【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…

まりぃべる

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9. カッセル視点

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 私はカッセル=ターボル。この国の王太子だ。


 私はもうすぐ二十歳になる。両親から、そろそろお相手を、と言われている。だけどそんなの、簡単に決められるわけないじゃないか。相手は、王妃となるんだから。
議会にも、かけなければならないなんて…私に人権なんてあるのかと声を大にして言いたい。

 …けど、まぁ仕方ないか。そんな事をしないといけないのなら、こっちだって、考えがある。茶番に付き合ってもらうとするか。

 月夜会で気に入った者数人をそのまま王宮に滞在させ、その中から私の相手を選ぶ、という事にしよう。



 我が国の西隣のバウツェン国は友好国で、そこの王子も私と同じ年齢だから昔から仲が良い。
その王子であるルドヴィークが、好戦的な北の国のセンプテン国と同盟を組む事に成功したのが、つい半年ほど前。

 我が国にも度々、南北に細長いソベレツ領の北側に接するセンプテン国が攻めて来て、ソベレツの領主であるキーベックには世話を掛けていたから、こちらとしてもかなり助かった。


 だから、ルドヴィークの願いなんて安いものさ。


 ルドヴィークは、幼少期に会っていた、ソベレツ辺境伯の娘であるエミーリエと結婚したいらしい。

 ルドヴィークの母であるバウツェン国のグーラ王妃は、ソベレツ辺境伯の妻であるユスティーナ夫人と姉妹だったから、隣国に嫁いできたユスティーナの所へ度々お忍びで遊びに来ていたのだとか。
そこで、子供同士よく遊んでいた、と。

 だがユスティーナ夫人が亡くなり、交流が途絶えた。

 ルドヴィークも、その頃から王太子になる為の教育がより一層される事となり、なかなか気に掛ける事が出来なかった。

 そしてようやく、長年好戦的だったセンプテン国と同盟を結ぶという実績を作る事が出来、年齢が二十歳になる事も重なって結婚の許可が下りた。

 ルドヴィークは、我が国に来て社交界に顔を出し、エミーリエを探し始めた。

 だが、肝心のエミーリエが社交界に顔を出さなかった。

 
 いつの間にか、ソベレツ辺境伯には後妻がおり、その娘が社交界に顔を出してはいたが、エミーリエの姿を見る事はなかった。
実際、私はルドヴィークに言われるまでそんな娘がいる事をすっかり忘れていた。

 だから、王命でもって出て来させた。

 銀色の髪は、バウツェン国の王族の血が少なからず入っている証拠。確か、グーラ王妃とユスティーナはバウツェン国の公爵家の血筋だったか。
エミーリエが耳に嵌めていたイヤリングは、バウツェン国の王族や公爵家にしか手に出来ない貴重な物。きっと、母親ユスティーナからもらったのだろう。


 彼女が社交界に出て来ない理由を考えたが、やはり、義母と義妹が関係していそうだ。指輪さえ、取られるとかなんとか…。あの貴重なイヤリング、よく手元に残っていたものだ。

 私の直接の敵ではないが、面白そうだから義妹、ちょっとその気にさせてみるか。


 どう足掻いても私の結婚相手は、家柄も人柄も良い、公爵家のケイク=アンジャスミンになりそうだからな。私も、アンジャスミンであれば夫婦関係が築けるだろうと思う。
だから、アンジャスミンにもこの出来レースの真相を伝えておくとしよう。いろいろと誤解されると、その後の結婚生活に響いてもいけないからな。
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