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6. 昼食
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昼食になりました。
食堂へ行くと、三歳上のお兄様とお父様もすでに座っておられました。
「遅くなりまして、すみません。」
私は、遅くなってしまったと思って謝罪を口にしました。
「いや?アイネルが目覚めて嬉しくて、仕事を早く切り上げたんだ。問題ないよ。辛くないか?辛かったら部屋に移動しようか?」
お父様、そんな言葉まで言ってくれます。
が、私の体は思ったよりも頑丈だったみたいで、十日も寝ていたというのに、それほど疲れていません。はじめこそちょっと体が硬い?と思いましたがいつの間にか普通に動かせました。
長い夢の中でも普通に生活していたからでしょうか?
「ありがとうございます、お父様。けれど、せっかくならご一緒したいのです。」
そう言って、お父様へニッコリと笑いかけた。心配ないですよ、という意味を込めて。
「そうかそうか。可愛い事を言ってくれるなぁ。」
お父様は、うんうんと頷きながらニコニコとしている。
「僕も知らせを聞いたから、休みをもらって帰って来て良かった。アイネルの元気な姿を見られて安心したよ。一時はどうなる事かと思ったからね。」
と、お兄様も言ってくれました。確か、十三歳になった今年から騎士団に入団して、精進しておられるのですよね。
「まぁ!カイヴィンもいると思ったら、休みをもらってきたの?騎士団は大丈夫ですの?」
お母様はそう言うと、心配そうにお兄様を見ました。
「ああ。大丈夫だよ。それだけ僕は普段はしっかり勤めているという事だからね。」
と、お兄様は言われました。
お兄様は普段家では怠惰な面を表に出すような、『練習なんて面倒だし疲れるから嫌だ』と木の陰で昼寝をしたりする人でしたのに、そんな言葉を聞くなんて驚きですわ。
「お兄様、ご心配をお掛けしましてすみません。お父様も、お母様も、すみませんでした。」
今朝私が目覚めた時も、お父様なんて慌てふためいていたし、お母様も言葉にはしないけれど、午前中ずっと傍にいてくれたもの。きっと心配を掛けてしまったのよね。
「あら、アイネルがこんなに元気なんだもの。気にしないで。それでね、とっても素晴らしい夢を見ていたのですって。昨年長雨で穀物があまり取れなかったじゃない?そのせいでうちの領地、昨年もギリギリで、今年もどうなるのか怪しいのでしょ?でもね、アイネルのその夢のおかげで、活路を見出せるかもしれないわよ!」
お母様はそう言ってくれ、お父様とお兄様の顔を順番に見て行った。
お父様とお兄様は二人共不思議そうに顔を見合わせ、お母様と私を見た。
「どういう事だ?子供の前で言う事ではないが、確かに今年はどうなるか怪しい。昨年はどうにか乗り切ったがな。それが、明るい兆しが見えると?それに、アイネル、長い夢を見たのか?それで、その…体は大丈夫なのか?」
「?体ですか?はい。ちょっと起きたすぐは長く寝ていたからか体が硬くて動かしにくく感じましたし、記憶も朧気でしたがだんだんと思い出しました。」
「そうか…それは本当に良かった!ずいぶんと前だがな。お神の戯れに遭った男に会った事があってな。そいつは世迷い言を常に言うようになり、周りから気が触れたと思われてな…最期は、自分から命を絶ったんだ。だから、」
「あなた!病み上がりのアイネルに言わないでちょうだい!あれは、あの人がいけないのよ!アイネルとは違うわ!」
「ああ、済まない。分かっている。アイネルはアイネルだ!だからこそ我々家族でアイネルを守っていこうじゃないか!」
「当たり前です。アイネル、何かあったらすぐに僕に言うんだよ。ユリウスの事も、僕がコテンパンにして黙らせておいたからね!」
「あら、なんでそこで第二王子の名前が出てくるの?」
「ユリウスがアイネルを突き飛ばしたから、お神の戯れに遭ったのかなと。」
「それは違う!確かに、王族に関連している事例が多い事は事実らしいが、むやみに憶測で物を言ってはいかんぞ。ユリウス様に何を言った?場合によってはカイヴィン、お前が不敬罪にされかねんぞ。」
「そんな事ないさ。ロイルもイザベラも加勢してくれたんだ。いざとなればロイルが見方してくれるさ。」
お父様は、頭を抱えだした。
「お前は何をしておるんだ…。ロイル様は第一王子として弟に活を入れただけかもしれんのだぞ。イザベラ様だって自分の兄の愚行に怒っただけで、それを一伯爵家のカイヴィンが一緒になってとは…。」
「非公式だし、ウェンディもいたから大丈夫だよ。こっちは被害者なわけだし。」
「ウェンディって、ロイル第一王子の婚約者の?」
ゆったりとした口調でお母様が話に加わりました。
「ああそうだよ、ウェンディ=ケラリス侯爵令嬢ね。あの時のメンバーで話していただけさ。心配ないよ。それよりも早く食べようよ。アイネルのその活路を後で教えてくれるかい?訓練してきたからお腹すいているんだ。」
食堂へ行くと、三歳上のお兄様とお父様もすでに座っておられました。
「遅くなりまして、すみません。」
私は、遅くなってしまったと思って謝罪を口にしました。
「いや?アイネルが目覚めて嬉しくて、仕事を早く切り上げたんだ。問題ないよ。辛くないか?辛かったら部屋に移動しようか?」
お父様、そんな言葉まで言ってくれます。
が、私の体は思ったよりも頑丈だったみたいで、十日も寝ていたというのに、それほど疲れていません。はじめこそちょっと体が硬い?と思いましたがいつの間にか普通に動かせました。
長い夢の中でも普通に生活していたからでしょうか?
