3 / 27
本編
3 ルーク視点
しおりを挟む
昨夜はとても驚いた。
昼過ぎから、私の母、正妃であるナリアーヌ=ヴァン=ケルンベルトを弔う、15年目の茶会があった。
日が沈む頃に茶会は終わり、王宮で働いている者は片付けに追われていた。
俺が所属している騎士団も、最後の見回りが終わり、そろそろ解散しようかとしていた時にそれは起こった。
一般市民も入れる、王宮の庭とは違い、王族の居住区となっている立ち入り禁止区域の庭の辺りで淡い光とほのかな魔力を感じた。
普通だったら入れない場所、しかも王宮は特別な事が無い限り魔力を禁じられている。
俺は
「第一団、第二団も来い!第三団以下は念のため待機!!すぐに動けるように!」
と指示を出し、一目散に異変のあった方へ向かった。
そこでは、未だに淡い、しかし今にも消えそうな薄い光を放っている場所があった。俺の母上が大好きだった、正妃の部屋から一番良く見える庭だ。
そこに、仰向けで倒れている女がいたーーー
「おはよ!あの子、目を覚ましたって?」
朝、ロイが部屋に入って来て早々に声を掛けてきた。
「何であんな、警備もしっかりしてただろうに奥まったところに居たんだろうね。まさか…奴の仕業?それとも誰が仕掛けてきたと思う?」
「…。」
昨日という日に、あの庭に居たのは何か意味があるのだろうか?
「ルークはどう?珍しい髪色の、けっこうキレイな子だったよね。」
「どうとは?どんな意味だ?ロイ、悪い癖を出すなよ。まあ話を聞いてみるか。部屋に行くぞ。」
あまり人に見られていないとはいえ、王宮内にいたのだ。どのようにしてあそこにいたのかはっきりさせなければ。父上も、母上が亡くなってからずっと体調も良くないし、兄上もだ。悪い事が続かなければいいのだが…。
「ねぇ、ルークはどう思った?やっぱり、異世界から来たのかな。ちょっと話が噛み合わないよね。ああゆう戦法?」
マリアという女の部屋から、執務室に戻ってくるなりロイが問うてきた。
「そうだな…俺もちょっと話が合わないのが気になった。魔色測定玉も、捜索札もとぼけていたのか、知らないとは。捜索札、外された形跡もなかったのか?」
捜索札は、子どもが生まれて1年位経つと教会へ行き、司教に付けて貰う。名前や、どこの領地に住んでいるか、両親の名前などが魔力で書かれた札のことである。魔力で付与するので、普段は目に見えず、魔力を当てると見えるようになる。両親などがいない孤児は、孤児院や後見人の名前を付けるので身元がすぐ分かるのだ。
魔色測定玉も、5歳~10歳の年齢になると教会で魔力があるかを見てもらう道具である。魔力があれば、その属性に感化されて玉に色が付く。赤なら火の魔力。青なら水。黄なら雷。白だと治癒。それで魔力がたくさんあると分かれば、学園に通ったり、家庭教師の元で魔法を使いこなせるように学び、ゆくゆくは魔術省の管轄にて主に生活に役立つ魔石作りなどをする職に就く事が出来る。
しかし、マリアは玉に色が付かなかった。つまりは魔力を持って居ないという事か。もちろん、魔力を持っていない者もたくさんいるので不思議ではないが、ではなぜあそこに、誰にも気づかれずに居たのか。
昨日の茶会でも、あの庭までは人は入れていない。母上が大好きだった場所なのだ。暗黙のルールとして、あの庭は王族のプライベートスペースでもありあまり人は近づかない。
「外された形跡はなかったよ。僕が見破れないなんてそうそうないから、そこは安心してよ。でも、王妃様の魔力を感じたんだよなぁ。あの庭で見つかったからなのかな。まぁ、異世界からあの場所に現れたって事が濃厚かなぁ。」
「そうか。そうだな、俺もそう思う。異世界からか…好転するといいが。」
