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10. 販売
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ディヴィスさんはなかなか帰って来なかったけれど、店の扉が開く音がしたと同時に叫んだ。
「おーい!とりあえず作るから、あとで食べてくれ!それまで、二人は休んでてくれ!」
「煩いねぇ。でも、あの声のディヴィスは、先が見えたって事だね。ウキウキしている声だよ。じゃあ、あたいは眠くなってきたから寝てくるよ。カスガリンちゃんも寝てていいよ。それか、出掛けてきてもいいし。」
「はい。おやすみなさい。」
そう言って、マルアさんは隣の寝室へと出て行った。
私は、まだ一人で外に行く気にはなれなかったから、窓の近くにイスを持って行って外を眺める事にした。
「出来たぞ!ん?マルアは寝てるか…。カスガリン、食べてみてくれ。」
見た目は…ジャムパンかな?煮詰めた何かがパンの生地に挟まっている。いろは、緑だから、キウイ?メロンよりは色が濃い。
「んー!美味しい!甘ーい!!なんだろこれ。めっちゃいい!ジャムパンみたい!」
味は、キウイに似ていた。程よい酸味と、甘過ぎない甘さがあるジャムだった。
「なんか良い匂いがするねぇ。あたいも食べていいかい?」
マルアさんも匂いにつられたのか、私の声がうるさかったのか起きてきて、焼いたパンを見て、一つ取り、食べた。
「うまい!パン生地と一緒になんて初めて食べるけれど、美味しいんだねぇ!これは、キーナかい?」
「ああ。キーナの実を煮詰めたのを挟んでみた。どうだ?売れるか?」
「いいんじゃないかい?一ダラなら買ってくれるだろ。」
「よし!とりあえず、たくさんできたからよ、これ昼にでも販売してみるか?」
「ものは試しだものね!カスガリンちゃん、販売してもらってもいいかい?」
「はい!分かりました!」
「売れない…。」
なぜだろう。
お昼時だから、昼ご飯用にに買って行ってくれると思ったのになぁ…。
そもそも、いつも早朝しか店開けてなかったから、昼間に販売する事知らないから?
もっと知名度を上げるにはどうしたらいい?
店の外で販売したり、呼び込みをしようにも歩道は人がかなり忙しなく歩いているから邪魔になってしまう。
通りに面している側は、ガラスで中が丸見えだから、いっその事外に向けて看板を作る?
私は外を見ながらカウンターに座り、肘を付いて考えていた。
すると、二人の男性が店内を覗いて、入店してきた。
「いらっしゃいませー!」
「顔が見えたから来たよ-。あれ?早朝だけじゃなくて今もやっているの?」
そう、声を掛けてきたのは昨日騎士団で対応してくれた、ダグラスさんだった。隣には、クスファーさんもいる。
「はい。今日は試しで試作品を販売してるんです。でも、ダグラスさんみたいに営業してるのを知らないからか、誰も来なくて…。」
「そっかー。試作品って、それ?」
ダグラスさんは、ショーケースに入っているキーナという実を煮詰めたジャムパンを指差した。
「はい。キーナが入ってます。食べると、とっても美味しいんですよ!」
「へー。でも初めて食べるのは緊張するね。買う前に味見させてよ。」
「おい、ダグラス!」
「だってそうでしょ?初めて見たよ。パンといえばバケットだろうに。キーナを挟むなんて斬新だもん。」
味見…試食!そうか!!
