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21. 〝終の山〟ヘ
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「私も行くのですか!?」
エレナでさえミルチャも同行するのかと思っていた。
しかしミルチャ自身は留守番しようとしていた為に、ジェオルジェにお前も行くに決まっているだろうと言われた際、素っ頓狂な声を上げたので、近くにいるエレナの方が驚いてしまった。
「何を言っているのだ。いろいろと実際に見聞きし、話を聞いて、より良い方向に導くのだろう?ミルチャも行かなくてどうする。お前も、しっかり実情を把握した方がいいだろう。」
「い、いえ…私は遠慮しておきますよ。ジェオルジェ様のお気に召すままにしてこればよろしいかと。」
「俺の気の済むようにだったら、エレナが言う事に全て頷くがいいのだな?現状と見合ってなければ、止めた方がいいという判断も俺はしないがいいのだな?」
「う…ぺ、ペトルを連れて行けばよろしいのでは?」
「ペトルでもいいが、ペトルは領主代行は行っていないから、細かい財政などの事までは分からんと思うからだ。
まぁ、ミルチャがどうしても嫌なら、ペトルにする。ペトル、準備せよ。」
「はい。」
「わ、分かりました…。行きます、行きますから!
ペトルは、私の代わりに屋敷を取り仕切っているのですよ、分かりましたね!」
ペトルは、ジェオルジェ付きの侍従であり、国境警備隊の際にもついて行っていて、領主のジェオルジェの指示の元、助手のような事まではしていたが詳しい領地経営の内容までは知らなかった。
だから税金の使い道、などになるとどこまで口を出したらいいのか、ペトルには分からない事も確かにあった。
半ば投げやりのようだとエレナは思いながら、そのやりとりを見ていた。
☆★
結局、道中も、何で行くのかでひと悶着あり、エレナは益々、ジェオルジェとミルチャのイメージが崩れていくのだった。
(本当に仲がいいのね。
ミルチャさんも、厳しく、なんでも真面目にされると思ったのに。)
ジェオルジェはエレナと馬車に乗ろうと準備をしていた。だが、エレナが歩いて来たのだし歩いて行けばいいのにと思ってそうやんわりと言ってみる。
「ここに来る時は歩いて来たのだけれど、そんなに長い距離ではなかったし歩いてもいけますよね?」
「え?エレナ、俺と歩いて行きたいのかい?うーん、でもせっかくなら…じゃあ馬に乗って行くか?早く行けるよ。」
「馬ぁ!?いえいえ、そんな!
邪魔をしませんから馬車でいきましょう!私は御者席に座りますし。
それとも、私だけ馬車に乗って行ってもいいでしょうか!?」
ジェオルジェがせっかくならと提案した話に、ミルチャは目を大きく開いて否定したので、エレナはまたも驚いた。
「なに?ミルチャだけが馬車に乗るのか?うーん、まぁエレナが俺の馬に乗るのならそれでもいいが…エレナ、どうする?」
(どちらにしても歩くのは選択にないのね。
馬に乗って行くのも楽しそうだけれど、どちらにしても馬車は出すって事なのかな。じゃあ、馬車に乗るのでも楽しそうだからそっちのがいいのかな?ミルチャさん、馬車にどうしても乗りたそうだし。)
「ええと、じゃあ馬車で…」
そうエレナが答えると、エレナに初めてと言えるほどの満面の笑みを浮かべたミルチャだった。
「いやー!さすが!エレナ様はいい選択をされました!うん!では気の変わらない内に!さぁ、さぁ!」
そう言って、ミルチャはさっさと御者席に乗り、ジェオルジェとエレナにも馬車の乗車席に座るようにと手を横に振って促した。
「まさかまだミルチャは馬に乗れないのか?そろそろ乗れるようになった方が移動し易いだろうに。」
「いーえ!私は乗れないのではありません。乗らないのです!なかなか言う事を聞いてくれないのですから。
このように、近くで見ると可愛いつぶらな瞳であるのに、どうして私を乗せて歩いてくれないのでしょうねぇ…。」
「普段から世話をしてやれば言う事も聞くようになる。いつも言っているだろう?」
「私にはそんな時間ございませんから!さぁ、出発進行-!
エレナ様、揺れますからお気を付け下さい!」
少し前まではエレナに冷たいと思っていたが、エレナに気を遣う言葉まで掛けたミルチャは、よっぽど乗馬が嫌だったのだなとエレナは思った。
☆★
「エレナは馬車に乗った事ある?」
「ないです。だから先ほど領主様に馬に乗るか馬車に乗るかって聞かれたでしょう?馬にも乗った事無いから迷ってしまいました。」
「そうなんだ。エレナ、じゃあ今度は二人で馬に乗ろう。ミルチャが居ない時にね!」
「うふふ。はい、機会があればぜひ。」
「あ、それとねエレナ、お願いがあるのだけれど。」
「え?領主様が私に?何ですか?」
「うん。その、領主様って言うのを止めてもらってもいいかな。なんだか、壁があるようで少し淋しいんだ。」
「そ、そうでしたか。申し訳ありません。
ええと、ジェオルジェ様、分かりました。」
「まぁ、今はそれで充分か。
それから、出来たら、もっと砕けた話し方をしてくれると嬉しいんだけれどな。」
「え!が、頑張ります…。」
(偉い人に砕けた話し方をしてもいいの?