「好転?あぁ…異世界から人が来ると、世界が救われるんでしょ?昔から言われてるよね。それが本当なら国王様や、第一王子殿下も元気になられるといいんだけどね。」
「まぁ、昔の伝説が本当かは疑わしいが、信じたくもなる。」
「かわいいし?傍に置きたいよね。確か、数代前の王妃様も異世界から来た人だったんだよね。」
「らしいな。かわいいかどうかはロイの主観だろ。だが…知り合いも誰も居ないのはつらいだろうな。」
「ルークは顔は厳ついけど、優しいよね~。そうだよ、きっと一人で心細いと思うよ。食事でも一緒に取ってあげたら?明日からでも調整しとく?」
「厳ついは余計だ!…そうだな。そうしてくれ。」
昼過ぎから、私の母、正妃であるナリアーヌ=ヴァン=ケルンベルトを弔う、15年目の茶会があった。
日が沈む頃に茶会は終わり、王宮で働いている者は片付けに追われていた。
俺が所属している騎士団も、最後の見回りが終わり、そろそろ解散しようかとしていた時にそれは起こった。
一般市民も入れる、王宮の庭とは違い、王族の居住区となっている立ち入り禁止区域の庭の辺りで淡い光とほのかな魔力を感じた。
普通だったら入れない場所、しかも王宮は特別な事が無い限り魔力を禁じられている。
俺は
「第一団、第二団も来い!第三団以下は念のため待機!!すぐに動けるように!」
と指示を出し、一目散に異変のあった方へ向かった。
そこでは、未だに淡い、しかし今にも消えそうな薄い光を放っている場所があった。俺の母上が大好きだった、正妃の部屋から一番良く見える庭だ。
そこに、仰向けで倒れている女がいたーーー
「おはよ!あの子、目を覚ましたって?」
朝、ロイが部屋に入って来て早々に声を掛けてきた。
「何であんな、警備もしっかりしてただろうに奥まったところに居たんだろうね。まさか…奴の仕業?それとも誰が仕掛けてきたと思う?」
「…。」
昨日という日に、あの庭に居たのは何か意味があるのだろうか?
「ルークはどう?珍しい髪色の、けっこうキレイな子だったよね。」
「どうとは?どんな意味だ?ロイ、悪い癖を出すなよ。まあ話を聞いてみるか。部屋に行くぞ。」
あまり人に見られていないとはいえ、王宮内にいたのだ。どのようにしてあそこにいたのかはっきりさせなければ。父上も、母上が亡くなってからずっと体調も良くないし、兄上もだ。悪い事が続かなければいいのだが…。
「ねぇ、ルークはどう思った?やっぱり、異世界から来たのかな。ちょっと話が噛み合わないよね。ああゆう戦法?」
マリアという女の部屋から、執務室に戻ってくるなりロイが問うてきた。
「そうだな…俺もちょっと話が合わないのが気になった。魔色測定玉も、捜索札もとぼけていたのか、知らないとは。捜索札、外された形跡もなかったのか?」
捜索札は、子どもが生まれて1年位経つと教会へ行き、司教に付けて貰う。名前や、どこの領地に住んでいるか、両親の名前などが魔力で書かれた札のことである。魔力で付与するので、普段は目に見えず、魔力を当てると見えるようになる。両親などがいない孤児は、孤児院や後見人の名前を付けるので身元がすぐ分かるのだ。
魔色測定玉も、5歳~10歳の年齢になると教会で魔力があるかを見てもらう道具である。魔力があれば、その属性に感化されて玉に色が付く。赤なら火の魔力。青なら水。黄なら雷。白だと治癒。それで魔力がたくさんあると分かれば、学園に通ったり、家庭教師の元で魔法を使いこなせるように学び、ゆくゆくは魔術省の管轄にて主に生活に役立つ魔石作りなどをする職に就く事が出来る。
しかし、マリアは玉に色が付かなかった。つまりは魔力を持って居ないという事か。もちろん、魔力を持っていない者もたくさんいるので不思議ではないが、ではなぜあそこに、誰にも気づかれずに居たのか。
