【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる

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夜の王都

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「準備出来た?」
「はい。出来ましたけど…やっぱり止めましょうよ…。」
クロエがボソボソと呟いた。
「何言っているのよ!今日行けなかったら、もう行けないかもしれないのよ。タウンハウスにあまり長居はしないつもりだもの。さ。急いで!」
庭へと続く窓の鍵を開けておいて、そこから町へと繰り出した。



☆★☆★☆★

「わぁ~明るいのね!」
カントリーハウスでは、店は空が暗くなる前に閉まってしまう。だから、こんなに空が暗いのに、建物からそこかしこに灯りが漏れているのを見て、感動してしまった。

「キャロル様!それでどこに行くのですか?」
「教会の学校のお友達に聞いたのよ!とっても美味しいお店があるのですって。出会い亭って名前のお店なんだけど…どこにあるのかしら。」
「え?ご存知なわけではないのですか?」
「だって本当に行けるか分からなかったのですもの。お父様もお母様もいないなんて、これはもう行けって言ってるものでしょ?」
「またそんな…。」

「おい、姉ちゃん達。どうした?迷子かぁ~?」
「あ、はいそうなの。出会い亭ってお店なんだけどご存知?」
「キャロル様…!知らない人に話し掛けてはいけません!」
「あら、分からないなら聞かないと!なんだかこの辺りを熟知してそうだもの!」
「それでもです!」

「ははは。そっちの大きい姉ちゃん。大丈夫だよ。ここは王都だ。変な事をするやつはそうそういないさ。出会い亭はこっちだよ。ついておいで。」
「まぁ!ご親切に。ありがとう!ほら、クロエ行くわよ。」
「キャロル様…!」
きっと、なにかあったら精霊達が助けてくれるわ。今も…精霊達はその辺り散策しているみたいだけど。もう!物珍しいからって、皆で一斉に居なくならなくてもいいじゃないの。
でも、私の近くにいたいと言ってくれてるから、たまには出掛けたいというのも聞いてあげないとね。

「ほら、ここだよ。」
「ありがとう!助かりましたわ。」
「じゃあな。あまり遅くならないうちに帰るんだぞ。」
「はーい!ありがとう!さようなら!」
「おうよ!」
声を掛けてくれたおじさんは、すぐ違う方向へ行ってしまった。

「さぁ、入りましょ!ん~良い香り!!」
お肉が焼けるとても香ばしい匂いが、鼻をくすぐる。夜ご飯を軽く食べてきたのに、たくさん食べたいわ!

「いらっしゃい!2名様かな?」
「はい。この店が美味しいと聞いて、初めて来たのです。」
「そうかい。嬉しいね!じゃあそこへ座りな!」
そう言って、店主は入り口近くの二人掛けの席に案内してくれた。

「お薦めはなんですか?」
「鳥の串焼きだよ。あとはレモン水かな。」
「じゃあそれを2つ下さい!」
「はいよ。待ってな!」
ん~早く食べたいわ!

「美味しそうな香りですね。」
「ね~!」

「はい、どうぞ。熱いから気をつけてね。」
「ありがとう!」
「ありがとうございます。」

「ん~!!美味しい!」
「本当ですね。こんなにホロホロのお肉!ちょっと食べるのに抵抗ありますけど。」
「何を言ってるのよ、こうやって食べるから美味しいのよ!」

「お!良いこと言うね!ここのはどれも美味いんだぜ!!」
「?」
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