【完結】双子の入れ替わりなんて本当に出来るのかしら、と思ったら予想外の出来事となりました。

まりぃべる

文字の大きさ
上 下
15 / 29

15. 何度目かの校外授業

しおりを挟む
 それからも、バレエの公演を鑑賞したり、オーケストラの演奏を聴いたり、校外授業は毎回シェスティンが出席していた。
 その度に、ビルギッタとも話し、そして男の子も話し掛けてくれた。

 彼は、金色でサラサラの髪をしていてランナルと呼ばれていた。ランナルとは、この国の王太子の名前である事をシェスティンは知っていたので、それを口にすると、意外な答えが返ってきた。


「確かにランナルとは、この国の王太子の名前だ。けれど、その名前と同じ名前の人って結構いるよね。」


 だから困っちゃうのさ、と笑っていた彼に、王太子なのかそうではないのかはっきりとした答えをもらえなかった為にシェスティンは迷ってしまった。
きっと、毎日学校に通っていれば彼が王太子なのかそうでないのかなんて、すぐに分かったのだ。
だが、ここは教室ではないし、シェスティンはフレドリカとして来ている。その為、改めてそれ以上聞く事はしなかった。


(ビルギッタもランナルに対してそんなに畏まって話しているわけではないもの。どちらにせよ私も、同級生として話せば間違いないって事ね、きっと!)


 シェスティンはランナルに対しても始め、名前が分かった時にランナル、と口にした。だが、ランナルもそれを断った。


「ビルギッタが名前で呼ばれているのだし、俺にもそう呼んでよ。同じ学友なのだし、ね?」


 そう言われたら、シェスティンも新たに友人が出来て嬉しいと思った為に断る理由も特にないから了承した。すると不覚にもとても眩しい笑顔を返してくれたランナルに、シェスティンは顔を少しだけ赤くした。


(やだわ…顔が整っている人が微笑むと、胸がドキリと騒ぐのね。初めて知ったわ。)


 顔だけではなく所作も、普段触れあってきた野暮な庶民とは違って美しい為、そう思うのだとシェスティンは改めて思う。


(手の動きや言葉遣いも、細かな点まで品があるわ。それとも、貴族の男性は皆こうなのかしら?
フレドリカに話し掛けてくれる男性はランナルしかいないから、他の人と比べようがないのだけれど。)




 シェスティンは、ビルギッタとランナルと過ごした後は数日、二人の事を思い出していた。楽しく過ごした分、少し淋しくなるのだ。


(私も基礎学校に通えていたなら、友人と過ごす時間もあったのかしら。)


 ビルギッタとの会話は主に、その日の校外授業の内容ではあるけれど、それでも好みが似ている為か会話には常に花が咲いていた。
 ランナルとも、校外授業の内容が会話の主体である。たまに他のものに誘われたりもするけれど、その度にビルギッタが揶揄う為に社交辞令なのかがシェスティンには分からなかった。


(どちらにせよ、二人はフレドリカとして接してくれているのよね。シェスティンを誘っているのではないのだわ。それを思うと悲しいものがあるのだけれど……。)


 二人と打ち解けていく度に、騙しているような気になり、申し訳ないと帰り際に心の中で謝っているシェスティンであった。
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

いつか彼女を手に入れる日まで

月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?

前世の推しが婚約者になりました

編端みどり
恋愛
※番外編も完結しました※ 誤字のご指摘ありがとうございます。気が付くのが遅くて、申し訳ありません。 〈あらすじ〉 アマンダは前世の記憶がある。アイドルが大好きで、推しが生きがい。辛い仕事も推しの為のお金を稼ぐと思えば頑張れる。仕事や親との関係に悩みながらも、推しに癒される日々を送っていた女性は、公爵令嬢に転生した。 推しが居ない世界なら誰と結婚しても良い。前世と違って大事にしてくれる家族の為なら、王子と婚約して構いません。そう思っていたのに婚約者は前世の推しにそっくりでした。 推しの魅力を発信するように婚約者自慢をするアマンダに惹かれる王子には秘密があって… 別サイトにも掲載中です。

【完結】冷徹公爵、婚約者の思い描く未来に自分がいないことに気づく

21時完結
恋愛
冷徹な公爵アルトゥールは、婚約者セシリアを深く愛していた。しかし、ある日、セシリアが描く未来に自分がいないことに気づき、彼女の心が別の人物に向かっていることを知る。動揺したアルトゥールは、彼女の愛を取り戻すために全力を尽くす決意を固める。

