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19. テレサの引っ越し
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「行ってきまーす!」
「テレサ、いってらっしゃい。気をつけてね。」
「はい!お姉さま、またお会いしましょうねー!」
スティーナは、この屋敷から馬車に乗って出掛けるテレサを玄関先でヤーナと共に見送った。
テレサについていた侍女のキルシも、人手が少ないらしく共について行く。
イロナの計らいで、カトリと言うイロナの師であった人の傍へ行き、さまざまな事を学びに行くのだ。
カトリは、御年六十四である。
普段の生活を送るにはまだまだ元気ではあるが、オーグレン家へ月に何度も通うには体力が足りないと、カトリが住んでいるアーレンバリ家が所有している宮殿近くの街にテレサがしばらくの間滞在する事となったのだ。
ーーー
ーー
ー
「何だって?
次代の花姫の妹も、花姫なのかい?
そんな事あるもんか!ここ何代も、花姫がそう何人も重なっている事はなかっただろう?私達みたいに、先代、先々代、みたいなのはあるだろうがね。」
イロナが、師であるカトリに相談する為に会いに来た時の事。イロナもまた幼少時代から世話になった為に第二の母にも似た想いをカトリに抱いていた。大きくなってからは、母というより尊敬する先輩だという想いが強いけれど。
カトリもまた、ずいぶんと年齢がいった為か気心知れたイロナとの久しぶりの会話である為に軽口を叩いていた。
「いえ。といいますか、テレサが勝手にそう言っているだけで、力はないと思うのです。姉に対しての、憧れなんでしょうか…。」
「テレサと言うのが、次代の花姫の妹なんだね?
それで、隠居した私に何をさせようってのさ?」
「テレサのお世話をしていただけたら、と。
テレサとスティーナの母親は、どうやら二人が幼い頃より病に伏せっている様子で、淑女の嗜なんて教わってなさそうなのですよ。」
「ふん!知ったこっちゃないね。なんで私がそんな面倒な事やらないといけないんだい?私がそんなに暇人に見えるっていうのかい!?」
「カトリ様、そんなカッカなさらないで下さい!
案外楽しいですよ、若い人と一緒にいるのは。ここでは、もう長い間独り暮らしなのでしょう?」
「世話、ねぇ…。じゃあ、テレサは花姫に憧れてるって事かい?」
「もっと幼い頃はそんな感じに見えましたね。
最近久し振りに話をすれば、多少は憧れはあるとは思いますが、それよりも外の世界を見たい様子でした。
あの屋敷にいても、誰も連れ出してくれる人がいませんから。」
「まぁ、普通は親と一緒に何かしら出掛けたりするもんだからね。…その点は、イロナと同じか。幼い頃の自分のようで気になるのかい?」
「気にならないと言えば嘘になりますね、でも自分だけでは手に負えないのも事実でありまして…。私は、スティーナで手一杯なのです。」
「ふん。それを師である私に押し付けるってのかい?」
「どうしても無理であれば、お断り下さい。ただ、退屈されていらっしゃるのではないかと。
顔を見たくもありましたし。」
「良く言うね。
…いいだろう。その代わり、こっちに連れておいで。どうせ、母親は気にも止めていないんだろ。その調子なら、父親だってそうだろうし。
好きにやらせてもらうよ、どうせ、外の世界が見たかっただけなのなら、うちに来た方が目新しいだろうからね。」
「ありがとうございます!さすが私の師、カトリ様です。」
「調子がいいねぇ…。でもま、イロナとこうやって話が出来たのは楽しかったよ。」
「もちろん私もでございます!」
ーーー
ーー
ー
「初めまして、カトリ様!
