4 / 27
4. 結婚相手は
しおりを挟む
「で、では私達は邪魔になるからあちらへ行きましょうね、アロイサ。」
「はい。あ、お姉さま!早く記憶が戻るといいですね!でも今のお姉さまも新鮮で素敵ですけれどね!」
コルドゥラ様とアロイサ様がそう言って部屋を出て行こうと扉へ向かうが、『あ!そうだわ!』とコルドゥラ様は言って、私の方へ戻ってきて、耳元で『ごめんなさい。あなたに大役を押し付けて…でもきっと、あなたなら出来るわ。どうか、幸せにね。』と言って私にニコリと笑いかけて手を振って、今度こそ出て行った。
扉が閉まるとヘルフリート様が私へと視線を向け、
「本当に、エルヴィーラじゃないんだな。雰囲気が全く違う。エルヴィーラは、なんというか…男に生まれていれば幸せだったんだろうと誰もが思うくらい、この辺境の地デューレンケルンで国境を第一線で守り抜いてくれていた猛者とも呼べる程の力を持っていた。それ故、頼りきってしまっていたのだろう。…昨夜遅く、フードを被ったエルヴィーラがこの部屋の窓を抜け出すのを、屋敷の警備隊に見られてな。いや、あいつの事だ。わざと見せたのかもしれん。それで、警備隊に追わせていたんだが、先ほどの報告がそれだ。…あいつは、優男である庭師のニバルトと逃げたんだな。君はきっと娘に呼びつけられたんだろう。本当に済まない…!」
そう言って、頭を下げられた。
先ほどは強そうな鎧を着た人達に頭を下げられていた人が、私に頭を下げるものだからこちらが恐縮してしまう。
「い、いえ!私も、良く分からないのですが、頑張ります。…でも、私、そんな豪傑で素晴らしい人になりきれるのでしょうか?」
「うむ…。その点はまぁ…頭を打って記憶があやふやだと言えばいい。顔も本人そっくりであるし、我々家族にも似ているんだから。我が妻コルドゥラに年々似てきているし、アイロサなんてエルヴィーラの小さい頃そっくりだ。心配せんでも現皇帝はここに来た事はない。だから、会った事もないだろう。」
「皇帝!?まさかとは思いますが、お相手は皇帝なのですか!?この世界の知識も無いですし、無理です!」
相手が皇帝陛下なら、私は皇后陛下となるわけよね?知識もマナーも何もよく分かっていないのに、出来るわけがないと思うのだけど…果たして記憶が無い、だけで通るのかしら。
「大丈夫だ。エルヴィーラの小さい頃からの侍女のインサを連れて行ける。結婚式が終わったら、インサはこちらに帰って来なければならないがそれまでは分からない事はインサに聞いてくれ。…本当に済まない。が、よろしく頼む。そろそろ本当に準備しないと、間に合わなくなる。それはいかんのだ。準備に入ってもらってもいいか?」
「はい…分かりました。」
私は渋々返事をした。
不安だけれど、やるしかないのよね。この世界で生きていくしか、私には道が無いものね。だって、ここの辺境伯爵家や、国の人達の命を、と言われてしまったのだもの。本当にそうなのかは分からないけれど。
きっと演じてみせるわ!インサさんにいろいろ教えてもらわないとね。
「ではインサ、あとはよろしく。…エルヴィーラとなった娘よ、幸せにな。」
そう言ったヘルフリート様もまた、部屋を出て行った。
「さぁそうと決まれば、急いでお仕度を。」
今まで壁際に静かに立っていた、私が目が覚めた時に傍にいた人がゆっくりと手を差し出してくれて私の体を起こし、お仕度の為に部屋から連れ出した。
「はい。あ、お姉さま!早く記憶が戻るといいですね!でも今のお姉さまも新鮮で素敵ですけれどね!」
コルドゥラ様とアロイサ様がそう言って部屋を出て行こうと扉へ向かうが、『あ!そうだわ!』とコルドゥラ様は言って、私の方へ戻ってきて、耳元で『ごめんなさい。あなたに大役を押し付けて…でもきっと、あなたなら出来るわ。どうか、幸せにね。』と言って私にニコリと笑いかけて手を振って、今度こそ出て行った。
扉が閉まるとヘルフリート様が私へと視線を向け、
「本当に、エルヴィーラじゃないんだな。雰囲気が全く違う。エルヴィーラは、なんというか…男に生まれていれば幸せだったんだろうと誰もが思うくらい、この辺境の地デューレンケルンで国境を第一線で守り抜いてくれていた猛者とも呼べる程の力を持っていた。それ故、頼りきってしまっていたのだろう。…昨夜遅く、フードを被ったエルヴィーラがこの部屋の窓を抜け出すのを、屋敷の警備隊に見られてな。いや、あいつの事だ。わざと見せたのかもしれん。それで、警備隊に追わせていたんだが、先ほどの報告がそれだ。…あいつは、優男である庭師のニバルトと逃げたんだな。君はきっと娘に呼びつけられたんだろう。本当に済まない…!」
そう言って、頭を下げられた。
先ほどは強そうな鎧を着た人達に頭を下げられていた人が、私に頭を下げるものだからこちらが恐縮してしまう。
「い、いえ!私も、良く分からないのですが、頑張ります。…でも、私、そんな豪傑で素晴らしい人になりきれるのでしょうか?」
「うむ…。その点はまぁ…頭を打って記憶があやふやだと言えばいい。顔も本人そっくりであるし、我々家族にも似ているんだから。我が妻コルドゥラに年々似てきているし、アイロサなんてエルヴィーラの小さい頃そっくりだ。心配せんでも現皇帝はここに来た事はない。だから、会った事もないだろう。」
「皇帝!?まさかとは思いますが、お相手は皇帝なのですか!?この世界の知識も無いですし、無理です!」
相手が皇帝陛下なら、私は皇后陛下となるわけよね?知識もマナーも何もよく分かっていないのに、出来るわけがないと思うのだけど…果たして記憶が無い、だけで通るのかしら。
「大丈夫だ。エルヴィーラの小さい頃からの侍女のインサを連れて行ける。結婚式が終わったら、インサはこちらに帰って来なければならないがそれまでは分からない事はインサに聞いてくれ。…本当に済まない。が、よろしく頼む。そろそろ本当に準備しないと、間に合わなくなる。それはいかんのだ。準備に入ってもらってもいいか?」
「はい…分かりました。」
私は渋々返事をした。
不安だけれど、やるしかないのよね。この世界で生きていくしか、私には道が無いものね。だって、ここの辺境伯爵家や、国の人達の命を、と言われてしまったのだもの。本当にそうなのかは分からないけれど。
きっと演じてみせるわ!インサさんにいろいろ教えてもらわないとね。
「ではインサ、あとはよろしく。…エルヴィーラとなった娘よ、幸せにな。」
そう言ったヘルフリート様もまた、部屋を出て行った。
「さぁそうと決まれば、急いでお仕度を。」
今まで壁際に静かに立っていた、私が目が覚めた時に傍にいた人がゆっくりと手を差し出してくれて私の体を起こし、お仕度の為に部屋から連れ出した。
11
お気に入りに追加
335
あなたにおすすめの小説
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。