昨日の茶会でも、あの庭までは人は入れていない。母上が大好きだった場所なのだ。暗黙のルールとして、あの庭は王族のプライベートスペースでもありあまり人は近づかない。
「外された形跡はなかったよ。僕が見破れないなんてそうそうないから、そこは安心してよ。でも、王妃様の魔力を感じたんだよなぁ。あの庭で見つかったからなのかな。まぁ、異世界からあの場所に現れたって事が濃厚かなぁ。」
「そうか。そうだな、俺もそう思う。異世界からか…好転するといいが。」
「好転?あぁ…異世界から人が来ると、世界が救われるんでしょ?昔から言われてるよね。それが本当なら国王様や、第一王子殿下も元気になられるといいんだけどね。」
「まぁ、昔の伝説が本当かは疑わしいが、信じたくもなる。」
「かわいいし?傍に置きたいよね。確か、数代前の王妃様も異世界から来た人だったんだよね。」
「らしいな。かわいいかどうかはロイの主観だろ。だが…知り合いも誰も居ないのはつらいだろうな。」
「ルークは顔は厳ついけど、優しいよね~。そうだよ、きっと一人で心細いと思うよ。食事でも一緒に取ってあげたら?明日からでも調整しとく?」
「厳ついは余計だ!…そうだな。そうしてくれ。」
11
お気に入りに追加
592
あなたにおすすめの小説
逃げた先の廃墟の教会で、せめてもの恩返しにお掃除やお祈りをしました。ある日、御祭神であるミニ龍様がご降臨し加護をいただいてしまいました。
下菊みこと
恋愛
主人公がある事情から逃げた先の廃墟の教会で、ある日、降臨した神から加護を貰うお話。
そして、その加護を使い助けた相手に求婚されるお話…?
基本はほのぼのしたハッピーエンドです。ざまぁは描写していません。ただ、主人公の境遇もヒーローの境遇もドアマット系です。
小説家になろう様でも投稿しています。
私のことが大好きな守護竜様は、どうやら私をあきらめたらしい
鷹凪きら
恋愛
不本意だけど、竜族の男を拾った。
家の前に倒れていたので、本当に仕方なく。
そしたらなんと、わたしは前世からその人のつがいとやらで、生まれ変わる度に探されていたらしい。
いきなり連れて帰りたいなんて言われても、無理ですから。
そんなふうに優しくしたってダメですよ?
ほんの少しだけ、心が揺らいだりなんて――
……あれ? 本当に私をおいて、ひとりで帰ったんですか?
※タイトル変更しました。
旧題「家の前で倒れていた竜を拾ったら、わたしのつがいだと言いだしたので、全力で拒否してみた」
【完結】気づいたら異世界に転生。読んでいた小説の脇役令嬢に。原作通りの人生は歩まないと決めたら隣国の王子様に愛されました
hikari
恋愛
気がついたら自分は異世界に転生していた事に気づく。
そこは以前読んだことのある異世界小説の中だった……。転生をしたのは『山紫水明の中庭』の脇役令嬢のアレクサンドラ。アレクサンドラはしつこくつきまとってくる迷惑平民男、チャールズに根負けして結婚してしまう。
「そんな人生は嫌だ!」という事で、宿命を変えてしまう。アレクサンドラには物語上でも片思いしていた相手がいた。
王太子の浮気で婚約破棄。ここまでは原作通り。
ところが、アレクサンドラは本来の物語に無い登場人物から言い寄られる。しかも、その人物の正体は実は隣国の王子だった……。
チャールズと仕向けようとした、王太子を奪ったディアドラとヒロインとヒロインの恋人の3人が最後に仲違い。
きわめつけは王太子がギャンブルをやっている事が発覚し王太子は国外追放にあう。
※ざまぁの回には★印があります。
乙女ゲームの主人公になったけど、やる気ゼロです。
こうじゃん
恋愛
私エリカ14歳。
酔っ払いのおじさんに、ジャンピングトルネードヘッドアタックをおみまいした衝撃で、
前世を思い出しました。
いやあああ、これって、乙女ゲームの世界だわ!!!!!