私はオーグレン家の次女、テレサと申します。これから、よろしくお願いします!」
テレサは、アーレンバリ家の屋敷に到着し、カトリ様と対面した時に自分の覚えた最上級の礼儀を尽くして挨拶を行った。
挨拶は、馬車に乗って来た時に一緒に乗っていた侍女のキルシより何度も言葉遣いや振る舞いなどの復習をしていて完璧に出来たと思っている。
馬車から降り立った時には、とてつもない華やかな街の一角に建っているその屋敷に、遂に住み慣れたオーグレン家の屋敷以外の場所に来れたと胸がワクワクしていた。だが、それもキルシにひと声かけられた事で身を正したのだ。
「良く出来ました。挨拶は、及第点だね。
テレサ、こっちへおいで。」
「はい。」
テレサは、促されてカトリの座っている対面のソファに座った。初対面の人と会うのはほとんど経験が無い為、ましてやイロナの師だと聞いていたのでイロナより怖かったらどうしようと今さら緊張し始めたのだ。
「テレサ、良く来たね。
これから、しばらく滞在してこの屋敷で様々な事を学んでいくんだよ、いいね?」
「はい。」
「今までは当たり前のようにしていた事もこれからは出来なくなる事もある。でもそれは、しっかりとした淑女になる為に大切な事だと思いなさい。いいね?」
「はい。」
「今日から、私とテレサは師弟関係だよ。しっかりと私の言う事を聞くんだよ、分かったかい?」
「分かりました。」
「まず、これをテレサに貸してあげようね。」
そう言って手渡されたのは、花の絵と、花言葉が書いてある紙の束であった。
「これは…?」
「これは、私が学んできた花祈りに使ったものだよ。これをまず、書き写しなさい。」
「え!」
「花祈りの知識はね、花の意味から知る事だよ。
花へ祈る為には相応しい言葉ってのがあるんだ。花と言葉との相性だね。」
「!」
「それが合わなければ、いくら祈りを込めても力は発揮出来やしないよ。」
カトリはそう言って、自身が今まで書き留めてきた花とそれに祈る為の言葉の紙の束と合わせて、テレサに紙とペンを渡す。
カトリは、テレサが花祈りであったなら必要な事であるし、花祈りではなくても、それくらいは少し調べたら誰でも分かる事であるから教える事にした。
将来、姉である花祈りの手伝いをする可能性もあるし、その可能性は低くとも書き写すという事は文字の勉強にもなるからだった。
手渡され、花祈りの本質を教わったテレサは、ドキリとした。
(私、幼い時、お姉さまに適当なその辺に生えている花に向かって祈っていたわ。それで、花祈りが出来ていると思っていたのだけれど違うのかしら…渡した相手は皆、喜んでくれていたけど……今から覚えなおしたら、出来るのかしら!?
書き写すにはちょっと量が多過ぎる気がするけれど、まぁ、ゆっくりやっていけばいいでしょ!しばらく滞在していいって言ってくれたものね。)
自分の祈りが間違っていたと今さらながら教えられ、けれどもそのように楽観的に思ったテレサは、出された紅茶をゆっくりと味わうように口にした。
☆★
それからのテレサは、新しい環境で少しの緊張と、胸躍る毎日を過ごしていった。
淑女になる為の作法の学びはテレサにとって苦痛になるほとであったが、大人の女性になる為に必要な事だと言われれば、身につける他なかった。
テレサに宛がわれた部屋は、自分が過ごしていた部屋よりもかなり落ち着いた雰囲気の調度品が置いてあったが、それさえ自分が大人になったようで嬉しく思っていた。
(きっと私が淑女になる為に必要なのね。淑女…あぁなんて素敵な響きなのでしょう!まるで、物語のようだわ。これで、あそこで訓練している誰か一人、私の元へ迎えに来てくれないかしら。)
部屋の窓から見える、敷地の外に広がる景色は、広場があった。そこは、軍学校の演習場だ。そこでは毎日、軍学校の生徒が訓練をしていた。大きな声を響かせて演習をしている様はテレサにとって衝撃であった。
大勢の同じ服装をしている人達が揃って行進をしたり、試合のような事をしていたり見ていてとても迫力があった。演習場までは距離があるのにも関わらず、まるで近くにいるかのように聞こえる生徒の響きわたる声や足音や武器を合わせ合う音に、魅了されていった。
テレサは、いつかあの中にいる一人が自分の事を迎えに来てくれる王子サマであったらどんなに素敵であるかと毎日妄想に耽っていたのだ。
そして、その屋敷でテレサは心身ともに成長していくのだった。
「テレサ、いってらっしゃい。気をつけてね。」
「はい!お姉さま、またお会いしましょうねー!」
スティーナは、この屋敷から馬車に乗って出掛けるテレサを玄関先でヤーナと共に見送った。
テレサについていた侍女のキルシも、人手が少ないらしく共について行く。
イロナの計らいで、カトリと言うイロナの師であった人の傍へ行き、さまざまな事を学びに行くのだ。
カトリは、御年六十四である。
普段の生活を送るにはまだまだ元気ではあるが、オーグレン家へ月に何度も通うには体力が足りないと、カトリが住んでいるアーレンバリ家が所有している宮殿近くの街にテレサがしばらくの間滞在する事となったのだ。
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「何だって?
