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2. 故郷での一日
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私のソランデル伯爵領での一日は、朝がとても早い。
屋敷の裏手にある、緩やかな山一帯がパワーストーン鉱山だと言われている。
パワーストーンとは、属性の付いた魔力を秘めていたり、魔力を増強したり出来る優れ物。
朝、太陽が顔を出す頃にそのパワーストーンがキラキラと煌めいている事が多いからそれを確認しに行くからなの。
山の途中の道端でいきなり輝いている場合もあるけれど、たいていは洞窟のような場所の中を歩いている方が、たくさん見つかる為、それを取りに行くの。
その取れたパワーストーンを、いくつかまとめ、汚れていたら綺麗にしてから王家や悪獣討伐軍や他の貴族へと販売する。
この国には魔力を持っている貴族が多く、その人物が願うだけでそれを具現化できる。人によって具現化できる種類が異なるけれど、火、水、雷、風が主な属性だ。
それを増強も出来る物もあるし属性が付いたものもあって便利な為、このパワーストーンは使いたい人達に需要があるのだ。
属性が付いたものは、濃い色が付いている。
水の属性がある物は青色、火の属性は赤、風は水、雷は黄、の色で拳ほどの大きさの石。
パワーを増強させるストーンは、無色透明で、属性付きの石よりも一回り小さい。
魔力がない人も、属性付きの石と増強の石を合わせた魔道具を購入すれば、弱いが魔力が使える事になる。値段はそれなりにするけれど。
何度か使うとそれは割れて使えなくなってしまうので、使い捨てとも言えるから、そのパワーストーンは販売すればいつもすぐに完売してしまう。
ただ、あまり取りすぎてしまうのも良くない。昔に比べて発見出来る数が減ってきたから、見つけても全て取らないようにするようになったの。
それを取りに行ったあとは、朝食。
お父様と、弟フランシスと一緒に摂るわ。そこで今日一日の予定を確認し合い、それぞれの一日が始まります。
私のお母様は、弟を生んだあとに産後の肥立ちがなかなか良くならず、そのうちベッドから起き上がれなくなり、冬のものすごく寒い日に、眠るように亡くなってしまったそうです。
ですから、それからは一緒に摂れる日は家族で食事をするのが、我が家の決まりとなりました。
食事をしたら、私は、屋敷を出て領地を回るの。
それは、フランシスと行く時もあるし、私と侍女で行く時もあるの。
領地を回る、と言っても主に自生している薬草を採ったり、放牧している山羊や山鳥の様子を見に行く事ね。
薬草は、お父様から『パワーストーンはいつか無くなるかもしれない』と言われた時から、それに変わって収入を得られるものが無いかと考えた結果なの。
ここの領地には、自生している植物がたくさんの種類あって、屋敷の図書室の書物で調べてみると、それぞれ様々な効能があったのよね。
しかも、それを食べ物に混ぜたり、お茶として飲んだりすると、体が軽くなったり、まぁいろいろ体にとって良いものが多かったのよ。
他にも、足が疲れた時などに葉を巻いておけば回復に繋がる葉とか、火傷に効く植物なんかもあって、本当にたくさんの種類がこの領地には自生しているのよね。
そして、それはかなり効くと評判なの。
庶民は魔力を持っていないし、魔道具は高価であるから、薬草などの方が身近に使えるといえるし、うちの領地の植物はなぜか一日で生えてくるから安価で販売出来る為、好評みたいなの。
お父様の優しく柔和な性格が領地にまで反映しているように思えるのよ。だって、体を癒す効能の植物が多いのだもの。
フランシスと行く時は、よく植物の問題を出し合いながら行ったわね。植物の形とか効能とか。フランシスも、冬の間は一緒に図書室に篭もっていたから同じように知識があるのよね。
「あれ?姉さん、この植物、葉が萎れてきてる。元気が無さそうだよ!水、あげてくれる?」
フランシスはそうやって、植物の事をよく観察していたわね。あの子もお父様に似て、心優しい子で。
私も、気づいたらいつの間にか魔力が使えるようになっていて、水が欲しいなと思うと僅かだけれど出せるようになったから、水を汲みに行くのが面倒な時に、《水よ、どうかこの植物に元気を与えて下さい!》と願いを込めるとその植物が潤うようになったのよね。
魔力は、貴族だと持っているのは珍しくないみたい。ただ、何度も繰り返し使おうとすると、気力が無くなって倒れてしまうみたいだけれど、私にはそんなに使う機会がないからそこまでなった事はないの。というか、一度使うと半日は使えないのよ。あまり、日常的ではないのよね。
高位貴族になればなるほど、強く、素晴らしい魔力を持っている人がいるみたいで、そういう人は、国からも必要とされ、将来要職に就くらしいけれど。
あとは合間に図書室で本を読み、食事の時間になったらまた、家族一緒に摂るの。その日一日、あった出来事を互いに話すのよ。
そんな、領地での生活はとても充実しているのよ。
でも、公爵夫人となる為のお勉強を教えてくれる先生が来てからは、ほとんどフランシスに任せてしまっているの。朝、一緒にパワーストーンを確認しに行く日もあるけれど、お勉強は気を張っているからか、クタクタになるのよね。
