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3. 私の来た意味
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「…ええと、それはどういう…?」
私は、その子に目は釘付けになったけれども言われた言葉が気になって、かろうじて呟いた。
「え?だって、午後にでもお迎えが来るのでしょう?あら?でも無しになんて出来るのかしら?難しいわよね?お姉さまが行かないなら、私が行くの?」
そう、首を横に傾げた少女は本当に可愛くて。
…は!そうではなくて!
私は、どういう事かともう少し詳しく説明して欲しくてヘルフリート様を見ると、
「そ、そうだった!早く準備せねば!ええと、エルヴィーラ。頭を打ちつけて記憶が無いのに申し訳ないが、我々を助けて欲しい。今日の午後、隣の巨大帝国アーネムヘルムから迎えが来るのだ。帝国軍がわざわざ隊を編成してお越しくださるのに待たせたり反故にしたりして相手を怒らせては、どうなるか分からん。我々は攻め入られて皆殺しになってしまうやもしれん。」
そうヘルフリート様が慌てて言われたわ。きっと、この少女には私が姉とは違う人物だとは言いたくなくて記憶が無い事にしたのかもしれないわね。
でも、それを聞いて銀髪の少女はくりくりとした目を見開いて、私の傍まで来て言ったの。
「え!お姉さま!頭を打たれたの!?大丈夫なのですか!!だったら、私が代わりに帝国へ行きます。私結婚なんてまだ全く考えていなかったけれど、お姉さまは怪我人でしょう?安静にしていなければ!」
…こんな小さな子が、そんな代わりに行けるようなものなの?というか、私もいきなりそう言われても考えが追いつかないわよ!?
「アロイサ、あなたはまだ十歳よ。それにいくらここデューレンケルン辺境伯の娘が欲しいと言われたといえど、幼過ぎるわ。」
コルドゥラと呼ばれた女性がアロイサの両肩を持ってアロイサの顔を覗き込んで言われたの。良く似ているから、きっと娘なのね。
「だって!お母さま?お姉さまはいつもと違って雰囲気が全く豪傑ではないわ!普段のお姉さまなら大丈夫だったと思うけれど、今の記憶が無いお姉さまが帝国へ行ってやっていけるの!?毎年攻め入ってくるような人達が大勢いる、きっと野蛮なお国柄なのよ。
強いお姉さまだからこそ王族ではなくて、辺境伯のうちが選ばれたのでしょう?もし怒らせてしまったら何があるか分かったものじゃないわ。一族皆酷い目に遭わされるかもしれないってこの婚姻が決まった頃にお姉さまが言っていたもの。
お姉さまが普段のお姉さまなら、相手を蹴散らす事が可能かもしれないけど、今はお姉さま違う雰囲気よ。もし何かあれば、このドルトムンボン国まで消滅させられるかもしれないわ!」
銀髪の少女、アロイサがそう鬼気迫る雰囲気でそう言ったので驚いてしまう。
けれどなんとなくそれで今までの流れは分かったわ。きっと、私と同じ外見をしたエルヴィーラはこの結婚が嫌だから逃げだしたのではないかしら?そして、代わりとなってくれるよう私を呼んだ。
だって、先ほど鎧を着た人達が逃げられたとか言っていたもの。あ、そう言えば誰かと一緒に、って言っていなかったかしら!?手引きした人がいるのか、恋人なのかも?
もし、この結婚が私でなくこの幼いアロイサという少女に行かせたとして、私は果たして生活の面倒を見てもらえるのだろうか?と疑問に思う。
いや、もし本当にエルヴィーラと呼ばれた人物が私を呼んだのなら、娘がやった事として多分責任は感じてくれるだろうけれど、一切の生活を見てくれるかは別よね。
私も、いきなり来た全く分からないこの世界で生きていかないといけないのなら。私が駄々をこねてこの幼い少女に押し付けて結婚させるのはなんだか胸が酷く痛む。
この世界へ来てしまったのだもの。どこで生活してもきっと大して変わらないと思うわ。来たばかりで現状が分からないのだもの。
ただ、いきなり知らない人になりすまして結婚って無理があるでしょ!?と思うのは私だけ?そんな事ないのかしら?
でもずっとこうやって考えていても話が進まないから、私から声を掛けた。
だって皆、私を見つめているんだもの。
「ええと、私が行けば皆が救われるのですか?」
「行ってくれるか…!」
「まぁ…!」
「お姉さま…?」
三人とも、私を見て声を発した。
ヘルフリート様はとても安堵されているわ。まぁ、そうよね。
コルドゥラ様も、胸を痛まれたような顔をしているけれど、幼いアロイサを嫁に出さなくていいからきっと、ほっとされているでしょうね。
アロイサ様は、ヘルフリート様とコルドゥラ様を交互に見て、最後に私を見ると、
「お姉さま…無理をされないで下さいね。」
と潤んだような目で見られた。それがとても可憐で…!
「記憶を無くされて不安でしょうけれど、きっと強い女性を望まれているのだからお姉さま、豪傑な女性を演じて下さいね!」
…豪傑?先ほども言われていた気がするけれど、辺境伯令嬢って強いの?
でも、やっぱりさっき思ったようにここで演じるのね!