次代の花姫の妹も、花姫なのかい?
そんな事あるもんか!ここ何代も、花姫がそう何人も重なっている事はなかっただろう?私達みたいに、先代、先々代、みたいなのはあるだろうがね。」
イロナが、師であるカトリに相談する為に会いに来た時の事。イロナもまた幼少時代から世話になった為に第二の母にも似た想いをカトリに抱いていた。大きくなってからは、母というより尊敬する先輩だという想いが強いけれど。
カトリもまた、ずいぶんと年齢がいった為か気心知れたイロナとの久しぶりの会話である為に軽口を叩いていた。
「いえ。といいますか、テレサが勝手にそう言っているだけで、力はないと思うのです。姉に対しての、憧れなんでしょうか…。」
「テレサと言うのが、次代の花姫の妹なんだね?
それで、隠居した私に何をさせようってのさ?」
「テレサのお世話をしていただけたら、と。
テレサとスティーナの母親は、どうやら二人が幼い頃より病に伏せっている様子で、淑女の嗜なんて教わってなさそうなのですよ。」
「ふん!知ったこっちゃないね。なんで私がそんな面倒な事やらないといけないんだい?私がそんなに暇人に見えるっていうのかい!?」
「カトリ様、そんなカッカなさらないで下さい!
案外楽しいですよ、若い人と一緒にいるのは。ここでは、もう長い間独り暮らしなのでしょう?」
「世話、ねぇ…。じゃあ、テレサは花姫に憧れてるって事かい?」
「もっと幼い頃はそんな感じに見えましたね。
最近久し振りに話をすれば、多少は憧れはあるとは思いますが、それよりも外の世界を見たい様子でした。
あの屋敷にいても、誰も連れ出してくれる人がいませんから。」
「まぁ、普通は親と一緒に何かしら出掛けたりするもんだからね。…その点は、イロナと同じか。幼い頃の自分のようで気になるのかい?」
「気にならないと言えば嘘になりますね、でも自分だけでは手に負えないのも事実でありまして…。私は、スティーナで手一杯なのです。」
「ふん。それを師である私に押し付けるってのかい?」
「どうしても無理であれば、お断り下さい。ただ、退屈されていらっしゃるのではないかと。
顔を見たくもありましたし。」
「良く言うね。
…いいだろう。その代わり、こっちに連れておいで。どうせ、母親は気にも止めていないんだろ。その調子なら、父親だってそうだろうし。
好きにやらせてもらうよ、どうせ、外の世界が見たかっただけなのなら、うちに来た方が目新しいだろうからね。」
「ありがとうございます!さすが私の師、カトリ様です。」
「調子がいいねぇ…。でもま、イロナとこうやって話が出来たのは楽しかったよ。」
「もちろん私もでございます!」
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「初めまして、カトリ様!
