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25. 北東の地・ノイティス
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結婚して二年が経ちました。
私とユリウスの仲も、一緒に暮らしている事もあって、以前よりずっと深いものとなりましたわ。
私達は北東の地ノイティスに越して来て、初めは慣れない事もあったけれど、ここの人達もとてもいい人達ばかりで楽しく過ごせるようになってきました。
雪も、思ったよりもかなり降り積もり、冷たくそして痛い位に寒いけれど、この領地でしか出来ない楽しみ方で過ごしております。
ここは今までは国有地、ではあったけれど領主がいなかったそうで税金も免除されていたみたい。
その代わり管理をされてなかったそうで、今回公爵領となりユリウス様が領主となって治める事となり私は領民はいい顔をしないかなと思っておりました。
なぜって、今まで税は免除されていたのに、いきなり領主が現れて税を出せって言う事なるのですから。
だけれど、領民達は逆で、『管理をしてもらえる!これできっとこの地も住みやすくなる!』と思ってくれたのだそう。
それに、事前にこの地へ視察に来ていた役人さんが、私のツェルテッティン領地での改革を領民達に話してくれていたみたいで軽い聖人扱いされている。
「アイネル様がおっしゃるように言って造った橋、この前の増水でも壊れなくて驚いたよー!作り直すとしたら、流通も止まってしまうから、本当に良かった。長く手を掛けて造った甲斐があったよ。ありがてぇ!!」
「本当?良かったわ。」
領地を視察していると、いつもいろいろと領民達が声を掛けてくれる。
「ここに長く住んでいる私達より、この地域の事を考えてくれて本当、領主様として来てくれて良かったわ。」
「おいおい、領主として赴任しているのは俺なんだからな!もっとみんな俺を敬えよ!!まぁ、アイネルが素晴らしいのは当然だから仕方ないけれどね。」
と、ユリウスもニコニコ顔で領民達と触れ合っているわ。
「ええ。皆さん、ユリウスがいてこそのノイティス領だと分かって言って下さってますわ。」
と私もすかさず言いましたわ。
橋……隣国との文字通り架け橋となる橋を造ろうとしたのはこちらへ着任してすぐの第一ミッションでした。
今までは、幅が二十メートルほどある川だったが橋はなく、隣国との交流も無かったらしい。
水深も川辺は足首ほどだが中央付近は一メートルほど。深い川ではないが川幅がそれなりにあるので特に交流は無かったらしい。
けれども隣国が貿易をしたいと、穫れた作物を届けたいそうで国王陛下に話が来たみたいで、橋を赴任した私達が造る事になったとか。
聞いた所によると、穫れた作物の中には主食に代わる米があるみたい!
この国のパンは美味しいけれど、米も食べたいわよね。
そういえば長い夢の中で普段食べていたのは米だったわ、と話を聞いて思い出した。
よだれが出るほどで、早く橋を造りましょう、と思ったけれど皆の話を聞いていて私はどうしても首を突っ込んでしまいました。
「ねぇ、なんで川からの高さスレスレで橋を造るのかしら?」
「なんでって、その方が材料が少なく押さえれるからだよ。」
今の川の高さで橋を造ろうとしていたけれど、この辺りは雪が降ると言っていた。と言うことは、雪がたくさん降り積もりそれが解ける時期には川の水は増えるのではないかしら?
それから最短かつ最低の材料で建てられるように設計図を造っているけれど、もっと丈夫にしなければ水の勢いで壊れちゃうわよ!