…出来るのかしら。だって、〝エルヴィーラ〟の情報って、豪傑くらいなのだけれど!?私、はっきり覚えてはいないけれど多分豪傑では無かったと思うのよ。
心配しながら、でもやるしかないのかもしれないなとなんとなく思った。
私は、その子に目は釘付けになったけれども言われた言葉が気になって、かろうじて呟いた。
「え?だって、午後にでもお迎えが来るのでしょう?あら?でも無しになんて出来るのかしら?難しいわよね?お姉さまが行かないなら、私が行くの?」
そう、首を横に傾げた少女は本当に可愛くて。
…は!そうではなくて!
私は、どういう事かともう少し詳しく説明して欲しくてヘルフリート様を見ると、
「そ、そうだった!早く準備せねば!ええと、エルヴィーラ。頭を打ちつけて記憶が無いのに申し訳ないが、我々を助けて欲しい。今日の午後、隣の巨大帝国アーネムヘルムから迎えが来るのだ。帝国軍がわざわざ隊を編成してお越しくださるのに待たせたり反故にしたりして相手を怒らせては、どうなるか分からん。我々は攻め入られて皆殺しになってしまうやもしれん。」
そうヘルフリート様が慌てて言われたわ。きっと、この少女には私が姉とは違う人物だとは言いたくなくて記憶が無い事にしたのかもしれないわね。
でも、それを聞いて銀髪の少女はくりくりとした目を見開いて、私の傍まで来て言ったの。
「え!お姉さま!頭を打たれたの!?大丈夫なのですか!!だったら、私が代わりに帝国へ行きます。私結婚なんてまだ全く考えていなかったけれど、お姉さまは怪我人でしょう?安静にしていなければ!」
…こんな小さな子が、そんな代わりに行けるようなものなの?というか、私もいきなりそう言われても考えが追いつかないわよ!?
「アロイサ、あなたはまだ十歳よ。それにいくらここデューレンケルン辺境伯の娘が欲しいと言われたといえど、幼過ぎるわ。」
コルドゥラと呼ばれた女性がアロイサの両肩を持ってアロイサの顔を覗き込んで言われたの。良く似ているから、きっと娘なのね。
「だって!お母さま?お姉さまはいつもと違って雰囲気が全く豪傑ではないわ!普段のお姉さまなら大丈夫だったと思うけれど、今の記憶が無いお姉さまが帝国へ行ってやっていけるの!?毎年攻め入ってくるような人達が大勢いる、きっと野蛮なお国柄なのよ。
強いお姉さまだからこそ王族ではなくて、辺境伯のうちが選ばれたのでしょう?もし怒らせてしまったら何があるか分かったものじゃないわ。一族皆酷い目に遭わされるかもしれないってこの婚姻が決まった頃にお姉さまが言っていたもの。
お姉さまが普段のお姉さまなら、相手を蹴散らす事が可能かもしれないけど、今はお姉さま違う雰囲気よ。もし何かあれば、このドルトムンボン国まで消滅させられるかもしれないわ!」
銀髪の少女、アロイサがそう鬼気迫る雰囲気でそう言ったので驚いてしまう。
けれどなんとなくそれで今までの流れは分かったわ。きっと、私と同じ外見をしたエルヴィーラはこの結婚が嫌だから逃げだしたのではないかしら?そして、代わりとなってくれるよう私を呼んだ。
だって、先ほど鎧を着た人達が逃げられたとか言っていたもの。あ、そう言えば誰かと一緒に、って言っていなかったかしら!?手引きした人がいるのか、恋人なのかも?
もし、この結婚が私でなくこの幼いアロイサという少女に行かせたとして、私は果たして生活の面倒を見てもらえるのだろうか?と疑問に思う。
いや、もし本当にエルヴィーラと呼ばれた人物が私を呼んだのなら、娘がやった事として多分責任は感じてくれるだろうけれど、一切の生活を見てくれるかは別よね。
私も、いきなり来た全く分からないこの世界で生きていかないといけないのなら。私が駄々をこねてこの幼い少女に押し付けて結婚させるのはなんだか胸が酷く痛む。
この世界へ来てしまったのだもの。どこで生活してもきっと大して変わらないと思うわ。来たばかりで現状が分からないのだもの。
ただ、いきなり知らない人になりすまして結婚って無理があるでしょ!?と思うのは私だけ?そんな事ないのかしら?
でもずっとこうやって考えていても話が進まないから、私から声を掛けた。
だって皆、私を見つめているんだもの。
「ええと、私が行けば皆が救われるのですか?」
「行ってくれるか…!」
「まぁ…!」
「お姉さま…?」
三人とも、私を見て声を発した。
ヘルフリート様はとても安堵されているわ。まぁ、そうよね。
コルドゥラ様も、胸を痛まれたような顔をしているけれど、幼いアロイサを嫁に出さなくていいからきっと、ほっとされているでしょうね。
アロイサ様は、ヘルフリート様とコルドゥラ様を交互に見て、最後に私を見ると、
「お姉さま…無理をされないで下さいね。」
と潤んだような目で見られた。それがとても可憐で…!
「記憶を無くされて不安でしょうけれど、きっと強い女性を望まれているのだからお姉さま、豪傑な女性を演じて下さいね!」
…豪傑?先ほども言われていた気がするけれど、辺境伯令嬢って強いの?
でも、やっぱりさっき思ったようにここで演じるのね!
…出来るのかしら。だって、〝エルヴィーラ〟の情報って、豪傑くらいなのだけれど!?私、はっきり覚えてはいないけれど多分豪傑では無かったと思うのよ。
心配しながら、でもやるしかないのかもしれないなとなんとなく思った。
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