私はオーグレン家の次女、テレサと申します。これから、よろしくお願いします!」
テレサは、アーレンバリ家の屋敷に到着し、カトリ様と対面した時に自分の覚えた最上級の礼儀を尽くして挨拶を行った。
挨拶は、馬車に乗って来た時に一緒に乗っていた侍女のキルシより何度も言葉遣いや振る舞いなどの復習をしていて完璧に出来たと思っている。
馬車から降り立った時には、とてつもない華やかな街の一角に建っているその屋敷に、遂に住み慣れたオーグレン家の屋敷以外の場所に来れたと胸がワクワクしていた。だが、それもキルシにひと声かけられた事で身を正したのだ。
「良く出来ました。挨拶は、及第点だね。
テレサ、こっちへおいで。」
「はい。」
テレサは、促されてカトリの座っている対面のソファに座った。初対面の人と会うのはほとんど経験が無い為、ましてやイロナの師だと聞いていたのでイロナより怖かったらどうしようと今さら緊張し始めたのだ。
「テレサ、良く来たね。
これから、しばらく滞在してこの屋敷で様々な事を学んでいくんだよ、いいね?」
「はい。」
「今までは当たり前のようにしていた事もこれからは出来なくなる事もある。でもそれは、しっかりとした淑女になる為に大切な事だと思いなさい。いいね?」
「はい。」
「今日から、私とテレサは師弟関係だよ。しっかりと私の言う事を聞くんだよ、分かったかい?」
「分かりました。」
「まず、これをテレサに貸してあげようね。」
そう言って手渡されたのは、花の絵と、花言葉が書いてある紙の束であった。
「これは…?」
「これは、私が学んできた花祈りに使ったものだよ。これをまず、書き写しなさい。」
「え!」
「花祈りの知識はね、花の意味から知る事だよ。
花へ祈る為には相応しい言葉ってのがあるんだ。花と言葉との相性だね。」
「!」
「それが合わなければ、いくら祈りを込めても力は発揮出来やしないよ。」
カトリはそう言って、自身が今まで書き留めてきた花とそれに祈る為の言葉の紙の束と合わせて、テレサに紙とペンを渡す。
カトリは、テレサが花祈りであったなら必要な事であるし、花祈りではなくても、それくらいは少し調べたら誰でも分かる事であるから教える事にした。
将来、姉である花祈りの手伝いをする可能性もあるし、その可能性は低くとも書き写すという事は文字の勉強にもなるからだった。
手渡され、花祈りの本質を教わったテレサは、ドキリとした。
(私、幼い時、お姉さまに適当なその辺に生えている花に向かって祈っていたわ。それで、花祈りが出来ていると思っていたのだけれど違うのかしら…渡した相手は皆、喜んでくれていたけど……今から覚えなおしたら、出来るのかしら!?
書き写すにはちょっと量が多過ぎる気がするけれど、まぁ、ゆっくりやっていけばいいでしょ!しばらく滞在していいって言ってくれたものね。)
自分の祈りが間違っていたと今さらながら教えられ、けれどもそのように楽観的に思ったテレサは、出された紅茶をゆっくりと味わうように口にした。
☆★
それからのテレサは、新しい環境で少しの緊張と、胸躍る毎日を過ごしていった。
淑女になる為の作法の学びはテレサにとって苦痛になるほとであったが、大人の女性になる為に必要な事だと言われれば、身につける他なかった。
テレサに宛がわれた部屋は、自分が過ごしていた部屋よりもかなり落ち着いた雰囲気の調度品が置いてあったが、それさえ自分が大人になったようで嬉しく思っていた。
(きっと私が淑女になる為に必要なのね。淑女…あぁなんて素敵な響きなのでしょう!まるで、物語のようだわ。これで、あそこで訓練している誰か一人、私の元へ迎えに来てくれないかしら。)
部屋の窓から見える、敷地の外に広がる景色は、広場があった。そこは、軍学校の演習場だ。そこでは毎日、軍学校の生徒が訓練をしていた。大きな声を響かせて演習をしている様はテレサにとって衝撃であった。
大勢の同じ服装をしている人達が揃って行進をしたり、試合のような事をしていたり見ていてとても迫力があった。演習場までは距離があるのにも関わらず、まるで近くにいるかのように聞こえる生徒の響きわたる声や足音や武器を合わせ合う音に、魅了されていった。
テレサは、いつかあの中にいる一人が自分の事を迎えに来てくれる王子サマであったらどんなに素敵であるかと毎日妄想に耽っていたのだ。
そして、その屋敷でテレサは心身ともに成長していくのだった。
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