結局、私が半ば強引に、最後は心情に訴えて皆が言う高さよりも高い橋を掛けてもらう事にした。
水に浸かる土台も、木だけだと腐ってしまうから、腐らないように工夫をする。どうするのかというと、別の木の皮を剥いで逆向きにして、土台にする丸太を覆うのだ。
木の皮の内側は水を通さない、というのは長い夢の中で得た知識だ。
長い夢の中の事は、多分こちらでも生かせる内容だとツェルテッティン領の領地改革で学んだからきっといけるはず。
接着剤は針葉樹の木から出ていた脂を熱して炭の粉と混ぜたもの。この工程がかなり時間が掛かったけれどやってもらった事で木も腐りにくくなって良かったと思う。
この近辺に針葉樹の木がたくさん生えていたのも一助となったのですわ。
「はぁ。アイネルが橋の構想を練った時、かなり心配だったんだよ。アイネルが嘘を言うわけはないと思っているけれど、必要性を見出されなければ、アイネルの凄さを理解してもらえないからさ。でも、領民達に実感してもらえてよかった!」
そう、ユリウスは信頼の言葉を下さった。嬉しくて、ユリウスにニッコリと笑い掛けて言った。
「ありがとう、ユリウス。私の我が儘を聞いてくれて。」
「そんなの我が儘に入らないよ。でもそうだなぁ…じゃあ俺も我が儘言おうかな。そろそろ二人の子供を考えようか。だから…ね、愛しているよ!」
と、道の真ん中で抱きしめられました。いつも人目を憚らずに抱きしめたりキスして下さるから恥ずかしいのですよね。
……領民達は見慣れたものと認識されているのか、皆素知らぬフリをしてくれていますけれど。
「まぁ!…そうですわね。ユリウスと二人きりも嬉しいですけれど、ユリウスにそっくりなお子なんて、素晴らしく可愛いでしょうね!」
私は十歳の頃にお神の戯れに遭い、長い夢を見ました。
それはこことは違う異世界らしく、そこで得た知識を元に生活をより良くしてきました。
そして大好きなユリウスの生涯の伴侶となれたのは素晴らしく素敵な事ですわ。
これからも私は、この新しい地でこの方と共に生きていきます。
☆★☆★☆★☆★
これで、終わりです。
読んでいただきましてありがとうございました。
しおりをはさんで下さる方、お気に入り登録して下さる方、とっても励みになります。感想を下さった方とても嬉しいです。
ありがとうございました。
私とユリウスの仲も、一緒に暮らしている事もあって、以前よりずっと深いものとなりましたわ。
私達は北東の地ノイティスに越して来て、初めは慣れない事もあったけれど、ここの人達もとてもいい人達ばかりで楽しく過ごせるようになってきました。
雪も、思ったよりもかなり降り積もり、冷たくそして痛い位に寒いけれど、この領地でしか出来ない楽しみ方で過ごしております。
ここは今までは国有地、ではあったけれど領主がいなかったそうで税金も免除されていたみたい。
その代わり管理をされてなかったそうで、今回公爵領となりユリウス様が領主となって治める事となり私は領民はいい顔をしないかなと思っておりました。
なぜって、今まで税は免除されていたのに、いきなり領主が現れて税を出せって言う事なるのですから。
だけれど、領民達は逆で、『管理をしてもらえる!これできっとこの地も住みやすくなる!』と思ってくれたのだそう。
それに、事前にこの地へ視察に来ていた役人さんが、私のツェルテッティン領地での改革を領民達に話してくれていたみたいで軽い聖人扱いされている。
「アイネル様がおっしゃるように言って造った橋、この前の増水でも壊れなくて驚いたよー!作り直すとしたら、流通も止まってしまうから、本当に良かった。長く手を掛けて造った甲斐があったよ。ありがてぇ!!」
「本当?良かったわ。」
領地を視察していると、いつもいろいろと領民達が声を掛けてくれる。
「ここに長く住んでいる私達より、この地域の事を考えてくれて本当、領主様として来てくれて良かったわ。」
「おいおい、領主として赴任しているのは俺なんだからな!もっとみんな俺を敬えよ!!まぁ、アイネルが素晴らしいのは当然だから仕方ないけれどね。」
と、ユリウスもニコニコ顔で領民達と触れ合っているわ。
「ええ。皆さん、ユリウスがいてこそのノイティス領だと分かって言って下さってますわ。」
と私もすかさず言いましたわ。
橋……隣国との文字通り架け橋となる橋を造ろうとしたのはこちらへ着任してすぐの第一ミッションでした。
今までは、幅が二十メートルほどある川だったが橋はなく、隣国との交流も無かったらしい。
水深も川辺は足首ほどだが中央付近は一メートルほど。深い川ではないが川幅がそれなりにあるので特に交流は無かったらしい。
けれども隣国が貿易をしたいと、穫れた作物を届けたいそうで国王陛下に話が来たみたいで、橋を赴任した私達が造る事になったとか。
聞いた所によると、穫れた作物の中には主食に代わる米があるみたい!
この国のパンは美味しいけれど、米も食べたいわよね。
そういえば長い夢の中で普段食べていたのは米だったわ、と話を聞いて思い出した。
よだれが出るほどで、早く橋を造りましょう、と思ったけれど皆の話を聞いていて私はどうしても首を突っ込んでしまいました。
「ねぇ、なんで川からの高さスレスレで橋を造るのかしら?」
「なんでって、その方が材料が少なく押さえれるからだよ。」
今の川の高さで橋を造ろうとしていたけれど、この辺りは雪が降ると言っていた。と言うことは、雪がたくさん降り積もりそれが解ける時期には川の水は増えるのではないかしら?
それから最短かつ最低の材料で建てられるように設計図を造っているけれど、もっと丈夫にしなければ水の勢いで壊れちゃうわよ!
結局、私が半ば強引に、最後は心情に訴えて皆が言う高さよりも高い橋を掛けてもらう事にした。
水に浸かる土台も、木だけだと腐ってしまうから、腐らないように工夫をする。どうするのかというと、別の木の皮を剥いで逆向きにして、土台にする丸太を覆うのだ。
木の皮の内側は水を通さない、というのは長い夢の中で得た知識だ。
長い夢の中の事は、多分こちらでも生かせる内容だとツェルテッティン領の領地改革で学んだからきっといけるはず。
接着剤は針葉樹の木から出ていた脂を熱して炭の粉と混ぜたもの。この工程がかなり時間が掛かったけれどやってもらった事で木も腐りにくくなって良かったと思う。
この近辺に針葉樹の木がたくさん生えていたのも一助となったのですわ。
「はぁ。アイネルが橋の構想を練った時、かなり心配だったんだよ。アイネルが嘘を言うわけはないと思っているけれど、必要性を見出されなければ、アイネルの凄さを理解してもらえないからさ。でも、領民達に実感してもらえてよかった!」
そう、ユリウスは信頼の言葉を下さった。嬉しくて、ユリウスにニッコリと笑い掛けて言った。
「ありがとう、ユリウス。私の我が儘を聞いてくれて。」
「そんなの我が儘に入らないよ。でもそうだなぁ…じゃあ俺も我が儘言おうかな。そろそろ二人の子供を考えようか。だから…ね、愛しているよ!」
と、道の真ん中で抱きしめられました。いつも人目を憚らずに抱きしめたりキスして下さるから恥ずかしいのですよね。
……領民達は見慣れたものと認識されているのか、皆素知らぬフリをしてくれていますけれど。
「まぁ!…そうですわね。ユリウスと二人きりも嬉しいですけれど、ユリウスにそっくりなお子なんて、素晴らしく可愛いでしょうね!」
私は十歳の頃にお神の戯れに遭い、長い夢を見ました。
それはこことは違う異世界らしく、そこで得た知識を元に生活をより良くしてきました。
そして大好きなユリウスの生涯の伴侶となれたのは素晴らしく素敵な事ですわ。
これからも私は、この新しい地でこの方と共に生きていきます。
☆★☆★☆★☆★
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読んでいただきましてありがとうございました。
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一気読みさせて頂きました(`・ω・´)ゞ
ユリウス君大勝利☆
penpen様、いつも感想書いて下さってありがとうございます!!
とても、励みになります。
読んでいただきまして、ありがとうございました(#^.^#)
この世界の人達は『神』の事を『神様』と呼んでいるのに、いったいどこから『お神』なんて呼び方が出てきたのかが不思議です。
私としては『神様のお戯れ』の方がしっくりいく様な気がするのですが…すみません😅
響楽(YULALA)様、感想ありがとうございます。
神様と呼んでいるけれど、畏敬の念はあるけれど、この世界に有益な事をもたらしてくれるので愛着を込めて〝お神〟と付けました。
現実世界でも、古くからの地域ではそう呼んでいる場所もある為敢えてそうしました。
馴染みがなくてすみません。
この世界での世界観として見ていただけるとありがたいです。
読んでいただいて、感想までもいただきありがとうございました。
16話
ユリウス殿下……
第一王子殿下と兄ちゃんは、男同士だから良いけど、お年頃の女の子相手に『名前で呼んで欲しい!』とか意味が違うからねww
砂月ちゃん様、何度もありがとうございます。
感想を教えていただけてとても嬉しいです。
ふふふ。そうですね。意味合いは全く違います。
けれど、彼はどうにか距離を縮めたいし、ようやく会えたために言って欲しいみたいです(笑)
ありがとうございます。