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4. 月夜会へ
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「さぁ出来ましたよ。」
「カリツ、ありがとう。髪型も可愛くしてくれて。とても素敵ね!このドレスもなんだか私にぴったりだわ!」
ドレスは、黒色に金や銀の刺繍が入っている。でも、生地が滑らかで、ところどころにキラキラと光る素材が生地に縫い込まれているから夜の暗い所でも浮かびあがったように見えて映えるのですって。
私の、銀色の髪にもよく似合っているわ。
「はい、とても良くお似合いです、エミーリエ様。お母様であられるユスティーナ様にも見せてあげたかった…!」
「もう!カリツったら。それは言わないでちょうだい。でも、ありがとう。じゃあ、憂鬱だけれど行ってくるわね。」
「あ、お待ち下さい!どうぞ最後にこれを付けましょう。」
「そ…それは…!」
「勝手をして申し訳ありません。私が、ユスティーナ様の物をお持ちしておりました。これは、ユスティーナ様が、『エミーリエ様が大きくなられたら渡したい』と言われておりましたものです。あのまま、エミーリエ様の宝飾箱に入れていたら取られていたかもしれませんから。」
それは、亡きお母様が存命の頃、よくされていたイヤリング。
銀色に、小さな黒い宝石が一つ嵌まっている。
「こちらは、ユスティーナ様がお輿入れの際にお持ちになったのです。ですから、あの二人が取ったらさすがにご実家が黙ってはおられないと思いますし、盗人と同じだと思いますけれど。今日も一緒にお出かけにはなりませんので、そんなにとやかく言われないと思います。」
「そうなの…。よく持っていてくれたわね、ありがとう。」
今日は、月夜会。
運良くというか、ヨハナ達は数日前に先に王都へ向かったので別行動が出来た。
私も、昨日王都へ付き、一番安い宿ではあるけれど泊まる手筈としてくれていた。
カリツは『二人は高級宿にお泊まりなのでしょうね、きっと!正統なるソベレツ辺境伯令嬢は、あの二人ではなくエミーリエ様であられる只お一人ですのに!!』なんてプリプリと怒っていたのだけれど、まぁ、雨風しのげたのだもの。文句は言えないわ。
「はぁ。本当に憂鬱だけれど、カリツが、途中まで一緒に行ってくれるからそれだけが救いね。じゃあ行きましょうか。」
「わぁ…!」
王宮へは、お母様達が存命の頃はよく連れられて来ていたらしいけれど、あまり記憶にない。
ヨハナやガリナが王宮へ行く度に自慢げに話してはくれるから、なんとなく想像はいつもしているけれど、やはり想像と実際に見るのとでは全く違った。
左右に、何処まで続いているか分からないほどの大きな建物が広がっている。正面には幅広い木製の橋が掛かっていて、馬車が行き交っている。
これから、今まで別世界だと思っていた王宮に足を踏み入れるのね。今日で最初で最後かと思うから、精一杯楽しみましょうか。
「カリツ、ありがとう。髪型も可愛くしてくれて。とても素敵ね!このドレスもなんだか私にぴったりだわ!」
ドレスは、黒色に金や銀の刺繍が入っている。でも、生地が滑らかで、ところどころにキラキラと光る素材が生地に縫い込まれているから夜の暗い所でも浮かびあがったように見えて映えるのですって。
私の、銀色の髪にもよく似合っているわ。
「はい、とても良くお似合いです、エミーリエ様。お母様であられるユスティーナ様にも見せてあげたかった…!」
「もう!カリツったら。それは言わないでちょうだい。でも、ありがとう。じゃあ、憂鬱だけれど行ってくるわね。」
「あ、お待ち下さい!どうぞ最後にこれを付けましょう。」
「そ…それは…!」
「勝手をして申し訳ありません。私が、ユスティーナ様の物をお持ちしておりました。これは、ユスティーナ様が、『エミーリエ様が大きくなられたら渡したい』と言われておりましたものです。あのまま、エミーリエ様の宝飾箱に入れていたら取られていたかもしれませんから。」
それは、亡きお母様が存命の頃、よくされていたイヤリング。
銀色に、小さな黒い宝石が一つ嵌まっている。
「こちらは、ユスティーナ様がお輿入れの際にお持ちになったのです。ですから、あの二人が取ったらさすがにご実家が黙ってはおられないと思いますし、盗人と同じだと思いますけれど。今日も一緒にお出かけにはなりませんので、そんなにとやかく言われないと思います。」
「そうなの…。よく持っていてくれたわね、ありがとう。」
今日は、月夜会。
運良くというか、ヨハナ達は数日前に先に王都へ向かったので別行動が出来た。
私も、昨日王都へ付き、一番安い宿ではあるけれど泊まる手筈としてくれていた。
カリツは『二人は高級宿にお泊まりなのでしょうね、きっと!正統なるソベレツ辺境伯令嬢は、あの二人ではなくエミーリエ様であられる只お一人ですのに!!』なんてプリプリと怒っていたのだけれど、まぁ、雨風しのげたのだもの。文句は言えないわ。
「はぁ。本当に憂鬱だけれど、カリツが、途中まで一緒に行ってくれるからそれだけが救いね。じゃあ行きましょうか。」
「わぁ…!」
王宮へは、お母様達が存命の頃はよく連れられて来ていたらしいけれど、あまり記憶にない。
ヨハナやガリナが王宮へ行く度に自慢げに話してはくれるから、なんとなく想像はいつもしているけれど、やはり想像と実際に見るのとでは全く違った。
左右に、何処まで続いているか分からないほどの大きな建物が広がっている。正面には幅広い木製の橋が掛かっていて、馬車が行き交っている。
これから、今まで別世界だと思っていた王宮に足を踏み入れるのね。今日で最初で最後かと思うから、精一杯楽しみましょうか。
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