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19. 思い出した記憶 〜国王軍が来た夜〜
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(大変…!!!私、なぜ大切な事を忘れていたのかしら!?どうしましょう…!)
夜中。
エレーネが寝ていると階下から、ドンドンと大きな音がした為に目が覚め、部屋の扉をこっそりと開けて玄関ホールから聞こえてきた声に耳をすました。
訪ねてきた者がものすごく大きな声で話しているから、静かな夜にとても響き渡っていた為によく聞こえた。その中に、聞き覚えのある〝ハルヴァシ子爵〟という言葉が出て来た。
(ハルヴァシ子爵…?どこかで………え!!!私!そうよ!)
エレーネは、その言葉に聞き覚えがある気がして頭をひねると、今まで失っていたと思っていた記憶がじわじわと上塗りされるようにすっかり思い出した。
自分は、エレーネ=ハルヴァシ。誰か分からない者に襲撃されたのだと。
(どうしましょう!?家に帰らなければきっと両親が心配しているわ!というか…皆、大丈夫かしら!?)
玄関ホールで話していた訪問者が帰ると慌てて扉を一度閉めたエレーネ。
だが部屋の扉付近でどうしようかと少し考えていたが、エレーネは意を決して扉を再度開け廊下へと飛び出した。
「わ!と…ごめん。大丈夫?」
「きゃ…!あ、アレイスター様?」
廊下には、斜め向かいの部屋のアレイスターがいてぶつかりそうになった。けれどアレイスターが、優しく受け止めてくれた。さながらアレイスターの胸に飛び込んだような形になったエレーネは、慌ててそこから離れようとする。が、アレイスターもエレーネを包み込むように受け止めた為そのまま逃してはくれなかった。
「アレイスター様…」
離して下さい、と言おうとするがこの状況を考えるとみるみる内に顔が真っ赤になり言葉が繋げなくなったエレーネ。
対してアレイスターは、このまま抱き締めていたい気持ちをぐっと堪えてゆっくりとエレーネの両腕を摑んで、自身は後ろへと下がり少しお互いの距離を開けた。
「どうしたの?さっきの奴、大きな声だったから様子を見ていたんだ。エレーネもしかして…。」
「あの!私、帰らなければ!今までお世話になって、本当に有り難く、お返しも何一つできておりませんけれど…!」
そう言ってエレーネは、顔を上げ、自分より頭一つ分背の高いアレイスターに訴えかけた。
「そうか…。思い出したんだね。さっきの奴、ものすごく大きな声だったからね。よく聞こえてしまったよね…。でもね、残念ながら今、エレーネが帰った所で何もやる事はないよ。俺の父上と兄上が子爵領へ行っていろいろとしてくれているから心配しないで。だから今はしっかり寝て、体力を付ける事。それがエレーネがすべき事だよ。出来る?」
「え…留守にされていたお二人のお仕事って、それでしたの…?何から何まですみません…。」
「謝る事は何もないよ。それが彼らの仕事でもあるんだからね。さ、部屋へ戻ろう。俺、付いててあげたいけど、それ以上の事をエレーネにしてしまいそうで自分が制御出来るか自信がないよ。だから今はこれを君に。よく眠れるおまじないだよ。」
そう言ったアレイスターは、自分より少し背の低いエレーネに合わせて腰をかがめ、頬にキスをした。
「あぁ、こういう時にエレーネを一人にさせたくないなぁ。でも、まだ夜に二人きりで一緒にいるわけにはいかないよね。だから今日はこれで我慢するよ。ゆっくり寝るんだよ。明日、また話をしようね。」
そう言ってエレーネの頭を撫で、背中を優しく押して部屋へ促して扉を閉めると、アレイスターは自身の部屋へと戻った。
エレーネは、された事を思い出し、再び顔に熱が集まってくるのを感じ、キスをされた側の頬を片手で優しく触れ、そのあと両手で顔を覆った。
(きゃー!!アレイスター様が頬に…!どうしよう!嬉しい…!)
