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20. それからのスティーナの学び
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それからのスティーナは、イロナからの誘いで屋敷を頻繁に出掛けては国内の雰囲気を肌で感じていく事を学んでいった。
ある時は街へ行き、ある時は地方へ行った。
その度にスティーナが思うのは、やはり人々の生活の格差であった。
(それは、仕方のない事なのかしら。)
そのようにスティーナは、ため息を吐くのだった。
マルメでは、祭りの時期だったからかもしれないが、とても賑やかで活気があった。皆が笑顔で、とても楽しそうであった。
他の街では、そういう人達の一方で、細々と暮らしている人達がいる事を学んだ。
宮殿に近い街では、イロナから一つの建物に連れて行かれた。
街並みはとても賑やかで、行き交う人々も普通に整った身だしなみをしており、活気があると思ったスティーナは、ある一角の屋敷にイロナに連れられて入ってとても驚いたのだ。
壁を一つ隔てたそこは、子供達がたくさんいて賑やかに走り回っていたが、着ている服が薄手で薄汚れており、スティーナはあまり見たことがない素材であった。
建物は、趣のある雰囲気を醸し出してはいるが、広い庭は花が咲いているわけではなく雑草が生えている。…いや、草ではなく、実際は畑であった。様々な食用の野菜を育てられていたのだ。
「イロナ様、ここは…?」
「素敵なたたずまいでしょう?かつては、侯爵家であったお方の屋敷よ。」
確かに敷地は広く、建物はしっかりとした素晴らしい造りであるとスティーナは思った。
「いらっしゃいませ。さぁ、こちらへ。」
そう言って建物から出迎えてくれたのは、動き易そうな緩いワンピースを着たイロナと同じ位の見た目の女性だ。
建物の中へと出迎えてくれ、入り口入ってすぐの部屋へとイロナとスティーナを案内した。そこは、部屋に六つ程大きめの机が並べられていて普段は食堂に使っている部屋だ。
「良くいらっしゃいました。私は、以前はラーシュ様の家庭教師をしておりました、アウグスタと申します。
今はもう、侯爵の爵位は返上しておりますから、私は民間人でございます。」
「スティーナ、アウグスタは爵位を国王へ返還し、残りの私財を投じてこちらをお造りになられたのよ。
もう、ここが出来てから二年経つね。
ここは、親の居ない子供達の為の家なのよ。」
アウグスタがスティーナへと挨拶をし、イロナが付け加えるようにスティーナへと言った。
「初めまして、私はスティーナ=オーグレンと申します。
私財を投じてとは、なかなかできる事ではありませんから、素晴らしいですね。」
「そうでもありません。私は、異端者ですから。」
「アウグスタ!」
「異端者、ですか…?」
「だってそうでしょう。私は、国王のしもべである貴族であるにもかかわらず国王へ苦言を呈したのですから。」
「…?」
「アウグスタは、ラーシュの先生だと言いましたね?
