【完結】異国へ嫁いだ王女は政略結婚の為、嫌がらせされていると思い込んだが、いつの間にか幸せを掴みました。

まりぃべる

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4. バンニュルンベルク国へ

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 あれからカルラが部屋に戻ってきたのでカロリーネは退出し、オティーリエは途中だった荷物の選別をすると、やはりカルラは一緒には行けずオティーリエ一人で行け、との事らしく護衛騎士団とともにバンニュルンベルク国へと旅立った。



 テューロビンゲン国から東に向かうとグロッケンタイル山脈があり、そこを越えるとバンニュルンベルク国だ。そこからさらに、北上すると王宮へとやっと到着する。

 気候は、テューロビンゲン国は穏やかで年中二十度前後の気温だ。

 山頂を隔ててバンニュルンベルク側は朝晩が冷え込む。

 そしてバンニュルンベルク国の王宮付近は、寒い時は氷点下になる。日中と朝晩の気温差が十度近くある日もある。その為、今まで着ていた服も持って行かなくていいと言われたのだ。あちら側が準備すると言われている。

(それが当たり前よね、架け橋になる為に結婚するのだもの。私はいわば犠牲者だわ!)

 オティーリエは、そう思いながらも、思いのほか道中を楽しんでいた。

(外へ出るのは久しぶりね!そう言えば、昔幼い頃、グロッケンタイル山脈にある湖の畔の屋敷に何度も行った気がするわ。)

 近年は学習に忙しくて出掛ける事も無かったが、八歳の淑女教育が始まる前まではよく、グロッケンタイル山脈に来ていた。

 山の中腹には鉄鉱石を掘り出す鉱山の入り口や炭鉱労働者の居住区がある。
そして山頂には限られた人しか泊まれない屋敷があり、よく家族で遊びに行ったのだ。


(湖があった気がする。そこで…そうよ、よく涼んでいたのだわ。)


 湖でボートに乗ったり、釣りをしたり楽しんだ思い出が蘇る。
近くには炭鉱で犠牲になった人達の為なのか教会があり、そこのオルガンをよく弾かせてもらった。


(…そういえば、知らない男の子とも遊んだわよね。)


 その子は、魚を釣るのが特に上手かった。湖の桟橋で釣り竿を垂らしたり時にはボートに乗ってその子自ら漕いで少し先まで行き釣りを楽しんでいた。
一緒にボートに乗せてもらった事もあった。
ディートリッヒと競っていたが、その子のがいつもたくさん釣っていて、ディートリッヒはいつも悔しがっていたのを覚えている。
でも、その子は誰だったのか遠い記憶の為、覚えてはいない。


(あの頃は、私も無邪気に楽しんでいた気がするわ。私の拙いオルガンをとても褒めてくれたっけ。)


 手を叩いて喜んだり、体をびしょびしょに濡らしてまで遊んだのは遥か昔の事で、オティーリエはそんな日々を酷く懐かしく思った。





☆★

 グロッケンタイル山脈を越えて国境も越え、北へ向かうとやっと王宮へと辿り着いた。辺りはすでに日が沈みかけていた。

(長かったわ…約二週間も馬車に乗りっぱなしなんて本当、遠いのね!)

 オティーリエは、ここで自国の護衛騎士団ともお別れだ。


「皆、ここまでありがとう。気をつけて帰りなさい。これからもテューロビンゲン国の為にたゆまぬ努力をお願いね。」

 そう言うと、護衛騎士団は皆、忠誠の形を取るため膝を折り頭を垂れた。

「テューロビンゲン国に、栄光あれ!」

 そう騎士へと返すお決まりの言葉を言うとオティーリエは、くるりと踵を返して出迎えてくれたこげ茶色の髪の人について行く。
荷物は、その人物の後ろにいた王宮使用人が運んでくれる。

「さぁ、こちらへ付いてきて下さい。」

 と言ったこげ茶色の髪の人物はカルパスで、この国の第一王子の側仕えだ。
第一王子自らは出迎えに来ないのかと密かにオティーリエはため息をつく。

(政略結婚だから仕方ないけれど、酷いものね。仕方ないわ、もしかしたら我が国テューロビンゲン国がたくさん鉱石を採りすぎていた事を許してくれていないのかもしれないもの。)

 と少し寂しく思いながら先へと進んだ。
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