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15. 馬車に乗る
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アモリーに連れられてレナは王宮へと向かう。時間が掛かるからと、馬車乗り場から王宮に向かう巡廻馬車に乗り込んだ。
日が暮れて王宮に向かう人は少ないのか、他には帽子を深く被って顔を常に下に向けている男性が一人、停留所から一緒に乗り込んだ。
「馬車になんて初めて乗ります。」
と、レナはアモリーへと初めて馬車に乗るワクワク感もあり話し掛けた。
木で出来たベンチのような座席で、ガタガタと揺れて長く乗っているとお尻が痛くなりそうだとレナは思った。
「俺もだ。普段は歩くからな。でも、今回ばかりは仕方ない。早い方がいいから。」
「そうなのですね、すみません。」
「いや?母ちゃんに付き合ってくれてありがとうよ。鬱陶しくなかったか?」
「いいえ、そんな事は。いつも面倒見て下さって有り難かったです。」
「そうか。その…済まないな、仕事も辞める事になって。もしかしたら、王宮内で出来るかもしれないし、困った事があったら、その…保安院まで来てくれれば、俺が力になれると思うから。」
アモリーは、鼻をこすりながらそう言った。
「ええ…ありがとうございます。でも仕事は残念ですが無理かもしれません。」
「どうして?異世界人には手厚い保護があるのだから、言ったら要望も聞いてくれるのだと思うよ。」
「でも、この国は動物と無闇に接してはいけないって聞きました。可哀想に、触れて欲しい子もいるのに、道ゆく人は知らん振りをしているのです。」
「ええと、レナの仕事は何だったの?動物に関係が?」
アモリーは、仕事の事を話したのになぜか動物の話になったのでそう怪訝そうにレナへと聞いた。
「あ、言ってませんでしたね。私、トリマー…この国では、理髪師?をしてます。元々は、動物の手入れをする仕事をしていたのです。それを応用して、人の髪を切らせてもらってました。」
「動物の手入れ?んー、異世界では、そんな事も仕事になるのか。でも、金にならないよね?」
「ここではお金になりませんね。だから、ほとんど自己満足です。でも、目や口が見えない程毛がボサボサになってしまった子や、毛が伸びすぎて地面に付いてしまった子の毛を切ったり、洗ってあげる事は、首都バリウェリーの衛生状態も良くなるはずです。」
「なんと…!あ!」
レナとアモリーが話していると、一緒に乗っていた男性が口を開き、慌てて閉じた。
「?」
「どうしました?」
レナは首を傾げた。
アモリーが口に出してそう聞くと、男性は帽子を目深に被り顔を下に向けたまま、ばつが悪そうにボソボソと話した。
「いや…す、済まん。話が聞こえてしまって。わしも動物が好きなんじゃ。だがな、この国の決まりがあるじゃろ、動物に無闇に関わりを持たないと。それで、バリウェリーに行った際にも動物をついでに愛でてるんじゃが、ここ一週間で、なんというか…愛くるしさが増したんじゃ。勝手に毛が短くなったり、綺麗な毛になるわけないと思ったが、まさかそのお嬢さんの仕業だったとは…!」
「や、あの…」
「いや!彼女は、異世界人です!!ですから、この国の決まりを知らなくてですね、別に決まり事を破ろうとした訳では決してありません!処分だけはお止め下さい!」
相手が誰であるかは、帽子を被っていて分からないがアモリーは慌ててそう庇った。
「いえ、私はちゃんと忠告は受けました。でも、どうしても動物達に目を背ける事が出来なかったのです。私がいた世界では、ネコやイヌは身近な存在で、家族として同じ家の中で生活している家もありました。その子たちのお手入れをする仕事に従事していたのです。もし、それで罰せられるなら仕方ないとは思いますが、動物達にはせめて、もう少しましな環境を与えてあげてほしいです。」
レナは、せっかくアモリーが庇ってくれたが、嘘は付きたくないし、自分のやってきた事に誇りを持っている為、言い直した。
「…ましな環境とな?」
「だって、ゴミを漁っているし、それを皆見て見ぬ振りをしていますから。本当だったら、地域動物として管理できるといいのだと思います。自分の毛で前が見えなくてヨタヨタとしか歩けなくなっているイヌもいましたし。」
「ふむ。管理のう…。」
「でも、決まり事があるからな…。」
「そうでしたね。それも、変えてしまえばいいのに。どうしてそんな決まり事が出来たのでしょうか。」
「さぁ…?俺も詳しくは知らないが、動物と触れ合っている奴は反国精神があると見なされるとかって聞いたけど…?」
「…それをどう思う?」
「え?」
「どうって…。」
「ここだけの話じゃ。わしはそなた達の顔を見ておらんし、そなた達もわしの顔は見えんじゃろ?ここだけの話、それを聞いてどう思った?」
「はっきり申し上げると、バカバカしいです。」
「レナ!」
「だって、ここだけの話と言って下さったのですから。どうして動物と仲良くすると国を陥れる人となるのか、意味が分からないです。動物を使って、国を陥れるとか考えているのでしょうか。あり得ませんし、動物は癒しです!排除するのは間違ってると思います!」
「なるほど。そちらの青年は?」
「お…いえ、僕も、小さい頃から動物には近寄るなと言われていました。だから、今更な感じはありますが確かに、癒されますね。」
「そうか。いや、貴重な意見じゃった。あ、そろそろ着いたようじゃ。ではわしは先に降りるぞ。ゆっくり降りておくれ。…ありがとう。」