エレーネは忘れていた記憶を思い出した事よりもアレイスターにされた事を何度も振り返り、ベッドに潜り込んだけれど、優しい言葉を掛けてくれたアレイスターを想ってなかなか眠れなかった。
夜中。
エレーネが寝ていると階下から、ドンドンと大きな音がした為に目が覚め、部屋の扉をこっそりと開けて玄関ホールから聞こえてきた声に耳をすました。
訪ねてきた者がものすごく大きな声で話しているから、静かな夜にとても響き渡っていた為によく聞こえた。その中に、聞き覚えのある〝ハルヴァシ子爵〟という言葉が出て来た。
(ハルヴァシ子爵…?どこかで………え!!!私!そうよ!)
エレーネは、その言葉に聞き覚えがある気がして頭をひねると、今まで失っていたと思っていた記憶がじわじわと上塗りされるようにすっかり思い出した。
自分は、エレーネ=ハルヴァシ。誰か分からない者に襲撃されたのだと。
(どうしましょう!?家に帰らなければきっと両親が心配しているわ!というか…皆、大丈夫かしら!?)
玄関ホールで話していた訪問者が帰ると慌てて扉を一度閉めたエレーネ。
だが部屋の扉付近でどうしようかと少し考えていたが、エレーネは意を決して扉を再度開け廊下へと飛び出した。
「わ!と…ごめん。大丈夫?」
「きゃ…!あ、アレイスター様?」
廊下には、斜め向かいの部屋のアレイスターがいてぶつかりそうになった。けれどアレイスターが、優しく受け止めてくれた。さながらアレイスターの胸に飛び込んだような形になったエレーネは、慌ててそこから離れようとする。が、アレイスターもエレーネを包み込むように受け止めた為そのまま逃してはくれなかった。
「アレイスター様…」
離して下さい、と言おうとするがこの状況を考えるとみるみる内に顔が真っ赤になり言葉が繋げなくなったエレーネ。
対してアレイスターは、このまま抱き締めていたい気持ちをぐっと堪えてゆっくりとエレーネの両腕を摑んで、自身は後ろへと下がり少しお互いの距離を開けた。
「どうしたの?さっきの奴、大きな声だったから様子を見ていたんだ。エレーネもしかして…。」
「あの!私、帰らなければ!今までお世話になって、本当に有り難く、お返しも何一つできておりませんけれど…!」
そう言ってエレーネは、顔を上げ、自分より頭一つ分背の高いアレイスターに訴えかけた。
「そうか…。思い出したんだね。さっきの奴、ものすごく大きな声だったからね。よく聞こえてしまったよね…。でもね、残念ながら今、エレーネが帰った所で何もやる事はないよ。俺の父上と兄上が子爵領へ行っていろいろとしてくれているから心配しないで。だから今はしっかり寝て、体力を付ける事。それがエレーネがすべき事だよ。出来る?」
「え…留守にされていたお二人のお仕事って、それでしたの…?何から何まですみません…。」
「謝る事は何もないよ。それが彼らの仕事でもあるんだからね。さ、部屋へ戻ろう。俺、付いててあげたいけど、それ以上の事をエレーネにしてしまいそうで自分が制御出来るか自信がないよ。だから今はこれを君に。よく眠れるおまじないだよ。」
そう言ったアレイスターは、自分より少し背の低いエレーネに合わせて腰をかがめ、頬にキスをした。
「あぁ、こういう時にエレーネを一人にさせたくないなぁ。でも、まだ夜に二人きりで一緒にいるわけにはいかないよね。だから今日はこれで我慢するよ。ゆっくり寝るんだよ。明日、また話をしようね。」
そう言ってエレーネの頭を撫で、背中を優しく押して部屋へ促して扉を閉めると、アレイスターは自身の部屋へと戻った。
エレーネは、された事を思い出し、再び顔に熱が集まってくるのを感じ、キスをされた側の頬を片手で優しく触れ、そのあと両手で顔を覆った。
(きゃー!!アレイスター様が頬に…!どうしよう!嬉しい…!)
エレーネは忘れていた記憶を思い出した事よりもアレイスターにされた事を何度も振り返り、ベッドに潜り込んだけれど、優しい言葉を掛けてくれたアレイスターを想ってなかなか眠れなかった。
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