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これからの伯爵家

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「はいよ。これでいいかね。」
と、男爵様が出された書類をお父様が記入してくれた。

「ありがとうございました。では、確認いたします。まず、こちら。爵位譲渡証明書です。伯爵家が所有されているものすべてこれからは、私が所有させてもらいます。それから…」
「な、なんだって!?」
お父様がソファから立ち上がって、叫んだ。素早く書類にサインをしてくれていたけれど、中身は目を通していなかったのね。

「おや、聞こえなかったですか?ですからこれは爵位譲渡…」
「聞こえとるわ!書類、よこせ!だましおって!!」

「伯爵!いえ…今は、義父様と呼ばせてもらいます。私が話しているのに、遮らないで頂きたい。」
と、先ほど私と話をしていた時とは全く違う、鋭い眼差しでお父様を見ている。
お父様も、畏怖を感じたのかそれともマナーとしてはさすがに悪いと思ったのか、

「す、済まない…。では取りあえず話を聞こう。」
と言った。圧倒されたのかもしれないわ。

「あなた…!どういう事!?ねぇ、何の書類にサインをしていたの?あなたが伯爵じゃないって、私は?私はどうなるの?生活は?」

「…ええと義母様。あなたも私が話しているのに、話を遮らないで頂けますか。話が前に進みません。」
男爵様は、呆れながらそう言った。

…もう!私の背中、先ほどから本当に冷や汗が滴り落ちているんじゃないかしら。何か薄ら寒くなってきた。なんだか申し訳なさでいっぱいになってきたわ。


「では話を続けます。まず、義父様。あなたは、先代伯爵が亡くなってからあとを継がれましたね?そして、引き継いだものがあまりうまくいってない。加えて、賭博もやられてかなりの負債を抱えていますね?あと、数年このままなら確実に伯爵家は潰れてしまいますよね。それは理解されてますか?」
と、男爵様は穏やかに言われた。

そうだったの!?
私、お父様がいつ仕事をなさっているのか分からなくて、よく生活できるわと思ってはいたのよね。
伯爵領ではバートンがよくやってくれているとは思っていたけれど。
そうなのね、あと数年で…。

「いや!私が賭博やっているのも、家計の足しにしようとしたんだ!実際、儲かって返済できてきた!マーガレットが、市井に商売の手伝いをしに行っているのと同じだ!!」
と、お父様は声を荒げて言っている。そんなに大きな声を出さなくても…。
それに私は、賭博をしていたと聞いて益々眉を顰めてしまった。

「義父様。マーガレット嬢は真っ当な方法で家計を助けているんですよ。賭博は我が国では違法ですよね?」

「う…。」

「ですから、私がこれからこの伯爵家の代理当主となり、私とマーガレット嬢の子供が大きく成長したら当主を継がせようと思います。潔く、隠居してもらいましょうか。どうです?異論はありませんね?」
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