未来の公爵夫人…私に勤まるかしら。
屋敷の裏手にある、緩やかな山一帯がパワーストーン鉱山だと言われている。
パワーストーンとは、属性の付いた魔力を秘めていたり、魔力を増強したり出来る優れ物。
朝、太陽が顔を出す頃にそのパワーストーンがキラキラと煌めいている事が多いからそれを確認しに行くからなの。
山の途中の道端でいきなり輝いている場合もあるけれど、たいていは洞窟のような場所の中を歩いている方が、たくさん見つかる為、それを取りに行くの。
その取れたパワーストーンを、いくつかまとめ、汚れていたら綺麗にしてから王家や悪獣討伐軍や他の貴族へと販売する。
この国には魔力を持っている貴族が多く、その人物が願うだけでそれを具現化できる。人によって具現化できる種類が異なるけれど、火、水、雷、風が主な属性だ。
それを増強も出来る物もあるし属性が付いたものもあって便利な為、このパワーストーンは使いたい人達に需要があるのだ。
属性が付いたものは、濃い色が付いている。
水の属性がある物は青色、火の属性は赤、風は水、雷は黄、の色で拳ほどの大きさの石。
パワーを増強させるストーンは、無色透明で、属性付きの石よりも一回り小さい。
魔力がない人も、属性付きの石と増強の石を合わせた魔道具を購入すれば、弱いが魔力が使える事になる。値段はそれなりにするけれど。
何度か使うとそれは割れて使えなくなってしまうので、使い捨てとも言えるから、そのパワーストーンは販売すればいつもすぐに完売してしまう。
ただ、あまり取りすぎてしまうのも良くない。昔に比べて発見出来る数が減ってきたから、見つけても全て取らないようにするようになったの。
それを取りに行ったあとは、朝食。
お父様と、弟フランシスと一緒に摂るわ。そこで今日一日の予定を確認し合い、それぞれの一日が始まります。
私のお母様は、弟を生んだあとに産後の肥立ちがなかなか良くならず、そのうちベッドから起き上がれなくなり、冬のものすごく寒い日に、眠るように亡くなってしまったそうです。
ですから、それからは一緒に摂れる日は家族で食事をするのが、我が家の決まりとなりました。
食事をしたら、私は、屋敷を出て領地を回るの。
それは、フランシスと行く時もあるし、私と侍女で行く時もあるの。
領地を回る、と言っても主に自生している薬草を採ったり、放牧している山羊や山鳥の様子を見に行く事ね。
薬草は、お父様から『パワーストーンはいつか無くなるかもしれない』と言われた時から、それに変わって収入を得られるものが無いかと考えた結果なの。
ここの領地には、自生している植物がたくさんの種類あって、屋敷の図書室の書物で調べてみると、それぞれ様々な効能があったのよね。
しかも、それを食べ物に混ぜたり、お茶として飲んだりすると、体が軽くなったり、まぁいろいろ体にとって良いものが多かったのよ。
他にも、足が疲れた時などに葉を巻いておけば回復に繋がる葉とか、火傷に効く植物なんかもあって、本当にたくさんの種類がこの領地には自生しているのよね。
そして、それはかなり効くと評判なの。
庶民は魔力を持っていないし、魔道具は高価であるから、薬草などの方が身近に使えるといえるし、うちの領地の植物はなぜか一日で生えてくるから安価で販売出来る為、好評みたいなの。
お父様の優しく柔和な性格が領地にまで反映しているように思えるのよ。だって、体を癒す効能の植物が多いのだもの。
フランシスと行く時は、よく植物の問題を出し合いながら行ったわね。植物の形とか効能とか。フランシスも、冬の間は一緒に図書室に篭もっていたから同じように知識があるのよね。
「あれ?姉さん、この植物、葉が萎れてきてる。元気が無さそうだよ!水、あげてくれる?」
フランシスはそうやって、植物の事をよく観察していたわね。あの子もお父様に似て、心優しい子で。
私も、気づいたらいつの間にか魔力が使えるようになっていて、水が欲しいなと思うと僅かだけれど出せるようになったから、水を汲みに行くのが面倒な時に、《水よ、どうかこの植物に元気を与えて下さい!》と願いを込めるとその植物が潤うようになったのよね。
魔力は、貴族だと持っているのは珍しくないみたい。ただ、何度も繰り返し使おうとすると、気力が無くなって倒れてしまうみたいだけれど、私にはそんなに使う機会がないからそこまでなった事はないの。というか、一度使うと半日は使えないのよ。あまり、日常的ではないのよね。
高位貴族になればなるほど、強く、素晴らしい魔力を持っている人がいるみたいで、そういう人は、国からも必要とされ、将来要職に就くらしいけれど。
あとは合間に図書室で本を読み、食事の時間になったらまた、家族一緒に摂るの。その日一日、あった出来事を互いに話すのよ。
そんな、領地での生活はとても充実しているのよ。
でも、公爵夫人となる為のお勉強を教えてくれる先生が来てからは、ほとんどフランシスに任せてしまっているの。朝、一緒にパワーストーンを確認しに行く日もあるけれど、お勉強は気を張っているからか、クタクタになるのよね。
未来の公爵夫人…私に勤まるかしら。
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