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12. 二日酔い
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「ん…?あたたたた…!」
頭がものすごくガンガンと響いて痛いし、何だか胸の辺りがムカムカとしている。
目を開いてみると、天幕の中で、まだ外では宴をやっているのだろう、賑やかな声も聞こえた。
「大丈夫ですか!?」
インサがこちらを覗き込んでいる。
「私…酔ったのかなぁ?頭が痛いし、気持ち悪い…。」
「あぁ、さようでございますか。先ほどは驚きました。では、薬があるか聞いてきます。」
「いいえ、水をお願い…」
「水ですね、承知したしました。お待ち下さいね。」
そういうと、外に出て行ったインサ。入り口を見ると、それに入れ替わるようにルドが立っていて、
「入ってもいいでしょうか?」
と遠慮がちに聞いてきた。
少し、みっともないかもとは思ったが、心配もかけただろうし、返事をする。
「はい。ご心配をお掛けしました。」
私は起き上がろうとするが、頭がガンガンと響いているし、動くと余計にムカムカと気持ちが悪くて、顔を顰めて体を起こすのを諦めた。
「あぁ、気にしないで下さい。これをどうぞ。」
見ると、コップを持ってきてくれている。でも水かと思ったが、濃い緑色で何が入っているのかと思った。お茶…?
「これは…?」
「これは、ナンテンと言う小さな赤い実をつける葉と、ヨモギという葉を一緒に煎じた薬草茶です。吐き気と頭痛に効くのですよ。味は…二の次ですが。」
味は二の次…でも、とりあえずもらった方がいいかも。それに、わざわざ持ってきてくれたようだし。
「ありがとうございます。いただきます。」
そう言って、飲む為に再度私が体を起こそうとすると、ルドは私の傍まで寄ってきてコップを傍に置くと、背中に手を当てて手伝ってくれた。
「ありがとう。ごめんなさい、とても助かるわ。」
「いいえ。もしかして、そんなにお酒は強くありませんでしたか?我々の軍では、遠征が終われば必ず労いの為に宴を開き、その際無礼講で皆で酒を浴びるように飲むのです。ああやって踊るのも常ですね。デューレンケルンでもやられているのかと思っていました。」
「そうなのね。ごめんなさい、迷惑掛けて。あまり気にしていなかったけれど、私、お酒にはそんなに強くないかも。」
「…そうですか。無理に飲んでもらってすみませんでした。」
何だかすごく悲しそうにルドが言うから、私は慌てて言葉を繋ぐ。
「いいえ!味は、その…何というか苦味があって大人の味でしたけれど、さっぱりとしていたから何杯も頂いてしまったのよ。せっかく楽しんでいらしたのに、隊員と集落の皆さんにも申し訳ないわ。謝らないと。」
「そう言ってもらえると、皆喜びますよ。ここの酒は、帝国全土に出荷していてとても人気なんです。ただ、結構強いお酒なのですよ、だから倒れても仕方ありませんよ。体も動かしましたし。では、皆には朝また声を掛けてくれればいいですよ。今日はエルヴィーラはこれを飲んで、ゆっくり休んで下さい。」
そう言って、置いてあったコップを渡してくれた。
濃い緑色の液体で少しだけ勇気がいったけれど、ゴクゴクと飲み干した。
(ぎゃーこれはこれで苦い!)
