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15. 庭
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「綺麗…!」
その庭は、侯爵邸に来たお客様の目を楽しませて心を和ませる為にとても手が加えられていた。
屋敷から見える方向には様々な花や木が植えられている。
手前には白い花と赤い花、少し離れた場所には青い花と白い花、など計算されたようにきちんと植えられて、彩られていた。目が覚めるような緑の芝生も奥へと続いている為に、一層綺麗に見えた。
芝生の中央には小さな石畳の小径が敷かれ、そこから奥へと歩いて散策出来るようになっている。
(ここが、ダリアさんが造った庭なのかな。
でも、じゃあ今は新しい庭師がいるって事?)
「ねぇリュセ、庭師っているの?」
「庭師、ですか…?はい、えーと…あ、あちらで何か作業をしていますね。彼が、庭師のエイデルです。呼びましょうか。」
「あ、いえ。作業をしているのよね、だったら私が向かいます。」
奥の方で、植えられた青い花の傍で赤い髪をした座って作業している人が見えたのでその近くまで向かったエレナは、早速話しかけた。
「あの、庭師の方ですか?」
「わ!びっくりしたー…
はい、そうです。私はエイデルと言います。
何か?」
「あ、いいえ…綺麗な庭よね。あなたが造ったの?」
何か、と言われて別に大した用事ではないけれど思い切って庭の事を聞いてみようとエレナは思ったので質問を口にした。
エイデルと言われた彼は、エレナと同じくらいの男性で、とても若く見えた。
「いいえ、私が植えたのではありません。前任者が育てていたのを引き継いだのです。けれど、引き継ぎも無かったので戸惑ってはいるのですがね。
何か不備でもありましたか?」
「そう…ダリアさんに教えてもらわなかったの?」
「ダリア…?あぁ、前任の方ですね?
私がここへ配属されたのは、前任者がいなくなってからですから、直接教えてもらってはいないのです。
けれども、こう見事に寄せ植えをしていてとても上手く魅せる花の咲かせ方をしているのですから、いろいろと教わりたかったんですがね。弟子にして欲しいくらいでした。
勝手が分からないままに世話をしていたので、私の不手際あるかと思いましたが、無かったのなら良かったです。
まだまだ実力不足ではありますが、努力しているところです。
…ところで、あなたは…?」
「あ、申し遅れました。私はエレナと申します。領主様に会いに来たので会えるまで滞在させていただきますね。」
「お、お客様…すみません、お客様に変な話を…!」
「あぁ、いいのよ。私が聞きたかったのだから。エイデルさ…エイデルも頑張ってね。」
「はい、ありがとうございます。それでは。」
(ダリアさん、若い頃から長年勤めていたって言っていたわよね。だからいろいろと知識もあったのかしら。
エイデルさんも弟子にして欲しかったと言っているくらいだし、ダリアさんが戻ってくる事は叶わないのかなぁ?)
エレナは、エイデルと会話してそのように思ったのだった。
作業をしているエイデルの邪魔をしてはいけないだろうと、庭をもう少し見てみようと思ったエレナは、先を進んで行った。
庭は、小さな石畳の小径が造られていて、今エレナがいる周りには様々な種類のバラが咲き誇っている。そして奥へ進むほど、違う数種類が一括りで寄せ植えで植えられていた。
少し高くなったところには四阿があり、それを越えた先には噴水も造られていた。
屋敷にいた時には噴水の音は聞こえなかったが、こちらへ来ると水の音が良く聞こえて、エレナはとても癒されると和やかな気持ちになった。
噴水の前にはベンチが四方にあり、その中の一つに腰を下ろした。
しばらくエレナがそこでじっとしていると、小鳥の囀りが近づいて聞こえ、噴水の淵に数羽の小鳥が水浴びをしに来た。
(可愛い…!ここは人も動物も癒される場所なのね。
そういえば、あちらの山には沸き湯があったけれど、ここにもあるのかなぁ。領主様っていう偉い人の家だから、あるわよね!小鳥が水浴びしているのを見ていたら、また私も沸き湯に入りたくなっちゃった!
そういえば、部屋にお風呂があったよね。沸き湯の湯を引っ張って部屋まで運んで来てたりしないかなぁ?)
