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2. ヴァレリアと私
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私ヴェロニカと姉のヴァレリアは、四歳位までは同じ部屋を使っていたと思います。
まぁ、姉といっても双子であるから、いつも一緒にいる自分の分身のような感じではありましたけれども。
それまで、普通であれば、王妃となる方が使われるはずの部屋を私達は使っていたのだそう。
日当たりも国王の部屋の次に良い部屋で、ベッドも大人三人寝ても余裕がありそうな大きさ。
あとはゆったりとした部屋の広さで、ふかふかの絨毯が部屋全体に敷いてあり、私達が座って遊ぶ場所にはさらに敷物をしいてあって、そこでよくおままごとや人形ごっこなどで遊んでいたと思うわ。
なぜ私達が王妃の部屋なのかは、お母様が私達を生んですぐ体調を崩されたから。
私達がいると静かに療養も出来ないので、侍女達が私達を違う部屋へ連れて行こうとしたらお母様が『この子達はこの部屋で。私が違う部屋へ移動するわ。』と言ったらしい。
お母様が希望したのは、王族専用居住区域の中では一番北側で日の当たらない暗い部屋だと。『静かに寝たいから、日当たりは必要ないの。』と言っていたみたい。
でも、日に日に弱り起き上がる事さえ出来なくなって一月も経たずに亡くなったらしいの。
抱いてもらった事はあったのかしら。
顔は、肖像画でしか分からない。
でもその代わり、ヴァレリアにはパトリツィア、私にはユーリアという乳母が付き、優しくお世話をしてもらったと思うわ。
だから、思ったより寂しくなかったわ。
いつもヴァレリアがいたし、何かあればユーリアがいつも抱き締めて頭を撫でてくれたもの。私が母だと思うのはユーリアね。年齢も、生きていれば母と同じような年頃だと思うわ。赤い髪がゆるゆると波立っていた女性で、気性も穏やかでいつもゆったりとした雰囲気だったわ。
四歳を過ぎると、ヴァレリアが言い出したのか、一人ずつの部屋にする事になった。私は、ヴァレリアと一緒でも良かったのだけれど、『そろそろ一人になりたい時もあるでしょ?それにここは亡きお母さまの部屋よ。私達がずっと使わせてもらっていたけれど。お父さまも本当はここに私達がいるの邪魔なのではないかしら?』とヴァレリアが言ったの。
私は一人になりたい時なんてないわ、ヴァレリアといつでも一緒がいいのよ、と言いたかったけれど、お父さまがこの部屋をお母さまの部屋として大切にしておきたいのかしら?と思ったので仕方なく受け入れる事にしたの。
(ヴァレリアと離れるなんて…。今までは大きなベッドで寄せ合って寝ていたのよ?一人で寝られるのかしら。)
そう思ったけれど、いざ部屋を与えられて入ってみるととても嬉しくなって、何度も部屋の中を回ってしまったわ!
真ん中にはベッド。今までのベッドよりは小さいけれど、大人用であるし一人で寝るには充分の大きさで、寝返りを打っても余裕よ。
天蓋が付いて目隠しの薄い布が床まで垂れ下がっているの。
窓際には楕円形の机と三人掛け位の布製のソファが対である。となりには、ロッキングチェアもあった。おじい様がよく、屋敷で使っていて『いいなぁ。』と言った記憶があった。だからあるのかしら?
