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15. デート
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翌日。
朝の販売では、なるべく次の予定を考えないでいた。
…だって、あと少しでデート、なんて考えると仕事中に失敗しそうだもの!
どうにか何事もなく仕事も終わって、売り上げを二階へ持って行く。
すると、ディヴィスさんとマルアさんが食事が終わり紅茶を飲んでいた。
いつもと変わらない朝の光景だ。
「カスガリンちゃん、服、寝室の私のベッドの上に出しといたから。そっちで着替えておいで-!私のお古で悪いけど、着てちょうだい!」
マルアさんが言ってくれた。
昨日のうちに、今日出かける事は二人に伝えておいたのだ。
なんだか、くすぐったい気持ちがするけれど、ありがたいので素直にお礼を言って行って着替えた。
「あーここに座って。ちょっと髪直して上げる。はい…はい、出来た!いってらっしゃい!夕方の販売、お願いして大丈夫?」
「ありがとうございます!はい。夕方までに戻ります。では行ってきます!」
階段を降りて店へ行くと、すでに店の外でクスファーさんは待っていた。
「お待たせしました!」
慌てて私はクスファーさんの元へ駆け寄る。
「いや。…似合うな。素敵だ。」
そ、そんな顔を赤らめて言われると私も恥ずかしいです…。
でも、ここはきっと外国!ヨーロッパとかは女性を褒めるのが普通なのよきっと!…異世界だけども。
「あ、ありがとうございます…。クスファーさんも、格好いいです。」
きっと褒められたら褒めるのだろう(いや知らないけど)。
私もものすごく恥ずかしいけれど、正直に言った。
いつも軍服で制服補正なのか格好いいと思ったけれど、今日は白いシャツに紺のスラックス。脚が長いからかシンプルな服装なのにとても様になっている。
「あ…ありがとう、では行こう。」
そう言って、こちらも見ずにスタスタと歩いて行ってしまった。
背が高いから、どこを歩いているかは分かるが、なかなか人混みをかき分けて進むのは難しいのでどんどん差が開いていく。
そういえば初めてこの地に来た時は少年のケルンに手を繋いでもらったなと思い出しながら必死について行く。
しばらく歩いた所でクスファーさんが立ち止まていて、後ろを振り返った。キョロキョロとしている。私を探しているのかな?
やっとの事で辿り着き、下を向いてもらおうとシャツの袖を少しだけ引っ張り、話し掛けた。
「すみません、お待たせしました。」
「ああいた…良かった。済まなかった。いつも騎士団の奴らとしかこんな人混み歩かないから…手を繋いでもいいか?」
「はい…。」
差し出された手に、私の手を重ねた。
クスファーさんは、ふぅ、と一呼吸してから『行くよ。』と言って歩き出した。
恥ずかしい…恥ずかしいわ!
ケルンと手を繋いだ時は、なんとなく私が迷子にならないように心配されている子供みたいだと思って恥ずかしかったけれど、今はその恥ずかしさとは違う。
何というか、心臓がドキドキといつもより鼓動が早く、手が汗ばんでいないか気になったり、包まれた手の大きさを感じてまたときめいたりもした。
「ここだよ。」
そして、手をゆっくりと離された。なぜだか、もっと手を繋いでいてほしいと思ってしまったわ。
朝の販売では、なるべく次の予定を考えないでいた。
…だって、あと少しでデート、なんて考えると仕事中に失敗しそうだもの!
どうにか何事もなく仕事も終わって、売り上げを二階へ持って行く。
すると、ディヴィスさんとマルアさんが食事が終わり紅茶を飲んでいた。
いつもと変わらない朝の光景だ。
「カスガリンちゃん、服、寝室の私のベッドの上に出しといたから。そっちで着替えておいで-!私のお古で悪いけど、着てちょうだい!」
マルアさんが言ってくれた。
昨日のうちに、今日出かける事は二人に伝えておいたのだ。
なんだか、くすぐったい気持ちがするけれど、ありがたいので素直にお礼を言って行って着替えた。
「あーここに座って。ちょっと髪直して上げる。はい…はい、出来た!いってらっしゃい!夕方の販売、お願いして大丈夫?」
「ありがとうございます!はい。夕方までに戻ります。では行ってきます!」
階段を降りて店へ行くと、すでに店の外でクスファーさんは待っていた。
「お待たせしました!」
慌てて私はクスファーさんの元へ駆け寄る。
「いや。…似合うな。素敵だ。」
そ、そんな顔を赤らめて言われると私も恥ずかしいです…。
でも、ここはきっと外国!ヨーロッパとかは女性を褒めるのが普通なのよきっと!…異世界だけども。
「あ、ありがとうございます…。クスファーさんも、格好いいです。」
きっと褒められたら褒めるのだろう(いや知らないけど)。
私もものすごく恥ずかしいけれど、正直に言った。
いつも軍服で制服補正なのか格好いいと思ったけれど、今日は白いシャツに紺のスラックス。脚が長いからかシンプルな服装なのにとても様になっている。
「あ…ありがとう、では行こう。」
そう言って、こちらも見ずにスタスタと歩いて行ってしまった。
背が高いから、どこを歩いているかは分かるが、なかなか人混みをかき分けて進むのは難しいのでどんどん差が開いていく。
そういえば初めてこの地に来た時は少年のケルンに手を繋いでもらったなと思い出しながら必死について行く。
しばらく歩いた所でクスファーさんが立ち止まていて、後ろを振り返った。キョロキョロとしている。私を探しているのかな?
やっとの事で辿り着き、下を向いてもらおうとシャツの袖を少しだけ引っ張り、話し掛けた。
「すみません、お待たせしました。」
「ああいた…良かった。済まなかった。いつも騎士団の奴らとしかこんな人混み歩かないから…手を繋いでもいいか?」
「はい…。」
差し出された手に、私の手を重ねた。
クスファーさんは、ふぅ、と一呼吸してから『行くよ。』と言って歩き出した。
恥ずかしい…恥ずかしいわ!
ケルンと手を繋いだ時は、なんとなく私が迷子にならないように心配されている子供みたいだと思って恥ずかしかったけれど、今はその恥ずかしさとは違う。
何というか、心臓がドキドキといつもより鼓動が早く、手が汗ばんでいないか気になったり、包まれた手の大きさを感じてまたときめいたりもした。
「ここだよ。」
そして、手をゆっくりと離された。なぜだか、もっと手を繋いでいてほしいと思ってしまったわ。
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