ラーシュが七歳の時から、アウグスタは宮殿へ来て礼儀作法を中心に国の歴史や、読み書きなどといった学校へ行く前の基本的な事を教えていたのです。
ところが、先生であるアウグスタのいう事をラーシュはあまり聞かず、なかなか身に付ける事をしなかったのです。果ては授業の時間に逃げ出していたといいます。
だから、ラーシュの奔放さに業を煮やし、アウグスタはドグラスに苦言を呈して下さったのですよ。将来の王太子になるかもしれない王子なのですからね。
けれどもドグラスは、ラーシュを叱りつけるどころか好きにさせておけと言ったそうで。そのくせ、しっかり覚えていないと学校で恥をかくからとアウグスタの力で最低限はきちんと教えるようにと言われたそうなのです。酷いわよね?」
「私は、呆れました。
やる気がない子にどうやって教えろというのでしょう。第二王子であるヴァルナル様は幼い頃より、様々な事を吸収していったといいます。比べる事はよくないでしょうが、王子であるのですからせめて学ぶ意欲くらいはあって欲しいものでした。
ウプサラ国の未来を想って私はドグラス様に進言したのですが、まるで取り合ってはくれませんでした。
ですので、このままもしもラーシュ様が王太子となられてしまったら、私はこの国に未来は無いと思い、家庭教師の任期を終えると共に爵位を返上いたしました。そのような思いのまま、貴族として国を支える事が出来ないと思ったからです。」
「ドグラスへの不信感、ともいうわよね。
その気持ちは充分過ぎるほど良く分かるわ!アウグスタ。私だって、娘夫婦に、孫の心配を口に出しても全く取り合ってはくれないのですから。
アウグスタの家族は、夫であるクリストフェルだけだったものね。」
「はい。クリストフェルには言える範囲で、ラーシュ様への学習の意欲の無さに対する愚痴を吐露していました。軍学校へ入るまでの五年、私はずっと。
するとクリストフェルは、私の任期が終わると『爵位を返上する』と言ったのです。
元々私達には子供がおらず、侯爵家は養子を取るか返上するかと話はしていました。
しかし、私の事がきっかけかもと考え申し訳なく思ったものです。それに領地がありましたからどうするのと言ったら、『領主は誰でも代えがきく。だが、君の隣には僕しかいないはずだ。五年間よく堪えてくれたね。僕は君の夫なんだ、君の辛さは僕の辛さなんだよ、だから、これからは民間人として国の行く末を見守ろう。』と言ってくれたのよ。
今でも、クリストフェルから侯爵の地位を奪ってしまって良かったのか疑問ではあるけれど、辞めてからはとても穏やかに過ごせているわ。」
「素敵な方ですね。今日はいらっしゃらないのですか?」
「いるわ。中で作業をしているから後で挨拶をさせるわね。
私が先にスティーナ様とお話をさせて欲しかったのよ。」
「え、お止め下さい!私の事はどうぞスティーナと呼んでいただきたいです。」
「それは…そうですね。では、この屋敷ではそう呼ばせていただきます。
それで、スティーナ。あなたから見てラーシュ様はどんなお方ですか。少しは意欲的に変わられたのですか。」
「ありがとうございます。
ええと…どうでしょうか。軍学校へ行かれてからはお会いしていませんし、そもそもお会いしたのも二度ほどしかありませんから。」
「そうですか…。では、見張って下さいね。国の行く末は、花祈りであるスティーナにもかかっているのですから。」
「…はい。」
スティーナは、なんと重い言葉だろうと思った。だが、アウグスタの言葉は最もだと肝に銘じた。
「さぁ、ではスティーナ。
ウプサラ国は見た目は華やかではありますが、親のいない子供や貧しい人達がいる事から目を逸らさないで下さいね。
私共は、未来を担う子供達の居場所を作る事で、国の行く末を少しでもいいものとなるように願いを込めているのです。様々な事をどうか、スティーナもどうぞ学んでいって下さい。」
