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14. 国王軍
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その日の夜遅く。
スヒルトラーゼ侯爵の屋敷に、火急の使いが来た。王宮に本部がある、国王軍だ。皆揃いの軍服を纏い、屋敷の外にはぞろぞろと馬で来た者達が一旦休んでいる。
ドンドンドンドン!!!!
扉が乱暴に叩かれ、執事のマルセルが急いで上着を羽織り玄関先へと出る。
「ルドルフ国王陛下より!!書状を持って参った!!我々も確認の為ただ今よりハルヴァシ子爵領に向かう!!スヒルトラーゼ侯爵は居られるか!!?」
使いの者が夜間であるのに腹の底から力を入れたような大きな声で言い放った。夜の静寂に似合わない声が響き渡った。
「ありがとうございます。私どもの主はハルヴァシ子爵領に居ります。今はサロメ様が領主代行となっております。サロメ様を起こして参りますので、少しお待ちくださいますか。」
そう言って、マルセルは下がろうとしたが後ろから上着を羽織ったサロメ夫人が下りてきた。
「遅くまでご苦労様です。夜間ですからもう少し声を抑えて下さると助かりますわ。私が現在領主代行のサロメです。主人と息子は、子爵領へ向かいました。その後どうなったのか知らせが無いのでわかりませんけれど、どうぞよろしくお願い致します。」
「労い感謝申し上げる!ハルヴァシ子爵領におられるのですね!承知した!では我々はすぐ向かう!これにて失礼する!」
そう先ほどよりはほんの少しだけ声を潜めて言うと、使いの者は軍式の礼をしてから玄関扉を思い切りバタン!と閉め、敷地の外へと出て行った。
階上からは、何となく扉を閉めるような音が小さく聞こえたが、それ以上になんだか疲れてしまい玄関ホールに残った二人はその音の主が誰かなんて大して気にも止めなかった。
「奥様…。」
「ふぅ…。マルセル、お疲れさま。やはり夜中になったわね。王宮からは距離があるので仕方ないけれど。さぁ、もう誰も来ないでしょう。戸締まりをしっかりしておいてちょうだい。そうだわ、ホットミルクを用意してくれる?。マルセル、少し話したいわ。」
「はい。承知致しました。では施錠を確認しましたらすぐ準備します。リビングルームでよろしいですか?」
そう言ったサロメはマルセルに指示をしてリビングルームへ行った。
マルセルは、戸締まりを確認する為に玄関扉へと近づき素早く施錠すると、サロメに指示されたようにホットミルクを準備し、リビングルームへと急いだ。
二人共に、国王軍がやっと来たと胸をなで下ろした。馬に少し休憩も取りつつ走らせて半日ほどの距離の王都。その中央の王宮にいる国王陛下へと知らせ、軍が引き継ぎや遠征の準備をし、体制を整えて出立してくるまでおよそ一日だろうと予想を立てていた。
軍や国王陛下にとったらこの事態は全く予想していなかった事であるからむしろ早く来てくれたと思うべきであろうか。
真夜中であるから本来であれば、侯爵家に訪問する時間ではない。けれども緊急事態であるから、そんな常識はお構いなしなのだ。
こちらも、夜に来るかもしれないと思っていた。だからサロメもマルセルも夜着ではなくいつでもすぐに人前へ出られる格好で寝ていたのだ。
ここからは馬で駆ければ夜明け前にはハルヴァシ子爵領には余裕で到着する。それで、どのような対応をするのか。書状はそちらにいるイェフダの手に渡るので、サロメとマルセルは内容が分からない。
しかし、国王軍が来たという事はきっとまた以前のように国境に配備してくれるのだろうと淡い期待を持ちつつ、今後の対応を軽く話し合い、各々眠りについた。
スヒルトラーゼ侯爵の屋敷に、火急の使いが来た。王宮に本部がある、国王軍だ。皆揃いの軍服を纏い、屋敷の外にはぞろぞろと馬で来た者達が一旦休んでいる。
ドンドンドンドン!!!!
扉が乱暴に叩かれ、執事のマルセルが急いで上着を羽織り玄関先へと出る。
「ルドルフ国王陛下より!!書状を持って参った!!我々も確認の為ただ今よりハルヴァシ子爵領に向かう!!スヒルトラーゼ侯爵は居られるか!!?」
使いの者が夜間であるのに腹の底から力を入れたような大きな声で言い放った。夜の静寂に似合わない声が響き渡った。
「ありがとうございます。私どもの主はハルヴァシ子爵領に居ります。今はサロメ様が領主代行となっております。サロメ様を起こして参りますので、少しお待ちくださいますか。」
そう言って、マルセルは下がろうとしたが後ろから上着を羽織ったサロメ夫人が下りてきた。
「遅くまでご苦労様です。夜間ですからもう少し声を抑えて下さると助かりますわ。私が現在領主代行のサロメです。主人と息子は、子爵領へ向かいました。その後どうなったのか知らせが無いのでわかりませんけれど、どうぞよろしくお願い致します。」
「労い感謝申し上げる!ハルヴァシ子爵領におられるのですね!承知した!では我々はすぐ向かう!これにて失礼する!」
そう先ほどよりはほんの少しだけ声を潜めて言うと、使いの者は軍式の礼をしてから玄関扉を思い切りバタン!と閉め、敷地の外へと出て行った。
階上からは、何となく扉を閉めるような音が小さく聞こえたが、それ以上になんだか疲れてしまい玄関ホールに残った二人はその音の主が誰かなんて大して気にも止めなかった。
「奥様…。」
「ふぅ…。マルセル、お疲れさま。やはり夜中になったわね。王宮からは距離があるので仕方ないけれど。さぁ、もう誰も来ないでしょう。戸締まりをしっかりしておいてちょうだい。そうだわ、ホットミルクを用意してくれる?。マルセル、少し話したいわ。」
「はい。承知致しました。では施錠を確認しましたらすぐ準備します。リビングルームでよろしいですか?」
そう言ったサロメはマルセルに指示をしてリビングルームへ行った。
マルセルは、戸締まりを確認する為に玄関扉へと近づき素早く施錠すると、サロメに指示されたようにホットミルクを準備し、リビングルームへと急いだ。
二人共に、国王軍がやっと来たと胸をなで下ろした。馬に少し休憩も取りつつ走らせて半日ほどの距離の王都。その中央の王宮にいる国王陛下へと知らせ、軍が引き継ぎや遠征の準備をし、体制を整えて出立してくるまでおよそ一日だろうと予想を立てていた。
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真夜中であるから本来であれば、侯爵家に訪問する時間ではない。けれども緊急事態であるから、そんな常識はお構いなしなのだ。
こちらも、夜に来るかもしれないと思っていた。だからサロメもマルセルも夜着ではなくいつでもすぐに人前へ出られる格好で寝ていたのだ。
ここからは馬で駆ければ夜明け前にはハルヴァシ子爵領には余裕で到着する。それで、どのような対応をするのか。書状はそちらにいるイェフダの手に渡るので、サロメとマルセルは内容が分からない。
しかし、国王軍が来たという事はきっとまた以前のように国境に配備してくれるのだろうと淡い期待を持ちつつ、今後の対応を軽く話し合い、各々眠りについた。
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