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25. 皇帝陛下を支える人々 重鎮達の呟き
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「いやぁ、一時はどうなる事かと思ったが、いいように転がりましたな。」
「本当に。ルドフィカス様は小さな頃から気が優しいので、噂の銀獅子と本当に夫婦関係が築けるのかと心配しましたが、迎えに行かせたのは良かったのですな。」
「まぁ、ルドフィカス様は我々の子どもや孫の年齢と言っても過言ではないから、親心もありますしねぇ。本当にやきもきしました!」
議会が終わり、夜の帳もすでに下りてしまったので重鎮達は各々帰るより、少し話そうと議会室の手前にある応接室へと誰からともなく向かったのだ。
「しかし、やはり先入観とは恐ろしいものですな。銀獅子とは、もっとこう…豪傑でおんな城主みたいな気性の激しさも兼ね備えている女性かと思いましたが、柔らかい雰囲気を持つ女性でしたなぁ。」
「そうですな。踊り子の小娘とはまた違う感じの、扱い難さも覚悟しておりましたが、初見ではそのように見受けられませんでしたな。」
「本当に。ルドフィカス様ももうすでに手を繋いで移動しておるし、仲も宜しいようで、これならば帝国の未来も繁栄を期待出来そうですな。」
「あれは演出ではないのですかな?我々に見せるだけの。」
「いやいや、先ほど帰ってきてすぐにお会いした時も手を繋がれておりましたぞ。」
「おお、我々も見ましたぞ。」
「そうそう。仲良く会話しておられて。」
「ほう、それは良い兆候ですな。」
「ルドフィカス様にされたら、ご家族を立て続けに亡くされて大変だったでしょうに、過酷な事を課してしまって本当に申し訳ないと我々も心配でしたからなぁ。」
「我々も心を鬼にして、皇帝陛下の息子として跡を継がせてしまいましたからな。」
「しかしこれできっと、ルドフィカス様も安心して心を開ける場所が出来たのではないですかな。」
「あの表情を見ていれば、一目瞭然ですなぁ。」
「結婚式も早めたいとか言い出しましたからなぁ。」
「まぁ我々としても、仲良くしてもらえるに越した事はありませんからねぇ。」
「あとはドレスの採寸直しだけですかな?」
「各国に早馬を出さねばなりませんね。」
「うーん、そうですなぁ。間に合いそうになければ、お披露目だけ先にして、近隣諸国の要人は別の機会に招待するのもいいのではないですかな?」
「おお、それがよろしいのでは?」
「そうですな、それなら早めても良さそうですな。」
「全く…我々の皇帝陛下のワガママにも困ったもんですなぁ。」
「本当に。やっとワガママを言ってくれるようになって、これぞ皇帝陛下ってもんですからなぁ。」
「ディーデリック様もよく、ワガママを言われ、我々を振り回してくれましたからなぁ。」
「もっと振り回すくらいでないと、我々がいる意義がないですからな。」
「臨時議会と言われたのも、嬉しかったですなぁ。」
「昔はよく真夜中でも臨時議会がありましたからなぁ。」
「誰が一番最後に入室するかで競っておりましたなぁ。最後の人が、皆に後日詫び酒を贈ると。」
「ああ懐かしや。ん?今回は誰が最後に入室でしたかな?」
「私は違いますぞ。」
「私だって違いますぞ。」
「まぁ、今回は久々という事で無しでいいじゃないですか。」
「あ、お主だったような?」
「そうじゃそうじゃ!」
「ばれてしまいましたか。仕方有るまい。では、後日詫び酒を皆に振る舞いますぞ。」
「お!待っておるぞ!」
「ありがたや、ありがたや。」
「さて、明日から忙しくなりますな。」
「そうですな。これで活気づきますな。」
「今まで暗かった宮廷もきっと、華やかで明るくなりそうですな。」
「そうですなぁ。…それはそうと、そろそろ息子にこの座を渡してもいいかもしれないと思うのです。」
「お、私も同じ事を思っておった。」
「まだ早くないか?」
「なんの。今までルドフィカス様はどうも危なっかしくてお支えせねばとやっておりましたが、今日のルドフィカス様を見て大丈夫そうだと思いましてな。御子が生まれる頃には、と。」
「そうじゃな。ルドフィカス様もやっと、心が定まったようにお見受けしましたな。」
「確かに。しかし、隠居した後もたまには集まろうぞ。」
「おお、よろしいな。その時はまた競ってみるか?」
「止めて下され。今はタウンハウスだが私が一番遠い領地なのですぞ。」
「では旅行がてら、そちらの領地へ集まらせてもらうか?」
「おおそれがいい。」
「いや、そうすると私が遠くなる。」
「ーーー………」
