【完結】身分に見合う振る舞いをしていただけですが…ではもう止めますからどうか平穏に暮らさせて下さい。

まりぃべる

文字の大きさ
上 下
16 / 21

16. 未来の王妃様!? 第三者視点

しおりを挟む
「父上、この前話していたジャネットです!結婚します!」

「………ゲオルクよ。自分で何を言っているのか分かっておるのか?しかも、この場で。」

「分かっています!皆にもついでに紹介出来るので、この会議室に来ました!彼女はジャネット。皆、よろしく!」

「よろしくお願いしまーす!」



 ゲオルクは、異様な雰囲気だった執務室を出て、すぐに国王の執務室へ行った。すると、国王はいなく、国王の側近が隣の机で仕事をしていた。
側近は驚いていたが、『国王陛下は会議室で今は会えませんよ。』と言った。

 ゲオルクは、国王の側近に対しても無礼な態度を常日頃から取っている。
今も、側近に対して碌な返事もせずに出て行った。
その間、ずっとジャネットの手を繋いでいた。


 そして、会議室の扉の前に来た。

 扉の前に立っている衛兵が、『王太子殿下!?今は会議中の為、入れません。』と言う言葉を無視して、ジャネットと手を繋いだまま扉をノックもせずにそのまま開けて入って行った。

 国王陛下の席まで進むと、開口一番で先ほどの言葉を言ったのだ。

 もちろん、国王陛下の席まで行く間に、衛兵も一人追って来ていたし、周りに座っていた重鎮たちもさすがにゲオルクに声を掛けていた。席が近くの者となんだなんだと話している者もいた。


「ゲオルクよ、今は国の大事な会議中だ。その話は昼食の時にでも聞いてやる。」

「いいではありませんか。王太子殿下の結婚したい相手とあらば、我々国民にも関係ある話。ここで話す事もまたよろしいのでは?」

 国王陛下の言葉に続いて言ったのは、娘が婚約破棄された、ホーキンス公爵だった。

「そうですな。我々が八年前、幾度となく慎重に話し合いを重ね未来の王妃を決めたというのに、それを覆すほどの魅力的でかつ聡明な王妃を見つけたみたいですからな。」

 国王陛下のいとこであるティモシエンコ公爵もそう加勢した為、国王陛下は渋々、ゲオルクとジャネットの席を用意させた。

「して、王太子殿下。改めてその女性を紹介していただけるか。」

 国王が話すよりも前にティモシエンコ公爵がそう言うと、ゲオルクは少し緊張して、椅子から立ち上がって言った。

「はい!彼女は、ジャネット=ニューマンです。」

「なるほど。王太子妃となり、ゆくゆくは正妃とさせるのだな?その娘に。」

「いえ、側妃として…」

「ん?よく聞こえんな。他国ではままあるが我が国では、側妃なんぞ争いの元だから作らないのが慣例であったな。まさかそれを知らないとは言わせんぞ。国王になる為の勉強をしっかりとしておれば習うもの。わしの聞き間違いか。で、正妃とするんだな?」

 ティモシエンコ公爵は、国王陛下よりよほど威厳を保ちつつそう言った。
さすがに、ゲオルクも自分の親族とはいえそのように振る舞われたら、蛇に睨まれた蛙の如く縮こまり、次のように述べた。

「はい!言い間違えました!ジャネットを正妃にします!」

「そうか!ではジャネットとやら、今日からしっかりとゆくゆくは正妃となる為の教育を受けるんだぞ。なに、卒業式位は出席させてやる。ゆめゆめ怠るなよ。ゲオルクよ、お前も今までさぼっておった分しっかり国王に継承できるように学ぶんだぞ。でなければ、周りの人が離れてゆくぞ。」

「そうだな、殿下。素晴らしく成長されましたな。私の娘よりも、そちらの娘のが正妃に相応しいとよく見抜かれました。ジャネットとやら、しっかりと学ぶんだぞ。ここまで来たからにはもはや逃げる事は許されんからな。」

 ホーキンス公爵も、妻が国王陛下の妹なだけで国王陛下と直接血が繋がっているわけではない。が、代を遡れば王族の血が入っている。その為本気を出せばかなりの威厳があり、目を合わせた者は皆今にも射殺されそうだと震え上がる。

 ゲオルクもジャネットもさすがにこの二人に目を向けられ、震え上がり、返事も出来ずにコクコクと首を縦に動かすのみだった。

「では、今日で息子は、王宮では最後の仕事とさせてもらってよろしいかな?国王陛下。」

「いやいや、今日に今日この二人に教える為の先生が見つかるかどうか…。せめてあと数日は必要かもしれんぞティモシエンコ公爵。だがそれが出来れば私の息子も王宮での最後の仕事とさせてもらおう。よろしいですかな?国王陛下。」

「うむ…。」

「え、あ…あの!アーサーとライナスはなぜ最後の仕事なのですか?オレの側近ですよね!?」

「おや、知らんかったのか?息子らは殿下の側近というより、に殿下の傍にいて負担を減らしていただけの事。よって、娘が王妃にならないのなら殿下を支える必要もなかろう。側近も新たにご自分で探して…と言いたいが無理であろうからな。そこも息子らにあたらせよう。中途半端に投げ出すような奴ではないから安心しろ。だが…果たして適任がいるかどうか…。」

「そ…んな…。」

「そろそろ話はまとまったんではないか?殿下ののおかげで時間が過ぎたが、あと少し話し合わなきゃならん。会議を再開する為、これで退出願いたいのだが、殿下。よろしいか?」

 そうティモシエンコ公爵が言った為、ゲオルクは、会議室に入って来たときよりも明らかに勢いが無く、トボトボと歩いている。
ジャネットも遅れて立ち上がり、慌ててゲオルクについて小走りに出口へと向かって行った。
しおりを挟む
感想 127

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません

すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」 他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。 今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。 「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」 貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。 王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。 あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!

