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ドレスの準備

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あれから食堂と酒場に、明日と明後日は休みをもらっていいか、恐る恐る聞いてみた。

すると意外にも、『今まで定休日以外休まず来てくれてたからね。いいよ。ゆっくり休んでおいで。』と言われたので、ゆっくり休むわけではないからこの際だからと理由を説明した。

結婚をいつするか分からないけれど、近い内に辞める事になる事も伝えないといけないからね。

食堂のご夫婦も、酒場の店主も自分の事のように喜んでくれた。本当にいい人達だわ。
…まぁ、念のため話が立ち消えになる可能性も含めて伝えておいた。だって、私には手紙を読ませてくれなかったのだもの。だから、話が本当なのかどうかいまいち信用ならないのよね。

だってお相手が新聞にも載った、今をときめく男爵様なんですもの。功績を称えられて爵位を賜るなんて、そうそう出来るものではないわ!

そんな雲の上のような人が、なぜこんな貧しい生活をしている伯爵令嬢に声を掛けてきたのか不思議でしょうがないの。
だって、もっと違う女性の方が結婚支度金も渡さなくていいだろうし、身一つで嫁いで来いなんて言わなくても済む。

なぜ私なのか、全くもって実感が湧かないわ。



ドレスはお祖母様の持ち物の中から選ぶ事になった。

お母様に話すと、『手直しするの?…じゃあ、もう亡くなったお祖母様のドレスにしましょう?お祖母様の私物の方が豪華よ。少し古臭いけれど大丈夫。高級な物ほど、長く使えるものよ。』と言われたとサラから聞いた。

サラが、私が食堂にお勤めに行っている時に選別してくれたお祖母様のドレスが数着、私の部屋にあった。

着れるのか不安だったけれどサラが『夜なべして直しますから。ベディズに聞いたけれど、大奥様も体系はマーガレット様のような細身だったそうですから、きっと大丈夫です。』
と言われた。サラ…ごめんなさい。体調だけは崩さないでね!!


結局、無難にごく薄いクリーム色にした。
私が、淡い色が好きという事もある。お祖母様のドレスは確かに品質が良く、色褪せたりもなかった。
それに、このドレスはレースの刺繍が足元に細かく施されていてとても綺麗だったから。

お祖母様。手直しする事をお許し下さい。

お祖父様が、お祖母様の事をとても大事に思っていて使われていた物をすべて取っておいたらしい。
そして、大きくなったら着ておくれと、私に言われたのでお許しいただけると思うけれど。

装飾品もと思ったけれど、結局それは無しにした。

さすがお祖母様だわ!とても素敵な宝石がたくさんあったの。
でもそれを付ける気にはどうしてもなれなかった。お祖母様の想いが詰まっているだろうなと思ったのと、今のこの生活をしている私にはとても似合わないだろうなと思ってしまったから。

もちろん、お父様の話だけだから本当かは分からないけれど、結婚の打診らしいから着飾った方がいいかなとは一瞬思ったわ。
だけど、何か裏があるのかしらと思い、私も乗り気です、なーんて宝石で飾り立てたくなかったのもあるの。
だってボーティーンが売られたと言っていたもの。そうかもしれないなら、飾りたてでもしたら私が承諾しているようなものだもの。
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