婚約者がある男性を攻略なんて、やりません!
・ 学校で魔法を覚えよう、学園ライフを楽しもう!
・ 攻略は、しないで、平穏にくらそう!
を、目標に、毎日楽しく頑張ります!
(小説家になろうに掲載済みを少々直してUPしてます。完結しました。)
完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。
王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。
貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。
だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……
氷の貴公子と呼ばれている婚約者が、私を愛しすぎている
瑠美るみ子
恋愛
ほぼ没落している侯爵家の長女ラヴァンダが、雪の精霊の先祖返りのせいで文字通り「氷」の貴公子である公爵子息のウィステリアを助けた結果、婚約するはめになった挙句、溺愛されるようになった話。
ラブコメです。
*小説家になろう様とカクヨム様にても掲載しております
【完結】夫である王太子に浮気された公爵令嬢ですが、たとえ悪女と呼ばれても策略の限りを尽くして愛と幸せを手に入れます
綾森れん
恋愛
マルタ・サンティス公爵令嬢は、美形で女性にだらしない王太子の婚約者。貴族学園時代から数々の浮名を流していた王太子だったが、国王陛下が厳しいため婚約破棄はなかった。
結婚後は立場への責任感から落ち着くかと期待したものの、案の定、男爵令嬢への浮気が発覚した。
裏切られたマルタは、厳しい王妃教育で徹底された気高い倫理観をかなぐり捨て、悪女となってでも、自らの幸せを手に入れることを誓う。
マルタの計画を献身的に支えるのは、侍女のルネ。だがルネの正体は、侍女に変装して王宮についてきた美少年。
王太子とそっくりな顔立ちをしていたため、ルネは孤児院から公爵家に引き取られ、教育をほどこされたのだ。
マルタより一歳年下のルネは、マルタを姉と慕って育ち、マルタの幸せを誰よりも願っていた。
マルタのためならどんな手段もいとわないルネの協力で、策略は成功した。
王太子と男爵令嬢は断罪され、マルタは王太子妃として溺愛される幸せな日々を手に入れる。
たとえ破滅するとしても婚約者殿とだけは離れたくない。だから、遅れてきた悪役令嬢、あんたは黙っててくれないか?
桜枕
ファンタジー
【あなたは下半身のだらしなさにより、その身を破滅させるのです】
謎の電子音によって前世の記憶を取り戻した俺は、一度もプレイしたことがない乙女ゲームの世界に転生していた。
しかも、俺が転生しているのはゲーム内で顔も名前も出てこないモブ男。婚約者が居るにもかかわらず、他の令嬢に手を出してヒロインから婚約破棄されるキャラクターだったのだ。
破滅したくない一心で幼少期から煩悩を消しながら、婚約者殿と交流していた俺はいつしか彼女に惹かれて始めていた。
ある日の観劇デートで俺達の距離は一気に縮まることになる。
そして、迎えた学園入学。
ゲーム内のイケメン攻略対象キャラや悪役令嬢が次々と現れたにも関わらず、何も知らずに普通に交流を持ってしまった。
婚約者殿との仲を深めつつ、他のキャラクターとの友情を育んでいた矢先、悪役令嬢の様子がおかしくなって……。
後輩の攻略対象キャラも迎え、本格的に乙女ゲーム本編が始まったわけだが、とにかく俺の婚約者殿が可愛すぎる。
「やめて! 破滅しちゃう! え、隠しキャラ? なにそれ、聞いてない」
これは、俺が破滅の未来ではなく、愛する婚約者殿との未来を掴むために奮闘する物語である。
※カクヨム、小説家になろうでも併載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる