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5. 帰り道
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新しく本を購入したシェスティンは、急いで馬車へと行くとディックがコーラの持っている本を素早く取りに来てさぁさぁ早く乗ってと準備をした。
「ディック、ありがとう。あのね…」
「話は後ほど。そろそろ道を空けないと。とりあえず出発するから。」
「分かったわ。」
コーラと共に馬車に乗り込むと、ディックは素早く片付けをして出発した。
すると、コーラが話し出した。
「見つかって良かったですね。昼食は屋敷でもよろしいですか?」
シェスティンは本の事かそれとも先ほどの二人の逃げた子供達の事か分からなかったが、コーラの質問に答える。
「ええ。屋敷では無かったら、この辺りで食べられるの?」
「今回はそのような知らせを屋敷へ出しておりませんから、遠慮していただきたいですね。ですから、少しお腹が空くと思いますので、これを。」
それは、予め知らせをしておけば街で食べて来られるという事かもしれないとシェスティンは考える。そして、コーラが差し出して来たものを見て喜んだ。
「焼き菓子!?」
「はい。コニーから手渡してもらいましたよ。シェスティン様が馬車でお腹を空かせてもいけませんからと。」
「ありがとう!嬉しいわ。コニーにはあとでお礼を言っておかないとね!」
コニーは、料理人だ。自身に子供もいる為に面倒身もよく、作った料理に対して文句も言わずお礼までも伝えてくるシェスティンには、フレドリカに比べて少しだけお菓子を多めに準備してくれたりしていた。
手渡された焼き菓子を半分に割り、コーラに渡す。
「どうしました?あとに取って置くのですか?」
「コーラの分よ。一緒に食べましょうね!」
「いえ、これはシェスティン様にと準備されたものですよ。」
「そうね。だから私が受け取ったでしょう?そして、コーラと一緒に食べたいから渡したの。いいでしょう?食べてね。」
「…ありがとうございます。いただきます。」
「美味しいものなら尚更分け合って食べた方がいいものね!
…ん!やっぱりコニーの作るものは美味しい!」
「そうですね。美味しいですね。もう一つありますから、それはシェスティン様がお食べ下さいね。」
「良かった!もう一つあるのね?じゃあ、ちょうだい!」
食べ終わったシェスティンは、コーラからもらった焼き菓子を持って、バランスを取って立ち上がり、馬車の前方部分についた御者席に繋がる小さな小窓へと近づいた。
「シェスティン様!?危ないのでお座り下さい!」
いきなり席を立ったシェスティンにコーラはそう言うが、向かいの席に膝を付いて小窓を開けてディックへと話し掛けた。
「ディック、ねぇディック!」
「わ!な、なんだよ?」
ディックは、いきなり話し掛けられたので何かあったと思って慌てて後ろを振り返って声を上げた。
「あぁ、ダメよディック!ちゃんと前を見て操作してね。って、話し掛けてごめんなさい。ねぇ、これ。食べてね!美味しかったの!」
「え?や、焼き菓子?いやいや、シェスティン様のだろ?自分で食べろよ。」
「だって、ディックには大変な仕事を頼んでしまったから。ねぇ、食べてくれる?苦手だった?」
「…じゃあ、半分はシェスティン様が食べろよ。おれはもう半分をいただくよ。」
「いいの?ありがとう!じゃあちょっと待ってね。
…出来たわ!はい、受け取ってね!」
「ああ、ありがとう。シェスティン様、危ないからちゃんと座れよ。」
「はーい!」
小窓から半分に割った焼き菓子を渡したシェスティンは、またバランスを取り器用に元の場所へと座った。
「うふふ。やったわ!もう少し食べられるわ!あ、コーラも食べるわよね?」
「い、いいえ。そちらはシェスティン様が食べて下さい。私は大丈夫ですよ。」
「そう?じゃあありがとう!頂くわ!」
(シェスティン様はいつも下々の私どもにも心を砕いて接して下さって…。本当だったら、注意しないといけないのは分かるのだけれど、シェスティン様の慈悲深い優しさも大切にしなければならないから難しいわ。)