そう言って、その年齢不詳な男性は帽子のつばを右手で抑えながら馬車を降りて行った。
日が暮れて王宮に向かう人は少ないのか、他には帽子を深く被って顔を常に下に向けている男性が一人、停留所から一緒に乗り込んだ。
「馬車になんて初めて乗ります。」
と、レナはアモリーへと初めて馬車に乗るワクワク感もあり話し掛けた。
木で出来たベンチのような座席で、ガタガタと揺れて長く乗っているとお尻が痛くなりそうだとレナは思った。
「俺もだ。普段は歩くからな。でも、今回ばかりは仕方ない。早い方がいいから。」
「そうなのですね、すみません。」
「いや?母ちゃんに付き合ってくれてありがとうよ。鬱陶しくなかったか?」
「いいえ、そんな事は。いつも面倒見て下さって有り難かったです。」
「そうか。その…済まないな、仕事も辞める事になって。もしかしたら、王宮内で出来るかもしれないし、困った事があったら、その…保安院まで来てくれれば、俺が力になれると思うから。」
アモリーは、鼻をこすりながらそう言った。
「ええ…ありがとうございます。でも仕事は残念ですが無理かもしれません。」
「どうして?異世界人には手厚い保護があるのだから、言ったら要望も聞いてくれるのだと思うよ。」
「でも、この国は動物と無闇に接してはいけないって聞きました。可哀想に、触れて欲しい子もいるのに、道ゆく人は知らん振りをしているのです。」
「ええと、レナの仕事は何だったの?動物に関係が?」
アモリーは、仕事の事を話したのになぜか動物の話になったのでそう怪訝そうにレナへと聞いた。
「あ、言ってませんでしたね。私、トリマー…この国では、理髪師?をしてます。元々は、動物の手入れをする仕事をしていたのです。それを応用して、人の髪を切らせてもらってました。」
「動物の手入れ?んー、異世界では、そんな事も仕事になるのか。でも、金にならないよね?」
「ここではお金になりませんね。だから、ほとんど自己満足です。でも、目や口が見えない程毛がボサボサになってしまった子や、毛が伸びすぎて地面に付いてしまった子の毛を切ったり、洗ってあげる事は、首都バリウェリーの衛生状態も良くなるはずです。」
「なんと…!あ!」
レナとアモリーが話していると、一緒に乗っていた男性が口を開き、慌てて閉じた。
「?」
「どうしました?」
レナは首を傾げた。
アモリーが口に出してそう聞くと、男性は帽子を目深に被り顔を下に向けたまま、ばつが悪そうにボソボソと話した。
「いや…す、済まん。話が聞こえてしまって。わしも動物が好きなんじゃ。だがな、この国の決まりがあるじゃろ、動物に無闇に関わりを持たないと。それで、バリウェリーに行った際にも動物をついでに愛でてるんじゃが、ここ一週間で、なんというか…愛くるしさが増したんじゃ。勝手に毛が短くなったり、綺麗な毛になるわけないと思ったが、まさかそのお嬢さんの仕業だったとは…!」
「や、あの…」
「いや!彼女は、異世界人です!!ですから、この国の決まりを知らなくてですね、別に決まり事を破ろうとした訳では決してありません!処分だけはお止め下さい!」
相手が誰であるかは、帽子を被っていて分からないがアモリーは慌ててそう庇った。
「いえ、私はちゃんと忠告は受けました。でも、どうしても動物達に目を背ける事が出来なかったのです。私がいた世界では、ネコやイヌは身近な存在で、家族として同じ家の中で生活している家もありました。その子たちのお手入れをする仕事に従事していたのです。もし、それで罰せられるなら仕方ないとは思いますが、動物達にはせめて、もう少しましな環境を与えてあげてほしいです。」
レナは、せっかくアモリーが庇ってくれたが、嘘は付きたくないし、自分のやってきた事に誇りを持っている為、言い直した。
「…ましな環境とな?」
「だって、ゴミを漁っているし、それを皆見て見ぬ振りをしていますから。本当だったら、地域動物として管理できるといいのだと思います。自分の毛で前が見えなくてヨタヨタとしか歩けなくなっているイヌもいましたし。」
「ふむ。管理のう…。」
「でも、決まり事があるからな…。」
「そうでしたね。それも、変えてしまえばいいのに。どうしてそんな決まり事が出来たのでしょうか。」
「さぁ…?俺も詳しくは知らないが、動物と触れ合っている奴は反国精神があると見なされるとかって聞いたけど…?」
「…それをどう思う?」
「え?」
「どうって…。」
「ここだけの話じゃ。わしはそなた達の顔を見ておらんし、そなた達もわしの顔は見えんじゃろ?ここだけの話、それを聞いてどう思った?」
「はっきり申し上げると、バカバカしいです。」
「レナ!」
「だって、ここだけの話と言って下さったのですから。どうして動物と仲良くすると国を陥れる人となるのか、意味が分からないです。動物を使って、国を陥れるとか考えているのでしょうか。あり得ませんし、動物は癒しです!排除するのは間違ってると思います!」
「なるほど。そちらの青年は?」
「お…いえ、僕も、小さい頃から動物には近寄るなと言われていました。だから、今更な感じはありますが確かに、癒されますね。」
「そうか。いや、貴重な意見じゃった。あ、そろそろ着いたようじゃ。ではわしは先に降りるぞ。ゆっくり降りておくれ。…ありがとう。」
そう言って、その年齢不詳な男性は帽子のつばを右手で抑えながら馬車を降りて行った。
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