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20. 帝都へ
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あれから、少し早い昼食を終え、荒野を進んだ。
途中、夜になると、荒野の真ん中で野営地を作り、天幕を張る。
しかし、天幕の数は予備が無かったので、レウは私達の天幕で一緒に寝る事になった。
毛布と敷物は持ってきていたみたいで、『慣れているから、外で寝れる』とレウは言ったけれど、これにはニバルトが反論した。『ダメだよ!レウは女性なんだから!外はダメ!男達が天幕から出たらすぐレウが見えるなんて!何もないとは思うけれど僕が心配になって寝れやしないよ!』と。
『そうですね。では、他にありませんからエルヴィーラとインサと一緒に寝てもらっていいかな?』とルドが言ったの。それには、レウが反論しそうになったけれど、他に方法も無い為に押し黙った。
だから私は、『よろしくお願いしますね』とだけ伝えた。
一緒の天幕に入っても、レウは口数は多くなかったの。『ねぇ、二人で話したい事があるなら、私外に出てるわよ?』と言うと、二人して『そんな気を遣わないで』と言われた。
もう、レウとインサは、違う道を歩んでしまったから、話す事も無いんですって。レウはぼそりと『一緒の天幕の中で寝られる、それで充分。私はあの家を捨てたようなものなのだから、仕方ないのよ。』と言ったの。誰にも見られないのに。きっと筋を通しているのね。頑固、ともいうのかしら?
☆★
次の日のお昼前にようやく帝都の入り口が見えてきたの。
その時に、アルヤン副隊長が『申し訳ないですが、お二人はこのローブを着てもらえますか。』といって、レウとニバルトに手渡していた。私と同じ顔だからかしら。顔が見えないように深くローブを被るように言われていたから、『ごめんなさい。』と伝えると、『いいのよ、気にしないで。当たり前だもの。』とレウが言ってくれた。
見えた所は帝都の南門なのですって。両脇に高い見張り台のような円形の建物がそびえ立っていて、そこの前で長く行列が出来ていて、私達もその行列の最後尾に並んだ。
門番はルドやアルヤン副隊長を見て、『お疲れさまです!!』と恐縮した感じで接していたわ。
無事に門を潜ると、目の前には人工物が広がっていた。三階建ての建物が左右に分かれてずらりと奥の方まで立っている。その間はものすごく広く距離が取られ、馬が人を背に乗せたり、馬車を引いて歩き回っている。
地面は石畳となっていて、建物のすぐ目の前が、歩道だった。
「ここで、お二人とはお別れです。」
私が、その景色を見ている時にそうアルヤン副隊長は言ったの。
え?もう?と思ったけれど、レウとニバルトは分かっていたように、
「ええ。お願いします。」
と真っ直ぐ前を見据えて、返事をしていた。他の隊員達に連れられて進んで行く。
私は、掛ける言葉も見つからずジッと二人を見送った。
二人は、先に宮廷内に連れていかれるみたいで、そこでニバルトを医師に診せ、普通に生活出来るようになったら、北東部へと出発するみたい。
ニバルトは、ここまで来るのにも隊員達に順番に背負われていて、しきりに『申し訳ありません』と言っていた。その度に、『我々にとったらいい訓練なのですから気になさらないで下さい』と言われていた。
「さぁ、では帝都を案内します。よければ、僕と二人で行きませんか。」
「えと…でもインサは?」
「彼女も一足先に宮廷へアルヤンと行ってもらいます。あなたの準備もありますからね。」
「そう…インサは?もう帰るの?」
「私はまだ、居られるだけおりますよ。帰る時には、申し訳ありませんがもう少し小さな馬をお貸し下されば一人で帰れますし。」
「女性の一人旅は危なくてさせられないなぁ。帰る場合は付き添いますが、今はまだその時ではないですねぇ。さ、インサ、行きますよ。」
「え?え、ええ…。」
あら?気付かなかったけれど、アルヤン副隊長とインサって仲良くなったりしたのかしら。ずっと一緒の馬に乗ってきたものね。インサ、なんだか顔が赤いわよ。
でも…インサって頼りになって、結構年上のような気がしたけれど…まぁ、幸せになってくれるなら恋に年齢は関係ないものね!