コーラはシェスティンが美味しいと言いながら食べる、その横顔を見つめながら考えていた。
「ディック、ありがとう。あのね…」
「話は後ほど。そろそろ道を空けないと。とりあえず出発するから。」
「分かったわ。」
コーラと共に馬車に乗り込むと、ディックは素早く片付けをして出発した。
すると、コーラが話し出した。
「見つかって良かったですね。昼食は屋敷でもよろしいですか?」
シェスティンは本の事かそれとも先ほどの二人の逃げた子供達の事か分からなかったが、コーラの質問に答える。
「ええ。屋敷では無かったら、この辺りで食べられるの?」
「今回はそのような知らせを屋敷へ出しておりませんから、遠慮していただきたいですね。ですから、少しお腹が空くと思いますので、これを。」
それは、予め知らせをしておけば街で食べて来られるという事かもしれないとシェスティンは考える。そして、コーラが差し出して来たものを見て喜んだ。
「焼き菓子!?」
「はい。コニーから手渡してもらいましたよ。シェスティン様が馬車でお腹を空かせてもいけませんからと。」
「ありがとう!嬉しいわ。コニーにはあとでお礼を言っておかないとね!」
コニーは、料理人だ。自身に子供もいる為に面倒身もよく、作った料理に対して文句も言わずお礼までも伝えてくるシェスティンには、フレドリカに比べて少しだけお菓子を多めに準備してくれたりしていた。
手渡された焼き菓子を半分に割り、コーラに渡す。
「どうしました?あとに取って置くのですか?」
「コーラの分よ。一緒に食べましょうね!」
「いえ、これはシェスティン様にと準備されたものですよ。」
「そうね。だから私が受け取ったでしょう?そして、コーラと一緒に食べたいから渡したの。いいでしょう?食べてね。」
「…ありがとうございます。いただきます。」
「美味しいものなら尚更分け合って食べた方がいいものね!
…ん!やっぱりコニーの作るものは美味しい!」
「そうですね。美味しいですね。もう一つありますから、それはシェスティン様がお食べ下さいね。」
「良かった!もう一つあるのね?じゃあ、ちょうだい!」
食べ終わったシェスティンは、コーラからもらった焼き菓子を持って、バランスを取って立ち上がり、馬車の前方部分についた御者席に繋がる小さな小窓へと近づいた。
「シェスティン様!?危ないのでお座り下さい!」
いきなり席を立ったシェスティンにコーラはそう言うが、向かいの席に膝を付いて小窓を開けてディックへと話し掛けた。
「ディック、ねぇディック!」
「わ!な、なんだよ?」
ディックは、いきなり話し掛けられたので何かあったと思って慌てて後ろを振り返って声を上げた。
「あぁ、ダメよディック!ちゃんと前を見て操作してね。って、話し掛けてごめんなさい。ねぇ、これ。食べてね!美味しかったの!」
「え?や、焼き菓子?いやいや、シェスティン様のだろ?自分で食べろよ。」
「だって、ディックには大変な仕事を頼んでしまったから。ねぇ、食べてくれる?苦手だった?」
「…じゃあ、半分はシェスティン様が食べろよ。おれはもう半分をいただくよ。」
「いいの?ありがとう!じゃあちょっと待ってね。
…出来たわ!はい、受け取ってね!」
「ああ、ありがとう。シェスティン様、危ないからちゃんと座れよ。」
「はーい!」
小窓から半分に割った焼き菓子を渡したシェスティンは、またバランスを取り器用に元の場所へと座った。
「うふふ。やったわ!もう少し食べられるわ!あ、コーラも食べるわよね?」
「い、いいえ。そちらはシェスティン様が食べて下さい。私は大丈夫ですよ。」
「そう?じゃあありがとう!頂くわ!」
(シェスティン様はいつも下々の私どもにも心を砕いて接して下さって…。本当だったら、注意しないといけないのは分かるのだけれど、シェスティン様の慈悲深い優しさも大切にしなければならないから難しいわ。)
コーラはシェスティンが美味しいと言いながら食べる、その横顔を見つめながら考えていた。
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