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7. 慰問と訪問
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「ねぇ、ヴァレリア。来週、孤児院に訪問に行くの。一緒に行かない?」
私は、宮廷へと帰ったその日、ヴァレリアの部屋に訪れてそう言った。
「孤児院?うーん…遠慮しとく。子供の私が行っても、何もしてあげられる事なんてないわよ。…もう少し、大きくなったら考えてみるわ。王族として、慰問へ行くのは立派なお仕事だものね。」
「それなんだけど…おじい様とおばあ様が言っていたのだけれど、慰問って言うと国を統べる王族なのに国民の全ての人へ幸せを与えられてないって自ら言ってるみたいらしいわ。だから敢えて訪問って言っているのですって。」
「ふーん…まぁ、本当の事だから仕方ないんじゃないの?貧しい人がいるのは、隠す事の出来ない事実なんだし。訪問なんて格好付けて言うものでは無いわ。ありのままを受け止めないと。」
「でも、不幸かどうかは、他人である私達が決めるものでは…」
「あーはいはい!そうよね!じゃあ訪問、ヴェロニカ一人でいってらっしゃいな!話、聞かせてちょうだいね!」
ヴァレリアはそう言ったの。その考えも分からなくはないけれど…。
そう思い悩みながら一週間が過ぎて、おばあ様と一緒に馬車に乗って孤児院に向かっています。
おばあ様に、ヴァレリアに言われた事を話すと、頷いて言われました。
「そうなのね。ヴァレリアの言う事も一理あるわ。大きな事は出来ないかもしれない。でも、必ずヴェロニカだけにしか出来ない事もあるわよ。それに、いろいろな考えがあるって分かって勉強になったわね。ヴェロニカと同じように考えている人が全てではないの。立場によって考え方は変わるのよ。それから…ヴェロニカにとって訪問は楽しい事ばかりではないかも知れないわ。でもそれも学びであるの。しっかり心に受け止めて、飲み込めるようになったら成長するわ。さぁ、今日は楽しみましょう!」
馬車を降りると、目の前には教会があって隣には教会学校があった。それがヴァレリアが通う学校なのね。
その奥にも木で出来た建物があって、そこが孤児院なのだとか。
そこで、今日は炊き出しをする。野菜のスープとパンを配るらしい。おばあ様や他の人達はそれを作るらしく、私はその間子供達と遊ぶ事になった。
子供達がいる前で少し緊張したけれど、自己紹介をする事にした。子供達は、焦げ茶色や緑色の髪の子も半分ずつ位いる。
「私は、ヴェロニカと言います!皆さん、よろしくお願いします。」
「「はーい!」」
「何して遊びますかー?」
「じゃあ鬼ごっこ!」
「え?どんな遊びなのですか?」
「え?知らないのー?」
「じゃあ遊べないじゃん!」
「つまんなーい!」
「いこ!」
子供達は、去って行ってしまいました。だって、私は他の子供と遊んだ事がないのです。だから、おにごっこというものが分かりません。せっかくお仕事を頼まれたのに、遊んであげられなくて、凹んでしまいます。
と、私が途方にくれていると一人の同じ位の年齢の女の子が近づいて来て言いました。
「あんた、何しに来たの?こんな事して、自分は優しい、偉いんだって思いたくてやってんの?」
と、言われました。その子は緑色の髪で、肩までと短い長さです。そして、腕を脇の所で組んでふんぞり返っています。
「そんな事…!」
「あのね、知らないようだから教えてあげるけど、私達はここで暮らしてんの!毎日ね!だから、月にたった一回こんなのやってもらったってちっとも嬉しくないのよ!それに、見るからに裕福そうな服着て、話し方だってそう。見せびらかせに来ないでちょうだい!鬼ごっこの遊びも知らないって、何なの!?この国の貴族サマはそんな庶民の遊びなんてやらないっていうの!?」
あまりにその女の子がギャンギャン私に言ってくるから、さっき鬼ごっこをしに言った子達が戻ってきたの。
「こら!オリア!また何か言ってるの?すみません、ヴェロニカ様。オリアが酷い事を言ったのですよね。オリアはひねくれ者なんです。ほら、オリア!そうやって突っかかるの止めなさい!」
「ふん!」
歳上の子がそのオリアって子を注意してくれると、オリアはどこかへ行ってしまった。
「すみません…あの子、いつもあんな感じなのです。」
「…いいえ。確かにそうですよね。私、遊ぶ友達が今までいなくて。もしよかったら、おにごっこ、教えてもらえませんか?」
私はオリアに言われ、正直かなり悲しくなったけれど、これだけでは終われないと思い切って言ってみた。
「いいよー!一緒にやろ?」
「なんだ?友達いないのか?じゃあ、おれがなってやるよ!」
「ぼくもー!」
「わたしもー!」
「ありがとう!嬉しいですわ!」
こうして、私はおにごっこという遊びを教えてもらって堪能し、子供達に絵本も読み聞かせた。