「ーー……」
「ーーーー………」
今日も重鎮達は、仲良く賑やかにアーネムヘルム帝国の皇帝陛下を支えている。
「本当に。ルドフィカス様は小さな頃から気が優しいので、噂の銀獅子と本当に夫婦関係が築けるのかと心配しましたが、迎えに行かせたのは良かったのですな。」
「まぁ、ルドフィカス様は我々の子どもや孫の年齢と言っても過言ではないから、親心もありますしねぇ。本当にやきもきしました!」
議会が終わり、夜の帳もすでに下りてしまったので重鎮達は各々帰るより、少し話そうと議会室の手前にある応接室へと誰からともなく向かったのだ。
「しかし、やはり先入観とは恐ろしいものですな。銀獅子とは、もっとこう…豪傑でおんな城主みたいな気性の激しさも兼ね備えている女性かと思いましたが、柔らかい雰囲気を持つ女性でしたなぁ。」
「そうですな。踊り子の小娘とはまた違う感じの、扱い難さも覚悟しておりましたが、初見ではそのように見受けられませんでしたな。」
「本当に。ルドフィカス様ももうすでに手を繋いで移動しておるし、仲も宜しいようで、これならば帝国の未来も繁栄を期待出来そうですな。」
「あれは演出ではないのですかな?我々に見せるだけの。」
「いやいや、先ほど帰ってきてすぐにお会いした時も手を繋がれておりましたぞ。」
「おお、我々も見ましたぞ。」
「そうそう。仲良く会話しておられて。」
「ほう、それは良い兆候ですな。」
「ルドフィカス様にされたら、ご家族を立て続けに亡くされて大変だったでしょうに、過酷な事を課してしまって本当に申し訳ないと我々も心配でしたからなぁ。」
「我々も心を鬼にして、皇帝陛下の息子として跡を継がせてしまいましたからな。」
「しかしこれできっと、ルドフィカス様も安心して心を開ける場所が出来たのではないですかな。」
「あの表情を見ていれば、一目瞭然ですなぁ。」
「結婚式も早めたいとか言い出しましたからなぁ。」
「まぁ我々としても、仲良くしてもらえるに越した事はありませんからねぇ。」
「あとはドレスの採寸直しだけですかな?」
「各国に早馬を出さねばなりませんね。」
「うーん、そうですなぁ。間に合いそうになければ、お披露目だけ先にして、近隣諸国の要人は別の機会に招待するのもいいのではないですかな?」
「おお、それがよろしいのでは?」
「そうですな、それなら早めても良さそうですな。」
「全く…我々の皇帝陛下のワガママにも困ったもんですなぁ。」
「本当に。やっとワガママを言ってくれるようになって、これぞ皇帝陛下ってもんですからなぁ。」
「ディーデリック様もよく、ワガママを言われ、我々を振り回してくれましたからなぁ。」
「もっと振り回すくらいでないと、我々がいる意義がないですからな。」
「臨時議会と言われたのも、嬉しかったですなぁ。」
「昔はよく真夜中でも臨時議会がありましたからなぁ。」
「誰が一番最後に入室するかで競っておりましたなぁ。最後の人が、皆に後日詫び酒を贈ると。」
「ああ懐かしや。ん?今回は誰が最後に入室でしたかな?」
「私は違いますぞ。」
「私だって違いますぞ。」
「まぁ、今回は久々という事で無しでいいじゃないですか。」
「あ、お主だったような?」
「そうじゃそうじゃ!」
「ばれてしまいましたか。仕方有るまい。では、後日詫び酒を皆に振る舞いますぞ。」
「お!待っておるぞ!」
「ありがたや、ありがたや。」
「さて、明日から忙しくなりますな。」
「そうですな。これで活気づきますな。」
「今まで暗かった宮廷もきっと、華やかで明るくなりそうですな。」
「そうですなぁ。…それはそうと、そろそろ息子にこの座を渡してもいいかもしれないと思うのです。」
「お、私も同じ事を思っておった。」
「まだ早くないか?」
「なんの。今までルドフィカス様はどうも危なっかしくてお支えせねばとやっておりましたが、今日のルドフィカス様を見て大丈夫そうだと思いましてな。御子が生まれる頃には、と。」
「そうじゃな。ルドフィカス様もやっと、心が定まったようにお見受けしましたな。」
「確かに。しかし、隠居した後もたまには集まろうぞ。」
「おお、よろしいな。その時はまた競ってみるか?」
「止めて下され。今はタウンハウスだが私が一番遠い領地なのですぞ。」
「では旅行がてら、そちらの領地へ集まらせてもらうか?」
「おおそれがいい。」
「いや、そうすると私が遠くなる。」
「ーーー………」
「ーー……」
「ーーーー………」
今日も重鎮達は、仲良く賑やかにアーネムヘルム帝国の皇帝陛下を支えている。
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