれど、今の言葉はどう捉えたらいいのでしょうね。アンジェラも、初めは顔を赤らめて聞いていたけれど見ていて飽きないと言われて、プンスカと怒り出しましたわ。そうやって揶揄わなければ、お二人はお似合いかと思うのですけれども。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

【完結】お荷物王女は婚約解消を願う

miniko
恋愛
王家の瞳と呼ばれる色を持たずに生まれて来た王女アンジェリーナは、一部の貴族から『お荷物王女』と蔑まれる存在だった。 それがエスカレートするのを危惧した国王は、アンジェリーナの後ろ楯を強くする為、彼女の従兄弟でもある筆頭公爵家次男との婚約を整える。 アンジェリーナは八歳年上の優しい婚約者が大好きだった。 今は妹扱いでも、自分が大人になれば年の差も気にならなくなり、少しづつ愛情が育つ事もあるだろうと思っていた。 だが、彼女はある日聞いてしまう。 「お役御免になる迄は、しっかりアンジーを守る」と言う彼の宣言を。 ───そうか、彼は私を守る為に、一時的に婚約者になってくれただけなのね。 それなら出来るだけ早く、彼を解放してあげなくちゃ・・・・・・。 そして二人は盛大にすれ違って行くのだった。 ※設定ユルユルですが、笑って許してくださると嬉しいです。 ※感想欄、ネタバレ配慮しておりません。ご了承ください。

あなたが残した世界で

天海月
恋愛
「ロザリア様、あなたは俺が生涯をかけてお守りすると誓いましょう」王女であるロザリアに、そう約束した初恋の騎士アーロンは、ある事件の後、彼女との誓いを破り突然その姿を消してしまう。 八年後、生贄に選ばれてしまったロザリアは、最期に彼に一目会いたいとアーロンを探し、彼と再会を果たすが・・・。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

【完結】脇役令嬢だって死にたくない

こな
恋愛
自分はただの、ヒロインとヒーローの恋愛を発展させるために呆気なく死ぬ脇役令嬢──そんな運命、納得できるわけがない。 ※ざまぁは後半

【完結】旦那様、お飾りですか?

紫崎 藍華
恋愛
結婚し新たな生活に期待を抱いていた妻のコリーナに夫のレックスは告げた。 社交の場では立派な妻であるように、と。 そして家庭では大切にするつもりはないことも。 幸せな家庭を夢見ていたコリーナの希望は打ち砕かれた。 そしてお飾りの妻として立派に振る舞う生活が始まった。

【完結】100日後に処刑されるイグワーナ(悪役令嬢)は抜け毛スキルで無双する

みねバイヤーン
恋愛
せっかく悪役令嬢に転生したのに、もう断罪イベント終わって、牢屋にぶち込まれてるんですけどー。これは100日後に処刑されるイグワーナが、抜け毛操りスキルを使って無双し、自分を陥れた第一王子と聖女の妹をざまぁする、そんな物語。

処理中です...