【完結】契約の花嫁だったはずなのに、無口な旦那様が逃がしてくれません

Rohdea
恋愛
──愛されない契約の花嫁だったはずなのに、何かがおかしい。 家の借金返済を肩代わりして貰った代わりに “お飾りの妻が必要だ” という謎の要求を受ける事になったロンディネ子爵家の姉妹。 ワガママな妹、シルヴィが泣いて嫌がった為、必然的に自分が嫁ぐ事に決まってしまった姉のミルフィ。 そんなミルフィの嫁ぎ先は、 社交界でも声を聞いた人が殆どいないと言うくらい無口と噂されるロイター侯爵家の嫡男、アドルフォ様。 ……お飾りの妻という存在らしいので、愛される事は無い。 更には、用済みになったらポイ捨てされてしまうに違いない! そんな覚悟で嫁いだのに、 旦那様となったアドルフォ様は確かに無口だったけど───…… 一方、ミルフィのものを何でも欲しがる妹のシルヴィは……

【完結】婚約破棄されたので田舎に引きこもったら、冷酷宰相に執着されました

21時完結
恋愛
王太子の婚約者だった侯爵令嬢エリシアは、突然婚約破棄を言い渡された。 理由は「平凡すぎて、未来の王妃には相応しくない」から。 (……ええ、そうでしょうね。私もそう思います) 王太子は社交的な女性が好みで、私はひたすら目立たないように生きてきた。 当然、愛されるはずもなく――むしろ、やっと自由になれたとホッとするくらい。 「王都なんてもう嫌。田舎に引きこもります!」 貴族社会とも縁を切り、静かに暮らそうと田舎の領地へ向かった。 だけど―― 「こんなところに隠れるとは、随分と手こずらせてくれたな」 突然、冷酷無慈悲と噂される宰相レオンハルト公爵が目の前に現れた!? 彼は王国の実質的な支配者とも言われる、権力者中の権力者。 そんな人が、なぜか私に執着し、どこまでも追いかけてくる。 「……あの、何かご用でしょうか?」 「決まっている。お前を迎えに来た」 ――え? どういうこと? 「王太子は無能だな。手放すべきではないものを、手放した」 「……?」 「だから、その代わりに 私がもらう ことにした」 (いや、意味がわかりません!!) 婚約破棄されて平穏に暮らすはずが、 なぜか 冷酷宰相に執着されて逃げられません!?

【完】まさかの婚約破棄はあなたの心の声が聞こえたから

えとう蜜夏☆コミカライズ中
恋愛
伯爵令嬢のマーシャはある日不思議なネックレスを手に入れた。それは相手の心が聞こえるという品で、そんなことを信じるつもりは無かった。それに相手とは家同士の婚約だけどお互いに仲も良く、上手くいっていると思っていたつもりだったのに……。よくある婚約破棄のお話です。 ※他サイトに自立も掲載しております 21.5.25ホットランキング入りありがとうございました( ´ ▽ ` )ノ  Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.  ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

幼なじみの王子には、既に婚約者がいまして

mkrn
恋愛
幼なじみの王子の婚約者の女性は美しく、私はーー。

どなたか私の旦那様、貰って下さいませんか?

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
私の旦那様は毎夜、私の部屋の前で見知らぬ女性と情事に勤しんでいる、だらしなく恥ずかしい人です。わざとしているのは分かってます。私への嫌がらせです……。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 政略結婚で、離縁出来ないけど離縁したい。 無類の女好きの従兄の侯爵令息フェルナンドと伯爵令嬢のロゼッタは、結婚をした。毎晩の様に違う女性を屋敷に連れ込む彼。政略結婚故、愛妾を作るなとは思わないが、せめて本邸に連れ込むのはやめて欲しい……気分が悪い。 彼は所謂美青年で、若くして騎士団副長であり兎に角モテる。結婚してもそれは変わらず……。 ロゼッタが夜会に出れば見知らぬ女から「今直ぐフェルナンド様と別れて‼︎」とワインをかけられ、ただ立っているだけなのに女性達からは終始凄い形相で睨まれる。 居た堪れなくなり、広間の外へ逃げれば元凶の彼が見知らぬ女とお楽しみ中……。 こんな旦那様、いりません! 誰か、私の旦那様を貰って下さい……。

処理中です...