【完結】偽者の辺境伯令嬢は、帝国へと輿入れを切望される。無理があると思うのは私だけなのかしら。

まりぃべる

文字の大きさ
上 下
21 / 27

21. 店巡り

しおりを挟む
ぐっちゅぐっちゅと激しい後ろと前の同時攻撃にもう頭の中はぐっちゃぐちゃ。

今日のクライスはやけに色々聞いてくるから頑張って答えるのだけど、イきすぎてもぅ眠い。自分が何を言ってるのか、ちょっとわかんなくなってきた。

「俺も一番キルナが好きなんだ。お前だけを愛している」
「ふあっ……ぼ…くも…くらいしゅ…らけ。くらいしゅらけあいしてう…んぅ」

顎をつかんで振り向かされ、唇ににまたキスが落とされる。

与えられた唾液をごくんと飲み込んだら、彼の魔力がまた体に広がって染み渡っていく。身体にいっぱいの彼の魔力とキスマークによって、僕は物理的なかんじで彼のものになっていく気がした。

「なのに、お前は俺をユジンにくれてやるつもりなのか?」
「ふぁああん。ちょ、…ああ…っ」
「どうなんだ?」

室内が冷蔵庫みたいにひえっひえになっている。ゴリゴリと内壁を擦られ「ひぁああ」とまた中だけで盛大にイった。

「だってだって」

ああ、言っちゃダメ。これはナイショの話でしょ。とちょこっとだけ残った理性が止めようとするのに、口が勝手に気持ちを言葉にしていく。

「ぼく…だとクライスを…しあわせに…できないから」


「そんなはずがない!!」

クライスが怒っている。
ああ違う、泣いている?
彼の表情は見えないけど、辛そうな声に僕まで悲しくなってくる。

「くらいしゅ、なかないれ……んぁあ!?」

彼は(入れたまま)くるんと僕の向きを変え、向かい合わせになると僕の体を抱きしめた。

「俺は、お前以外の他の誰と結婚しても幸せになんてなれない。俺はお前を愛している。お前と一緒に生きていきたい。それがお前の信じる運命じゃなくても」

「……うんめいじゃ…なくても?」

彼の言葉の意味を考える。

(僕の信じる運命って、クライスとそんな話したことあったかな?)

「ひああちょっと、とまって…。いま、かんがえてぅとこだからあ!」

揺さぶる彼の動きが止まると、思い浮かんだ言葉があった。

ああ、もしかしてあれかな。ファーストキスにびっくりして、うっかりゲームの未来を喋っちゃったやつ。

、えぐえぐっ、のにぃ』

ーークライスとユジンが結婚する。

それが二人のハッピーエンドで、絶対正しい未来なのだと僕は信じていた。優斗から彼らの愛の素晴らしさを聞いていたし、ゲームの二人は結ばれて、真実幸せそうだったから。

悪役令息ぼくはそれを実現するための駒にすぎない。二人の邪魔をして恋をいいかんじに燃え上がらせ、卒業パーティーで断罪され、婚約破棄されて役目を終える。

それでいいのだと思っていた。
それが僕の運命なのだから。
クライスとユジンが幸せになれるなら構わない。むしろ、そうなるべきだと思っていたのに。

「俺はユジンではなく、お前と結婚する」

僕の信じる未来をひっくり返す彼の言葉。
抱きしめる腕の力は強い。アイスブルーの瞳は真っ直ぐに僕の瞳を見つめている。



「ぼくと、くらいすが、けっこん……」

そうすることができたらどんなにいいだろ。
だけど、

「ぼくは…くらいすに、しあわせになってほしぃの……」
「ああ。俺はキルナと結婚したら間違いなく幸せになれる」
「でも…ぼく、やみぞくせいだし」
「知ってる、黒い髪が綺麗だものな。見せてくれ」

え?  

左手のフィンガーブレスレットはお父様の指示でずっとつけっぱなしにしている。それを外すと、魔法で藍色に染まっていた髪が黒色へと変わる。自分でもこの色になった髪をみるのは久しぶりだ。

僕はこの髪色が全然好きじゃない。闇属性って一発でバレるし、バケモノとか悪魔だと言われてきた。なのにクライスはこの髪を一房掬い、キスをした。

「綺麗な漆黒の髪だな」
「きもちわるくない?」
「綺麗だ。お前の金の瞳によく合う」
「めのいろも、やっぱへんじゃない?」

最初は青かったのに途中で金に変わった変な瞳。使用人たちにキモチワルイと言われ続けたそれ。

「変じゃない。好きだと言ったろう? 月の光を集めたような、美しい瞳だ」

ちゅっと瞳にもキスをされる。こんな見た目を好きと言ってくれるなんて。でも中身は? 外見だけでなく、中身もしっかり悪役令息な僕。こんなに性格が悪いと嫌なんじゃ。

「えと、ぼく…わがままでたかびしゃで、てのつけられないわるいこらしいのだけど、いい?」

「その噂は間違っていると思うが、お前の我儘ならいくらでも聞いてやる。もっと我儘になってほしいくらいだ」

クライスったら。優しすぎるよ。ああ、胸がぽかぽかする。自分が否定してきた何もかもを、彼は受け入れてくれる。



でも本当にいいの?

「僕は、」

『あなたはいらないのーー』
『七海なんていなければーー』

「いらないこだけど……」

言いかけた口が彼の唇に塞がれた。


「いらない子なんかじゃない。俺にはお前が必要だ、キルナ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

死ぬはずだった令嬢が乙女ゲームの舞台に突然参加するお話

みっしー
恋愛
 病弱な公爵令嬢のフィリアはある日今までにないほどの高熱にうなされて自分の前世を思い出す。そして今自分がいるのは大好きだった乙女ゲームの世界だと気づく。しかし…「藍色の髪、空色の瞳、真っ白な肌……まさかっ……!」なんと彼女が転生したのはヒロインでも悪役令嬢でもない、ゲーム開始前に死んでしまう攻略対象の王子の婚約者だったのだ。でも前世で長生きできなかった分今世では長生きしたい!そんな彼女が長生きを目指して乙女ゲームの舞台に突然参加するお話です。 *番外編も含め完結いたしました!感想はいつでもありがたく読ませていただきますのでお気軽に!

【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢は7年前の姿をしている

五色ひわ
恋愛
 ドラード王国の第二王女、クラウディア・ドラードは正体不明の相手に襲撃されて子供の姿に変えられてしまった。何とか逃げのびたクラウディアは、年齢を偽って孤児院に隠れて暮らしている。  初めて経験する貧しい暮らしに疲れ果てた頃、目の前に現れたのは婚約破棄寸前の婚約者アルフレートだった。

乙女ゲームは見守るだけで良かったのに

冬野月子
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した私。 ゲームにはほとんど出ないモブ。 でもモブだから、純粋に楽しめる。 リアルに推しを拝める喜びを噛みしめながら、目の前で繰り広げられている悪役令嬢の断罪劇を観客として見守っていたのに。 ———どうして『彼』はこちらへ向かってくるの?! 全三話。 「小説家になろう」にも投稿しています。

記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。

ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。 毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。

お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!

水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。 シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。 緊張しながら迎えた謁見の日。 シエルから言われた。 「俺がお前を愛することはない」 ああ、そうですか。 結構です。 白い結婚大歓迎! 私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。 私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

処理中です...