【完結】双子の国の行く末〜妹ヴェロニカの見た景色〜

まりぃべる

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 翌週、学院へ行くと遠巻きにではあるが見られている感があった。
なんだか、注目されるのは苦手な為、どうしようと不安になり俯きながら門をくぐった。
入学式の日は、すぐにアンジェラに話し掛けられたからあの時は気付きもしなかった。あの日も見られていたのかしら。

「大丈夫ですか?ついて行きましょうか?」

 ラドゥが俯いた私にそう声を掛けたので、これではいけないと思い顔を上げた。

「ラドゥ、ありがとう。心配かけてごめんなさい。大丈夫よ、行ってきます。」

 そう言って笑いかけると、後ろからポンと肩を叩かれた。

「ヴェロニカ、おはよう!一緒に行きましょう!」

「アンジェラ!おはよう!」

「どうしたの?浮かない顔して。大丈夫?」

「ええ。…なんだか、見られているような気がしたの。」

「なぁんだ!そんな事?あなたは王女なんだもの。見られるのは当たり前よ。まだここは庶民がいないだけ好奇な目では見られていないと思うわよ。単純に憧れだと思うわ。みんな、ヴェロニカが気になるのね。手を振ってあげればいいのよ、ほら!こんな風にね!」

 そう言ってくれたアンジェラは、視線を感じた先に手を振った。

「ふふ。アンジェラってばすごいのね。私あまり人の目に慣れていないのよ。注目されるのはちょっと…。」

「あら、よかったじゃない!練習が出来て。じゃあここで慣れていきましょ!みんな同じ年齢なんだもの。ちょっと失敗した位だったら笑って許してくれるわ!さ、教室へ行きましょう。ええと…こっちね。」

 クラスは各学年一クラスで、全員が入れるように広い教室となっていた。こんな広くて聞こえるのかしらと思ったけれど、先生が立つ場所は下で、そこを囲むように階段状に上へと上がっていく毎に私達生徒の机と椅子があった。
席は決まってないみたいで、私達は前の方に座った。


「やぁ、おはよう。」
「おはよう、君達。」

 見ると、アヴェレスク様がマリネスキュー様と一緒にいて声を掛けてきた。

「まぁ。いつの間に仲良くなったんです?」

 アンジェラが聞いている。そうね、昨日はアヴェレスク様、マリネスキュー様に声を掛けられて嫌そうにしていたものね。

「いや、そういうわけではないんだけれどね…。」

「何言っているんだい?男の友情っていうのは、目的が一緒であれば直ぐ仲が深まるものさ。」

 なんだか、アヴェレスク様とマリネスキュー様は真逆の表情で言われているわ。
でも、友人が増えるのは嬉しいものよね!

「それはそうと、ヴェロニカが声掛けしてくれたから、選択科目を受ける生徒が増えたみたいだよ。先生も喜んでいたよ。ヴェロニカのおかげだね!」

「まぁ!そうですか。よかったですわ!」

「すごいわ!ヴェロニカのおかげね!あなたが真摯に気持ちを伝えたからね!」

 そう褒められると、私にもやれる事があるんだと少しだけ自信が付いたわ。本当に良かった。
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