アウグスタとクリストフェルは、行き場のない道端で暮らしていた子供達を連れて来ては教育をし、畑仕事をさせ、大きくなって働きに出られるように学ばせている。
二人には子供がおらず、養子を取ろうかとも話をしていたのだ。しかしアウグスタがラーシュの教育係となってしまった為、それが終わったらと二人は言っていた。
養子とはまた違うが、広い意味での子育てはアウグスタとクリストフェルは大変ではあるが、未来ある子供達を救っている事は誇りに思っていた。
「そのような機会を与えて下さりありがとうございます。」
「そう堅いこと言わずにここにいる子供達ととにかく全力でぶつかってあげる事が大事なのよ。まずは子供達に、絵本を読み聞かせてみましょうね。」
イロナは、スティーナへとウインクをしながら言葉をかける。
「え!」
「まぁ!それは良いですね!大丈夫ですよ、喜びますからお願いします。では行きましょう。」
そう言って、アウグスタは席を立ちスティーナを子供達の元へ案内する。
戸惑いながらスティーナも向かったが、子供達が快く受け入れてくれたので、スティーナは緊張も少しずつほぐれてその輪にだんだんと溶け込んでいった。
ある時は街へ行き、ある時は地方へ行った。
その度にスティーナが思うのは、やはり人々の生活の格差であった。
(それは、仕方のない事なのかしら。)
そのようにスティーナは、ため息を吐くのだった。
マルメでは、祭りの時期だったからかもしれないが、とても賑やかで活気があった。皆が笑顔で、とても楽しそうであった。
他の街では、そういう人達の一方で、細々と暮らしている人達がいる事を学んだ。
宮殿に近い街では、イロナから一つの建物に連れて行かれた。
街並みはとても賑やかで、行き交う人々も普通に整った身だしなみをしており、活気があると思ったスティーナは、ある一角の屋敷にイロナに連れられて入ってとても驚いたのだ。
壁を一つ隔てたそこは、子供達がたくさんいて賑やかに走り回っていたが、着ている服が薄手で薄汚れており、スティーナはあまり見たことがない素材であった。
建物は、趣のある雰囲気を醸し出してはいるが、広い庭は花が咲いているわけではなく雑草が生えている。…いや、草ではなく、実際は畑であった。様々な食用の野菜を育てられていたのだ。
「イロナ様、ここは…?」
「素敵なたたずまいでしょう?かつては、侯爵家であったお方の屋敷よ。」
確かに敷地は広く、建物はしっかりとした素晴らしい造りであるとスティーナは思った。
「いらっしゃいませ。さぁ、こちらへ。」
そう言って建物から出迎えてくれたのは、動き易そうな緩いワンピースを着たイロナと同じ位の見た目の女性だ。
建物の中へと出迎えてくれ、入り口入ってすぐの部屋へとイロナとスティーナを案内した。そこは、部屋に六つ程大きめの机が並べられていて普段は食堂に使っている部屋だ。
「良くいらっしゃいました。私は、以前はラーシュ様の家庭教師をしておりました、アウグスタと申します。
今はもう、侯爵の爵位は返上しておりますから、私は民間人でございます。」
「スティーナ、アウグスタは爵位を国王へ返還し、残りの私財を投じてこちらをお造りになられたのよ。
もう、ここが出来てから二年経つね。
ここは、親の居ない子供達の為の家なのよ。」
アウグスタがスティーナへと挨拶をし、イロナが付け加えるようにスティーナへと言った。
「初めまして、私はスティーナ=オーグレンと申します。
私財を投じてとは、なかなかできる事ではありませんから、素晴らしいですね。」
「そうでもありません。私は、異端者ですから。」
「アウグスタ!」
「異端者、ですか…?」
「だってそうでしょう。私は、国王のしもべである貴族であるにもかかわらず国王へ苦言を呈したのですから。」
「…?」
「アウグスタは、ラーシュの先生だと言いましたね?
