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11. 侍女ザーラの嫉妬

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 翌日。

 オティーリエは、少し冷えると思いながら早くに目が覚めた。


(…そういえば、バンニュルンベルク国は朝晩の気温差が激しいと習ったわ。こういう事なのね。テューロビンゲン国では、年中心地よい気温だったから、寝ていて体が寒くて目覚めるなんてなかったもの。でもきっとここでは普通なのよね。)

 足先が冷えるほどではあるが、暖かい布団が必要というわけでもない為、オティーリエは足先を逆の足で擦りながら温めていると、ようやく起きる時刻となった。


 ザーラは何事も無かったかのように朝、イボンヌの後に付いて侍女の格好でオティーリエの部屋へと入ってきた。


 イボンヌは朝食の準備をこの部屋のテーブルにしている為、ザーラとニダがオティーリエの身支度を整えるのだ。

 奥の衣装部屋へと行く。


「はい、出来上がりでーす。」

 感情のこもらない声でそう言って、オティーリエを適当に着付けたのはザーラだった。ニダが、

「えと…ザーラさん、まだ…」

「聞こえなかった?終わり!さ、朝食でーす。」

 夜着から、ワンピースに着替えるのだが、オティーリエに今日どれを着るのかを聞かずに勝手に選び、さっさと脱がすと、オティーリエに着る服を投げ、オティーリエが何も言わずに着ると、先ほどの言葉を言ったのだ。
まず、仕えているオティーリエに今日は何を着たいかを聞かないのも良くないし、オティーリエに服を投げつけるのもあり得ない。横にいたニダはハラハラしていた。ニダは、ワンピースを着せようとオティーリエに後ろに回ったが、オティーリエは自分で着て、最後だけニダが整えた。
 髪を整えてもいないのに終わりだと言ったザーラに対し、昨日の事もありすでにオティーリエは呆れを通り越してしまった。

(まぁ、ザーラにとって私は、好きな人を取られたというようなものだから苛つくのもわかるけれど…)

 あまりに酷いようだとまた、注意をしようと考えたが、理由があるだけに面倒だと思い、今は放置しておく事にした。


(まぁ、その内気持ちが落ち着くのではないかしら。)


「どうしました?ザーラ、出来たの?」

 イボンヌが心配になったのか声を掛けてきた。すると、すぐにザーラは返事をする。

「はーい、出来ましたよー、今行きまーす」

 ザーラはオティーリエを見ずにまた感情の無い声をあげる。

(まぁ、今日の予定で髪型や服装を変えた方がいいならその時にまた変えればいいでしょう。)

 オティーリエはそう思い、朝食の準備をしてくれたイボンヌの方へと行く。


「あら!?」

 イボンヌは、食事に邪魔にならないようオティーリエの腰までの長い髪を纏めるのかと思ったが、そのままで来たのでやはりザーラに任せるのは良くなかったのかと肝を冷やす。けれど、食事の支度をザーラに任せるのも、昨日の事があるので信用ならないと思ったのでイボンヌも悩んだのだ。

「いいのよ、これで。イボンヌ、ありがとう。美味しそうね。」

 オティーリエにとって、見た事のない料理が並んでいる。白いスープはなんだがとろみがついているようだ。


 オティーリエがいたテューロビンゲン国は、寒くなる日はほとんどなかった為、料理で体を温めるという習慣がない。
対して、バンニュルンベルク国は朝晩の気温差が激しく、冬は凍えるほど寒い為、暖炉や肌着も保温性のあるものを着るという外側からも温める方法や、料理で体を温めるという習慣もある。
 今日は寒いわけでは無かったが、オティーリエには朝方少し冷えた為、ありがたかった。

「はい。牛肉のクリームシチューですよ。テューロビンゲン国では朝方冷え込む事はないでしょうから、寒く感じたのではありませんか?シチューで体の芯から温めましょう。」

「はぁ?今日が寒い?じゃあ冬はどうなるのよ。弱い体ねぇ。」

「ザーラ!侍女は無駄口を叩きませんよ!」

「ふん!」

 弱い体と言われ、カチンと来たオティーリエであったが、イボンヌの気遣いがとてもありがたいと思う。
それにオティーリエはザーラの事を気にしては負けだと思い、特に何も言わずに食事を摂り始めた。
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