「ありがとうございます、お父様。けれど、せっかくならご一緒したいのです。」
そう言って、お父様へニッコリと笑いかけた。心配ないですよ、という意味を込めて。
「そうかそうか。可愛い事を言ってくれるなぁ。」
お父様は、うんうんと頷きながらニコニコとしている。
「僕も知らせを聞いたから、休みをもらって帰って来て良かった。アイネルの元気な姿を見られて安心したよ。一時はどうなる事かと思ったからね。」
と、お兄様も言ってくれました。確か、十三歳になった今年から騎士団に入団して、精進しておられるのですよね。
「まぁ!カイヴィンもいると思ったら、休みをもらってきたの?騎士団は大丈夫ですの?」
お母様はそう言うと、心配そうにお兄様を見ました。
「ああ。大丈夫だよ。それだけ僕は普段はしっかり勤めているという事だからね。」
と、お兄様は言われました。
お兄様は普段家では怠惰な面を表に出すような、『練習なんて面倒だし疲れるから嫌だ』と木の陰で昼寝をしたりする人でしたのに、そんな言葉を聞くなんて驚きですわ。
「お兄様、ご心配をお掛けしましてすみません。お父様も、お母様も、すみませんでした。」
今朝私が目覚めた時も、お父様なんて慌てふためいていたし、お母様も言葉にはしないけれど、午前中ずっと傍にいてくれたもの。きっと心配を掛けてしまったのよね。
「あら、アイネルがこんなに元気なんだもの。気にしないで。それでね、とっても素晴らしい夢を見ていたのですって。昨年長雨で穀物があまり取れなかったじゃない?そのせいでうちの領地、昨年もギリギリで、今年もどうなるのか怪しいのでしょ?でもね、アイネルのその夢のおかげで、活路を見出せるかもしれないわよ!」
お母様はそう言ってくれ、お父様とお兄様の顔を順番に見て行った。
お父様とお兄様は二人共不思議そうに顔を見合わせ、お母様と私を見た。
「どういう事だ?子供の前で言う事ではないが、確かに今年はどうなるか怪しい。昨年はどうにか乗り切ったがな。それが、明るい兆しが見えると?それに、アイネル、長い夢を見たのか?それで、その…体は大丈夫なのか?」
「?体ですか?はい。ちょっと起きたすぐは長く寝ていたからか体が硬くて動かしにくく感じましたし、記憶も朧気でしたがだんだんと思い出しました。」
「そうか…それは本当に良かった!ずいぶんと前だがな。お神の戯れに遭った男に会った事があってな。そいつは世迷い言を常に言うようになり、周りから気が触れたと思われてな…最期は、自分から命を絶ったんだ。だから、」
「あなた!病み上がりのアイネルに言わないでちょうだい!あれは、あの人がいけないのよ!アイネルとは違うわ!」
「ああ、済まない。分かっている。アイネルはアイネルだ!だからこそ我々家族でアイネルを守っていこうじゃないか!」
「当たり前です。アイネル、何かあったらすぐに僕に言うんだよ。ユリウスの事も、僕がコテンパンにして黙らせておいたからね!」
「あら、なんでそこで第二王子の名前が出てくるの?」
「ユリウスがアイネルを突き飛ばしたから、お神の戯れに遭ったのかなと。」
「それは違う!確かに、王族に関連している事例が多い事は事実らしいが、むやみに憶測で物を言ってはいかんぞ。ユリウス様に何を言った?場合によってはカイヴィン、お前が不敬罪にされかねんぞ。」
「そんな事ないさ。ロイルもイザベラも加勢してくれたんだ。いざとなればロイルが見方してくれるさ。」
お父様は、頭を抱えだした。
「お前は何をしておるんだ…。ロイル様は第一王子として弟に活を入れただけかもしれんのだぞ。イザベラ様だって自分の兄の愚行に怒っただけで、それを一伯爵家のカイヴィンが一緒になってとは…。」
「非公式だし、ウェンディもいたから大丈夫だよ。こっちは被害者なわけだし。」
「ウェンディって、ロイル第一王子の婚約者の?」
ゆったりとした口調でお母様が話に加わりました。
「ああそうだよ、ウェンディ=ケラリス侯爵令嬢ね。あの時のメンバーで話していただけさ。心配ないよ。それよりも早く食べようよ。アイネルのその活路を後で教えてくれるかい?訓練してきたからお腹すいているんだ。」
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