私達は門を潜る為に馬から下りていたのだけれど、アルヤン副隊長はインサを馬に乗せて自分も素早く乗り、進んで行ってしまった。
私とルド、二人だけになってしまって、馬はどうやら門番に預けるらしい。門の近くに厩舎らしき馬がたくさん顔を出した建物があったから、そこに連れていかれるそう。
ルドが乗ってきたのは、ルドの愛馬では無かったようだ。
「うちの軍馬は皆、イイ子達ばかりなんです。だからどの子にも僕は乗るんですよ。」
とそうにこやかに笑って言った。
「さぁ、どこへ行きましょうか。まずは、腹ごしらえですね。」
帝都の人混みを歩こうとた所で私を見つめ、
「ええと、この人混みですから、手を繋いでもいいでしょうか。」
とふわりと柔らかい笑顔を向けられて言われる。
確かに、歩道にはひしめき合っているわけではないけれどそれなりに人が行き来しているので、その方がはぐれないと思うので、了承する。
「…はい。」
「ありがとう。」
そう言って、優しく私の右手を取って手を繋がれる。
触れている部分が熱を帯びたようで、迷子防止なだけだから、と思うのだけれど思いのほかドキドキと胸が高鳴った。
(やだなぁ。私だけ意識して。)
そう思ったが、すぐに頭を左右に少しだけ振ってこの帝都へと意識を向けた。
途中、夜になると、荒野の真ん中で野営地を作り、天幕を張る。
しかし、天幕の数は予備が無かったので、レウは私達の天幕で一緒に寝る事になった。
毛布と敷物は持ってきていたみたいで、『慣れているから、外で寝れる』とレウは言ったけれど、これにはニバルトが反論した。『ダメだよ!レウは女性なんだから!外はダメ!男達が天幕から出たらすぐレウが見えるなんて!何もないとは思うけれど僕が心配になって寝れやしないよ!』と。
『そうですね。では、他にありませんからエルヴィーラとインサと一緒に寝てもらっていいかな?』とルドが言ったの。それには、レウが反論しそうになったけれど、他に方法も無い為に押し黙った。
だから私は、『よろしくお願いしますね』とだけ伝えた。
一緒の天幕に入っても、レウは口数は多くなかったの。『ねぇ、二人で話したい事があるなら、私外に出てるわよ?』と言うと、二人して『そんな気を遣わないで』と言われた。
もう、レウとインサは、違う道を歩んでしまったから、話す事も無いんですって。レウはぼそりと『一緒の天幕の中で寝られる、それで充分。私はあの家を捨てたようなものなのだから、仕方ないのよ。』と言ったの。誰にも見られないのに。きっと筋を通しているのね。頑固、ともいうのかしら?
☆★
次の日のお昼前にようやく帝都の入り口が見えてきたの。
その時に、アルヤン副隊長が『申し訳ないですが、お二人はこのローブを着てもらえますか。』といって、レウとニバルトに手渡していた。私と同じ顔だからかしら。顔が見えないように深くローブを被るように言われていたから、『ごめんなさい。』と伝えると、『いいのよ、気にしないで。当たり前だもの。』とレウが言ってくれた。
見えた所は帝都の南門なのですって。両脇に高い見張り台のような円形の建物がそびえ立っていて、そこの前で長く行列が出来ていて、私達もその行列の最後尾に並んだ。
門番はルドやアルヤン副隊長を見て、『お疲れさまです!!』と恐縮した感じで接していたわ。
無事に門を潜ると、目の前には人工物が広がっていた。三階建ての建物が左右に分かれてずらりと奥の方まで立っている。その間はものすごく広く距離が取られ、馬が人を背に乗せたり、馬車を引いて歩き回っている。
地面は石畳となっていて、建物のすぐ目の前が、歩道だった。
「ここで、お二人とはお別れです。」
私が、その景色を見ている時にそうアルヤン副隊長は言ったの。
え?もう?と思ったけれど、レウとニバルトは分かっていたように、
「ええ。お願いします。」
と真っ直ぐ前を見据えて、返事をしていた。他の隊員達に連れられて進んで行く。
私は、掛ける言葉も見つからずジッと二人を見送った。
二人は、先に宮廷内に連れていかれるみたいで、そこでニバルトを医師に診せ、普通に生活出来るようになったら、北東部へと出発するみたい。
ニバルトは、ここまで来るのにも隊員達に順番に背負われていて、しきりに『申し訳ありません』と言っていた。その度に、『我々にとったらいい訓練なのですから気になさらないで下さい』と言われていた。
「さぁ、では帝都を案内します。よければ、僕と二人で行きませんか。」
「えと…でもインサは?」
「彼女も一足先に宮廷へアルヤンと行ってもらいます。あなたの準備もありますからね。」
「そう…インサは?もう帰るの?」
「私はまだ、居られるだけおりますよ。帰る時には、申し訳ありませんがもう少し小さな馬をお貸し下されば一人で帰れますし。」
「女性の一人旅は危なくてさせられないなぁ。帰る場合は付き添いますが、今はまだその時ではないですねぇ。さ、インサ、行きますよ。」
「え?え、ええ…。」
あら?気付かなかったけれど、アルヤン副隊長とインサって仲良くなったりしたのかしら。ずっと一緒の馬に乗ってきたものね。インサ、なんだか顔が赤いわよ。
でも…インサって頼りになって、結構年上のような気がしたけれど…まぁ、幸せになってくれるなら恋に年齢は関係ないものね!
私達は門を潜る為に馬から下りていたのだけれど、アルヤン副隊長はインサを馬に乗せて自分も素早く乗り、進んで行ってしまった。
私とルド、二人だけになってしまって、馬はどうやら門番に預けるらしい。門の近くに厩舎らしき馬がたくさん顔を出した建物があったから、そこに連れていかれるそう。
ルドが乗ってきたのは、ルドの愛馬では無かったようだ。
「うちの軍馬は皆、イイ子達ばかりなんです。だからどの子にも僕は乗るんですよ。」
とそうにこやかに笑って言った。
「さぁ、どこへ行きましょうか。まずは、腹ごしらえですね。」
帝都の人混みを歩こうとた所で私を見つめ、
「ええと、この人混みですから、手を繋いでもいいでしょうか。」
とふわりと柔らかい笑顔を向けられて言われる。
確かに、歩道にはひしめき合っているわけではないけれどそれなりに人が行き来しているので、その方がはぐれないと思うので、了承する。
「…はい。」
「ありがとう。」
そう言って、優しく私の右手を取って手を繋がれる。
触れている部分が熱を帯びたようで、迷子防止なだけだから、と思うのだけれど思いのほかドキドキと胸が高鳴った。
(やだなぁ。私だけ意識して。)
そう思ったが、すぐに頭を左右に少しだけ振ってこの帝都へと意識を向けた。
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