いろいろあったけれど、初めての訪問はかなり勉強になったわ。おばあ様の言った事がなんとなく分かった気がしたの。
私は、宮廷へと帰ったその日、ヴァレリアの部屋に訪れてそう言った。
「孤児院?うーん…遠慮しとく。子供の私が行っても、何もしてあげられる事なんてないわよ。…もう少し、大きくなったら考えてみるわ。王族として、慰問へ行くのは立派なお仕事だものね。」
「それなんだけど…おじい様とおばあ様が言っていたのだけれど、慰問って言うと国を統べる王族なのに国民の全ての人へ幸せを与えられてないって自ら言ってるみたいらしいわ。だから敢えて訪問って言っているのですって。」
「ふーん…まぁ、本当の事だから仕方ないんじゃないの?貧しい人がいるのは、隠す事の出来ない事実なんだし。訪問なんて格好付けて言うものでは無いわ。ありのままを受け止めないと。」
「でも、不幸かどうかは、他人である私達が決めるものでは…」
「あーはいはい!そうよね!じゃあ訪問、ヴェロニカ一人でいってらっしゃいな!話、聞かせてちょうだいね!」
ヴァレリアはそう言ったの。その考えも分からなくはないけれど…。
そう思い悩みながら一週間が過ぎて、おばあ様と一緒に馬車に乗って孤児院に向かっています。
おばあ様に、ヴァレリアに言われた事を話すと、頷いて言われました。
「そうなのね。ヴァレリアの言う事も一理あるわ。大きな事は出来ないかもしれない。でも、必ずヴェロニカだけにしか出来ない事もあるわよ。それに、いろいろな考えがあるって分かって勉強になったわね。ヴェロニカと同じように考えている人が全てではないの。立場によって考え方は変わるのよ。それから…ヴェロニカにとって訪問は楽しい事ばかりではないかも知れないわ。でもそれも学びであるの。しっかり心に受け止めて、飲み込めるようになったら成長するわ。さぁ、今日は楽しみましょう!」
馬車を降りると、目の前には教会があって隣には教会学校があった。それがヴァレリアが通う学校なのね。
その奥にも木で出来た建物があって、そこが孤児院なのだとか。
そこで、今日は炊き出しをする。野菜のスープとパンを配るらしい。おばあ様や他の人達はそれを作るらしく、私はその間子供達と遊ぶ事になった。
子供達がいる前で少し緊張したけれど、自己紹介をする事にした。子供達は、焦げ茶色や緑色の髪の子も半分ずつ位いる。
「私は、ヴェロニカと言います!皆さん、よろしくお願いします。」
「「はーい!」」
「何して遊びますかー?」
「じゃあ鬼ごっこ!」
「え?どんな遊びなのですか?」
「え?知らないのー?」
「じゃあ遊べないじゃん!」
「つまんなーい!」
「いこ!」
子供達は、去って行ってしまいました。だって、私は他の子供と遊んだ事がないのです。だから、おにごっこというものが分かりません。せっかくお仕事を頼まれたのに、遊んであげられなくて、凹んでしまいます。
と、私が途方にくれていると一人の同じ位の年齢の女の子が近づいて来て言いました。
「あんた、何しに来たの?こんな事して、自分は優しい、偉いんだって思いたくてやってんの?」
と、言われました。その子は緑色の髪で、肩までと短い長さです。そして、腕を脇の所で組んでふんぞり返っています。
「そんな事…!」
「あのね、知らないようだから教えてあげるけど、私達はここで暮らしてんの!毎日ね!だから、月にたった一回こんなのやってもらったってちっとも嬉しくないのよ!それに、見るからに裕福そうな服着て、話し方だってそう。見せびらかせに来ないでちょうだい!鬼ごっこの遊びも知らないって、何なの!?この国の貴族サマはそんな庶民の遊びなんてやらないっていうの!?」
あまりにその女の子がギャンギャン私に言ってくるから、さっき鬼ごっこをしに言った子達が戻ってきたの。
「こら!オリア!また何か言ってるの?すみません、ヴェロニカ様。オリアが酷い事を言ったのですよね。オリアはひねくれ者なんです。ほら、オリア!そうやって突っかかるの止めなさい!」
「ふん!」
歳上の子がそのオリアって子を注意してくれると、オリアはどこかへ行ってしまった。
「すみません…あの子、いつもあんな感じなのです。」
「…いいえ。確かにそうですよね。私、遊ぶ友達が今までいなくて。もしよかったら、おにごっこ、教えてもらえませんか?」
私はオリアに言われ、正直かなり悲しくなったけれど、これだけでは終われないと思い切って言ってみた。
「いいよー!一緒にやろ?」
「なんだ?友達いないのか?じゃあ、おれがなってやるよ!」
「ぼくもー!」
「わたしもー!」
「ありがとう!嬉しいですわ!」
こうして、私はおにごっこという遊びを教えてもらって堪能し、子供達に絵本も読み聞かせた。
いろいろあったけれど、初めての訪問はかなり勉強になったわ。おばあ様の言った事がなんとなく分かった気がしたの。
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