私と結婚したくないと言った貴方のために頑張りました! ~帝国一の頭脳を誇る姫君でも男心はわからない~

すだもみぢ
恋愛
リャルド王国の王女であるステラは、絶世の美女の姉妹に挟まれた中では残念な容姿の王女様と有名だった。 幼い頃に婚約した公爵家の息子であるスピネルにも「自分と婚約になったのは、その容姿だと貰い手がいないからだ」と初対面で言われてしまう。 「私なんかと結婚したくないのに、しなくちゃいけないなんて、この人は可哀想すぎる……!」 そう自分の婚約者を哀れんで、彼のためになんとかして婚約解消してあげようと決意をする。 苦労の末にその要件を整え、満を持して彼に婚約解消を申し込んだというのに、……なぜか婚約者は不満そうで……? 勘違いとすれ違いの恋模様のお話です。 ざまぁものではありません。 婚約破棄タグ入れてましたが、間違いです!! 申し訳ありません<(_ _)>

とある令嬢の勘違いに巻き込まれて、想いを寄せていた子息と婚約を解消することになったのですが、そこにも勘違いが潜んでいたようです

珠宮さくら
恋愛
ジュリア・レオミュールは、想いを寄せている子息と婚約したことを両親に聞いたはずが、その子息と婚約したと触れ回っている令嬢がいて混乱することになった。 令嬢の勘違いだと誰もが思っていたが、その勘違いの始まりが最近ではなかったことに気づいたのは、ジュリアだけだった。

父の大事な家族は、再婚相手と異母妹のみで、私は元より家族ではなかったようです

珠宮さくら
恋愛
フィロマという国で、母の病を治そうとした1人の少女がいた。母のみならず、その病に苦しむ者は、年々増えていたが、治せる薬はなく、進行を遅らせる薬しかなかった。 その病を色んな本を読んで調べあげた彼女の名前は、ヴァリャ・チャンダ。だが、それで病に効く特効薬が出来上がることになったが、母を救うことは叶わなかった。 そんな彼女が、楽しみにしていたのは隣国のラジェスへの留学だったのだが、そのために必死に貯めていた資金も父に取り上げられ、義母と異母妹の散財のために金を稼げとまで言われてしまう。 そこにヴァリャにとって救世主のように現れた令嬢がいたことで、彼女の人生は一変していくのだが、彼女らしさが消えることはなかった。

代わりはいると言われた私は出て行くと、代わりはいなかったようです

天宮有
恋愛
調合魔法を扱う私エミリーのポーションは有名で、アシェル王子との婚約が決まるほどだった。 その後、聖女キアラを婚約者にしたかったアシェルは、私に「代わりはいる」と婚約破棄を言い渡す。 元婚約者と家族が嫌になった私は、家を出ることを決意する。 代わりはいるのなら問題ないと考えていたけど、代わりはいなかったようです。

婚約破棄は別にいいですけど、優秀な姉と無能な妹なんて噂、本気で信じてるんですか?

リオール
恋愛
侯爵家の執務を汗水流してこなしていた私──バルバラ。 だがある日突然、婚約者に婚約破棄を告げられ、父に次期当主は姉だと宣言され。出て行けと言われるのだった。 世間では姉が優秀、妹は駄目だと思われてるようですが、だから何? せいぜい束の間の贅沢を楽しめばいいです。 貴方達が遊んでる間に、私は──侯爵家、乗っ取らせていただきます! ===== いつもの勢いで書いた小説です。 前作とは逆に妹が主人公。優秀では無いけど努力する人。 妹、頑張ります! ※全41話完結。短編としておきながら読みの甘さが露呈…

両親から謝ることもできない娘と思われ、妹の邪魔する存在と決めつけられて養子となりましたが、必要のないもの全てを捨てて幸せになれました

珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたユルシュル・バシュラールは、妹の言うことばかりを信じる両親と妹のしていることで、最低最悪な婚約者と解消や破棄ができたと言われる日々を送っていた。 一見良いことのように思えることだが、実際は妹がしていることは褒められることではなかった。 更には自己中な幼なじみやその異母妹や王妃や側妃たちによって、ユルシュルは心労の尽きない日々を送っているというのにそれに気づいてくれる人は周りにいなかったことで、ユルシュルはいつ倒れてもおかしくない状態が続いていたのだが……。

婚約者が、私より従妹のことを信用しきっていたので、婚約破棄して譲ることにしました。どうですか?ハズレだったでしょう?

珠宮さくら
恋愛
婚約者が、従妹の言葉を信用しきっていて、婚約破棄することになった。 だが、彼は身をもって知ることとになる。自分が選んだ女の方が、とんでもないハズレだったことを。 全2話。

処理中です...