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七、 あれから二年
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「入内!?」
「そうでござりまする。誠にようございました!ささ、準備がありますゆえ、失礼いたします。」
あれから二年。私は十四歳になった。
相変わらずネズもいて、ショウもたまに会いに来てくれる生活を送っている。
毒を入れられた食事は、三日位続いたけれど、ショウが夜に訪れて『もう大丈夫だ。』と言ってくれた次の日から、何故か入れられなくなった。
私の父親は偉い人らしいから、権力の奪い合いとかそんな感じの絡みかなとも思ったけれど。
それに、侍女がいつの間にか代わっていたのよね。
それからはまぁ、見た目がお母様より年上の年齢の侍女がついている。
その人は、ひなと言う名前。
ひなはよく喋ってくる。『もうこんな歳ですのに、ひなと言う名は可笑しいでしょうがそう呼んで下さいませ。』と言った。
聞くところによると、お母様がこの屋敷に来る前に遣えていた侍女らしい。お母様もいろいろな芸をこなしていたからそれなりの家の出だとは思っていたけれど。
その侍女が、私に先ほどの言葉を伝えに来た。
そして、涙を流しながら何度も『良かったですね。』と言って私の両手をさすってくれた。
でも、私には何が良かったのか分からない。
入内って、天皇に輿入れってことでしょう?私にはなんの魅力があるというわけ?と思った所で、父親か…と思った。
きっと、それなりに有名な人が、自分の娘を差し出して今より更に権力を付けようと画策しているのね。
今の天皇って…名前なんだっけ?幾つの人?
私何も知らないわ。そして、私が結婚!?
きっと、この牢獄のような屋敷から出られてもまた、宮中で同じように牢獄のような生活をするのでしょうね………。
「どうした?浮かない顔してるな。良かったんじゃないのか?あのひなって奴は泣いておったぞ。」
「そうね。ひなはきっと、良かったと思ったのでしょうね。けれど私は、どんな人かも知らない人の所にお嫁になんて行きたくないわ!…でも、行かないといけないのでしょうね…きっと、その為に生かされていたんだわ。」
「そんな寂しい事言うなよ。人間の女ってのは、結婚するのが夢なんだろ?相手の地位が高ければ高い程、嬉しいんじゃないのか?」
「知らないわ。そんなの誰が言っていたのよ。また、侍女達の噂話?私はこの牢獄のような屋敷から抜け出したいのよ!…だけれど、入内しても、場所が変わるだけ。不自由な生活を送るのは一緒だわ。」
なんだか考えていると涙がこぼれてきた。私は、いつかのように顔を両手で隠して声を殺して泣いていた。
「そうでござりまする。誠にようございました!ささ、準備がありますゆえ、失礼いたします。」
あれから二年。私は十四歳になった。
相変わらずネズもいて、ショウもたまに会いに来てくれる生活を送っている。
毒を入れられた食事は、三日位続いたけれど、ショウが夜に訪れて『もう大丈夫だ。』と言ってくれた次の日から、何故か入れられなくなった。
私の父親は偉い人らしいから、権力の奪い合いとかそんな感じの絡みかなとも思ったけれど。
それに、侍女がいつの間にか代わっていたのよね。
それからはまぁ、見た目がお母様より年上の年齢の侍女がついている。
その人は、ひなと言う名前。
ひなはよく喋ってくる。『もうこんな歳ですのに、ひなと言う名は可笑しいでしょうがそう呼んで下さいませ。』と言った。
聞くところによると、お母様がこの屋敷に来る前に遣えていた侍女らしい。お母様もいろいろな芸をこなしていたからそれなりの家の出だとは思っていたけれど。
その侍女が、私に先ほどの言葉を伝えに来た。
そして、涙を流しながら何度も『良かったですね。』と言って私の両手をさすってくれた。
でも、私には何が良かったのか分からない。
入内って、天皇に輿入れってことでしょう?私にはなんの魅力があるというわけ?と思った所で、父親か…と思った。
きっと、それなりに有名な人が、自分の娘を差し出して今より更に権力を付けようと画策しているのね。
今の天皇って…名前なんだっけ?幾つの人?
私何も知らないわ。そして、私が結婚!?
きっと、この牢獄のような屋敷から出られてもまた、宮中で同じように牢獄のような生活をするのでしょうね………。
「どうした?浮かない顔してるな。良かったんじゃないのか?あのひなって奴は泣いておったぞ。」
「そうね。ひなはきっと、良かったと思ったのでしょうね。けれど私は、どんな人かも知らない人の所にお嫁になんて行きたくないわ!…でも、行かないといけないのでしょうね…きっと、その為に生かされていたんだわ。」
「そんな寂しい事言うなよ。人間の女ってのは、結婚するのが夢なんだろ?相手の地位が高ければ高い程、嬉しいんじゃないのか?」
「知らないわ。そんなの誰が言っていたのよ。また、侍女達の噂話?私はこの牢獄のような屋敷から抜け出したいのよ!…だけれど、入内しても、場所が変わるだけ。不自由な生活を送るのは一緒だわ。」
なんだか考えていると涙がこぼれてきた。私は、いつかのように顔を両手で隠して声を殺して泣いていた。
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