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十一、出発

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「私を連れて行って!」

 そう頼むと、ショウは私の手を引っ張って抱き寄せた。

「………!」

 私は、いきなりショウの腕の中に引き寄せられたからとても恥ずかしくて声も出せなかった。
でも、存外ショウとくっついていても心地よくて。
ドキドキと胸が早く動いているのを聞かれないかとそれだけを思って目を瞑った。

「何か、持っていきたいものあるか?たくさんは無理だけど、少しなら。」

 ショウがそのままの姿勢でそう言ったので、私の耳に息がかかって少しくすぐったかったけれど、思案する。
そして、お母様にもらった簪を一つ、持っていこうと思った。

「お母様にもらった簪、持って行ってもいい?」

「いいぜ。どこにある?………あった。こい。」

 私は、どこにあるのかはよく分からなかった。
お母様からもらったのだからこの部屋に置いておいて欲しいのに、衣装部屋に置いておくと言われたからだ。
でも、ショウは、あったと言って右の手のひらを広げた。
少しすると音も無く簪が、ショウの手のひらに唐突に現れた。

「えっ!?」

 私は驚いて声を出してしまったが、ショウは何事も無かったかのように『これじゃなかったか?』と言ったので慌てて言った。

「ううん、これよ。ショウ、すごいわ!何でも出来るのね!!」

 ショウを見ると喜んでいる様子だった。

「これだけでいいか?じゃあ今から行くか。」

 そう言ってショウは立ち上がり、私を引っ張り立たせてくれた。

 ずいぶん急だなとも思ったが、同時に早くこの屋敷から出られるならとワクワクする気持ちのが多かった為即答した。

「うん。楽しみだわ!」

「そうか。…もう二度と、帰って来れんぞ。」

「ええ。一緒に居られるのでしょ?」

 私はショウを見て微笑むと、ショウはとても嬉しそうに笑って私を横抱きにした。

「え?ちょっと…!」

「大丈夫。体重を俺に預けて。落としたりしない。だから動くなよ。」

 ショウはそれだけ言って、再度ぎゅっと両腕に力をいれて私を抱え、前を向いて夜の闇へと飛び出して行った。
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