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17. これから

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 クスファーさんが撫でてくれ、胸に引き寄せてくれた心地良さに思わず意識が飛びそうになった頃、出入り口の引き戸をノックされ『お食事はいかがいたしましょうか。』と言われた。

 私は、慌ててクスファーさんの胸から離れ、机にあったナプキンを取って目元を拭いた。

「ありがとう。もう少しだけ悩ませてくれ。すぐに呼ぶから。」

 と、クスファーさんが返事をしてくれたから店員さんが個室に入って来ることはなかった。

「す、すみません…お見苦しい所を。」

 化粧はしていないけれど、涙で顔がぐちゃぐちゃだろうと下を向いて話した。

「大丈夫。相談と言うのはもしかしたらこういう事かなと思ったんだ。違うならそれでもいいが。リンは可愛い。泣いた顔も、輝かしくて素敵だよ。包み込みたいくらいだけれど、リンが気になるなら化粧室に行ってくるかい?この扉を出て右にあるよ。」

 可愛いとかいろいろと言われた気がしますけど!?なんだか、ダグラスさんが一緒だった時と話し方が違うような気がしますけど?
ちょっといろいろとキャパオーバーなので、お手洗い、行かせていだきます!


 顔を洗って気分を整えて戻ってくると、料理が運ばれていた。

「ごめん。勝手に頼んだよ。ここはいろいろな食事が出来る。また一緒に来よう。」

 そう言われたけれど、また一緒に来られるって事?いえいえ、騎士団長ですものね、社交辞令よね?
それよりも…!出てきた食事がなんと、焼き魚定食だった!
白い米に味噌汁!梅干しっぽい漬物に、魚の塩焼き!

 ちょっと!せっかく涙が止まったのに、おきよさん泣かせてくれるじゃないの!!
この味噌汁の匂い…。また味わえるなんて!

「ここは国王が保護しているから流通も融通が利く。異国情緒溢れるのは本当だ。このコメも異国から輸入しているし、ミソスープの原料もこのシラグリン国には無かった物だ。」

「おきよさん凄いわね。国王が保護って…皆してくれるの?」

「皆はそうかもしれないが…おきよさんは特別だ。前国王陛下の妃だからな。」

「えっ!?」

 そ、そうだったのね…。おきよさん、実は凄い人物だったのね。

「だが、おきよさんはああいう人柄だ。王宮で暮らす為にここを一時離れた事もあったらしいが、前国王陛下が亡くなってからはここでまた気ままに過ごしておられる。」

 まさに楽しく過ごしているのね。
あ!そうだわ。せっかくだから私の相談もしないと。

「私の相談もいいですか?」

「ああ、もちろん。」

「私、この国へ来てディヴィスさんとマルアさんに出会えて本当にありがたいと思ってます。けれど、もうすぐ赤ちゃんが産まれるそうなのです。そうすると、店番は必要かもしれないけれど、寝る場所が困ると思って。だから…例えばなんですけど、騎士団で話した時、保護って言ってたじゃないですか?それに当てはまるのか分からないですけど、家を借りる事とか出来ませんか?」

 と、一度話を区切ってクスファーさんを見る。
私の話を最後まで聞いてくれている感じだ。だから、続けて話した。

「今、ディヴィスさんとマルアさんの家を出てもお金をいただいてないので一文無しです。だから、家を借りるお金を国から借りたり出来るのかなと。それで、ディヴィスさんとマルアさんが雇ってくれるなら働かせてもらって、無理なら違う所で働かせてもらってお給料を得て、返済していこうかなと…。」

「なるほど。ディヴィスとマルアは何か言っているか?」

「いえ!まだ聞いてません。とてもいい人達なので、気を悪くされてもいけないですし…。」

 そう私が言うと、クスファーさんは何やら考え始めた。
私は良い案があるのかもしれないと、黙って待つ事にした。

「君がそう言ったからな訳ではないが…。俺の提案を聞いてもらえるか?」
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