【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

死ぬはずだった令嬢が乙女ゲームの舞台に突然参加するお話
みっしー
恋愛
病弱な公爵令嬢のフィリアはある日今までにないほどの高熱にうなされて自分の前世を思い出す。そして今自分がいるのは大好きだった乙女ゲームの世界だと気づく。しかし…「藍色の髪、空色の瞳、真っ白な肌……まさかっ……!」なんと彼女が転生したのはヒロインでも悪役令嬢でもない、ゲーム開始前に死んでしまう攻略対象の王子の婚約者だったのだ。でも前世で長生きできなかった分今世では長生きしたい!そんな彼女が長生きを目指して乙女ゲームの舞台に突然参加するお話です。
*番外編も含め完結いたしました!感想はいつでもありがたく読ませていただきますのでお気軽に!

【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢は7年前の姿をしている
五色ひわ
恋愛
ドラード王国の第二王女、クラウディア・ドラードは正体不明の相手に襲撃されて子供の姿に変えられてしまった。何とか逃げのびたクラウディアは、年齢を偽って孤児院に隠れて暮らしている。
初めて経験する貧しい暮らしに疲れ果てた頃、目の前に現れたのは婚約破棄寸前の婚約者アルフレートだった。

乙女ゲームは見守るだけで良かったのに
冬野月子
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した私。
ゲームにはほとんど出ないモブ。
でもモブだから、純粋に楽しめる。
リアルに推しを拝める喜びを噛みしめながら、目の前で繰り広げられている悪役令嬢の断罪劇を観客として見守っていたのに。
———どうして『彼』はこちらへ向かってくるの?!
全三話。
「小説家になろう」にも投稿しています。

記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。
ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。
毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。
お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!
水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。
シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。
緊張しながら迎えた謁見の日。
シエルから言われた。
「俺がお前を愛することはない」
ああ、そうですか。
結構です。
白い結婚大歓迎!
私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。
私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる