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3. おばあさまとヴァレリアと私
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あれはいつの日だったか。
部屋がヴァレリアと別々になってしばらくしてからだったかしら。
まだ、私が誘えば三回に一回位は一緒におじい様とおばあ様の邸へ行った時だわ。
「よく来ましたね。ヴァレリアも久し振りね。いつも待っていますのよ。」
「おばあさま、お久しぶりです。でも、そんなに変わっていないのだからそんな頻繁に来なくても何も変わらないでしょう?ここは遊ぶものもないし。」
「まぁ、ヴァレリアったら。日々の暮らしぶりを伺いたいのですよ。だから、私に何をして過ごしているのか教えてちょうだい?遊んでいるだけではすぐに時間が過ぎてしまうでしょう?」
そうおばあ様はおっしゃいます。私達と離れて暮らしているから不自由はないか、何が楽しいかを知りたいのだと思います。
でも、ヴァレリアはあまりお茶会は好きではないみたいで面倒だと言うのです。
「おばあさま?私達は王女ですのでそれなりに優雅な時間を過ごさせてもらっているので不自由なんてあるわけないですわ!」
「ふふふ。そう?そうね。でも、ヴァレリアがして欲しい事と、ヴァレリア王女にして差し上げる事は違いますからね。」
そのように、その頃の私達には難しい言葉をくれました。
「あ!あの紫色の花、綺麗ですわ!」
庭園が見える四阿でおばあ様とヴァレリアと私達でお茶会をしていた時、近くの花を見てヴァレリアが言ったのです。
おじい様はその日は居ませんでした。
「ヴァレリア、気に入ったのかしら?それなら差し上げるわよ。ヴェロニカはどう?」
「欲しい!取っていい?頭に付けたいわ!」
ヴァレリアはおばあ様にそう言われて駆け出して花を取ってこようとします。後ろに控えていた侍女が一人、さっと動いてついて行き花を摘んでいます。
「ほら、ヴェロニカもほしいでしょ?」
「私は…」
私も、その花を綺麗だとは思ったのだけれど取ろうとは思っていませんでした。でも、ヴァレリアが耳の上にその花を差すととても素敵で、私もしたくなったのです。けれども…と悩んでいた時に、ヴァレリアがいつの間にか侍女に頼んで私にも花を差してくれていました。
「ほら!どお?似合うわね!」
「…ありがとう。」
「おや?どうしたの、ヴェロニカ。なんだか浮かない顔ね。話してごらん?」
「…摘んだら、すぐにしおれちゃう。可哀想。でも、頭につけているヴァレリアも綺麗だと思ったの。だからやりたいと思ったの。そうすると、どちらがよかったのか分からなくなって…。」
「えーヴェロニカそんな事考えていたの?私達は王族なのだからやりたい事をやっていいのよ?」
「あら、ヴァレリア、それは違いますよ。…ヴェロニカは心優しいのねぇ。でも、摘んでしまう事は、この花にとったらそうかもしれないけれど、この花達にとったらそうでもないのよ?次には、もっと大きな花とか、色の濃い花とかより良いものにしようとまた花を咲かせるのよ?それに、この花は食べたり飲んだりも出来るし、押し花にしてもいいわね。その後まで考えるのも大切ね。」
おばあ様は私の手を取って言ってくれました。
「それにね、ヴァレリア?王族だからなんでもやりたい事をやっていいわけではないのよ?それをもう少し大きくなったら学んでいきましょうね?」
今度はヴァレリアの方を向いて、ヴァレリアの手を握っておばあ様は言われました。
「えー王族だから偉いでしょう?何をしてもいいでしょう?」
「そうね、偉いのよ。でもだからと言って権力を振りかざすのはいけないのよ。暴君になってしまったら、民衆によって暴動が起きてしまうわ。だから、責任も伴ってくるの。難しいかしら?少しずつ、学んでいけばいいわよ。」
「ふーん…。」
ヴァレリアは釈然としない様子で返事をし、またお茶の席に戻って行ったわ。
それから少しして、ヴァレリアはおばあ様の所に誘ってもあまり来なくなったのよね。