ラーシュが七歳の時から、アウグスタは宮殿へ来て礼儀作法を中心に国の歴史や、読み書きなどといった学校へ行く前の基本的な事を教えていたのです。
ところが、先生であるアウグスタのいう事をラーシュはあまり聞かず、なかなか身に付ける事をしなかったのです。果ては授業の時間に逃げ出していたといいます。
だから、ラーシュの奔放さに業を煮やし、アウグスタはドグラスに苦言を呈して下さったのですよ。将来の王太子になるかもしれない王子なのですからね。
けれどもドグラスは、ラーシュを叱りつけるどころか好きにさせておけと言ったそうで。そのくせ、しっかり覚えていないと学校で恥をかくからとアウグスタの力で最低限はきちんと教えるようにと言われたそうなのです。酷いわよね?」
「私は、呆れました。
やる気がない子にどうやって教えろというのでしょう。第二王子であるヴァルナル様は幼い頃より、様々な事を吸収していったといいます。比べる事はよくないでしょうが、王子であるのですからせめて学ぶ意欲くらいはあって欲しいものでした。
ウプサラ国の未来を想って私はドグラス様に進言したのですが、まるで取り合ってはくれませんでした。
ですので、このままもしもラーシュ様が王太子となられてしまったら、私はこの国に未来は無いと思い、家庭教師の任期を終えると共に爵位を返上いたしました。そのような思いのまま、貴族として国を支える事が出来ないと思ったからです。」
「ドグラスへの不信感、ともいうわよね。
その気持ちは充分過ぎるほど良く分かるわ!アウグスタ。私だって、娘夫婦に、孫の心配を口に出しても全く取り合ってはくれないのですから。
アウグスタの家族は、夫であるクリストフェルだけだったものね。」
「はい。クリストフェルには言える範囲で、ラーシュ様への学習の意欲の無さに対する愚痴を吐露していました。軍学校へ入るまでの五年、私はずっと。
するとクリストフェルは、私の任期が終わると『爵位を返上する』と言ったのです。
元々私達には子供がおらず、侯爵家は養子を取るか返上するかと話はしていました。
しかし、私の事がきっかけかもと考え申し訳なく思ったものです。それに領地がありましたからどうするのと言ったら、『領主は誰でも代えがきく。だが、君の隣には僕しかいないはずだ。五年間よく堪えてくれたね。僕は君の夫なんだ、君の辛さは僕の辛さなんだよ、だから、これからは民間人として国の行く末を見守ろう。』と言ってくれたのよ。
今でも、クリストフェルから侯爵の地位を奪ってしまって良かったのか疑問ではあるけれど、辞めてからはとても穏やかに過ごせているわ。」
「素敵な方ですね。今日はいらっしゃらないのですか?」
「いるわ。中で作業をしているから後で挨拶をさせるわね。
私が先にスティーナ様とお話をさせて欲しかったのよ。」
「え、お止め下さい!私の事はどうぞスティーナと呼んでいただきたいです。」
「それは…そうですね。では、この屋敷ではそう呼ばせていただきます。
それで、スティーナ。あなたから見てラーシュ様はどんなお方ですか。少しは意欲的に変わられたのですか。」
「ありがとうございます。
ええと…どうでしょうか。軍学校へ行かれてからはお会いしていませんし、そもそもお会いしたのも二度ほどしかありませんから。」
「そうですか…。では、見張って下さいね。国の行く末は、花祈りであるスティーナにもかかっているのですから。」
「…はい。」
スティーナは、なんと重い言葉だろうと思った。だが、アウグスタの言葉は最もだと肝に銘じた。
「さぁ、ではスティーナ。
ウプサラ国は見た目は華やかではありますが、親のいない子供や貧しい人達がいる事から目を逸らさないで下さいね。
私共は、未来を担う子供達の居場所を作る事で、国の行く末を少しでもいいものとなるように願いを込めているのです。様々な事をどうか、スティーナもどうぞ学んでいって下さい。」
アウグスタとクリストフェルは、行き場のない道端で暮らしていた子供達を連れて来ては教育をし、畑仕事をさせ、大きくなって働きに出られるように学ばせている。
二人には子供がおらず、養子を取ろうかとも話をしていたのだ。しかしアウグスタがラーシュの教育係となってしまった為、それが終わったらと二人は言っていた。
養子とはまた違うが、広い意味での子育てはアウグスタとクリストフェルは大変ではあるが、未来ある子供達を救っている事は誇りに思っていた。
「そのような機会を与えて下さりありがとうございます。」
「そう堅いこと言わずにここにいる子供達ととにかく全力でぶつかってあげる事が大事なのよ。まずは子供達に、絵本を読み聞かせてみましょうね。」
イロナは、スティーナへとウインクをしながら言葉をかける。
「え!」
「まぁ!それは良いですね!大丈夫ですよ、喜びますからお願いします。では行きましょう。」
そう言って、アウグスタは席を立ちスティーナを子供達の元へ案内する。
戸惑いながらスティーナも向かったが、子供達が快く受け入れてくれたので、スティーナは緊張も少しずつほぐれてその輪にだんだんと溶け込んでいった。
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