「なるほど!ちょっと待っていてくれますか?ディヴィスさーん!」
と、私は二人を待たせ、二階で昼ご飯を食べていたディヴィスさんに聞きに行った。
何をって、試食させてもいいか、だ。
すると、『売れないよりは。』と言ってくれ、マルアさんなんて『店はカスガリンちゃんに任せたんだから、よっぽどじゃ無い限り好きにやってくれていいよ!』と言ってくれた。
私はお礼を言って、ナイフとまな板を持って急いで下に戻り、新聞を素早く折って箱を作って即席の皿にした。
ジャムをなるべくこぼさないように半分にパンを切り、クスファーさんとダグラスさんに新聞の皿と共に手渡した。
「ごめんなさい。少し時間掛かってしまって。どうですか?」
「んまー!」
「うまい!」
二人共、整っている顔を緩めてそう言ってくれた。
「おーい!とりあえず作るから、あとで食べてくれ!それまで、二人は休んでてくれ!」
「煩いねぇ。でも、あの声のディヴィスは、先が見えたって事だね。ウキウキしている声だよ。じゃあ、あたいは眠くなってきたから寝てくるよ。カスガリンちゃんも寝てていいよ。それか、出掛けてきてもいいし。」
「はい。おやすみなさい。」
そう言って、マルアさんは隣の寝室へと出て行った。
私は、まだ一人で外に行く気にはなれなかったから、窓の近くにイスを持って行って外を眺める事にした。
「出来たぞ!ん?マルアは寝てるか…。カスガリン、食べてみてくれ。」
見た目は…ジャムパンかな?煮詰めた何かがパンの生地に挟まっている。いろは、緑だから、キウイ?メロンよりは色が濃い。
「んー!美味しい!甘ーい!!なんだろこれ。めっちゃいい!ジャムパンみたい!」
味は、キウイに似ていた。程よい酸味と、甘過ぎない甘さがあるジャムだった。
「なんか良い匂いがするねぇ。あたいも食べていいかい?」
マルアさんも匂いにつられたのか、私の声がうるさかったのか起きてきて、焼いたパンを見て、一つ取り、食べた。
「うまい!パン生地と一緒になんて初めて食べるけれど、美味しいんだねぇ!これは、キーナかい?」
「ああ。キーナの実を煮詰めたのを挟んでみた。どうだ?売れるか?」
「いいんじゃないかい?一ダラなら買ってくれるだろ。」
「よし!とりあえず、たくさんできたからよ、これ昼にでも販売してみるか?」
「ものは試しだものね!カスガリンちゃん、販売してもらってもいいかい?」
「はい!分かりました!」
「売れない…。」
なぜだろう。
お昼時だから、昼ご飯用にに買って行ってくれると思ったのになぁ…。
そもそも、いつも早朝しか店開けてなかったから、昼間に販売する事知らないから?
もっと知名度を上げるにはどうしたらいい?
店の外で販売したり、呼び込みをしようにも歩道は人がかなり忙しなく歩いているから邪魔になってしまう。
通りに面している側は、ガラスで中が丸見えだから、いっその事外に向けて看板を作る?
私は外を見ながらカウンターに座り、肘を付いて考えていた。
すると、二人の男性が店内を覗いて、入店してきた。
「いらっしゃいませー!」
「顔が見えたから来たよ-。あれ?早朝だけじゃなくて今もやっているの?」
そう、声を掛けてきたのは昨日騎士団で対応してくれた、ダグラスさんだった。隣には、クスファーさんもいる。
「はい。今日は試しで試作品を販売してるんです。でも、ダグラスさんみたいに営業してるのを知らないからか、誰も来なくて…。」
「そっかー。試作品って、それ?」
ダグラスさんは、ショーケースに入っているキーナという実を煮詰めたジャムパンを指差した。
「はい。キーナが入ってます。食べると、とっても美味しいんですよ!」
「へー。でも初めて食べるのは緊張するね。買う前に味見させてよ。」
「おい、ダグラス!」
「だってそうでしょ?初めて見たよ。パンといえばバケットだろうに。キーナを挟むなんて斬新だもん。」
味見…試食!そうか!!
「なるほど!ちょっと待っていてくれますか?ディヴィスさーん!」
と、私は二人を待たせ、二階で昼ご飯を食べていたディヴィスさんに聞きに行った。
何をって、試食させてもいいか、だ。
すると、『売れないよりは。』と言ってくれ、マルアさんなんて『店はカスガリンちゃんに任せたんだから、よっぽどじゃ無い限り好きにやってくれていいよ!』と言ってくれた。
私はお礼を言って、ナイフとまな板を持って急いで下に戻り、新聞を素早く折って箱を作って即席の皿にした。
ジャムをなるべくこぼさないように半分にパンを切り、クスファーさんとダグラスさんに新聞の皿と共に手渡した。
「ごめんなさい。少し時間掛かってしまって。どうですか?」
「んまー!」
「うまい!」
二人共、整っている顔を緩めてそう言ってくれた。
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