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2. 母と双子
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「フレドリカ、シェスティン、来なさい!」
二人の母、カイサは自分の気分でフレドリカとシェスティンを呼ぶ。可愛がりたい時に、可愛がっているのだ。
二人がまだ準備学校へ通う前は、子供達から母の部屋へ行く事はほとんどなかった。行くとあからさまに嫌な顔をする事が多かったからだ。
けれども、カイサが今日は子供達と服の着せ替えをしたいと思った時には、カイサが直接呼びに来る事もあれば、カイサの侍女インニエルが呼びに来る事もあった。
「あぁ、まただわ。行かなくては。コーラ、本を片付けるのを手伝ってくれる?」
シェスティンは書庫に籠もり本を読んでいたが、カイサに呼ばれた時には慌てて片付けをして向かうのだ。
「承知しました。」
コーラに手伝ってもらい、カイサの部屋へ行ってもシェスティンはあまり嬉しいとは思わなかった。
(お母様、呼んでくれるのは嬉しいけれど、私が何をしているかも聞かずに呼ぶのだもの。しかも大抵は、ドレスやワンピースを何着も着せられたりするから疲れるのよね。)
シェスティンは、うんざりしながら向かうのだ。
「シェスティン、似合うわね!…あぁ、これ付けてみて?もう私使わないから。」
「お母様、そのイヤリングはさすがに私にはちょっと大き過ぎます。せっかくですけれど…。」
「まぁ!私が差し上げると言っているのよ?とにかく似合うかどうか付けてみなさい!」
カイサは、宝飾品は大きく目立つものが好みであった。そのイヤリングも、大きめな宝石が付いたギラギラと輝いているイヤリングだ。子供の耳には、少々、いやかなり大きく、耳がちぎれそうに重いと感じた。
「お母様、やっぱりちょっと…」
「シェスティンがいらないなら、私が欲しいわ、お母様!」
「そうね。全く!私が譲ると言ったのにシェスティンは文句ばかり言うのだもの。じゃあフレドリカ、付けてみなさい。
…あら、いいわね。」
「本当?やった!お母様、これ素敵ね!」
「そうでしょ!?ウフフフ。フレドリカは良く分かっているわね!シェスティンはこんな素敵なものをいらないって言うだなんて!」
「お母様、シェスティンはこういうのよりも本が好きなんだから仕方ないわ!」
「それもそうね!じゃあこれからは使わなくなったものはフレドリカにあげるわ!」
「わぁ!お母様!嬉しいわ!」
ーーー
ーー
カイサは、気が向けば友人を呼んでお茶会を開いたり、友人の家へお茶会に出掛ける位で、家では何をするでもなく過ごしていた。その為、子供達を呼んではこのように着せ替えをしていたのだ。たまに被服や宝飾品を扱う商人を家に招き、その場に双子も呼んで新しいものを作らせていた。
(家にいては、いつお母様に呼ばれて自分の好きな事が出来なくなるのか分からないわ。)
シェスティンはいつしか、家の書庫ではなく、違う所で本を読んだり出来ないかと考えるようになっていった。
準備学校に通い出すと、その頻度は確実に減ったので少しホッとするシェスティンであった。
だがフレドリカが、基礎学校へは自分だけが通うと言い出した為に、基礎学校へ通う事が出来ないと分かるとせっかくなら外へ出掛けようと考え始めるシェスティンであった。
二人の母、カイサは自分の気分でフレドリカとシェスティンを呼ぶ。可愛がりたい時に、可愛がっているのだ。
二人がまだ準備学校へ通う前は、子供達から母の部屋へ行く事はほとんどなかった。行くとあからさまに嫌な顔をする事が多かったからだ。
けれども、カイサが今日は子供達と服の着せ替えをしたいと思った時には、カイサが直接呼びに来る事もあれば、カイサの侍女インニエルが呼びに来る事もあった。
「あぁ、まただわ。行かなくては。コーラ、本を片付けるのを手伝ってくれる?」
シェスティンは書庫に籠もり本を読んでいたが、カイサに呼ばれた時には慌てて片付けをして向かうのだ。
「承知しました。」
コーラに手伝ってもらい、カイサの部屋へ行ってもシェスティンはあまり嬉しいとは思わなかった。
(お母様、呼んでくれるのは嬉しいけれど、私が何をしているかも聞かずに呼ぶのだもの。しかも大抵は、ドレスやワンピースを何着も着せられたりするから疲れるのよね。)
シェスティンは、うんざりしながら向かうのだ。
「シェスティン、似合うわね!…あぁ、これ付けてみて?もう私使わないから。」
「お母様、そのイヤリングはさすがに私にはちょっと大き過ぎます。せっかくですけれど…。」
「まぁ!私が差し上げると言っているのよ?とにかく似合うかどうか付けてみなさい!」
カイサは、宝飾品は大きく目立つものが好みであった。そのイヤリングも、大きめな宝石が付いたギラギラと輝いているイヤリングだ。子供の耳には、少々、いやかなり大きく、耳がちぎれそうに重いと感じた。
「お母様、やっぱりちょっと…」
「シェスティンがいらないなら、私が欲しいわ、お母様!」
「そうね。全く!私が譲ると言ったのにシェスティンは文句ばかり言うのだもの。じゃあフレドリカ、付けてみなさい。
…あら、いいわね。」
「本当?やった!お母様、これ素敵ね!」
「そうでしょ!?ウフフフ。フレドリカは良く分かっているわね!シェスティンはこんな素敵なものをいらないって言うだなんて!」
「お母様、シェスティンはこういうのよりも本が好きなんだから仕方ないわ!」
「それもそうね!じゃあこれからは使わなくなったものはフレドリカにあげるわ!」
「わぁ!お母様!嬉しいわ!」
ーーー
ーー
カイサは、気が向けば友人を呼んでお茶会を開いたり、友人の家へお茶会に出掛ける位で、家では何をするでもなく過ごしていた。その為、子供達を呼んではこのように着せ替えをしていたのだ。たまに被服や宝飾品を扱う商人を家に招き、その場に双子も呼んで新しいものを作らせていた。
(家にいては、いつお母様に呼ばれて自分の好きな事が出来なくなるのか分からないわ。)
シェスティンはいつしか、家の書庫ではなく、違う所で本を読んだり出来ないかと考えるようになっていった。
準備学校に通い出すと、その頻度は確実に減ったので少しホッとするシェスティンであった。
だがフレドリカが、基礎学校へは自分だけが通うと言い出した為に、基礎学校へ通う事が出来ないと分かるとせっかくなら外へ出掛けようと考え始めるシェスティンであった。
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