…気易く話してくれる人が少ないから、淋しいのかなぁ。)
エレナはそのように思いながら、フカフカのクッションが敷き詰められた馬車にユラユラと揺られていた。
エレナでさえミルチャも同行するのかと思っていた。
しかしミルチャ自身は留守番しようとしていた為に、ジェオルジェにお前も行くに決まっているだろうと言われた際、素っ頓狂な声を上げたので、近くにいるエレナの方が驚いてしまった。
「何を言っているのだ。いろいろと実際に見聞きし、話を聞いて、より良い方向に導くのだろう?ミルチャも行かなくてどうする。お前も、しっかり実情を把握した方がいいだろう。」
「い、いえ…私は遠慮しておきますよ。ジェオルジェ様のお気に召すままにしてこればよろしいかと。」
「俺の気の済むようにだったら、エレナが言う事に全て頷くがいいのだな?現状と見合ってなければ、止めた方がいいという判断も俺はしないがいいのだな?」
「う…ぺ、ペトルを連れて行けばよろしいのでは?」
「ペトルでもいいが、ペトルは領主代行は行っていないから、細かい財政などの事までは分からんと思うからだ。
まぁ、ミルチャがどうしても嫌なら、ペトルにする。ペトル、準備せよ。」
「はい。」
「わ、分かりました…。行きます、行きますから!
ペトルは、私の代わりに屋敷を取り仕切っているのですよ、分かりましたね!」
ペトルは、ジェオルジェ付きの侍従であり、国境警備隊の際にもついて行っていて、領主のジェオルジェの指示の元、助手のような事まではしていたが詳しい領地経営の内容までは知らなかった。
だから税金の使い道、などになるとどこまで口を出したらいいのか、ペトルには分からない事も確かにあった。
半ば投げやりのようだとエレナは思いながら、そのやりとりを見ていた。
☆★
結局、道中も、何で行くのかでひと悶着あり、エレナは益々、ジェオルジェとミルチャのイメージが崩れていくのだった。
(本当に仲がいいのね。
ミルチャさんも、厳しく、なんでも真面目にされると思ったのに。)
ジェオルジェはエレナと馬車に乗ろうと準備をしていた。だが、エレナが歩いて来たのだし歩いて行けばいいのにと思ってそうやんわりと言ってみる。
「ここに来る時は歩いて来たのだけれど、そんなに長い距離ではなかったし歩いてもいけますよね?」
「え?エレナ、俺と歩いて行きたいのかい?うーん、でもせっかくなら…じゃあ馬に乗って行くか?早く行けるよ。」
「馬ぁ!?いえいえ、そんな!
邪魔をしませんから馬車でいきましょう!私は御者席に座りますし。
それとも、私だけ馬車に乗って行ってもいいでしょうか!?」
ジェオルジェがせっかくならと提案した話に、ミルチャは目を大きく開いて否定したので、エレナはまたも驚いた。
「なに?ミルチャだけが馬車に乗るのか?うーん、まぁエレナが俺の馬に乗るのならそれでもいいが…エレナ、どうする?」
(どちらにしても歩くのは選択にないのね。
馬に乗って行くのも楽しそうだけれど、どちらにしても馬車は出すって事なのかな。じゃあ、馬車に乗るのでも楽しそうだからそっちのがいいのかな?ミルチャさん、馬車にどうしても乗りたそうだし。)
「ええと、じゃあ馬車で…」
そうエレナが答えると、エレナに初めてと言えるほどの満面の笑みを浮かべたミルチャだった。
「いやー!さすが!エレナ様はいい選択をされました!うん!では気の変わらない内に!さぁ、さぁ!」
そう言って、ミルチャはさっさと御者席に乗り、ジェオルジェとエレナにも馬車の乗車席に座るようにと手を横に振って促した。
「まさかまだミルチャは馬に乗れないのか?そろそろ乗れるようになった方が移動し易いだろうに。」
「いーえ!私は乗れないのではありません。乗らないのです!なかなか言う事を聞いてくれないのですから。
このように、近くで見ると可愛いつぶらな瞳であるのに、どうして私を乗せて歩いてくれないのでしょうねぇ…。」
「普段から世話をしてやれば言う事も聞くようになる。いつも言っているだろう?」
「私にはそんな時間ございませんから!さぁ、出発進行-!
エレナ様、揺れますからお気を付け下さい!」
少し前まではエレナに冷たいと思っていたが、エレナに気を遣う言葉まで掛けたミルチャは、よっぽど乗馬が嫌だったのだなとエレナは思った。
☆★
「エレナは馬車に乗った事ある?」
「ないです。だから先ほど領主様に馬に乗るか馬車に乗るかって聞かれたでしょう?馬にも乗った事無いから迷ってしまいました。」
「そうなんだ。エレナ、じゃあ今度は二人で馬に乗ろう。ミルチャが居ない時にね!」
「うふふ。はい、機会があればぜひ。」
「あ、それとねエレナ、お願いがあるのだけれど。」
「え?領主様が私に?何ですか?」
「うん。その、領主様って言うのを止めてもらってもいいかな。なんだか、壁があるようで少し淋しいんだ。」
「そ、そうでしたか。申し訳ありません。
ええと、ジェオルジェ様、分かりました。」
「まぁ、今はそれで充分か。
それから、出来たら、もっと砕けた話し方をしてくれると嬉しいんだけれどな。」
「え!が、頑張ります…。」
(偉い人に砕けた話し方をしてもいいの?
…気易く話してくれる人が少ないから、淋しいのかなぁ。)
エレナはそのように思いながら、フカフカのクッションが敷き詰められた馬車にユラユラと揺られていた。
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