私がよっぽど渋い顔をしていたのでしょう。ルドが気の毒そうに、
「すみません、口直しの水もお持ちすればよかったですね。でもそれで体調は少しマシになるハズですから。」
と言ってくれる。
確かに、口の中は葉っぱ独特の味が少しまだ残っているが、胸のムカムカが薄まってきたように思う。頭痛も、先ほどの頭の中で鐘を鳴らされているようなガンガンという響きも弱くなってきた。
「ええ。インサが持ってきてくれるわ。これ、今作ってくれたの?」
「はい。今作りました。薬草は持ち歩いてますけど、これは作り置きしてなくて。」
まぁそうよね。皆、日常で強いお酒を飲んでいるなら、この薬は必要ないわよね。
「わざわざありがとう。ちょっと頭痛と吐き気がマシになったかも。」
そう言ってルドに笑顔を向ける。
何だか、勝手に倒れたのに、私の為に薬草茶を作ってくれて本当に申し訳なかった。
…でも、大切な皇帝の妻となる人だから仕方なくかもしれないわね。そう思うと、何だか自分が酷くお荷物のような気がして気が滅入ってきてしまう。
「あ、インサが戻ってきましたね。では、私は行きます。ゆっくり休んで下さいね。では。」
インサが入り口で顔を出したので、ルドがそう言って立ち上がった。
「あ、ルド、ありがとう。気分が良くなったわ。おやすみなさい。」
私は背を向けるルドへと言葉を掛けると、振り向いてふわりと笑って、
「本当によかった。ではおやすみなさい。」
と言って、部屋から出て行った。
「ルド様は、様子を見に来てくれたのですか?」
インサがコップに入った水を持ってきてくれたので、私はそれをもらって答える。
「ええ。二日酔いに効く薬草茶を持ってきてくれたわ。でも、口がまだ少し苦いの。インサ、ありがとう、飲むわね。」
「そうですか。先ほど、エルヴィーラ様が倒れた時も、ルド様がいち早く抱きかかえてこちらまで連れて来てくれたのですよ。」
「そうなの…。」
ルドはまるで私のお世話係のように、甲斐甲斐しくしてくれて申し訳ないくらいだわ。
「はい。アルヤン様は集落の方々の対応をされてました。」
「皆に謝らないと。」
「それが、意外にもウケが良かったですよ。」
インサが含み笑いをしながら言ったので私は気になって聞いた。
「え?ウケ?」
「はい。銀獅子と恐れられたエルヴィーラ様は、とても人間味溢れるお方だと。話されていてもそう感じたそうですけれど。
ここは、大麦を育てている地域だそうで、お酒は水と同等の扱いだそうで子どもも普通に飲むそうです。なのにエルヴィーラ様は倒れられたので、恐れ多くも、可愛らしい、人間味のあるという好印象を与えたのでしょうね。踊りも、一緒になって踊るとは思いませんでした。皆も、とても楽しかったと言ってましたよ。」
「…それは、良い意味?大丈夫かしら?〝エルヴィーラ様〟を辱める事になってない?」
「もちろん、良い意味ですよ!これがもしもういないエルヴィーラ様でしたなら、こうはいかなかったかもしれません。あの方は男性よりも男らしい方ですから。」
そうなのかしら…子どもも飲めるビアで二日酔いなんて、私どれだけ弱いの…いや、この世界の人達が強いのかもしれないわ!
それよりも、これからはお酒はあまり飲まないようにするしかないわね。ボロが出そうだもの。不安な事を忘れるどころか、黒歴史になってしまったわ。
インサにも、ゆっくり休んでと言われた為に再び横になり、目を瞑った。
頭がものすごくガンガンと響いて痛いし、何だか胸の辺りがムカムカとしている。
目を開いてみると、天幕の中で、まだ外では宴をやっているのだろう、賑やかな声も聞こえた。
「大丈夫ですか!?」
インサがこちらを覗き込んでいる。
「私…酔ったのかなぁ?頭が痛いし、気持ち悪い…。」
「あぁ、さようでございますか。先ほどは驚きました。では、薬があるか聞いてきます。」
「いいえ、水をお願い…」
「水ですね、承知したしました。お待ち下さいね。」
そういうと、外に出て行ったインサ。入り口を見ると、それに入れ替わるようにルドが立っていて、
「入ってもいいでしょうか?」
と遠慮がちに聞いてきた。
少し、みっともないかもとは思ったが、心配もかけただろうし、返事をする。
「はい。ご心配をお掛けしました。」
私は起き上がろうとするが、頭がガンガンと響いているし、動くと余計にムカムカと気持ちが悪くて、顔を顰めて体を起こすのを諦めた。
「あぁ、気にしないで下さい。これをどうぞ。」
見ると、コップを持ってきてくれている。でも水かと思ったが、濃い緑色で何が入っているのかと思った。お茶…?
「これは…?」
「これは、ナンテンと言う小さな赤い実をつける葉と、ヨモギという葉を一緒に煎じた薬草茶です。吐き気と頭痛に効くのですよ。味は…二の次ですが。」
味は二の次…でも、とりあえずもらった方がいいかも。それに、わざわざ持ってきてくれたようだし。
「ありがとうございます。いただきます。」
そう言って、飲む為に再度私が体を起こそうとすると、ルドは私の傍まで寄ってきてコップを傍に置くと、背中に手を当てて手伝ってくれた。
「ありがとう。ごめんなさい、とても助かるわ。」
「いいえ。もしかして、そんなにお酒は強くありませんでしたか?我々の軍では、遠征が終われば必ず労いの為に宴を開き、その際無礼講で皆で酒を浴びるように飲むのです。ああやって踊るのも常ですね。デューレンケルンでもやられているのかと思っていました。」
「そうなのね。ごめんなさい、迷惑掛けて。あまり気にしていなかったけれど、私、お酒にはそんなに強くないかも。」
「…そうですか。無理に飲んでもらってすみませんでした。」
何だかすごく悲しそうにルドが言うから、私は慌てて言葉を繋ぐ。
「いいえ!味は、その…何というか苦味があって大人の味でしたけれど、さっぱりとしていたから何杯も頂いてしまったのよ。せっかく楽しんでいらしたのに、隊員と集落の皆さんにも申し訳ないわ。謝らないと。」
「そう言ってもらえると、皆喜びますよ。ここの酒は、帝国全土に出荷していてとても人気なんです。ただ、結構強いお酒なのですよ、だから倒れても仕方ありませんよ。体も動かしましたし。では、皆には朝また声を掛けてくれればいいですよ。今日はエルヴィーラはこれを飲んで、ゆっくり休んで下さい。」
そう言って、置いてあったコップを渡してくれた。
濃い緑色の液体で少しだけ勇気がいったけれど、ゴクゴクと飲み干した。
(ぎゃーこれはこれで苦い!)
