【完結】トリマーだった私が異世界という別の場所で生きていく事になりました。

まりぃべる

文字の大きさ
上 下
7 / 32

7. 刃物は高い

しおりを挟む
 歩みを進め、鍛冶屋に着いた二人は、エイダが先に店に入った。

 どうやら、鍛冶屋に刃物全般が売っているらしい。
レナは入り口から、店の中に飾られた様々な種類の刃物を見て驚いた。

(本当にいろんな種類の刃物があるのね…!長い包丁みたいなものや、剣のような物や、小さい物だと糸切りばさみみたいなものとかがあるわ。でも…うーん……あ!あれが似ているわ!)

 ハサミはいろいろな種類があるが、レナがこれだと思う物が無かった。
ただ、似たようなハサミはあったがレナは人間の髪を切る物だろうと思った。

「いらっしゃい。何をお探しで?」

「済まないが今日は買わないがね、値段を見せてもらいたくて来たんだ。」

 奥のカウンターに座っていた恰幅のいい男性店員が立ち上がり、そう声を掛けられたエイダは答えた。

「なるほどね。うちはバリウェリーにある鍛冶屋で一番だと思っているよ!だから安心して選んでくれ!次回来た時に購入してくれるとありがたいな!よし、じゃあどういうのが欲しいんだい?さすがに刀剣では無いだろう?包丁かい?」

「いや、違うね。レナ、どういうやつなんだい?お目当てのはあったかい?」

 店員に聞かれたエイダがレナへと話を振った。
店内の商品をいろいろと見ていたレナも、はっとして店員とエイダを見つめ答えた。

「ええと…動物の毛を切るハサミなんて無いですか。」

 レナは、見た目無さそうだと思ったが、もしかしたら店の奥にあるかもしれないと淡い期待を持ちつつそう問いかける。

「動物?ヒツジかい?このハサミだったら、ヒツジの毛が良く切れると評判だよ。なんだ、ヒツジ飼いかい?」

 店員はそう言って、カウンターのショーケースに飾られた、持ち手が丸く湾曲している糸切りばさみのようなハサミを指指した。

「ヒツジ飼いじゃないよ!…レナ、どうだい?こういうハサミかい?」

「うーん…じゃぁ、人の髪の毛を切るハサミはありますか?」

「違うのか?人の髪の毛?あんた、理髪師か?だったらこっちだな。」

 今度は、レナも見た事あるハサミが出てきた。美容院で、鏡越しに見るとカットしてくれる人が持っているようなハサミだった。

(ヒツジとはちょっと毛並みが違うし、扱い慣れているのに似ている形のが、使いやすいだろうなぁ。刃先の長さが短くはあるけれど。)

 レナは見せてもらったハサミを見比べてそのように思った。
しかし、ハサミは置いてあるが値段が書いてはいない。なのでレナは店員に聞いてみる事にした。

「これって、お幾らなんですか?」

「あぁ、それは切れ味がいいし、ものがいいからな。」

 そう言った店員は右の掌を広げた。

「五?五ダルかい?」

 エイダは、その店員の掌を見て呟くと、店員は吹き出した。

「馬鹿言ったらいけねぇよ!五ダルじゃあそこいらで売ってるパンだって買えねぇ。パンだってだいたい三百ダル前後だろ?ここにあるのは皆、丹精込めた自信作ばかりさ!それは五十万ダルだね。」

「五十万ダル!?」

 ここのお金の呼び名がダルと言う。
 レナもパンを買ったり、靴磨きで稼いだ金額を見て、こちらの世界へ来る前と相場はなんとなくだが似たようなものだと思った。だから五十万ダルと言われ、

「えっ!?」

(ハサミが五十万円!?)

 とレナもとても驚き、そして落胆した。

(五十万か…そんなに貯めるまで、どのくらい日数がかかるのかなぁ。)

「なんだい?舐めてもらっちゃ困るぜ!うちは一流なんだからな!さぁ、たんと稼いだらまた来な!」

 エイダとレナはすごすごと店を出た。

「んー、刃物は高いと思ったんだが、あんなにするんだねぇ……。ま、レナのやっていたという、〝とりまあ〟はここでは難しいだろうし、しばらく私に付き合っておくれよ。」

 エイダはそう言ってレナの肩をぽんと叩き、慰めた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完】嫁き遅れの伯爵令嬢は逃げられ公爵に熱愛される

えとう蜜夏☆コミカライズ中
恋愛
 リリエラは母を亡くし弟の養育や領地の執務の手伝いをしていて貴族令嬢としての適齢期をやや逃してしまっていた。ところが弟の成人と婚約を機に家を追い出されることになり、住み込みの働き口を探していたところ教会のシスターから公爵との契約婚を勧められた。  お相手は公爵家当主となったばかりで、さらに彼は婚約者に立て続けに逃げられるといういわくつきの物件だったのだ。  少し辛辣なところがあるもののお人好しでお節介なリリエラに公爵も心惹かれていて……。  22.4.7女性向けホットランキングに入っておりました。ありがとうございます 22.4.9.9位,4.10.5位,4.11.3位,4.12.2位  Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.  ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

【完】まさかの婚約破棄はあなたの心の声が聞こえたから

えとう蜜夏☆コミカライズ中
恋愛
伯爵令嬢のマーシャはある日不思議なネックレスを手に入れた。それは相手の心が聞こえるという品で、そんなことを信じるつもりは無かった。それに相手とは家同士の婚約だけどお互いに仲も良く、上手くいっていると思っていたつもりだったのに……。よくある婚約破棄のお話です。 ※他サイトに自立も掲載しております 21.5.25ホットランキング入りありがとうございました( ´ ▽ ` )ノ  Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.  ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています

水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。 森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。 公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。 ◇画像はGirly Drop様からお借りしました ◆エール送ってくれた方ありがとうございます!

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

《完結》《異世界アイオグリーンライト・ストーリー》でブスですって!女の子は変われますか?変われました!!

皇子(みこ)
恋愛
辺境の地でのんびり?過ごして居たのに、王都の舞踏会に参加なんて!あんな奴等のいる所なんて、ぜーたいに行きません!でブスなんて言われた幼少時の記憶は忘れないー!

処理中です...