【完結】双子の入れ替わりなんて本当に出来るのかしら、と思ったら予想外の出来事となりました。

まりぃべる

文字の大きさ
上 下
2 / 29

2. 母と双子

しおりを挟む
「フレドリカ、シェスティン、来なさい!」


 二人の母、カイサは自分の気分でフレドリカとシェスティンを呼ぶ。可愛がりたい時に、可愛がっているのだ。


 二人がまだ準備学校へ通う前は、子供達から母の部屋へ行く事はほとんどなかった。行くとあからさまに嫌な顔をする事が多かったからだ。
けれども、カイサが今日は子供達と服のをしたいと思った時には、カイサが直接呼びに来る事もあれば、カイサの侍女インニエルが呼びに来る事もあった。



「あぁ、まただわ。行かなくては。コーラ、本を片付けるのを手伝ってくれる?」


 シェスティンは書庫に籠もり本を読んでいたが、カイサに呼ばれた時には慌てて片付けをして向かうのだ。


「承知しました。」


 コーラに手伝ってもらい、カイサの部屋へ行ってもシェスティンはあまり嬉しいとは思わなかった。


(お母様、呼んでくれるのは嬉しいけれど、私が何をしているかも聞かずに呼ぶのだもの。しかも大抵は、ドレスやワンピースを何着も着せられたりするから疲れるのよね。)


 シェスティンは、うんざりしながら向かうのだ。



「シェスティン、似合うわね!…あぁ、これ付けてみて?もう私使わないから。」

「お母様、そのイヤリングはさすがに私にはちょっと大き過ぎます。せっかくですけれど…。」

「まぁ!私が差し上げると言っているのよ?とにかく似合うかどうか付けてみなさい!」


 カイサは、宝飾品は大きく目立つものが好みであった。そのイヤリングも、大きめな宝石が付いたギラギラと輝いているイヤリングだ。子供の耳には、少々、いやかなり大きく、耳がちぎれそうに重いと感じた。


「お母様、やっぱりちょっと…」

「シェスティンがいらないなら、私が欲しいわ、お母様!」

「そうね。全く!私が譲ると言ったのにシェスティンは文句ばかり言うのだもの。じゃあフレドリカ、付けてみなさい。
…あら、いいわね。」

「本当?やった!お母様、これ素敵ね!」

「そうでしょ!?ウフフフ。フレドリカは良く分かっているわね!シェスティンはこんな素敵なものをいらないって言うだなんて!」

「お母様、シェスティンはこういうの宝飾品よりも本が好きなんだから仕方ないわ!」

「それもそうね!じゃあこれからは使わなくなったものはフレドリカにあげるわ!」

「わぁ!お母様!嬉しいわ!」


ーーー
ーー

 カイサは、気が向けば友人を呼んでお茶会を開いたり、友人の家へお茶会に出掛ける位で、家では何をするでもなく過ごしていた。その為、子供達を呼んではこのように着せ替えをしていたのだ。たまに被服や宝飾品を扱う商人を家に招き、その場に双子も呼んで新しいものを作らせていた。




(家にいては、いつお母様に呼ばれて自分の好きな事が出来なくなるのか分からないわ。)


 シェスティンはいつしか、家の書庫ではなく、違う所で本を読んだり出来ないかと考えるようになっていった。


 準備学校に通い出すと、その頻度は確実に減ったので少しホッとするシェスティンであった。



 だがフレドリカが、基礎学校へは自分だけが通うと言い出した為に、基礎学校へ通う事が出来ないと分かるとせっかくなら外へ出掛けようと考え始めるシェスティンであった。
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

いつか彼女を手に入れる日まで

月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

【完結】冷徹公爵、婚約者の思い描く未来に自分がいないことに気づく

21時完結
恋愛
冷徹な公爵アルトゥールは、婚約者セシリアを深く愛していた。しかし、ある日、セシリアが描く未来に自分がいないことに気づき、彼女の心が別の人物に向かっていることを知る。動揺したアルトゥールは、彼女の愛を取り戻すために全力を尽くす決意を固める。