などとエレナはいろいろと考えていた。
その庭は、侯爵邸に来たお客様の目を楽しませて心を和ませる為にとても手が加えられていた。
屋敷から見える方向には様々な花や木が植えられている。
手前には白い花と赤い花、少し離れた場所には青い花と白い花、など計算されたようにきちんと植えられて、彩られていた。目が覚めるような緑の芝生も奥へと続いている為に、一層綺麗に見えた。
芝生の中央には小さな石畳の小径が敷かれ、そこから奥へと歩いて散策出来るようになっている。
(ここが、ダリアさんが造った庭なのかな。
でも、じゃあ今は新しい庭師がいるって事?)
「ねぇリュセ、庭師っているの?」
「庭師、ですか…?はい、えーと…あ、あちらで何か作業をしていますね。彼が、庭師のエイデルです。呼びましょうか。」
「あ、いえ。作業をしているのよね、だったら私が向かいます。」
奥の方で、植えられた青い花の傍で赤い髪をした座って作業している人が見えたのでその近くまで向かったエレナは、早速話しかけた。
「あの、庭師の方ですか?」
「わ!びっくりしたー…
はい、そうです。私はエイデルと言います。
何か?」
「あ、いいえ…綺麗な庭よね。あなたが造ったの?」
何か、と言われて別に大した用事ではないけれど思い切って庭の事を聞いてみようとエレナは思ったので質問を口にした。
エイデルと言われた彼は、エレナと同じくらいの男性で、とても若く見えた。
「いいえ、私が植えたのではありません。前任者が育てていたのを引き継いだのです。けれど、引き継ぎも無かったので戸惑ってはいるのですがね。
何か不備でもありましたか?」
「そう…ダリアさんに教えてもらわなかったの?」
「ダリア…?あぁ、前任の方ですね?
私がここへ配属されたのは、前任者がいなくなってからですから、直接教えてもらってはいないのです。
けれども、こう見事に寄せ植えをしていてとても上手く魅せる花の咲かせ方をしているのですから、いろいろと教わりたかったんですがね。弟子にして欲しいくらいでした。
勝手が分からないままに世話をしていたので、私の不手際あるかと思いましたが、無かったのなら良かったです。
まだまだ実力不足ではありますが、努力しているところです。
…ところで、あなたは…?」
「あ、申し遅れました。私はエレナと申します。領主様に会いに来たので会えるまで滞在させていただきますね。」
「お、お客様…すみません、お客様に変な話を…!」
「あぁ、いいのよ。私が聞きたかったのだから。エイデルさ…エイデルも頑張ってね。」
「はい、ありがとうございます。それでは。」
(ダリアさん、若い頃から長年勤めていたって言っていたわよね。だからいろいろと知識もあったのかしら。
エイデルさんも弟子にして欲しかったと言っているくらいだし、ダリアさんが戻ってくる事は叶わないのかなぁ?)
エレナは、エイデルと会話してそのように思ったのだった。
作業をしているエイデルの邪魔をしてはいけないだろうと、庭をもう少し見てみようと思ったエレナは、先を進んで行った。
庭は、小さな石畳の小径が造られていて、今エレナがいる周りには様々な種類のバラが咲き誇っている。そして奥へ進むほど、違う数種類が一括りで寄せ植えで植えられていた。
少し高くなったところには四阿があり、それを越えた先には噴水も造られていた。
屋敷にいた時には噴水の音は聞こえなかったが、こちらへ来ると水の音が良く聞こえて、エレナはとても癒されると和やかな気持ちになった。
噴水の前にはベンチが四方にあり、その中の一つに腰を下ろした。
しばらくエレナがそこでじっとしていると、小鳥の囀りが近づいて聞こえ、噴水の淵に数羽の小鳥が水浴びをしに来た。
(可愛い…!ここは人も動物も癒される場所なのね。
そういえば、あちらの山には沸き湯があったけれど、ここにもあるのかなぁ。領主様っていう偉い人の家だから、あるわよね!小鳥が水浴びしているのを見ていたら、また私も沸き湯に入りたくなっちゃった!
そういえば、部屋にお風呂があったよね。沸き湯の湯を引っ張って部屋まで運んで来てたりしないかなぁ?)
などとエレナはいろいろと考えていた。
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