私がよっぽど渋い顔をしていたのでしょう。ルドが気の毒そうに、
「すみません、口直しの水もお持ちすればよかったですね。でもそれで体調は少しマシになるハズですから。」
と言ってくれる。
確かに、口の中は葉っぱ独特の味が少しまだ残っているが、胸のムカムカが薄まってきたように思う。頭痛も、先ほどの頭の中で鐘を鳴らされているようなガンガンという響きも弱くなってきた。
「ええ。インサが持ってきてくれるわ。これ、今作ってくれたの?」
「はい。今作りました。薬草は持ち歩いてますけど、これは作り置きしてなくて。」
まぁそうよね。皆、日常で強いお酒を飲んでいるなら、この薬は必要ないわよね。
「わざわざありがとう。ちょっと頭痛と吐き気がマシになったかも。」
そう言ってルドに笑顔を向ける。
何だか、勝手に倒れたのに、私の為に薬草茶を作ってくれて本当に申し訳なかった。
…でも、大切な皇帝の妻となる人だから仕方なくかもしれないわね。そう思うと、何だか自分が酷くお荷物のような気がして気が滅入ってきてしまう。
「あ、インサが戻ってきましたね。では、私は行きます。ゆっくり休んで下さいね。では。」
インサが入り口で顔を出したので、ルドがそう言って立ち上がった。
「あ、ルド、ありがとう。気分が良くなったわ。おやすみなさい。」
私は背を向けるルドへと言葉を掛けると、振り向いてふわりと笑って、
「本当によかった。ではおやすみなさい。」
と言って、部屋から出て行った。
「ルド様は、様子を見に来てくれたのですか?」
インサがコップに入った水を持ってきてくれたので、私はそれをもらって答える。
「ええ。二日酔いに効く薬草茶を持ってきてくれたわ。でも、口がまだ少し苦いの。インサ、ありがとう、飲むわね。」
「そうですか。先ほど、エルヴィーラ様が倒れた時も、ルド様がいち早く抱きかかえてこちらまで連れて来てくれたのですよ。」
「そうなの…。」
ルドはまるで私のお世話係のように、甲斐甲斐しくしてくれて申し訳ないくらいだわ。
「はい。アルヤン様は集落の方々の対応をされてました。」
「皆に謝らないと。」
「それが、意外にもウケが良かったですよ。」
インサが含み笑いをしながら言ったので私は気になって聞いた。
「え?ウケ?」
「はい。銀獅子と恐れられたエルヴィーラ様は、とても人間味溢れるお方だと。話されていてもそう感じたそうですけれど。
ここは、大麦を育てている地域だそうで、お酒は水と同等の扱いだそうで子どもも普通に飲むそうです。なのにエルヴィーラ様は倒れられたので、恐れ多くも、可愛らしい、人間味のあるという好印象を与えたのでしょうね。踊りも、一緒になって踊るとは思いませんでした。皆も、とても楽しかったと言ってましたよ。」
「…それは、良い意味?大丈夫かしら?〝エルヴィーラ様〟を辱める事になってない?」
「もちろん、良い意味ですよ!これがもしもういないエルヴィーラ様でしたなら、こうはいかなかったかもしれません。あの方は男性よりも男らしい方ですから。」
そうなのかしら…子どもも飲めるビアで二日酔いなんて、私どれだけ弱いの…いや、この世界の人達が強いのかもしれないわ!
それよりも、これからはお酒はあまり飲まないようにするしかないわね。ボロが出そうだもの。不安な事を忘れるどころか、黒歴史になってしまったわ。
インサにも、ゆっくり休んでと言われた為に再び横になり、目を瞑った。
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