【完結】契約の花嫁だったはずなのに、無口な旦那様が逃がしてくれません

Rohdea
恋愛
──愛されない契約の花嫁だったはずなのに、何かがおかしい。 家の借金返済を肩代わりして貰った代わりに “お飾りの妻が必要だ” という謎の要求を受ける事になったロンディネ子爵家の姉妹。 ワガママな妹、シルヴィが泣いて嫌がった為、必然的に自分が嫁ぐ事に決まってしまった姉のミルフィ。 そんなミルフィの嫁ぎ先は、 社交界でも声を聞いた人が殆どいないと言うくらい無口と噂されるロイター侯爵家の嫡男、アドルフォ様。 ……お飾りの妻という存在らしいので、愛される事は無い。 更には、用済みになったらポイ捨てされてしまうに違いない! そんな覚悟で嫁いだのに、 旦那様となったアドルフォ様は確かに無口だったけど───…… 一方、ミルフィのものを何でも欲しがる妹のシルヴィは……

【完結】婚約破棄されたので田舎に引きこもったら、冷酷宰相に執着されました

21時完結
恋愛
王太子の婚約者だった侯爵令嬢エリシアは、突然婚約破棄を言い渡された。 理由は「平凡すぎて、未来の王妃には相応しくない」から。 (……ええ、そうでしょうね。私もそう思います) 王太子は社交的な女性が好みで、私はひたすら目立たないように生きてきた。 当然、愛されるはずもなく――むしろ、やっと自由になれたとホッとするくらい。 「王都なんてもう嫌。田舎に引きこもります!」 貴族社会とも縁を切り、静かに暮らそうと田舎の領地へ向かった。 だけど―― 「こんなところに隠れるとは、随分と手こずらせてくれたな」 突然、冷酷無慈悲と噂される宰相レオンハルト公爵が目の前に現れた!? 彼は王国の実質的な支配者とも言われる、権力者中の権力者。 そんな人が、なぜか私に執着し、どこまでも追いかけてくる。 「……あの、何かご用でしょうか?」 「決まっている。お前を迎えに来た」 ――え? どういうこと? 「王太子は無能だな。手放すべきではないものを、手放した」 「……?」 「だから、その代わりに 私がもらう ことにした」 (いや、意味がわかりません!!) 婚約破棄されて平穏に暮らすはずが、 なぜか 冷酷宰相に執着されて逃げられません!?

【完】まさかの婚約破棄はあなたの心の声が聞こえたから

えとう蜜夏☆コミカライズ中
恋愛
伯爵令嬢のマーシャはある日不思議なネックレスを手に入れた。それは相手の心が聞こえるという品で、そんなことを信じるつもりは無かった。それに相手とは家同士の婚約だけどお互いに仲も良く、上手くいっていると思っていたつもりだったのに……。よくある婚約破棄のお話です。 ※他サイトに自立も掲載しております 21.5.25ホットランキング入りありがとうございました( ´ ▽ ` )ノ  Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.  ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

幼なじみの王子には、既に婚約者がいまして

mkrn
恋愛
幼なじみの王子の婚約者の女性は美しく、私はーー。

どなたか私の旦那様、貰って下さいませんか?

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
私の旦那様は毎夜、私の部屋の前で見知らぬ女性と情事に勤しんでいる、だらしなく恥ずかしい人です。わざとしているのは分かってます。私への嫌がらせです……。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 政略結婚で、離縁出来ないけど離縁したい。 無類の女好きの従兄の侯爵令息フェルナンドと伯爵令嬢のロゼッタは、結婚をした。毎晩の様に違う女性を屋敷に連れ込む彼。政略結婚故、愛妾を作るなとは思わないが、せめて本邸に連れ込むのはやめて欲しい……気分が悪い。 彼は所謂美青年で、若くして騎士団副長であり兎に角モテる。結婚してもそれは変わらず……。 ロゼッタが夜会に出れば見知らぬ女から「今直ぐフェルナンド様と別れて‼︎」とワインをかけられ、ただ立っているだけなのに女性達からは終始凄い形相で睨まれる。 居た堪れなくなり、広間の外へ逃げれば元凶の彼が見知らぬ女とお楽しみ中……。 こんな旦那様、いりません! 誰か、私の旦那様を貰って下さい……。

処理中です...