奥には衣装部屋が続いている。
「すごーい!!」
「気にいられましたか?これから、少しずつ勉強にも励んでいかないといけませんからね。疲れた時には、この部屋や庭園などでゆったりとすごしましょう。」
とユーリアが言ってくれた。
けれど、残念ながらユーリアは会える時間が大幅に減るのだという。乳母だった為、幼い頃だけだから。
代わりに今度は黒い髪のラドゥという侍女が付いた。ラドゥは私より十歳年上だった。彼女も、ユーリアに似て柔らかい雰囲気のだったから、ユーリアがいないのは少し淋しかったけれど、彼女はその分を埋めてくれたわ。
ヴァレリアとは部屋が離れ、顔を合わせる時間が減ったのよね。そこから少しずつ、お互いの道を歩み始めたというべきなのかしら。
まぁ、姉といっても双子であるから、いつも一緒にいる自分の分身のような感じではありましたけれども。
それまで、普通であれば、王妃となる方が使われるはずの部屋を私達は使っていたのだそう。
日当たりも国王の部屋の次に良い部屋で、ベッドも大人三人寝ても余裕がありそうな大きさ。
あとはゆったりとした部屋の広さで、ふかふかの絨毯が部屋全体に敷いてあり、私達が座って遊ぶ場所にはさらに敷物をしいてあって、そこでよくおままごとや人形ごっこなどで遊んでいたと思うわ。
なぜ私達が王妃の部屋なのかは、お母様が私達を生んですぐ体調を崩されたから。
私達がいると静かに療養も出来ないので、侍女達が私達を違う部屋へ連れて行こうとしたらお母様が『この子達はこの部屋で。私が違う部屋へ移動するわ。』と言ったらしい。
お母様が希望したのは、王族専用居住区域の中では一番北側で日の当たらない暗い部屋だと。『静かに寝たいから、日当たりは必要ないの。』と言っていたみたい。
でも、日に日に弱り起き上がる事さえ出来なくなって一月も経たずに亡くなったらしいの。
抱いてもらった事はあったのかしら。
顔は、肖像画でしか分からない。
でもその代わり、ヴァレリアにはパトリツィア、私にはユーリアという乳母が付き、優しくお世話をしてもらったと思うわ。
だから、思ったより寂しくなかったわ。
いつもヴァレリアがいたし、何かあればユーリアがいつも抱き締めて頭を撫でてくれたもの。私が母だと思うのはユーリアね。年齢も、生きていれば母と同じような年頃だと思うわ。赤い髪がゆるゆると波立っていた女性で、気性も穏やかでいつもゆったりとした雰囲気だったわ。
四歳を過ぎると、ヴァレリアが言い出したのか、一人ずつの部屋にする事になった。私は、ヴァレリアと一緒でも良かったのだけれど、『そろそろ一人になりたい時もあるでしょ?それにここは亡きお母さまの部屋よ。私達がずっと使わせてもらっていたけれど。お父さまも本当はここに私達がいるの邪魔なのではないかしら?』とヴァレリアが言ったの。
私は一人になりたい時なんてないわ、ヴァレリアといつでも一緒がいいのよ、と言いたかったけれど、お父さまがこの部屋をお母さまの部屋として大切にしておきたいのかしら?と思ったので仕方なく受け入れる事にしたの。
(ヴァレリアと離れるなんて…。今までは大きなベッドで寄せ合って寝ていたのよ?一人で寝られるのかしら。)
そう思ったけれど、いざ部屋を与えられて入ってみるととても嬉しくなって、何度も部屋の中を回ってしまったわ!
真ん中にはベッド。今までのベッドよりは小さいけれど、大人用であるし一人で寝るには充分の大きさで、寝返りを打っても余裕よ。
天蓋が付いて目隠しの薄い布が床まで垂れ下がっているの。
窓際には楕円形の机と三人掛け位の布製のソファが対である。となりには、ロッキングチェアもあった。おじい様がよく、屋敷で使っていて『いいなぁ。』と言った記憶があった。だからあるのかしら?
奥には衣装部屋が続いている。
「すごーい!!」
「気にいられましたか?これから、少しずつ勉強にも励んでいかないといけませんからね。疲れた時には、この部屋や庭園などでゆったりとすごしましょう。」
とユーリアが言ってくれた。
けれど、残念ながらユーリアは会える時間が大幅に減るのだという。乳母だった為、幼い頃だけだから。
代わりに今度は黒い髪のラドゥという侍女が付いた。ラドゥは私より十歳年上だった。彼女も、ユーリアに似て柔らかい雰囲気のだったから、ユーリアがいないのは少し淋しかったけれど、彼女はその分を埋めてくれたわ。
ヴァレリアとは部屋が離れ、顔を合わせる時間が減ったのよね。そこから少しずつ、お互いの道を歩み始めたというべきなのかしら。
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