その辺りから、ヴァレリアは意思が強いなぁと思ったけれど、それを咎めた方がよかったのかしら。
部屋がヴァレリアと別々になってしばらくしてからだったかしら。
まだ、私が誘えば三回に一回位は一緒におじい様とおばあ様の邸へ行った時だわ。
「よく来ましたね。ヴァレリアも久し振りね。いつも待っていますのよ。」
「おばあさま、お久しぶりです。でも、そんなに変わっていないのだからそんな頻繁に来なくても何も変わらないでしょう?ここは遊ぶものもないし。」
「まぁ、ヴァレリアったら。日々の暮らしぶりを伺いたいのですよ。だから、私に何をして過ごしているのか教えてちょうだい?遊んでいるだけではすぐに時間が過ぎてしまうでしょう?」
そうおばあ様はおっしゃいます。私達と離れて暮らしているから不自由はないか、何が楽しいかを知りたいのだと思います。
でも、ヴァレリアはあまりお茶会は好きではないみたいで面倒だと言うのです。
「おばあさま?私達は王女ですのでそれなりに優雅な時間を過ごさせてもらっているので不自由なんてあるわけないですわ!」
「ふふふ。そう?そうね。でも、ヴァレリアがして欲しい事と、ヴァレリア王女にして差し上げる事は違いますからね。」
そのように、その頃の私達には難しい言葉をくれました。
「あ!あの紫色の花、綺麗ですわ!」
庭園が見える四阿でおばあ様とヴァレリアと私達でお茶会をしていた時、近くの花を見てヴァレリアが言ったのです。
おじい様はその日は居ませんでした。
「ヴァレリア、気に入ったのかしら?それなら差し上げるわよ。ヴェロニカはどう?」
「欲しい!取っていい?頭に付けたいわ!」
ヴァレリアはおばあ様にそう言われて駆け出して花を取ってこようとします。後ろに控えていた侍女が一人、さっと動いてついて行き花を摘んでいます。
「ほら、ヴェロニカもほしいでしょ?」
「私は…」
私も、その花を綺麗だとは思ったのだけれど取ろうとは思っていませんでした。でも、ヴァレリアが耳の上にその花を差すととても素敵で、私もしたくなったのです。けれども…と悩んでいた時に、ヴァレリアがいつの間にか侍女に頼んで私にも花を差してくれていました。
「ほら!どお?似合うわね!」
「…ありがとう。」
「おや?どうしたの、ヴェロニカ。なんだか浮かない顔ね。話してごらん?」
「…摘んだら、すぐにしおれちゃう。可哀想。でも、頭につけているヴァレリアも綺麗だと思ったの。だからやりたいと思ったの。そうすると、どちらがよかったのか分からなくなって…。」
「えーヴェロニカそんな事考えていたの?私達は王族なのだからやりたい事をやっていいのよ?」
「あら、ヴァレリア、それは違いますよ。…ヴェロニカは心優しいのねぇ。でも、摘んでしまう事は、この花にとったらそうかもしれないけれど、この花達にとったらそうでもないのよ?次には、もっと大きな花とか、色の濃い花とかより良いものにしようとまた花を咲かせるのよ?それに、この花は食べたり飲んだりも出来るし、押し花にしてもいいわね。その後まで考えるのも大切ね。」
おばあ様は私の手を取って言ってくれました。
「それにね、ヴァレリア?王族だからなんでもやりたい事をやっていいわけではないのよ?それをもう少し大きくなったら学んでいきましょうね?」
今度はヴァレリアの方を向いて、ヴァレリアの手を握っておばあ様は言われました。
「えー王族だから偉いでしょう?何をしてもいいでしょう?」
「そうね、偉いのよ。でもだからと言って権力を振りかざすのはいけないのよ。暴君になってしまったら、民衆によって暴動が起きてしまうわ。だから、責任も伴ってくるの。難しいかしら?少しずつ、学んでいけばいいわよ。」
「ふーん…。」
ヴァレリアは釈然としない様子で返事をし、またお茶の席に戻って行ったわ。
それから少しして、ヴァレリアはおばあ様の所に誘ってもあまり来なくなったのよね。
その辺りから、ヴァレリアは意思が強いなぁと思ったけれど、それを咎めた方がよかったのかしら。
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