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5. 異世界人登録
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暫くして、先程の人が二人を連れて降りて来た。
そして、私達の元まで来て話し掛けてきた。
「初めまして。僕はダグラスと言うよ。本来であれば話が分かる奴がいる王宮の騎士団で受付なんだけど、運がいいね。今ちょうど僕らが来ていてね。上に来てもらっていいかな?」
と、受付の人とは違う、二人の内の一人が言った。
金髪でアンバーの瞳の、私より頭一つ分背の高い人だ。
「へーすっげ!オレ二階へ行った事ないよ!」
「ん?君は?」
「オレはこの姉ちゃんの案内人のケルン!」
ケルンは、腰に手を当てて威張ったように言った。
「そうなんだ。じゃあついておいで。」
ダグラスさんは、特段気にもしない様子で言い、人懐っこそうな笑みを浮かべてこちらを見ていた。
もう一人はダグラスさんよりもう頭一つ分ほど大きな背で、金髪でグリーンの瞳だった。
とても綺麗な、吸い込まれるような瞳だったから思わず魅入ってしまった。
だけれど、その人は私を見ても一言も発せず、くるりと踵を返してまた来た廊下を登って行った。
この世界は割と、顔が整っている人が多いわね。それとも、ヨーロッパ系の顔つきだから格好良く見えるのかしら?
階段を登ってすぐの部屋に通された。
そこは、六畳ほどで簡易的なテーブルとイスが向かい合わせにあるだけだった。
「さぁ、座って。」
ダグラスさんがそう言って、イスを指し示してくれた。
「まずは、簡単な質問をするよ。君の名前は?」
ダグラスさんが、質問しながらごわごわした紙に羽根の付いたペンでサラサラと何か書いている。
もう一人の男性は、何も言わず隣のイスに腕を組んで座っている。
「はい。春日・凛です。こっちでは、リン・カスガと言うのでしょうか?」
「え?そうなの?おばちゃん、カスガリンって呼んでたから、女なのに男みたいな名前だと思ったけど、違うんだー。」
「そうね…名前だけなら、リンです。」
「ふむ。リン。リン・カスガね。次に、目覚めた時はどこにいたの?」
「パン屋です。ディヴィスさんとマルアさんが営んでいる、ここから見えるパン屋の前、って言ってました。」
「なるほど。で、これからはどうするの?」
「これから?マルアさんが、しばらくは居て良いって言ってくれたので。あとは、こちらに来て全くわからないので…。」
「まぁ、そうだろうな。いつ来たんだ?」
今まで黙っていたダグラスさんの隣に座っていた人が口を挟んだ。
「目覚めたのはついさっきです。だからこの国の事、何も分かってはいなくて…。」
「国で、保護する事も出来るんだよ。というか、本当はそうした方がリンちゃん、君の為でもあるんだけどね。」
「え?私の?」
私はダグラスさんが言った言葉に疑問を持った。
「異世界人は、ここよりも持っている知識量が多いと聞く。だから、その知識が欲しい奴に狙われるとも限らん。」
なるほど…。
てか、先程からもう一人の人は腕を組んで足も組んで深く腰掛けているけれど、名前は教えてくれないのね、この偉そうな人。まぁ、格好良くて様になってはいるけれど。
「まぁ、じゃあそのパン屋にしばらくはいて、この国の事知って行ったら?発行手続きは済ませておくからさ。何かあったら、王宮で保護するよ。あ、もしくは、こいつが保護するから。」
「は?な、だ、ダグラス。何を言っている?」
あら、何だか良く分からないけれど話を振られて結構慌てているわね。
仏頂面だったのに顔が赤くなっていて意外と可愛いかも…。
私はクスクスと笑ってしまった。
そして、私達の元まで来て話し掛けてきた。
「初めまして。僕はダグラスと言うよ。本来であれば話が分かる奴がいる王宮の騎士団で受付なんだけど、運がいいね。今ちょうど僕らが来ていてね。上に来てもらっていいかな?」
と、受付の人とは違う、二人の内の一人が言った。
金髪でアンバーの瞳の、私より頭一つ分背の高い人だ。
「へーすっげ!オレ二階へ行った事ないよ!」
「ん?君は?」
「オレはこの姉ちゃんの案内人のケルン!」
ケルンは、腰に手を当てて威張ったように言った。
「そうなんだ。じゃあついておいで。」
ダグラスさんは、特段気にもしない様子で言い、人懐っこそうな笑みを浮かべてこちらを見ていた。
もう一人はダグラスさんよりもう頭一つ分ほど大きな背で、金髪でグリーンの瞳だった。
とても綺麗な、吸い込まれるような瞳だったから思わず魅入ってしまった。
だけれど、その人は私を見ても一言も発せず、くるりと踵を返してまた来た廊下を登って行った。
この世界は割と、顔が整っている人が多いわね。それとも、ヨーロッパ系の顔つきだから格好良く見えるのかしら?
階段を登ってすぐの部屋に通された。
そこは、六畳ほどで簡易的なテーブルとイスが向かい合わせにあるだけだった。
「さぁ、座って。」
ダグラスさんがそう言って、イスを指し示してくれた。
「まずは、簡単な質問をするよ。君の名前は?」
ダグラスさんが、質問しながらごわごわした紙に羽根の付いたペンでサラサラと何か書いている。
もう一人の男性は、何も言わず隣のイスに腕を組んで座っている。
「はい。春日・凛です。こっちでは、リン・カスガと言うのでしょうか?」
「え?そうなの?おばちゃん、カスガリンって呼んでたから、女なのに男みたいな名前だと思ったけど、違うんだー。」
「そうね…名前だけなら、リンです。」
「ふむ。リン。リン・カスガね。次に、目覚めた時はどこにいたの?」
「パン屋です。ディヴィスさんとマルアさんが営んでいる、ここから見えるパン屋の前、って言ってました。」
「なるほど。で、これからはどうするの?」
「これから?マルアさんが、しばらくは居て良いって言ってくれたので。あとは、こちらに来て全くわからないので…。」
「まぁ、そうだろうな。いつ来たんだ?」
今まで黙っていたダグラスさんの隣に座っていた人が口を挟んだ。
「目覚めたのはついさっきです。だからこの国の事、何も分かってはいなくて…。」
「国で、保護する事も出来るんだよ。というか、本当はそうした方がリンちゃん、君の為でもあるんだけどね。」
「え?私の?」
私はダグラスさんが言った言葉に疑問を持った。
「異世界人は、ここよりも持っている知識量が多いと聞く。だから、その知識が欲しい奴に狙われるとも限らん。」
なるほど…。
てか、先程からもう一人の人は腕を組んで足も組んで深く腰掛けているけれど、名前は教えてくれないのね、この偉そうな人。まぁ、格好良くて様になってはいるけれど。
「まぁ、じゃあそのパン屋にしばらくはいて、この国の事知って行ったら?発行手続きは済ませておくからさ。何かあったら、王宮で保護するよ。あ、もしくは、こいつが保護するから。」
「は?な、だ、ダグラス。何を言っている?」
あら、何だか良く分からないけれど話を振られて結構慌てているわね。
仏頂面だったのに顔が赤くなっていて意外と可愛いかも…。
私はクスクスと笑ってしまった。
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